この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

Excelの見積書が限界に来ています。行を1つ挿入するたびに小計の式がずれる。去年の似た工事の見積を流用したら、単価が古いまま出してしまった。担当者ごとにフォーマットが違って、誰が作ったかで精度が変わる。そういう状態で「見積ソフト」を調べ始めた方に向けて書いています。

比較記事を何本か読むと、16製品や18製品が並んだ一覧が出てきます。ただ、その一覧を眺めても決まりません。製品の数が多いことより、自社が見積だけを直したいのか、見積から原価・請求まで繋ぎたいのかが決まっていないほうが、選べない理由として大きいからです。

そこでこの記事は、製品を並べる前にその分岐を置きます。そのうえで、掲載する製品はすべて提供元の公式サイトで実在と提供元を確認し、確認日を書きました。 比較記事に載っている製品名が実際には存在しない、提供元が別の会社になっている、といったことが起こる領域なので、金額の話をする前にそこを固めています。

最初に決めるのは「見積だけか、原価まで繋ぐか」

見積ソフトと呼ばれている製品は、実際には2つの層に分かれます。

ひとつは見積書を作ることに絞った製品です。階層のある内訳明細を組み、単価を一括で直し、Excelのレイアウトを引き継いで出力する。ここまでで完結します。導入は軽く、費用も読みやすいのが利点です。

もうひとつは見積を入口にして、実行予算・発注・原価・請求まで一本に繋ぐ製品です。見積の金額がそのまま実行予算になり、発注と仕入がその下にぶら下がり、工事ごとの利益が締めまで追える。当然、導入は重くなります。

見積だけか、原価まで繋ぐかの分岐Excelの見積書が限界。どこまでを直すか見積書の作成だけを直したい原価・請求まで繋ぎたい見積特化階層のある内訳明細単価の一括修正Excelレイアウトの引き継ぎ使えるくらうど建築見積SMAC/レッツの見積モジュール見積〜原価一体見積がそのまま実行予算に発注・仕入・支払が下にぶら下がる工事ごとの利益を締めまで追う建設大臣NX/どっと原価NEOガリバー/工事原価Pro ほか見積単体なら税込11万円から工事件数が少なく作成自体が負担なら数十万円〜数百万円赤字工事の原因を特定できないなら
製品を並べる前にここを決めると、候補が半分になります

判断の目安はこうです。年間の工事件数がそれほど多くなく、見積を作ること自体に時間を取られているなら左で足ります。一方、完成した工事の利益が想定とずれ、その原因を後から特定できない状態なら右が要ります。見積を直しても、発注と仕入が別の場所にある限り原因は見えません。

両方が必要でも、同時に入れる必要はありません。あとで触れるSMAC工事管理のように、機能を1つずつ買い足せる製品なら、見積管理から始めて実行予算・発注と広げられます。

「見積ソフト」と「積算ソフト」の違いを整理する

ソフト選びの前に、見積と積算の違いを正確に理解しておく必要があります。この2つの言葉は混用されることが多いですが、建設業の業務フローにおいては明確に区別されます。

積算とは

積算とは、工事に必要な材料・労務・機械・経費を一つひとつ拾い出し、工費(原価)を算出する作業です。公共工事では国土交通省が定める「公共建築工事積算基準」や「土木工事標準積算基準書」に従い、歩掛り(作業あたりの労務量)や公共単価を用いて計算します。積算の精度が低いと、赤字受注や入札での失注につながります。

見積とは

見積とは、積算で算出した原価に諸経費・利益を加えて、顧客(発注者)に提示する金額を算出する作業です。民間工事では自社の利益率方針に基づいて決定し、公共工事では積算結果をもとに入札金額を設定します。見積書の体裁(内訳書のフォーマット・PDF品質)も、顧客からの信頼に影響します。

ソフトの分類

カテゴリ主な機能対象ユーザー
積算特化ソフト公共単価DB、歩掛り計算、数量拾い出し公共工事が多い建設会社
見積・請求一体型ソフト見積作成、請求書生成、売上管理民間工事中心・小規模事業者
原価管理連携型見積〜実行予算〜原価比較原価管理が課題の中小建設会社
AI積算ソフト図面からの自動数量拾い、自然言語入力DX推進中・IT活用に積極的な会社
施工管理一体型施工管理ツールの見積機能施工管理ソフト導入済みの会社

