この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

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建設業で働く女性は増えている

国土交通省のデータによると、建設業で働く女性の割合は約17%(2024年時点)で、技術者に限ると約6%です。他産業と比べるとまだ低い数字ですが、10年前と比較すると着実に増加しています。

総務省の「労働力調査」を見ると、建設業の女性就業者数は2014年の約75万人から2023年には約82万人へと約9%増加しました。就業者全体が減少するなかで女性就業者が増えている点は、業界の変化を示すデータといえます。

国土交通省は「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を策定し、業界全体で女性の就労環境改善に取り組んでいます。この計画は2014年に策定され、女性用トイレや更衣室の整備、長時間労働の是正、ハラスメント防止などの具体的な施策が盛り込まれています。日本建設業連合会が推進する「けんせつ小町」活動も広がりを見せており、女性技術者のネットワーク形成やロールモデルの発信に寄与しています。

女性が活躍しやすい職種

建設業のすべての職種が体力勝負というわけではありません。女性が多く活躍している職種を紹介します。

職種主な業務内容女性比率の傾向年収目安
建設事務経理、書類管理、総務比較的高い300〜400万円
CADオペレーター図面作成・修正増加中350〜450万円
施工管理工程・品質・安全管理増加中400〜600万円
インテリアコーディネーター内装設計・提案高い350〜500万円
積算工事費用の算出増加中380〜500万円
設計(建築士)建物の設計増加中450〜700万円
DX推進・IT担当社内システム管理、BIM推進増加中400〜550万円

※年収は厚生労働省「賃金構造基本統計調査」等を基にした目安です。企業規模や地域によって差があります。

施工管理は「男性の仕事」というイメージがありますが、実際に現場で活躍する女性施工管理技士は年々増えています。特に改修工事やマンション施工、内装工事の分野では女性の管理者が評価されるケースが多いです。居住者とのコミュニケーションが発生するマンションの改修工事では、きめ細やかな対応力が評価されやすいという現場の声もあります。

最近注目されている職種

従来の職種に加えて、DXの進展により新たに女性が参入しやすい領域も広がっています。

BIMオペレーターは3Dモデルを使った建物設計・施工管理の仕事で、体力よりもITスキルが求められます。建設業の経験がなくても、3DソフトやCADの操作経験があれば転職しやすい職種です。ドローン操縦士も屋外業務ではあるものの、体力的な負荷は低く、女性の参入が進んでいます。

待遇面の実態

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給与面 — 男女差はあるのか

建設業における男女の賃金格差は、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると業界平均で約20〜25%の差があります。ただし、これは職種や役職の分布の差を含んだ数字です。

同じ職種・同じ資格・同じ経験年数で比較した場合、資格手当や基本給に男女差を設けている企業は少なくなっています。差が生じる主な要因として、管理職比率の差(男性の方が管理職に就くケースが多い)、残業時間の差(長時間残業を前提とした手当の差)、夜勤や休日出勤の頻度の差が挙げられます。

2022年7月から「女性活躍推進法」に基づく男女間賃金格差の公表が、従業員301人以上の企業に義務化されました。大手建設会社の多くがこのデータを公表しており、企業選びの参考になります。公表データでは、正規雇用の男女間賃金格差が70〜80%程度(女性の賃金が男性の70〜80%)という数字を出している大手ゼネコンが多い傾向です。

福利厚生の改善状況

多くの建設会社で、女性の就労環境改善が進んでいます。

項目改善の動き大手と中小の差
現場のトイレ女性専用の仮設トイレ設置が増加大手は標準、中小は改善途上
更衣室女性用更衣室の整備が進行中大手は整備済み、中小は現場による
産休・育休法定どおり取得可。取得率は企業差あり大手は取得率高い、中小は属人的
時短勤務育児期間中の時短勤務制度を導入する企業が増加大手は制度化、中小は個別対応
作業服女性用サイズ・デザインのラインナップ拡充メーカーの品揃えが充実
ハラスメント対策相談窓口の設置、研修の実施が拡大大手は外部窓口、中小は社内対応

産休・育休の取得実態

建設業における女性の産休・育休取得率は、厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると大手企業で90%を超える一方、中小企業では「制度はあるが取得実績がない」ケースも散見されます。

入社前に確認すべきポイントは、「過去3年間で産休・育休を取得した女性社員は何人いるか」「復帰後の勤務体制(時短勤務の可否)」「復帰後の配属先」の3点です。制度があることと、実際に使えることは別問題です。取得実績の有無が最も信頼できる判断材料になります。

