この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

建設業の見積作成、まだExcelですか?

中小建設会社の見積書作成は、いまだにExcelが主流です。国土交通省が公表した「建設業の働き方改革に関する実態調査」でも、見積・積算業務にITツールを活用している中小建設会社の割合は限定的で、手作業による属人化が課題として挙げられています。

Excelでの見積作成は「慣れている」という安心感がある一方で、事業規模が大きくなるにつれて限界が見えてきます。

Excelの課題影響見積ソフトで解決
過去の見積書を探すのに時間がかかる類似工事の実績を活かせない検索・流用機能
単価の更新漏れが起きる赤字受注のリスク単価マスタ自動更新
複数人で同時編集できないボトルネック発生クラウド同時編集
積算ミスが発生しやすい見積精度の低下自動計算・チェック
フォーマットが人によってバラバラ見栄えの不統一テンプレート管理
原価管理と連動していない工事ごとの利益が見えない原価管理連携

見積ソフトを導入すれば、これらの課題を解決しながら見積作成時間を大幅に短縮できます。

見積ソフト導入の効果(実績ベース)
  • 見積作成時間: 1件2時間 → 30分(75%削減)
  • 積算ミス: 月5件 → 月0件
  • 過去見積の検索: 15分 → 10秒
  • デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)で導入費用を補助

積算と見積の違い — まず用語を整理する

見積ソフトの比較に入る前に、建設業では混同されやすい「積算」と「見積」の違いを整理しておきましょう。

積算とは、工事に必要な材料費・労務費・経費を一つひとつ積み上げて原価を算出する作業です。公共工事では国土交通省が定める「公共建築工事積算基準」に基づいて行われ、歩掛り(作業あたりの労務量)や公共単価を用いて計算します。

見積とは、積算で算出した原価に諸経費と利益を乗せ、発注者に提示する金額を決める作業です。民間工事では自社の利益率方針に応じて見積金額を決定し、公共工事では積算結果をもとに入札金額を算出します。

多くの見積ソフトは積算機能も搭載しています。ただし公共工事の積算に特化したソフト(ATLUSなど)と、民間工事の見積に強いソフト(SMAC工事見積など)では得意分野が異なるため、自社の受注構成に合ったツールを選ぶことが重要です。

見積ソフトの選び方

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建設業の見積ソフトに必要な機能

機能重要度説明
建設業の積算体系対応必須材工共・材工別の積算。歩掛り対応
単価マスタ必須公共単価・自社単価の管理。年度更新
過去見積の流用必須類似工事の見積をコピーして修正
内訳書の自動生成工種別・科目別の内訳書を自動作成
原価管理連携見積と実行予算の比較(利益率管理)
PDF・Excel出力必須元請けへの提出用
クラウド対応出先からでもアクセス可能
電子帳簿保存法対応2024年1月義務化への対応

企業規模で選ぶ

自社の規模と受注する工事の特性によって、最適な見積ソフトは変わります。

規模推奨理由月額費用の目安
1人親方〜5名シンプルな見積アプリ工事件数が少なければ必要最低限でOK無料〜3,000円
5〜30名クラウド見積ソフト複数人での利用、過去見積の蓄積が重要3,000〜10,000円
30名以上積算特化ソフト or ERP連携公共工事の積算、原価管理との連携が必要10,000円〜

1人親方や5名以下の事業所であれば、まずは低価格のクラウド型見積ソフトでExcelからの脱却を図るのが現実的です。月額3,000円以下で始められるソフトも複数あるため、コスト面での心理的ハードルは低いでしょう。

5名を超えて複数人で見積業務を回すようになると、過去見積の検索・流用機能や単価マスタの一元管理が業務効率に直結します。クラウド型であれば外出先からもアクセスでき、事務所に戻らなくても見積の確認・修正ができます。

30名以上の規模になると、公共工事の積算精度や原価管理との連携が重要になります。積算特化ソフトの導入、あるいは会計ソフト・原価管理ソフトとの一体運用を検討する段階です。

受注構成で選ぶ

公共工事と民間工事の割合も、ソフト選びの重要な判断軸です。

受注構成推奨ソフトの方向性理由
公共工事が5割以上ATLUS等の積算特化型公共単価DB・積算基準への準拠が必須
民間工事が中心クラウド見積ソフト全般自社単価でのスピーディーな見積が重要
公共・民間の混合積算特化+クラウド見積の併用用途に応じた使い分けが効率的

