この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

現場作業員20名、内勤スタッフ3名の中小建設会社でも、労務管理の実態は複雑です。正社員、日給月給制の技能者、一人親方として請け負う職人、派遣スタッフ。複数の雇用形態が1つの現場に混在し、それぞれ異なる賃金計算ルールと手続きが発生します。国土交通省の「建設業実態調査(2023年度)」によると、建設業の年間労働時間は全産業平均より約100時間長く、慢性的な長時間労働と人手不足という二重の課題を抱えています。

2024年4月から時間外労働の上限規制が建設業にも適用され、労働時間の正確な把握と記録が法的義務として課されました。さらに、建設キャリアアップシステム(CCUS)への技能者登録が元請業者に求められるようになり、労務管理の仕組みを根本から見直す必要に迫られている建設会社が増えています。

この記事では、建設業に特有の労務管理課題を整理したうえで、CCUS連携・複数現場対応・日報連携の観点から7製品を比較します。従業員規模別のおすすめ、導入コストの試算、よくある失敗パターンまでまとめているので、自社に合ったソフトを見つける参考にしてください。

建設業の労務管理の特殊性 — なぜ一般的なソフトでは対応できないか

製造業やサービス業向けに設計された汎用の労務管理ソフトは、建設業の現場実態に合わない部分が多くあります。「他業種でも使えるから」という理由で選ぶと、後から運用ルールで無理な補完をする羽目になります。

複数現場を日々またいで働く

工事が複数並行する中堅建設会社では、1人の作業員が月曜はA現場、火曜はB現場で働くことが日常です。労務費は工事ごとに原価として計上する必要があるため、「誰がどの現場で何時間稼働したか」を工事単位で記録できなければ、工事台帳の精度が落ちます。汎用ソフトにはこの「現場別の労務費配賦」機能がないことがほとんどです。

一人親方と技能者の混在

建設現場には、雇用関係のある社員とは別に、一人親方として請負契約で働く職人が多数参加します。一人親方は雇用保険・社会保険の加入対象外ですが、CCUSへの技能者登録、建退共(建設業退職金共済)の証紙管理など、独自の管理が必要です。汎用の労務管理ソフトは「雇用している従業員」を前提に設計されているため、一人親方の管理には対応していないケースがほとんどです。

技能者台帳と建設業特有の書類管理

建設業では、作業員名簿、社会保険加入状況確認書類、技能者台帳など、建設業法や公共工事の入札条件として求められる書類が多数存在します。特に公共工事の現場では、元請業者が下請業者の作業員情報を取りまとめ、発注者への提出が義務付けられます。この作業員情報の取りまとめ業務は、汎用ソフトでは手動対応になります。

CCUSとの連携

2023年4月から、国土交通省は公共工事での建設キャリアアップシステム(CCUS)活用が原則化されました。技能者のカードIDと就業履歴、保有資格データをCCUSに連携するには、労務管理ソフト側にCCUS連携機能が必要です。CCUSに対応していないソフトを使うと、別途手動でCCUSに入力する二重作業が発生します。

日給月給制と複雑な賃金計算

建設業では、月給制(内勤スタッフ)と日給月給制(技能者)が混在します。日給月給制は出勤日数に応じて月の賃金が変動するため、月間の出勤日数の正確な把握が給与計算の前提になります。雨天中止や振替出勤も頻繁に発生し、就業規則の設定が他業種より複雑になります。

出典: 国土交通省「建設業における働き方改革の推進」(2026-04-27確認)

建設業向け労務管理ソフトの選び方(5つのポイント)

製品比較の前に、自社に必要な機能と優先順位を整理しておくことが選定の精度を上げます。以下の5点を判断軸にしてください。

1. CCUS連携の有無と深さ

CCUSへのデータ連携方法は製品によって異なります。技能者の就業履歴を自動で連携できるか、それとも手動でデータエクスポートが必要かを確認してください。公共工事の比率が高い建設会社では、CCUS連携の深さが製品選定の最優先事項になります。