建設業の見積ソフトを選ぶ評価軸

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公共工事対応の有無

公共工事を受注する建設会社にとって、公共単価データベース(国土交通省・農林水産省が毎年改定する「公共単価」)への対応は必須です。公共単価の更新が自動で反映されるかどうかも確認ポイントです。

AI・自動化機能

2025〜2026年にかけて、見積ソフトへのAI機能搭載が急速に進んでいます。具体的には、CAD図面や設計図書から自動で数量を拾い出す「AI数量拾い」、類似案件の過去データから見積金額を自動提案する「AI類似案件参照」、自然言語で工事内容を入力すると見積書が自動生成される「自然言語積算」などです。

AI機能の完成度はソフトによって大きく異なります。トライアル期間に実際の図面を使って精度を確認することが重要です。

原価管理・請求書との連携

見積段階の想定利益率と、完工後の実績利益率を比較できる原価管理機能が搭載されているかどうかは、経営判断に直結する重要な評価軸です。見積→受注→実行予算→原価管理→請求の流れがデータで繋がることで、工事ごとの採算管理が自動化されます。

クラウド対応と複数端末アクセス

外出先や現場から見積データにアクセスしたい場合は、クラウド型が必要です。買切り型(インストール型)は初期費用が高いですが月額費用がかからず、クラウド型は月額費用がかかる代わりに更新・バックアップが自動化されます。複数のスタッフが同時に見積作業を行う場合は、クラウド型での排他制御(同時編集の競合防止)の仕様を確認してください。

電子帳簿保存法・電子納品への対応

2024年1月から電子帳簿保存法の電子取引データ保存が完全義務化されました。見積書・請求書の電子的な授受に対応し、タイムスタンプ付きでの保存ができる機能が必要です。公共工事では電子納品(CORINS等)への対応も確認してください。

見積だけを直すなら — 実額で比べられる3つ

見積特化の選択肢は、意外なほど価格が揃います。公式に金額を出している2製品は、どちらも税込11万円からです。

製品提供元提供形態見積だけ使うときの価格
使えるくらうど建築見積アサクラソフト株式会社クラウド要問合せ(構成と利用人数で変動)
SMAC工事管理「見積管理」株式会社パナック買い切り(機能単位で選択)110,000円(税込)+保守 月2,750円(税込)
レッツ原価管理Go2「見積」株式会社レッツ買い切り(チョイス・ザ機能)110,000円(税込・スタンドアロン)

使えるくらうど建築見積 — Excelのレイアウトをそのまま持っていける

見積書の作成に絞ったクラウドサービスです。特徴が実務に噛み合っているので、機能を具体的に挙げます。

内訳明細書のような階層化された明細を最大5階層まで作れます。作成した見積金額は、見積全体でも明細単位でも一括で修正できます。値引きが入って全体を3%下げる、といった場面で効きます。

出力はPDFとExcelの両方に対応し、Excelレイアウトの取り込み機能で、これまで使っていたExcel見積書と同じレイアウトのまま出力できます。元請ごとに様式が決まっていて変えられない会社には、これが移行の可否を分けます。歩掛労務費の計算機能もあり、明細ごとに歩掛係数を設定して労務費を自動算出できます。

料金はシステム構成と利用人数で変わるため公開されていません。公式のよくある質問では、見積もりだけの希望でも問い合わせれば担当者がヒアリングのうえ提示する、と案内されています。

出典: 使えるくらうど建築見積(2026-08-29確認)

SMAC工事管理の「見積管理」 — 必要な機能だけ買い足す

株式会社パナックが開発・販売する建設業向けの工事管理ソフトです。総合建設業から土木・建築・舗装・造園・設備・電気・管工事・機械設備まで、幅広い業種に導入されています。

この製品の特徴は価格が機能単位で公開されていることです。基本ソフトウェアは見積管理・実行予算管理・発注管理・労務機械管理・仕入管理などが各100,000円(税込110,000円)、日報管理だけ150,000円(税込165,000円)。オプションで会計システム連動が110,000円から、承認機能(見積・予算・発注・日報)が各55,000円、出来高請求管理が220,000円といった具合です。