現場の課題 — まだ解決途上の問題

改善は進んでいるものの、現実にはまだ課題が残っています。入社前に認識しておくべき点を正直に整理します。

まだ残っている課題

トイレ・更衣室の未整備は、大手ゼネコンの現場では解消が進んでいますが、小規模現場や改修工事現場では不十分な場合があります。国土交通省は直轄工事で「快適トイレ」の設置を標準化していますが、民間工事まで浸透するにはまだ時間がかかります。

コミュニケーションのギャップも根強い課題です。50代・60代の職人のなかには、女性が現場にいることに慣れていない方もいます。指示を出す立場の施工管理技士であっても、年上のベテラン職人との関係構築に苦労する場面は実際に存在します。

体力面の差については、重い資材の運搬など物理的な体力差を感じる作業はあります。ただし、ICT建機やクレーンの普及、現場の機械化が進んでおり、体力への依存度は年々低下しています。

ロールモデルの不足は、特に中小建設会社で顕著です。女性の先輩や管理職がいない企業では、「この会社で女性はどこまでキャリアを積めるのか」が見えにくくなります。

企業選びで確認すべきポイント

これらの課題は企業によって対応に大きな差があります。入社前に以下を確認してください。

確認項目質問例
女性技術者の在籍人数と勤続年数「女性の施工管理技士は何名いますか」
女性管理職の有無「女性の管理職はいらっしゃいますか」
現場の仮設設備方針「女性用トイレや更衣室はどのように対応されていますか」
産休・育休の取得実績「過去3年で育休を取得した方は何名ですか」
ハラスメント対策「相談窓口はどのような体制ですか」
女性活躍推進の認定取得「えるぼし認定やくるみん認定は取得していますか」

建設業で女性が活躍するためのヒント

資格を武器にする

建設業は資格がものを言う業界です。性別に関係なく、1級施工管理技士や建築士といった資格を持っていれば、それが実力の証明になります。「女性だから」ではなく「有資格者だから」という評価を得やすくなります。

資格の費用対効果を参考に、キャリアプランに合った資格取得を計画してください。たとえば入社後3年以内に2級施工管理技士を取得し、5〜7年目で1級に挑戦するのが一般的なルートです。1級取得後は資格手当として月3〜5万円が上乗せされる企業が多く、年間で36〜60万円の年収アップにつながります。

得意分野を見つける

すべての業務で男性と同じやり方をする必要はありません。書類作成の正確さ、細やかな安全管理、発注者との丁寧なコミュニケーションなど、自分の強みを活かせる場面は多くあります。

改修工事やリフォームの分野では、居住者への配慮やきめ細かなスケジュール管理が求められるため、こうしたスキルが直接評価されます。インテリアコーディネーターの資格と施工管理技士のダブルライセンスを取得することで、設計提案から施工管理まで一貫して対応できる人材として希少価値が高まります。

ネットワークを作る

「けんせつ小町」(日本建設業連合会が推進する活動)をはじめ、建設業で働く女性のネットワークが広がっています。同じ立場の仲間とのつながりは、悩みの共有やキャリアの参考になります。

大手ゼネコンでは社内に女性技術者のコミュニティを設けている企業もあります。中小企業の場合は社外のネットワークが重要で、建設業協会や地域の建設関連団体が主催するイベントに参加することで、他社の女性技術者とのつながりが作れます。

業界の変化 — 女性の就労環境は確実に改善している

国土交通省が推進する「建設業における女性の活躍推進」により、業界全体で変化が起きています。

国交省が2025年度までに達成を目指した「建設業で働く女性を倍増する」という目標に対して、技能者の女性比率は2014年の約2.5%から2023年には約3.5%に上昇しています。倍増には至っていないものの、増加傾向は続いています。

DXの進展も女性にとって追い風です。ICT施工やBIMの普及により、体力に依存しない業務が増加しています。リモートワーク可能な業務(設計、積算、BIMモデリングなど)も拡大しており、育児との両立がしやすくなっている側面もあります。施工管理においても、タブレットやクラウドを使った遠隔管理が広がっており、「現場に常駐して長時間労働する」という従来のスタイルは変わりつつあります。