連携の「深さ」にも段階があります。就業履歴の自動送信にとどまるものから、技能者の資格情報・保険加入状況まで一元管理できるもの、さらに元請・下請の関係を含めて管理できるものまで、製品によって対応範囲が大きく異なります。

2. 複数現場・複数事業所の対応

同時に複数の現場を進めている場合、現場ごとに労働時間と労務費を分けて管理できるかを確認します。従業員が複数現場をまたいで稼働するケースに対応しているか、現場別の月次レポートを出力できるかも重要なチェックポイントです。

3. 入退社手続きと社会保険の電子申請

建設業は他業種より人の入れ替わりが多い業種です。短期雇用の技能者の雇用・退職手続きが頻繁に発生するため、雇用保険・社会保険の電子申請(e-Gov連携)に対応しているかどうかが事務工数の差に直結します。

2023年4月から、社会保険への加入確認が下請負人への指導義務として法制化されました。下請業者の加入状況を管理できる機能があると、元請業者にとって特に有用です。

4. 給与計算ソフトとの連携

労務管理と給与計算は一体で運用することで最大の効率化が生まれます。勤怠データ・入退社情報が自動で給与計算に連携されるか、同一ブランドでの一体型運用か、CSVでの連携かを確認してください。給与計算の外部委託を検討している会社でも、社労士向けの出力機能(給与計算データのCSVエクスポート等)があると便利です。

5. 対象となる従業員規模と価格

従業員10名の建設会社と100名の建設会社では、必要な機能と使えるコストが異なります。小規模事業者向けの廉価プランがあるか、人数に比例した従量課金か、固定費型かを確認します。初期費用の有無も導入判断に影響するため、合わせて確認してください。

※最新価格・プランは各公式サイトでご確認ください。

おすすめ7製品の比較表

ここまで読んだ方へ

建設業のDX・採用・補助金活用について、無料でご相談いただけます。150プロジェクト以上の支援実績をもとに、御社に合った解決策をご提案します。

無料相談はこちら

以下の比較表は、建設業に特有の観点から各製品を整理したものです。料金は2026年3月時点の公式サイト掲載情報を参照しています(※最新の料金・プラン内容は各公式サイトでご確認ください)。

サービス名料金主な機能補助金対応
蔵衛門 要問合せ(従業員規模別)
  • CCUS連携
  • 現場写真管理
  • 日報管理
  • 複数現場対応
  • 技能者台帳
対応
Caree On(キャリーオン) 要問合せ
  • CCUS完全対応
  • 元請・下請管理
  • 技能者台帳
  • 建退共管理
対応
ジョブカン労務管理 月額400円〜/人
  • 入退社管理
  • マイナンバー管理
  • 年末調整
  • 勤怠連携
  • 給与連携
対応
SmartHR 月額600円〜/人(スモールプラン)
  • 入退社手続き自動化
  • 年末調整
  • 給与明細電子化
  • API連携
  • マルチ拠点対応
対応
freee人事労務 月額400円〜/人
  • 入退社管理
  • 年末調整
  • 雇用保険電子申請
  • 会計連携
  • 給与計算連携
対応
HRMOS勤怠 無料〜(30名以下無料)
  • GPS打刻
  • 多拠点対応
  • シフト管理
  • 有給管理
  • LINE連携
未対応
ArcSystem(弥生) 要問合せ
  • 建設業専用
  • 原価管理連携
  • 工程管理連携
  • 給与計算連携
  • 経審対応
対応
製品名月額費用の目安CCUS連携複数現場対応スマホ対応無料試用向いている規模
蔵衛門要問合せ対応対応(現場別管理)対応あり20名〜
Caree On要問合せ完全対応対応(元請・下請)対応あり10名〜
ジョブカン労務管理400円〜/人非対応部門管理で代替対応30日間無料10〜50名
SmartHR600円〜/人非対応拠点管理で対応対応要問合せ50名〜
freee人事労務400円〜/人非対応部門管理で代替対応30日間無料5〜50名
HRMOS勤怠無料〜非対応拠点・部署管理対応30名以下無料〜30名
ArcSystem(弥生)要問合せ対応(弥生連携)対応対応あり10名〜