つまり見積管理だけなら税込110,000円の買い切りで始められ、あとから実行予算管理と発注管理を足していける構成です。追加クライアントは1〜9CALが88,000円、10CAL以降は44,000円(いずれも税込・同時接続ライセンス)。導入時のインストールは訪問11,000円、オンライン5,500円です。

保守サポートは月額制で、システム構成の合計額に応じて決まります。400,000円未満なら月2,750円、400,000〜600,000円未満なら月3,850円(いずれも税込)といった刻みです。見積管理だけの構成なら、最も安い区分に収まります。

「いずれ原価まで繋ぎたいが、いまは見積から」という会社には、この買い足し方ができる点が効きます。

出典: SMAC工事管理 製品価格|株式会社パナック(2026-08-29確認)

レッツ原価管理Go2の「見積」 — 単独購入できる唯一の機能

株式会社レッツが1996年から開発している建設業向け原価管理ソフトです。本体はフル機能のスタンドアロン版が製品価格660,000円(税込)+年間保守33,000円(税込)ですが、必要な機能だけを選ぶ「チョイス・ザ機能」もあります。

チョイスでは原則として「原価管理」を必ず選ぶ決まりですが、「見積」だけは原価管理なしでも購入できると公式に明記されています。スタンドアロンなら110,000円(税込)です。

Excelクリエート機能を備えており、自社様式の請求書や独自の工事一覧帳票を設計できます。

出典: レッツ原価管理Go2 価格(2026-08-29確認)

原価まで繋ぐなら — 6製品の比較

見積を入口にして実行予算・発注・原価・請求まで一本にする製品です。ここに挙げたものは、すべて提供元の公式サイトで実在と提供元を確認しています。

製品提供元提供形態公開されている価格
建設大臣NX応研株式会社買い切りスタンドアロン1,056,000円(税込)/会計編792,000円(税込)
どっと原価NEO株式会社建設ドットウェブクラウド(IaaS Edition)/LAN版要問合せ(構成により変動)
ガリバーシリーズあさかわシステムズ株式会社要問合せ要問合せ
SMAC工事管理(フル構成)株式会社パナック買い切り(機能単位)見積管理110,000円ほか機能ごとに公開
工事原価Pro株式会社アイ・ジェイ・エスクラウド/パッケージクラウド 1CAL 年額171,600円(税抜)
ANDPAD引合粗利管理株式会社アンドパッドクラウド要問合せ

建設大臣NX — 建設業の会計処理と帳票に対応

応研株式会社の建設業向け会計システムです。工事原価管理・工事台帳・経営事項審査の帳票まで、建設業特有の処理をカバーします。会計を軸に据えたい会社の選択肢で、同社の大臣シリーズと組み合わせて使えます。

価格は公式に公開されています。建設大臣NXのスタンドアロンが1,056,000円、会計編のスタンドアロンが792,000円、ピア・ツー・ピアが1,452,000円、LANPACK 2クライアントが1,650,000円(いずれも税込・2023年10月1日以降の金額)。クライアント数に応じて15クライアントまでの価格が並んでいます。

保守サービス(DMSS)の価格も公開されており、スタンドアロンのCコースが1年66,000円・3年188,100円・5年297,000円、ピア・ツー・ピアのDコースが1年92,400円、LANPACKのEコースが1年132,000円(いずれも税込)。本体価格だけで判断せず、保守を含めた総額で比べてください。

出典: 建設大臣NX|応研(2026-08-29確認)

どっと原価NEO — 必要なモジュールだけを選ぶ

株式会社建設ドットウェブが開発する原価管理専門のソフトです。実行予算作成・発注管理・出来高管理・予実対比まで、原価管理のワークフロー全体をカバーしつつ、モジュール選択方式で不要な機能に費用をかけずに済みます。

クラウドはIaaS Editionとして提供され、選んだモジュールとライセンス数に応じて費用が積み上がる構造です。会計側は弥生会計・PCA会計・勘定奉行などとの連携に対応します。詳しくは原価管理ソフト比較で扱っています。

出典: どっと原価シリーズ|建設ドットウェブ(2026-08-29確認)

ガリバーシリーズ — JV会計まで含めた建設業ERP

あさかわシステムズ株式会社の建設・工事ソリューションです。原価管理・工事台帳・JV会計・予実管理・経審対応をカバーします。JV(共同企業体)案件を扱う会社では、JV管理を独立したモジュールとして持つ点が候補理由になります。