建設業向け見積ソフト6選

サービス名料金主な機能補助金対応
ANDPAD見積 ANDPAD契約に含む
  • 見積作成
  • テンプレート
  • PDF出力
  • 施工管理連携
対応
みつもりプロ 月額3,000円〜
  • 建設業特化積算
  • 公共単価対応
  • 内訳書自動生成
対応
SMAC工事見積 月額1,980円〜
  • クラウド見積
  • スマホ対応
  • テンプレート
  • PDF出力
対応
建築見積Pro 買切り50,000円〜
  • 建築積算特化
  • 歩掛り対応
  • 内訳明細
対応
ATLUS 要問合せ
  • 公共工事積算
  • 公共単価DB
  • 設計書連携
  • CORINS対応
対応
ツクリンク見積 要問合せ
  • 見積作成
  • マッチング連携
  • 下請け管理
対応

※最新の料金・登録状況は各公式サイトでご確認ください

各ソフトの詳細

ANDPAD見積

ANDPADを既に導入している建設会社であれば、見積機能がセットで利用できます。施工管理と見積が一体化しているため、見積→受注→施工→完了報告までの流れがシームレスにつながるのが最大の強みです。

見積テンプレートを登録しておけば、類似工事の見積を素早く作成できます。また、見積データが施工管理の実行予算とリンクするため、工事の進捗に応じた原価管理も可能です。

向いている企業 — ANDPAD導入済みの会社、あるいは施工管理と見積を一元管理したい中規模以上の建設会社。見積業務だけでなく、受注後の施工管理までワンストップで効率化したい場合に適しています。

みつもりプロ

建設業に特化した積算ソフトで、公共単価データベースを搭載しています。積算基準に沿った計算が自動で行われるため、積算の正確性が求められる工事に強みを発揮します。内訳書の自動生成にも対応しており、見積書提出までの一連の業務を効率化できます。

月額3,000円からという価格設定は、積算機能付きのソフトとしてはリーズナブルです。公共単価の年度更新にも対応しており、毎年の単価改定作業の手間が省けます。

向いている企業 — 公共工事も受注する中小建設会社。積算の正確性が求められる案件が多く、内訳書の自動生成で書類作成の時間を削減したい場合に適しています。

SMAC工事見積

月額1,980円からと、今回紹介する中で最も低価格なクラウド見積ソフトです。スマホからも見積作成が可能で、外出先や現場でも見積書の確認・修正に対応できます。

操作画面がシンプルで、ITに慣れていないスタッフでも比較的スムーズに使い始められる設計になっています。テンプレート機能やPDF出力にも対応しており、「まずExcelから卒業したい」という会社の第一歩として選びやすいソフトです。

向いている企業 — コストを抑えたい小規模建設会社。月額1,980円で年間23,760円、Excel管理のリスクと天秤にかければ十分にペイする投資です。

建築見積Pro

買切り型の積算ソフトで、初期費用50,000円〜でランニングコストを抑えられるのが特徴です。建築工事に特化しており、歩掛りに基づく積算や内訳明細の作成に対応しています。

クラウド型ではないため、複数端末での利用や外出先からのアクセスには対応していません。事務所のPCで集中的に積算作業を行う運用スタイルに向いています。

向いている企業 — 月額課金を避けたい会社。事務所内での積算作業が中心で、クラウドアクセスが不要な場合に検討する価値があります。

ATLUS(アトラス)

公共工事の積算に特化したソフトで、国交省の積算基準に完全対応しています。公共単価DBを標準搭載しており、土木・建築・電気・機械設備の各分野に対応した積算が可能です。CORINS(工事実績情報システム)との連携にも対応しています。

公共工事を主力とする建設会社では、ATLUSのような積算特化ソフトが事実上の標準となっているケースも多く、設計事務所や発注者との積算データのやり取りがスムーズに行えるメリットがあります。

向いている企業 — 公共工事が売上の大部分を占める建設会社。入札案件の積算精度を高め、適正価格での受注を実現したい場合の第一候補です。

ツクリンク見積

建設業のマッチングプラットフォーム「ツクリンク」と連携した見積サービスです。見積書の作成に加え、協力会社の検索・マッチング機能が利用できるため、下請け業者の選定から見積依頼、発注までを一つのプラットフォーム上で完結できます。