料金は2026年3月時点の公式サイト掲載情報です。プラン変更の可能性があるため、契約前に最新情報をご確認ください。

各製品の詳細解説

蔵衛門 — 現場写真・日報・労務管理を一体化した総合型

蔵衛門は、建設業に特化したクラウドサービスとして、施工写真管理・工事日報・作業員管理を統合的に提供しています。

労務管理の観点では、作業員名簿の作成と管理、技能者台帳の一元管理、CCUSへの就業履歴連携が主な機能です。日報機能と連動して「誰が・どの現場で・何時間働いたか」を記録できるため、現場別の労務費配賦に必要なデータを自動で収集できます。

特徴的なのは、施工写真や工事日報など現場管理の機能と労務管理が一体になっている点です。現場監督がスマホで撮影した写真、日報、作業員の出面をすべて同じプラットフォームで管理できるため、複数のシステムを使い分ける手間が省けます。

CCUSとの連携については、蔵衛門上で管理している技能者情報をCCUSに反映する連携機能を提供しています。ただし、連携の詳細な仕様は問い合わせで確認することを推奨します。

向いている企業: 施工写真・日報・作業員管理を一つのシステムで完結させたい、20名以上の中堅建設会社。現場DXを幅広く進めたい場合の起点になる製品です。

施工管理ソフトとの連携を検討している場合は「建設業向け施工管理ソフト比較」もあわせてご覧ください。

Caree On(キャリーオン) — CCUS対応に特化した専門ツール

Caree On(キャリーオン)は、建設キャリアアップシステム(CCUS)への対応に特化した建設業向けの就業管理・労務管理ツールです。

元請業者と下請業者の関係を軸にした管理体系が強みで、元請側では協力会社の技能者情報を取りまとめてCCUSへ連携し、下請側では自社の技能者台帳を管理してCCUSに就業履歴を登録するワークフローを標準機能として備えています。

建退共(建設業退職金共済)の証紙管理にも対応しており、技能者ごとの証紙配布枚数を記録・管理できます。建退共は技能者1人ひとりの手帳に証紙を貼って積み立てる制度のため、管理が煩雑になりやすい業務ですが、システム化によって漏れを防ぐことができます。

公共工事の比率が高く、CCUSへの対応を最優先に考える建設会社にとっては、最も機能が充実した選択肢の一つです。

向いている企業: CCUS対応が急務の中堅建設会社、元請として協力会社の労務情報を取りまとめる立場の企業。

ジョブカン労務管理 — 勤怠・給与と一体で使える汎用型

ジョブカン労務管理は、シリーズ累計25万社以上が導入するバックオフィス支援ツールの労務管理機能です。勤怠管理・給与計算・経費精算と同一ブランドで提供されているため、データ連携がスムーズに行えます。

入退社手続きの電子化、マイナンバーの安全管理、雇用保険・社会保険の電子申請(e-Gov連携)、年末調整のペーパーレス化が主な機能です。建設業に特化した機能ではありませんが、国内での導入実績が豊富で建設業での活用事例も多数あります。

月額400円/人(2026年3月時点)という料金設定は、機能面での充実度と合わせてコストパフォーマンスが高く、勤怠・労務・給与を一括でデジタル化したい建設会社に適しています。

CCUSへの直接連携機能はないため、CCUS管理は別途対応が必要です。複数現場の管理は部門設定で代替できますが、現場別の労務費配賦など建設業固有の要件には限界があります。

向いている企業: 10〜50名規模で、CCUS対応より入退社手続きや社会保険・年末調整のデジタル化を優先したい建設会社。すでにジョブカン勤怠を使っている場合は特に相性が良い製品です。

給与計算との連携を詳しく検討したい場合は「建設業向け給与計算ソフト比較」もご参照ください。

SmartHR — 大手・中堅建設会社に実績のある人事基盤

SmartHRは、累計導入社数8万社超を擁する国内有数の人事労務プラットフォームです。入退社手続き・年末調整・給与明細電子化・人事評価まで、人事業務の幅広い領域をカバーします。

建設業での採用実績も多く、複数の拠点(営業所・現場事務所)を持つ中堅以上の建設会社で活用されています。人事情報のマスタデータとして活用し、勤怠管理・給与計算システムとAPI連携することで、従業員情報の更新を一元管理できます。