出典: ガリバーシリーズ(2026-08-29確認)

SMAC工事管理(フル構成) — 見積から請求まで一元化

前述のとおり機能単位で買える製品です。フル構成にすると、見積作成から実行予算、発注、原価管理、支払、請求処理までが一連で繋がります。業種・規模・業務形態に合わせてシステム構成を組める点を、公式は特徴として挙げています。

見積管理から始めて必要な機能を足していけるため、「最初から全部は要らないが、将来は繋ぎたい」という中小建設会社の実態に合います。

出典: SMAC工事管理|株式会社パナック(2026-08-29確認)

工事原価Pro — 見積を7階層まで積む

株式会社アイ・ジェイ・エス(京都市)が提供する、建築業・工事業に特化した原価管理ソフトです。パッケージ版と、サーバー不要のSaaS版「工事原価Pro for クラウド」があります。

特徴は階層の深さで、見積・実行予算とも7階層まで対応します。受注から発注、仕入、支払査定、支払通知、支払管理、入金管理までが連動し、積算データの取り込みや出来高請求にも対応します。

クラウド版は価格が公式に明示されており、1CAL(ユーザーライセンス1)で年額171,600円、2CALで343,200円、3CALで514,800円です。なお同じページで見出しは税込、価格表は税抜と表記が分かれているため、契約前にどちらかを確認してください。本記事は価格表の税抜表記に従っています。会計側はOBC勘定奉行クラウド、PCAクラウド建設業会計、弥生会計との連携が用意されています。

出典: 工事原価Pro|IJS(2026-08-29確認)

ANDPAD引合粗利管理 — 施工管理から繋げる

株式会社アンドパッドの建設業向けERP製品です。すでにANDPADで施工管理を回している会社なら、引合から粗利までを同じ基盤の上で扱えます。

なお「ANDPAD見積」という単独製品はありません。見積に関わる機能は引合粗利管理とANDPAD受発注に含まれます。他社の比較記事で単独製品として紹介されていることがあるため、問い合わせるときは製品名を確認してください。

出典: ANDPAD引合粗利管理(2026-08-29確認)

積算ソフトとは分けて考える

ここまで挙げたのは「見積書を作る」「原価に繋ぐ」ための製品です。図面から数量を拾い、公共単価データベースを引いて積み上げる作業は、積算ソフトの領域になります。

公共工事が主力で国土交通省の積算基準に準拠する必要がある会社、あるいは図面からの数量拾いに時間を取られている会社は、建設業向け積算ソフト比較のほうが目的に合います。楽王シリーズ(アークシステム株式会社)やATLUS NEXTなどはそちらで扱っています。

見積ソフトと積算ソフトの違いそのものは、次の節で整理します。

状況別の絞り込み

冒頭の分岐を、もう少し具体的な状況に落とします。

いまの状況現実的な選択理由
元請ごとに見積書の様式が決まっていて変えられない使えるくらうど建築見積Excelレイアウトを取り込んで同じ様式で出力できる
見積だけ直したいが、いずれ原価まで繋ぎたいSMAC工事管理の見積管理税込110,000円で始めて実行予算・発注を買い足せる
買い切りで、ランニングを持ちたくないSMAC工事管理/レッツ原価管理Go2どちらも買い切りで、価格が公開されている
クラウドで、サーバーを持ちたくない工事原価Pro for クラウド/どっと原価NEO IaaS Edition工事原価Proは1CAL年額171,600円(税抜)
見積・実行予算を細かい階層で積みたい工事原価Pro見積・実行予算とも7階層まで
JV案件があるガリバーシリーズJV管理を独立したモジュールとして持つ
会計を軸に建設業の帳票を揃えたい建設大臣NX建設業特有の会計処理と経審の帳票
すでにANDPADで施工管理をしているANDPAD引合粗利管理同じ基盤で引合から粗利まで扱える
図面から数量を拾う作業が重い/公共単価が要る積算ソフト比較見積ソフトの領域ではない

規模だけで決めない、というのがここでの要点です。従業員5名でも公共工事が主力なら積算側が要りますし、50名でも民間の改修が中心なら見積特化で足ります。 工事の種類と、いま何に時間を取られているかで決めてください。