向いている企業 — 協力会社のネットワークを拡大したい元請け会社。新規の下請け業者を探しながら見積を取りたい場合に便利です。

無料トライアルで確認すべきチェックリスト

見積ソフトのトライアル期間中に確認しておきたい項目を整理します。多くのソフトが14〜30日間のトライアルを提供しているため、この期間を有効に使って「自社の現場に合うか」を判断してください。

チェック項目確認方法
自社の見積フォーマットを再現できるかサンプル見積を1件作ってみる
単価マスタに自社の品目を登録できるかよく使う30品目を実際に入力する
過去のExcel見積を流用できるか既存データを取り込みまたは手入力で再現
PDF出力の見栄えは元請けに通じるか実際に出力して確認
スマホからも操作できるか現場担当者のスマホで確認
公共単価の更新はいつ・どうやるかサポートに確認
サポート対応は電話かメールかトライアル中に問い合わせて確認

特に「サポートへの問い合わせ」は必ずトライアル中に行ってください。電話サポートの待ち時間や担当者の回答の的確さが、導入後の安心感に直結します。

建設業の見積作業にかかる工数の実態

国土交通省「建設業の働き方改革に関する実態調査」(2023年度)では、中小建設会社の事務作業負担の大きさが指摘されており、見積・積算業務はその中でも特に時間を要する領域として挙げられています。

ある中小建設会社(従業員15名・年間受注額2億円程度)の実例では、見積担当者1名が月の業務時間の約30%を見積作成・修正に費やしていることが明らかになりました。見積ソフト導入後は同じ担当者の見積関連業務が10%程度に削減され、浮いた時間を顧客への提案活動や現場管理の改善に充てられるようになったと報告されています。

こうした時間削減効果は「残業削減」だけでなく、見積の提出スピードが上がることで競合他社に先んじて顧客の意思決定に関与できるという、受注競争力の向上にもつながります。

見積書の作成から受注・工事着工までの一気通貫DX

見積ソフトは「見積書を作るツール」として導入されることが多いですが、受注後の業務との連携まで見据えると、投資対効果がより大きくなります。

見積から受注管理への流れを例に取ると、見積ソフトで作成した見積データを受注確定時に「受注」ステータスに変更し、そのまま実行予算書・発注書・請求書に流用できる仕組みを整えると、受注後の書類作成工数が大幅に削減されます。見積→実行予算→原価管理→請求という一連のフローがデータで繋がることで、「見積段階の想定利益率と完工後の実績利益率がずれていた」という問題も早期に発見しやすくなります。

ANDPADを施工管理に使っている会社では、ANDPAD見積と施工管理の連携によって見積→受注→施工の流れが一つのプラットフォーム上で完結します。この一気通貫のデータ連携が、二重入力の排除と情報の鮮度維持に最も効果的なアプローチです。

各社の強みを工種別に整理

建設業といっても、土木・建築・設備・電気・リフォームと工種は多様で、見積ソフトの強みも工種によって異なります。

工種おすすめソフト理由
公共土木工事ATLUS国交省積算基準への準拠、公共単価DB搭載
建築工事(民間)ANDPAD見積 / みつもりプロテンプレートの柔軟性、元請けとの連携
設備工事(電気・管)みつもりプロ / 建築見積Pro工種別の積算体系に対応
リフォーム工事SMAC工事見積小規模・スピード重視の見積に対応
解体工事クラウド見積ソフト全般仕様書が比較的シンプル。流用機能を活用

自社の主な受注工種が決まれば、自然とソフトの候補が絞られてきます。同じ「建設業向け見積ソフト」でも、設備工事の電気工事部材のような細かい単価体系に対応しているかどうかは製品差が大きいため、トライアルで実際の工事内訳を作成して確認してください。

Excel見積から見積ソフトに移行する手順

「Excel見積でずっとやってきた」という会社にとって、ソフトへの移行は心理的にもハードルがあります。スムーズに移行するための手順を紹介します。

移行前の準備

まず、過去1〜2年分の見積書から、よく使う項目・単価・テンプレートを洗い出します。見積ソフトには単価マスタやテンプレートを登録する機能があるため、最初にこれを整備しておくと、ソフト導入直後から効率的に使い始められます。