月額600円/人〜という料金は7製品の中で最も高水準ですが、大規模な企業ほど価格交渉が可能で、要件に応じたプランが組めます。API連携の豊富さが特徴で、既存のシステムとの接続が柔軟にできる点は、社内システムが複数ある中堅以上の企業に有利です。

CCUSへの直接連携は現時点では対応していないため、CCUS管理は別システムとの組み合わせが必要です。

向いている企業: 50名以上の中堅〜大手建設会社、人事評価・タレントマネジメントまで含めた人事基盤を整えたい企業。複数拠点・複数部門の管理が必要な場合に強みが発揮されます。

freee人事労務 — 会計連携を優先する中小建設会社に

freee人事労務は、freee会計・freee給与と一体で動く中小事業者向けの人事労務ソフトです。「バックオフィス全体を freee で統一する」という方針であれば、入退社管理・給与計算・会計仕訳の連携が自動化されるため、管理工数を大幅に削減できます。

月額400円/人からという料金は、中小建設会社にとって手を出しやすい水準です。雇用保険・社会保険の電子申請、年末調整のペーパーレス化、給与明細の電子配布も標準機能として備わっています。

freee会計を使っている建設会社にとっては、給与仕訳が自動で会計に連携されるメリットが大きく、転記ミスの削減と経理処理の高速化につながります。30日間の無料トライアルが用意されており、試しやすい製品です。

建設業に特化した機能(CCUS連携・技能者台帳・建退共管理など)は搭載されていません。複数現場の管理は部門設定で補完できますが、建設業固有の要件が多い場合は他製品との組み合わせが必要になります。

向いている企業: 5〜50名規模でfreee会計を使っている、またはバックオフィス全体をfreeeで統一したい建設会社。税理士・社労士との連携もfreeeのエコシステムで完結できます。

HRMOS勤怠 — 小規模建設会社が最初のステップとして選べる

HRMOS勤怠は、ビジョナル社が提供する勤怠管理サービスで、30名以下の企業であれば基本機能が無料で使えます。厳密には「労務管理ソフト」ではなく「勤怠管理」ですが、多拠点・多現場での勤怠記録とシフト管理に強く、労務管理の基礎となる勤務実績データの収集に適しています。

GPS打刻によって現場からの出退勤記録が可能で、LINE連携による打刻リマインダー機能はITに不慣れな現場作業員への定着に効果的です。有給管理、残業アラート、複数拠点の一括管理も対応しており、勤怠のデジタル化の第一歩としての機能は十分です。

無料プランで運用できるため、まず「勤怠のデジタル化」から着手し、その後に本格的な労務管理ソフトへ移行するステップ戦略とも相性が良い製品です。

CCUSへの連携機能はなく、入退社手続きや社会保険申請の電子化も範囲外です。これらが必要になった段階で、ジョブカン労務管理やfreee人事労務との組み合わせを検討してください。

向いている企業: 従業員30名以下で、まず勤怠管理のデジタル化から始めたい小規模建設会社。初期費用・月額費用ゼロで始められるため、リスクなく試せます。

ArcSystem(弥生) — 建設業専用設計で原価・工程と連携

弥生が提供するArcSystemは、建設業専用の業務ソフトとして原価管理・工程管理・労務管理・給与計算を統合したシステムです。弥生シリーズの給与計算・会計ソフトとの連携が標準で組み込まれており、建設業の業務フロー全体を弥生製品で完結させる選択肢として位置付けられています。

労務管理の観点では、日給月給制の計算、職種別の賃金体系設定、建退共の管理、社会保険・雇用保険の帳票出力が主な機能です。建設業特有の賃金体系や変動的な勤務パターンへの対応が設計段階から考慮されているため、汎用ソフトで運用ルールを積み重ねるよりも自然な形で業務に合わせられます。

経審(経営事項審査)に関連する帳票出力にも対応しており、公共工事を受注する建設会社の経審準備業務の効率化にも貢献します。

向いている企業: 弥生製品(弥生会計、弥生給与等)をすでに使っている、または建設業専用の一体型システムを求める10名以上の建設会社。原価管理・給与・労務をまとめて見直したい場合の有力な選択肢です。