製品名は、問い合わせる前に自分で確認できる

この記事の掲載製品を9件に絞ったのは、公式サイトで実在と提供元を確認できたものだけを載せたからです。この確認を省くと、存在しない製品が比較表に載ります。

当社もこの記事の旧版で、4件の製品名を誤って掲載していました。実在しない製品名を書いたもの、提供元の会社を取り違えたものが混ざっていました。比較記事は他の比較記事を参照して作られることがあるため、一度生まれた誤りは業界内で複製されます。

読者の側でも、問い合わせる前に短時間で確認できます。手順は3つです。

1. 製品名で検索して、公式サイトが出るか

製品名で検索したときに提供元の公式サイトが出てこず、比較記事やまとめサイトばかりが並ぶ製品は疑ってください。 本当に販売している製品なら、提供元は必ず自社サイトに製品ページを持っています。

2. その会社の製品一覧に載っているか

公式サイトのトップから「製品」「サービス」をたどり、製品一覧にその名前があるかを見ます。 会社のトップページしか出てこない場合、その製品名は正確でない可能性があります。

たとえば「ANDPAD見積」は、ANDPADの製品一覧に存在しません。見積に関わる機能は引合粗利管理と受発注に含まれています。単独製品として紹介している記事を見て問い合わせると、話が噛み合いません。

3. 社名が同じ別会社に当たっていないか

これが最も間違えやすいところです。今回、SMAC工事管理の提供元を調べていて実際に踏みかけました。

「パナック」で検索すると panac.co.jpパナック株式会社が出てきますが、こちらは別事業の会社です。SMAC工事管理を開発・販売しているのは e-panac.com株式会社パナックで、社名の読みは同じでも別法人です。会社概要ページで所在地と事業内容を確認すれば区別できます。

問い合わせ先を間違えると、時間を無駄にするだけでなく、先方にも迷惑がかかります。製品ページのURLを控えてから連絡するのが確実です。

見積の数字が、そのあとどこまで使われるか

「見積だけか、原価まで繋ぐか」を判断するには、見積で入力した数字がその先どう使われるかを知っておくと決めやすくなります。

見積の数字が工事の締めまで流れる経路見積で入れた数字は、どこまで使われるか見積明細・単価実行予算原価の目標発注・仕入予算に紐づけ支払・請求出来高査定工事の締め予実の差を見る見積特化はここまで見積〜原価一体の製品は、この5段階を1つのデータで通す見積だけをデジタル化しても、実行予算から右が別の場所にある限り「なぜ赤字になったか」は後から特定できない
見積の数字がどこで止まるかが、2つの層の違いです

見積で組んだ明細と単価は、受注すればそのまま実行予算になります。ここで「この工事はいくらの原価で仕上げる」という目標が決まります。

工事が始まると、協力会社への発注と資材の仕入が発生します。このとき発注の1件1件が実行予算のどの項目に当たるかを紐づけられていれば、進行中でも予算の消化状況が見えます。紐づけがなければ、分かるのは締めた後です。

支払と請求は出来高に応じて動きます。ここまでが繋がっていると、工事の締めで予算と実績を突き合わせ、どこで差が出たかを項目単位で確認できます。

見積特化の製品がカバーするのは、この流れの最初の1段だけです。それが悪いわけではありません。 見積を作ること自体に時間を取られている会社にとっては、そこを直すのが最も効きます。ただ、「工事が終わってみたら思ったより儲かっていない」の原因を知りたいのであれば、直すべき場所は見積ではありません。

移行でつまずくのは、ソフトの操作ではなくマスタ

見積ソフトの導入で時間を取られるのは、操作を覚えることではありません。単価マスタと明細マスタを作るところです。ここを軽く見た会社は、導入したのにExcelに戻ります。

単価マスタが揃っていないと、結局その場で調べる

Excel見積の実態は、多くの場合「去年の似た工事のファイルをコピーして、単価を手で直す」です。この運用では単価がファイルごとに散らばり、正しい単価がどこにあるか誰も断言できません。

ソフトに移すときは、この散らばった単価を1か所に集める作業が発生します。材料費・労務費・外注費のそれぞれについて、自社が実際に使っている単価を洗い出す必要があります。仕入先から取っている単価と、見積に載せている単価がずれている場合、そのずれが利益率の実態です。