企業の取り組み事例

女性活躍に積極的な建設会社の取り組みとして、以下のような施策が広がっています。

取り組み内容効果
女性技術者の育成プログラム入社後のOJTにメンター制度を組み合わせ、定着率向上
現場のトイレ・更衣室基準の策定全現場で女性用設備を標準化し、配属先の制約を解消
時短勤務・フレックス制度育児期間中の柔軟な勤務体制を確保
女性管理職の登用目標経営層のコミットメントを示し、キャリアパスを明確化
えるぼし認定の取得採用時のアピールポイントに活用

女性向けのキャリアパスと資格戦略

建設業でキャリアを積む女性にとって、資格取得は「女性だから」という先入観を超えるための最も確実な手段です。

施工管理技士のキャリアロードマップ

施工管理職に就く女性に多いキャリアのルートを紹介します。

入社1〜3年目は現場補助・書類作成を担当しながら実務経験を積む期間です。この段階で施工管理の基礎を習得し、2級施工管理技士(第一次検定)の合格を目指します。受験には実務経験は不要で、17歳以上であれば受験できます。

入社3〜5年目は2級技士(第二次検定)の取得が目標です。2級取得後は「主任技術者」として配置できるようになり、担当できる工事の範囲が広がります。この時点での年収は400〜500万円が目安です。

7年以上の実務経験(または2級取得後5年)を経て1級施工管理技士の受験資格が得られます。1級取得後は「監理技術者」として活躍でき、請負金額4,000万円以上の大規模工事を担当できます。1級取得後の年収は600〜700万円台に上がるケースが多いです。

ダブルライセンスで希少価値を高める

施工管理技士に加えて、以下の資格を組み合わせると市場価値が大幅に上がります。

組み合わせ強み
施工管理技士 + 建築士(2級以上)設計から施工まで一貫対応できる。総合建設会社で重用される
施工管理技士 + インテリアコーディネーターマンション・住宅の施主提案と施工管理を担える
施工管理技士 + 福祉住環境コーディネーター医療・介護施設の工事に強い専門性が生まれる
CADオペレーター + BIM技能資格BIM推進担当として建設DXの中核人材になれる
積算士 + 建設業経理士コスト管理のスペシャリストとしてキャリアを積める

特に、施工管理技士と建築士(2級)のダブルライセンスは、設計事務所と施工会社の両方でキャリアを描ける強力な組み合わせです。建築士試験は施工管理技士と出題範囲の重なりが多く、並行して勉強する女性も増えています。

産休・育休の取得実態と復帰後のキャリア

建設業で産休・育休を取得した後のキャリアに不安を抱く方は多いですが、大手企業を中心に復帰後のフォロー体制が整い始めています。

産休・育休の数値データ

厚生労働省の「令和4年度雇用均等基本調査」によると、建設業の女性の育休取得率は約78%で、全産業平均(80.2%)に近い水準になっています。10年前(約60%台)と比べると大きく改善しています。

男性の育休取得率は建設業全体で約20%前後と、全産業平均(17.1%)をわずかに上回る水準です。大手ゼネコンでは男性育休取得を積極的に推進しており、竹中工務店・清水建設・大成建設などは取得率50%超を公表しています。

育休後の復帰パターン

建設業での育休復帰には、大きく3つのパターンがあります。

現場復帰型は育休終了後に施工管理の現場に戻るケースです。時短勤務制度を使いながら現場を担当するため、担当する現場規模は限定されますが、キャリアの継続という点では最もスムーズです。保育園の送迎時間との兼ね合いで7時現場集合が難しい場合、内勤での書類管理業務との兼任にシフトする企業もあります。

内勤転換型は現場を離れ、積算・設計補助・営業事務などの内勤に転換するパターンです。施工管理の実務からは離れますが、建設業の現場経験がある内勤スタッフとして評価される機会も多いです。

フルリモート対応型はBIM・積算・CAD業務など、リモートで対応できる業務に特化するケースです。一部の建設会社ではリモートワーク可能な体制を整備しており、子育て期間中の柔軟な働き方として選ばれています。

入社前に確認すべき「育休の実態」4点

育休に関して入社前に必ず確認してほしい4点があります。第一に「過去3年間で実際に育休を取得した女性の人数と取得期間」です。制度があっても「誰も取っていない」ではリスクが高いです。第二に「復帰後の配属先はどうなるか」という点で、希望した部署・職種に戻れるかどうかが重要です。第三に「時短勤務制度の対象期間(子どもが何歳まで使えるか)」で、法定は3歳未満ですが、5歳や小学校入学まで延長している企業もあります。第四に「男性社員の育休取得実績」です。男性が育休を取れる文化かどうかは、全体の労働環境の指標になります。