建設業の労務管理で特に重要な機能 — 技能者台帳・建退共・社会保険加入確認

比較表では整理しきれない、建設業固有の3つの管理業務について詳しく説明します。

技能者台帳の管理

技能者台帳とは、現場で働く作業員の氏名・生年月日・住所・保有資格・社会保険加入状況・血液型などを記録した名簿です。建設業法(第26条の3)に基づき、元請業者は下請業者の作業員情報を取りまとめた施工体系台帳と作業員名簿を作成・保存する義務があります。

紙で管理している場合、現場ごとに最新の作業員名簿を作成・更新する手間は大きく、資格の有効期限切れや保険加入漏れの見落としが起きやすい状態になります。労務管理ソフトで技能者台帳をデジタル管理すると、資格の期限切れアラートや保険加入状況の一覧確認が可能になります。

CCUSに登録した技能者情報を労務管理ソフトと連携させることで、技能者台帳の情報更新をCCUSと一元化できます。入力の二重管理を解消するため、CCUSへの技能者登録を検討している会社は、CCUSと連携できる製品を選ぶことが前提条件になります。

建退共(建設業退職金共済)の管理

建退共は、建設現場で働く作業員のための退職金共済制度です。共済手帳を持つ技能者に対して、就業日数に応じた共済証紙を貼り付けることで退職金を積み立てる仕組みになっています。

管理担当者の業務は、毎月の就業日数を確認し、対応する枚数の証紙を購入・配布することです。作業員が多い建設会社では、証紙の配布枚数の管理と月次の集計が煩雑になります。Caree Onのような建設業特化ツールでは、就業日数の記録から証紙の配布管理まで一連で対応できます。

汎用の労務管理ソフトでは建退共の管理機能を標準搭載していないため、Excelで別管理するか、建設業特化ツールとの組み合わせが必要です。

社会保険加入確認と指導義務

2023年4月から、元請業者は下請業者に対して社会保険への加入を指導する義務が法制化されました。国土交通省の「建設業における社会保険加入対策」によると、2024年時点で建設業の社会保険加入率は健康保険96.3%・厚生年金保険96.5%まで向上していますが、一部の下請業者での加入漏れは依然として発生しています。

元請業者は下請業者の作業員名簿を確認し、社会保険未加入者を現場に入れないよう指導する義務があります。労務管理ソフトに保険加入状況の記録・確認機能があれば、この指導義務への対応業務を効率化できます。

出典: 国土交通省「建設業の社会保険加入対策」(2026-04-27確認)

従業員規模別おすすめ

自社の規模と優先課題に応じて、選ぶべき製品が変わります。以下の整理を参考にしてください。

従業員規模主な課題おすすめ製品選定理由
〜10名コストを抑えて基本機能を使いたいHRMOS勤怠(無料)+ freee人事労務勤怠は無料、労務は月額最小限のコスト
11〜50名CCUS対応+勤怠・給与の一体化Caree On または ジョブカン労務管理CCUS重視ならCaree On、コスト重視ならジョブカン
51名〜人事基盤の整備・多拠点管理SmartHR または ArcSystem(弥生)SmartHRは汎用型人事基盤、弥生は建設業特化の一体型

10名以下の小規模建設会社

この規模では「コストゼロまたは最小限で勤怠・入退社管理をデジタル化する」ことが最初の目標になります。HRMOS勤怠の無料プランで勤怠管理をデジタル化し、入退社手続きや社会保険申請はfreee人事労務の最小プランで対応するという組み合わせが現実的です。

CCUSについては、この規模では手動での登録・管理も許容範囲内に収まるケースが多いです。ただし、元請業者から CCUS 活用の義務付けを受けている場合は、Caree On の導入を優先してください。

11〜50名の中小建設会社

この規模帯では、CCUSへの対応と勤怠・給与の一体化という2つの課題が同時に浮上します。

CCUS対応を最優先にするなら、Caree On が建設業に特化した機能で最も対応が深い製品です。勤怠・給与との連携は別途確認が必要ですが、元請業者として協力会社の技能者情報を管理する立場であれば、他の製品では代替しにくい機能を備えています。