現実的な進め方は、全部を一度に整えないことです。直近1年でよく使った明細から順に登録し、使いながら足していく。最初から完璧なマスタを作ろうとすると、そこで止まります。

明細の階層をどう切るかは、後から変えにくい

内訳明細をどの単位で区切るかは、そのまま実行予算の管理単位になります。細かく切りすぎると入力が重くなり、粗く切りすぎると原価の差が出た場所を特定できません。

階層の深さは製品によって上限が違います。使えるくらうど建築見積は最大5階層、工事原価Proは見積・実行予算とも7階層です。自社が普段どのくらいの深さで内訳を書いているかを、契約前に数えておいてください。 上限が足りないと、既存の見積書を再現できません。

元請の様式に合わせられるか

下請の立場では、見積書の様式を元請が指定していることがあります。ソフトの標準レイアウトでは通らない場合、Excelのレイアウトを取り込める製品でないと移行できません。

使えるくらうど建築見積はExcelレイアウトの取り込みに対応しており、これまで使っていたExcel見積書と同じレイアウトで出力できます。レッツ原価管理Go2もExcelクリエート機能で自社様式の帳票を設計できます。現在使っている見積書のファイルを持って、そのまま出せるかをデモで確認するのが確実です。

費用は「買い切りか、年額か」で3年後に逆転する

公開されている価格を並べると、見積ソフトの費用は提供形態で構造が変わります。ここでは各社が公式に出している金額だけを使い、3年使ったときの総額で比べます。

公式の表記は税込と税抜が混在しているため、比較できるように税込へ揃えました(税抜表記のものは10%を加算しています)。実際の請求額は各社にご確認ください。

製品・構成初期年間3年総額(税込換算)
SMAC工事管理「見積管理」110,000円保守 33,000円209,000円
レッツ原価管理Go2「見積」110,000円保守は要確認110,000円+保守
どっと原価3(ライト)利用者1ライセンス/IaaS Edition0円171,600円514,800円 ※
工事原価Pro クラウド 1CAL0円188,760円566,280円
レッツ原価管理Go2 フル機能スタンドアロン660,000円保守 33,000円759,000円
建設大臣NX スタンドアロン1,056,000円DMSS Cコース 66,000円1,244,100円

※どっと原価3の公式価格表は1年利用料と5年利用料を掲載しており、3年の設定は載っていません。上の3年総額は1年利用料を3回と置いた概算です。5年利用料は741,000円(税抜)で、単純な5倍(780,000円)より安く設定されています。複数年で契約する場合は実際の見積もりを取ってください。

見積だけなら、SMAC工事管理の見積管理が3年で209,000円です(本体110,000円に、システム構成400,000円未満の保守サポート月2,750円が乗ります)。レッツ原価管理Go2の見積も本体は同額の110,000円ですが、チョイス機能単体の保守料金は公式に明示がないため要確認としました。

原価まで繋ぐ構成になると、年額型のどっと原価3(3年514,800円)と工事原価Pro(3年566,280円)、買い切りのレッツ フル機能(3年759,000円)が近い帯に入ります。建設大臣NXは会計を軸にした製品で、本体はスタンドアロンが1,056,000円、会計編なら792,000円。保守サービス(DMSS)はスタンドアロンのCコースが3年188,100円なので、3年総額は1,244,100円になります(いずれも税込)。ピア・ツー・ピアやLANPACKなど、クライアント数に応じた構成と対応する保守コースも公開されています。

買い切りは初期が重く、年額はあとから効いてきます。工事原価Proは5年で943,800円になり、レッツ フル機能(5年825,000円)を追い越します。逆にクラウドはサーバーを持たずに済み、バージョンアップ費用が別途かからないため、社内にIT担当がいない会社では総所有コストの見え方が変わります。

どちらが得かは使う年数で決まるので、何年使う前提かを先に決めてから見積もりを取ってください。 3年で乗り換える前提なのに買い切りを選ぶと割高になり、10年使う前提でクラウドを選ぶと支払総額は膨らみます。

なお、これらは公表されている最小構成の金額です。実際にはライセンス数、モジュールの追加、導入サポート、データ移行の費用が乗ります。SMAC工事管理なら追加クライアントが1〜9CALで88,000円(税込)、インストールが訪問11,000円・オンライン5,500円、導入指導(2〜3時間)が訪問33,000円・オンライン16,500円(いずれも税込)と公式に明示されています。