建設業に転職した女性のリアルな声

実際に建設業で働く女性のエピソードを、よかった点・後悔した点に分けて紹介します(個人の経験に基づく参考情報です)。

転職してよかったこと

施工管理に転職した女性に多い声として「資格が収入に直結する公平さ」があります。同じ資格を持っていれば同じ評価を受けられるため、「女性だから評価されない」という不満が前職(サービス業)より少ないという声です。

「自分が手がけた建物が残ること」のやりがいも多く聞かれます。完成引渡し時の達成感は、他の職種では経験しにくいレベルのものだという声が多いです。

「男性社会に飛び込んだことで度胸がついた」という声もあります。年上の職人に毅然と対応する経験が、日常のコミュニケーション全般の自信につながったというケースです。

転職して後悔したこと・覚悟が必要なこと

「体力面の消耗は想定より大きかった」という声は少なくありません。特に夏場の屋外作業は、事務職からの転職組には最初の1〜2年が試練になるケースがあります。体力をつける準備(日常的な運動習慣)を転職前から始めておくことをすすめます。

「朝が早い・拘束時間が長い」点は、子育てとの両立を考えると現実的なハードルになるという声もあります。7時前に現場に入る必要がある日が続く場合、保育園の開園時間との兼ね合いが難しくなることがあります。担当する現場の種類や企業の対応によって状況は大きく変わるため、入社前の確認が重要です。

「現場の仮設環境はまだ改善途上」という声もあります。大手の新築現場では問題ないケースが多いですが、中小企業や改修工事の現場では女性設備が不十分な場合があります。

まとめ — 建設業で働く女性は「特別」ではなくなりつつある

建設業で働く女性はまだ少数派ですが、環境改善は着実に進んでいます。資格取得で実力を証明し、自分に合った職種・企業を選ぶことで、性別に関係なくキャリアを築ける環境は広がっています。企業選びの段階で、女性の就労環境への取り組み姿勢をしっかり確認することが大切です。

特に確認してほしいのは「制度の有無」ではなく「制度の運用実績」です。産休・育休の取得実績、女性管理職の有無、現場設備の方針は、面接の場で具体的に質問してください。その質問に対して明確な数字で答えられる企業は、女性活躍への本気度が高いと判断できます。

よくある質問

建設業で女性が多い職種は何ですか?
建設事務、CADオペレーター、インテリアコーディネーター、積算が女性比率が比較的高い職種です。施工管理や設計でも女性の進出が増えています。BIMオペレーターやDX推進担当など新しい職種も女性が参入しやすい分野です。
建設業の現場に女性用トイレはありますか?
大手ゼネコンの現場では女性専用の仮設トイレ設置が標準化されています。国交省の直轄工事では快適トイレの設置が義務化の方向です。ただし、小規模現場や改修工事現場では未整備のケースもあります。入社前に企業の方針を確認することをおすすめします。
建設業の女性の年収はいくらですか?
職種によりますが、建設事務で300〜400万円、CADオペレーターで350〜450万円、施工管理で400〜600万円、設計で450〜700万円が目安です。資格取得で年収アップが見込め、1級施工管理技士の取得で月3〜5万円の資格手当が上乗せされます。
建設業で産休・育休は取れますか?
法律上、取得できます。大手企業では取得率90%超ですが、中小企業では取得実績がない場合もあります。入社前に過去3年間の取得者数と復帰後の勤務体制を確認してください。時短勤務制度を導入する企業も増えています。
建設業で女性が施工管理をすることは可能ですか?
はい、女性の施工管理技士は増えています。特に改修工事、マンション施工、内装工事の分野で女性管理者が評価されるケースが多いです。1級施工管理技士を取得すれば、性別に関係なく評価されます。
建設業で働く女性を支援するネットワークはありますか?
日本建設業連合会が推進する「けんせつ小町」をはじめ、建設業で働く女性のネットワーク活動が広がっています。大手企業では社内コミュニティ、中小企業では業界団体のイベントを通じてつながりを作れます。
建設業の男女間賃金格差はどのくらいですか?
厚生労働省のデータで業界平均約20〜25%の差がありますが、職種・役職の分布差を含んだ数字です。同じ職種・資格・経験年数であれば男女差は縮小傾向にあります。従業員301人以上の企業は賃金格差データの公表が義務化されています。

参考情報


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