バックオフィス全体のデジタル化を優先するなら、ジョブカン労務管理(または freee人事労務)が選択肢になります。入退社手続き・年末調整・給与計算の連携がスムーズで、中小規模の建設会社が最初に使うには機能と価格のバランスが取れています。

51名以上の中堅建設会社

この規模になると、人事情報のマスタ管理、複数拠点の一括管理、人事評価との連携など、管理の幅が広がります。SmartHRは人事基盤としての完成度が高く、既存の勤怠・給与・会計システムとのAPI連携も豊富です。

建設業専用の一体型を求めるなら、ArcSystem(弥生)が原価管理・工程管理と組み合わせた全体最適化を実現できます。すでに弥生製品を使っている場合の移行コストが低い点もメリットです。

無料プラン・無料トライアルがある製品

初期投資を抑えて試せる製品をまとめます。

製品名無料プラントライアル期間制限事項
HRMOS勤怠あり(30名以下)一部機能制限あり
ジョブカン労務管理なし30日間無料全機能利用可
freee人事労務なし30日間無料全機能利用可
蔵衛門なしあり(要申込)要問合せ
Caree Onなしあり(要申込)要問合せ
SmartHRなし要問合せ
ArcSystem(弥生)なしあり(要申込)要問合せ

無料トライアルを活用するときは、実際の現場データ(作業員名、工事名など匿名化したもの)を入力してみることを推奨します。実際のデータを使った操作感は、カタログスペックよりも導入後の使い勝手を正確に予測できます。

CCUS(建設キャリアアップシステム)連携の確認方法

CCUSへの対応を検討している場合、製品ページの説明だけでなく以下の点を導入前に確認してください。

就業履歴の自動送信ができるか

CCUSの根幹機能は、技能者がICカードをカードリーダーにかざすことで就業履歴が自動で記録される仕組みです。現場入退場管理とCCUSが連携している場合、この打刻データが自動でCCUSに送信されます。一方、システム連携がない場合は手動でCCUSの管理画面に入力する必要があり、作業工数が大きく異なります。

技能者台帳の管理範囲

CCUSに登録する情報には、氏名・住所・保有資格・保険加入状況・受講した研修履歴などが含まれます。これらを労務管理ソフト上で管理し、CCUSと同期できるかどうかを確認してください。情報の修正がある際にソフト側を更新するだけでCCUSに反映されるかどうかが、運用工数の差になります。

元請・下請の関係管理

元請として複数の下請業者を管理する立場であれば、下請業者の技能者情報も含めて一元管理できるかを確認します。Caree On はこの元請・下請の関係管理に特化しており、元請側が協力会社の情報を取りまとめてCCUSに提出するワークフローを標準機能として備えています。

CCUSの制度・申請方法については「CCUS(建設キャリアアップシステム)とは」で詳しく解説しています。

出典: 国土交通省「建設キャリアアップシステム(CCUS)について」(2026-04-27確認)

労務管理ソフト導入の費用対効果

「月額費用がかかるなら、現状のExcel管理でよいのではないか」という疑問に対して、具体的な試算で答えます。

導入コスト試算(従業員20名の場合)

費用項目試算
ソフト月額利用料(400円 × 20名)8,000円/月
年間のソフト利用料96,000円
初期費用(製品による)0〜50,000円
初年度合計96,000〜146,000円

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用すれば、クラウド利用料の1/2〜3/4が補助される可能性があります。補助率1/2の場合、実質的な年間コストは48,000円程度になります。

削減できる工数の試算(従業員20名の場合)

建設会社の労務管理担当者が紙・Excelで行っている業務の工数を試算すると、以下の削減が見込めます。

業務現状(月間)デジタル化後削減工数
入退社手続き(書類作成・郵送)6時間/件 × 月2件 = 12時間1時間/件 = 2時間10時間
年末調整(書類配布・回収・確認)繁忙期40時間 → 月平均3.3時間月平均0.5時間2.8時間
勤怠集計・給与計算準備月8時間月1時間7時間
合計月間削減工数約20時間