削減できる工数の見積もりは、自社の実測から始めてください。見積1件にかかっている時間を1か月分だけ記録すると、単価調査・数量計算・整形・修正のどこに時間が偏っているかが分かります。偏りが「整形と修正」にあるならソフトで大きく減りますが、「単価調査」にあるならマスタを整えないと減りません。

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象ツールとして登録されていれば初期費用の補助を受けられますが、登録の有無は製品と年度によって変わります。導入を決める前に各社と補助金事務局の両方で確認してください。詳しくはIT導入補助金活用ガイドをご覧ください。

出典: 建設大臣NX 価格|応研SMAC工事管理 製品価格レッツ原価管理Go2 価格工事原価Proどっと原価シリーズ 価格(いずれも2026-08-29確認)

Excel見積から見積ソフトへの移行手順

1

現状の見積業務の棚卸し

1ヶ月間、見積業務にかかった時間を記録します。単価調査・数量計算・書類整形・修正対応それぞれの所要時間を分けて計測することで、どの作業が最もボトルネックになっているかが明確になります。その結果から、AI数量拾いが効くのか、テンプレート整備が効くのかを判断できます。

2

自社の受注構成の確認

過去1年の受注案件を公共工事と民間工事に分類し、主な工種(土木・建築・設備等)を整理します。受注構成が決まれば、積算特化型が必要か、見積・原価管理一体型で十分かという判断ができます。

3

候補ソフトのトライアル申し込み

評価軸(公共単価対応・AI機能・原価管理連携)に基づいて2〜3製品に絞り、無料トライアルに申し込みます。トライアル中は実際の受注案件(直近の見積案件)を使ってシステムに入力し、完成した見積書の品質を評価してください。

4

単価マスタ・テンプレートの整備

導入するソフトが決まったら、自社でよく使う材料・工種の単価マスタを入力します。過去3〜5件の受注実績から代表的な見積テンプレートも作成しておくと、ソフト導入後すぐに業務効率化の恩恵を受けられます。この準備に1〜2週間かけることが定着率に直結します。

5

並行運用期間の設定と習熟

新しいソフトで見積を作成しながら、既存のExcelでの確認も1〜2ヶ月並行して行います。完全移行のタイミングは「ソフトで作った見積書をそのまま顧客に提出できる品質になった時点」を目安にしてください。

6

補助金申請の確認

デジタル化・AI導入補助金の対象ツールか確認し、申請スケジュールを確認します。補助金の申請は事前の事業者登録から始まるため、ソフトの導入決定と並行して手続きを開始することが重要です。

電子帳簿保存法対応のチェックポイント

見積ソフトを選ぶ際に、電子帳簿保存法への対応も確認してください。特に以下の点を各ソフトに確認することをお勧めします。

確認項目重要度チェック方法
電子取引データのタイムスタンプ付与ベンダーへの確認
訂正・削除の履歴記録機能仕様書の確認
日付・金額・取引先での検索機能トライアルで操作確認
バックアップ・データ保全体制サービスレベルアグリーメント確認
会計ソフト・原価管理ソフトとのデータ連携連携可能なソフトのリスト確認

グリーンサイト・Buildeeとの連携や、弥生会計・マネーフォワード(マネーフォワードクラウド会計)との連携可否も、自社の既存システムに応じて確認してください。

出典: 電子帳簿保存法一問一答(電子取引関係) — 国税庁 出典: 建設業の働き方改革の推進 — 国土交通省(2026-04-27確認)

原価管理ソフトとの組み合わせ

見積ソフトと原価管理ソフトの連携は、工事ごとの採算管理を自動化するために重要です。見積段階で設定した実行予算と、工事中に発生した実際のコストを自動比較することで、「どの工事が黒字でどの工事が赤字か」をリアルタイムで把握できます。

この連携が機能すると、赤字工事の早期発見・対処、次回見積への利益率反映、工種別・顧客別の採算分析が可能になります。「見積ソフト」と「原価管理ソフト」を別々に検討するのではなく、連携できるシステムの組み合わせを選ぶことが投資対効果の最大化につながります。

あわせて読みたい

見積ソフト導入の実装事例と関連ツール比較は次の記事も参考になります。

自社で選び切れるか、見てもらうか

ここまで読んで候補が2〜3件に絞れていれば、あとは各社のデモを見て決められます。実際に使っている見積書を持ち込んで、そのまま出せるかを確認するのが最短です。

迷いが残るとしたら、たいてい次のどちらかです。ひとつは「見積だけでいいのか、原価まで繋ぐべきか」がまだ決まらないケース。もうひとつは、元請ごとに様式や提出方法が違って、どの製品なら全部に対応できるか判断がつかないケースです。

自社で進める相談する
向いている状況候補が絞れていて、デモで比べる段階見積だけか原価までかが決まらない/元請ごとの要件が複雑
かかること各社への問い合わせとデモの日程調整現状の棚卸しに時間を取る
気をつける点営業提案は自社製品が前提になる建設業の実務を分かっている相手か

各社のデモでは、営業提案が自社製品を前提にしたものになりやすい面はあります。複数社を並べて比べる作業は、結局こちら側に残ります。

現状の工事件数と工種、いま何に時間を取られているか、元請から指定されている様式の有無をうかがえれば、候補の絞り込みと、そもそも見積ソフトで解決する話なのかの整理までお手伝いできます。無料相談からお声がけください。

参考情報

よくある質問

見積ソフトと積算ソフトの違いは何ですか?
積算は工事に必要な材料・労務を拾い出して原価を算出する作業、見積は積算結果に利益を加えて顧客に提示する金額を決める作業です。多くの見積ソフトは積算機能も搭載していますが、公共工事の積算に特化したソフト(ガリバー・建設大臣NX等)と民間工事の見積に強いソフトでは得意分野が異なります。
建設業の見積ソフトの費用はいくらですか?
公開されている金額で見ると、買い切り型はSMAC工事管理の見積管理が110,000円(税込)、レッツ原価管理Go2の見積が110,000円(税込・スタンドアロン)、同フル機能版が660,000円(税込)+年間保守33,000円です。クラウド型は工事原価Proが1CAL年額171,600円(税抜)。建設大臣NX・ガリバーシリーズ・ANDPAD引合粗利管理・使えるくらうど建築見積は要問合せです。構成と利用人数で総額が変わるため、自社の条件で見積もりを取ってください。
図面から数量を自動で拾えるソフトはありますか?
数量拾いは見積ソフトではなく積算ソフトの領域です。CAD図面やBIMモデルからの拾い出しに対応した製品は積算ソフトの比較記事で扱っています。自動化の精度は図面の描き方や工種によって差が出るため、導入前に自社の実図面で試してください。
公共工事の積算に使えるソフトはどれですか?
公共単価データベースや国土交通省の積算基準への準拠が要る場合は、この記事で扱う見積ソフトではなく積算ソフトが該当します。積算ソフトの比較記事をご覧ください。見積ソフト側で公共工事に対応できるかは、単価データの更新方法を各社に確認してください。
見積ソフトはデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象ですか?
本記事で紹介しているソフトの多くが補助金対象に登録されているケースがあります。最新の登録状況は公式サイト(it-shien.smrj.go.jp)で確認してください。補助率や申請スケジュールは年度により変更されます。
Excelから見積ソフトに移行する際に最初にすべきことは何ですか?
自社でよく使う材料・工種の単価マスタとテンプレートを整備することです。この準備があるかどうかで、ソフト導入後の使いやすさが大きく変わります。あわせて、過去の受注案件から代表的な見積書を3〜5件選んでデジタル化し、テンプレートとして登録しておくと導入後すぐに効率化を実感できます。
「ANDPAD見積」という製品はありますか?
単独の製品としては存在しません。ANDPADの製品一覧に「見積」という製品はなく、見積に関わる機能はANDPAD引合粗利管理とANDPAD受発注に含まれます。他社の比較記事で単独製品のように紹介されていることがあるため、問い合わせるときは製品名を確認してください。
原価管理ソフトと見積ソフトはどう連携させますか?
どっと原価NEOやSMAC工事管理のように、見積・原価管理が一体型のソフトを選ぶのが最もシンプルです。別々のソフトを使う場合は、見積データをCSVでエクスポートして原価管理ソフトに取り込む方法か、API連携に対応したシステム同士を選ぶ方法があります。

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