担当者の時間単価を2,500円として計算すると、月間50,000円相当の工数削減になります。年間では600,000円相当の削減効果です。月額利用料8,000円と比較すると、費用対効果は明確です。

さらに、手続き漏れによる行政指導のリスク軽減(雇用保険未加入の是正勧告等)や、CCUSへの未対応による公共工事の受注機会損失といった間接的なリスクも考慮に値します。

導入時の注意点と失敗事例

失敗事例1: CCUSへの対応を後回しにして後で困る

「まず使いやすいものから」と汎用の労務管理ソフトを導入し、1年後に「元請からCCUS対応を求められた」という状況になるケースがあります。CCUSに直接対応していないソフトとシステム切り替えのコストをかけるよりも、最初からCCUS連携を考慮して製品選定することが重要です。

公共工事への参入予定がある場合や、現在の元請業者からCCUS活用を求められる可能性がある場合は、選定段階でCCUS連携の有無を必ず確認してください。

失敗事例2: 現場の運用変更が置き去りになる

ソフトの導入自体は完了したものの、現場の作業員が紙の出面表の提出をやめない、社内の書類提出フローが変わらないといった状況が続くと、システムへのデータ入力作業が二重になります。

導入前に、現場責任者・管理部門・経営層の3者で「どの業務フローをどのように変えるか」を明確にしておくことが、定着の鍵になります。ソフトの選定と並行して業務フローの変更計画を立て、現場への説明と合意形成を進めてください。

失敗事例3: 給与計算ソフトとの連携確認を怠る

労務管理ソフトを導入したものの、給与計算ソフトとのデータ連携方法を確認せずに進めた結果、勤怠データを手作業で給与計算ソフトに転記するという状態になるケースがあります。

連携方法(API連携・CSV連携・手動入力)と、連携できる項目の範囲を事前に確認してください。既存の給与計算ソフトとの互換性が確認できない場合は、給与計算ソフトも含めてセットで見直すことも選択肢に入れてください。

失敗事例4: 一人親方・協力業者の管理範囲を定義しない

雇用している従業員と、請負契約の一人親方・協力業者の管理範囲を明確に定義しないまま導入すると、「どこまでシステムで管理するか」という混乱が生じます。

一人親方はソフト上の「従業員」として登録するのか、「協力会社」として別管理するのかを事前に決めてください。CCUSへの登録は一人親方も対象になるため、Caree Onのような建設業向けツールを使う場合は、この管理区分の設定が重要なポイントになります。

IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)を活用する

労務管理ソフトの多くは、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象ツールとして登録されています。2025年度からIT導入補助金は「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変更されましたが、労務管理ソフトは引き続き補助対象です。

項目内容
補助対象中小企業・小規模事業者
補助率1/2〜3/4(申請枠による)
補助上限額50万〜450万円(申請枠による)
対象経費ソフトウェア購入費、クラウド利用料(最大2年分)、導入費用

従業員20名の会社が月額400円/人のソフトを導入した場合、年間のクラウド利用料は96,000円、2年分で192,000円です。補助率1/2で96,000円、補助率3/4なら144,000円が補助される計算になります。

補助金の申請には、IT導入支援事業者を通じた手続きが必要です。各製品が補助金対象ツールに登録されているかどうかは、公式サイトや以下のリンクで確認してください。

補助金の詳細な申請方法は「建設業のIT導入補助金活用ガイド」で解説しています。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

建設業に特化した労務管理ソフトとはどれですか?
CCUS連携・一人親方管理・技能者台帳・建退共管理など建設業固有の機能を持つ製品として、蔵衛門・Caree On・ArcSystem(弥生)が挙げられます。汎用ソフト(ジョブカン・SmartHR・freee)は建設業での導入実績がありますが、CCUS連携などの機能は搭載していません。
CCUSと連携できる労務管理ソフトはどれですか?
Caree On はCCUS対応に最も特化しており、就業履歴の自動連携・技能者台帳管理・元請下請関係管理に対応しています。蔵衛門もCCUS連携機能を提供しています。ジョブカン・SmartHR・freeeはCCUS直接連携には対応していないため、CCUS対応が必須の場合は別途確認が必要です。
一人親方の管理はどのソフトで対応できますか?
建設業特化のCaree Onが一人親方を含む技能者管理に対応しています。汎用ソフトは「雇用している従業員」の管理が前提のため、一人親方・協力業者の管理は対応範囲外になるケースが多いです。一人親方の管理方法は、導入前に各製品に確認することを推奨します。
労務管理ソフトの月額費用はどのくらいですか?
1人あたり月額400〜600円が相場で、従業員20名なら月額8,000〜12,000円程度が目安です。HRMOS勤怠は30名以下なら無料プランがあります。Caree On・蔵衛門・ArcSystemは要問合せのため、規模に応じた見積もりが必要です。デジタル化・AI導入補助金を活用すれば、クラウド利用料の1/2〜3/4が補助される可能性があります。
従業員10名以下の小規模建設会社にはどれがおすすめですか?
まず勤怠管理のデジタル化から始めるならHRMOS勤怠の無料プランが初期費用ゼロで使えます。入退社手続きや社会保険申請も含めてデジタル化したい場合は、freee人事労務(月額400円〜/人)が中小規模向けで使いやすい選択肢です。CCUSへの対応が必要な場合はCaree Onを検討してください。
建設業の2024年問題(時間外労働上限規制)と労務管理ソフトの関係は?
2024年4月から建設業にも時間外労働の上限(月45時間・年360時間)が適用されています。労務管理ソフトで勤怠データを正確に記録・集計し、残業アラートで上限超過を未然に防ぐ仕組みが必要です。HRMOS勤怠・ジョブカン・SmartHRはいずれも残業アラート機能を備えています。
紙・Excelでの労務管理から移行する場合のステップは?
まず現在の管理業務(入退社手続き・勤怠集計・年末調整・CCUS管理等)をリストアップし、デジタル化したい優先順位を決めます。次に候補製品の無料トライアルで操作感を確認し、1〜2か月の並行運用期間を経て本格移行するのが定着率を高めるステップです。現場への説明と合意形成を先に行うことが移行成功の最大のポイントです。
下請業者として元請から労務管理のデジタル化を求められた場合はどうすればよいですか?
元請から求められる要件(CCUS登録・就業履歴の記録・作業員名簿の提出形式など)を具体的に確認することが最初のステップです。要件がCCUSへの対応であれば、Caree Onが最も対応が深い選択肢です。入退社書類の電子提出が求められる場合は、ジョブカン労務管理やSmartHRの対応範囲を確認してください。

まとめ

建設業の労務管理は、一般的な企業と比べて複数の特殊な要件が重なります。複数現場をまたいだ労務費の配賦、一人親方や協力業者の技能者管理、CCUSへの就業履歴登録、建退共の証紙管理。これらに対応するには、汎用の労務管理ソフトだけでは不十分なケースがあります。

製品選定のポイントを改めて整理します。

  • CCUS対応が最優先 → Caree On または蔵衛門
  • 勤怠・給与との一体化を重視 → ジョブカン労務管理
  • バックオフィス全体をfreeeで統一したい → freee人事労務
  • 50名以上で人事基盤を整えたい → SmartHR
  • 弥生製品を使っており建設業特化を求める → ArcSystem(弥生)
  • 10名以下でまず無料で始めたい → HRMOS勤怠

どの製品も無料トライアルや問い合わせ対応があります。自社の現場環境・雇用形態・CCUS対応の優先度を確認したうえで、まずは1〜2製品を実際に試すことを推奨します。デジタル化・AI導入補助金を活用すれば、クラウド利用料の大部分が補助対象になるため、費用面の障壁も低くなっています。

施工管理ソフトとの連携を検討している場合は「建設業向け施工管理ソフトとの連携」もあわせてご覧ください。


あわせて読みたい:

建設業のDX・採用でお悩みですか?

ケンテクでは、中小建設会社向けにDX導入や人材確保のご相談を無料で承っています。

無料で相談する

参考情報