並行運用期間を設ける

いきなりExcelを廃止するのではなく、1〜2ヶ月の並行運用期間を設けましょう。新しい見積はソフトで作成しつつ、既存案件の修正はExcelで対応する。この「両方使う期間」を経ることで、操作に慣れながらスムーズに移行できます。

単価マスタの整備が鍵

見積ソフトの効果を最大化するには、単価マスタの整備が最も重要です。自社がよく使う資材・労務の単価を正確に登録し、公共単価の年度更新を忘れずに反映する運用を確立してください。単価マスタが正確であれば、積算ミスは自動的にゼロに近づきます。

従業員規模別おすすめ見積ソフト

自社の従業員規模と受注形態に合わせたソフト選択の判断基準をまとめます。

1人親方〜5名(月間見積件数5件以下)

この規模では、見積書の体裁が整っており、PDFで送付できること、そして月額コストが安いことが最優先です。SMAC工事見積(月額1,980円)は、インターネット環境さえあれば即日使い始められ、スマホから見積の確認や修正もできます。

Excel管理で問題が起きていない場合は「このまま続ける」選択肢もあります。ただし、見積書の取り違え・バージョン管理ミス・単価の誤入力が1件でも発生したことがある場合は、ソフトへの移行を検討する時機です。

6〜20名(月間見積件数10〜30件)

この規模になると、担当者が複数になるか、1人の担当者が見積業務に追われる状況になります。単価マスタの一元管理と過去見積の流用機能が業務効率を大きく左右します。みつもりプロ(月額3,000円〜)はコストパフォーマンスが良く、公共工事も受注するなら積算基準への対応も確認できます。

施工管理にANDPADを使っている場合は、ANDPAD見積との連携で見積から施工管理までのデータ一元化が実現します。

21〜50名(月間見積件数50件以上)

見積作成が複数人体制になり、「誰が作った見積か」「最新版はどれか」の管理が複雑になる規模です。クラウド型で複数人が同時にアクセスでき、バージョン管理が自動化されているソフトが必須です。

公共工事比率が高い場合はATLUSなど積算特化型を検討します。民間工事中心であれば、ANDPADとの連携を含めてみつもりプロかANDPAD見積が有力です。

50名以上

この規模では見積・積算・原価管理・会計の一体運用が求められます。会計ソフト(建設大臣NXや勘定奉行)との連携が取れているソフト選定が重要になります。個別に要件を整理し、複数のソフトベンダーからデモを受けて比較するプロセスを経ることをおすすめします。

見積ソフトが解決する業務課題 — 具体的なシナリオ

シナリオ1 — 「同じ工事なのに毎回1から作っている」

解決策: 過去見積の流用機能。同種工事の見積をコピーして金額部分を修正するだけで新規見積が完成します。テンプレートを「工種別」に整備しておくことで、さらに高速化できます。

シナリオ2 — 「資材が値上がりして単価の更新が追いついていない」

解決策: 単価マスタの一括更新機能。材料費が変動した際に単価マスタを更新すると、その単価を使っている全見積テンプレートに自動反映されます。個別の見積書を1件ずつ修正する必要がなくなります。

シナリオ3 — 「積算ミスで赤字になったことがある」

解決策: 積算の自動計算とチェック機能。手入力のExcel積算では、単価の入力ミスや数量の計算漏れが発生しやすいです。見積ソフトでは数量×単価の計算が自動化されており、入力値が合理的な範囲を外れた場合に警告が出る設計のものもあります。

シナリオ4 — 「見積書の送付が遅くて失注することがある」

解決策: テンプレートとクラウドPDF出力の組み合わせ。ソフトに見積テンプレートを準備しておけば、打ち合わせから帰社後1〜2時間で見積書のPDFを送付できます。見積提出スピードが競合他社との差別化要因になるケースは、特に緊急性の高い工事案件で多く見られます。

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)での導入

見積ソフトも補助金の対象

見積ソフトはデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)で申請可能です(※最新の登録状況は公式サイトでご確認ください)。補助率は年度により変更の可能性があります。

詳しくは「建設業のIT導入補助金活用ガイド」をご覧ください。2026年度の公募スケジュールは公式サイトでご確認ください。

補助金を活用する場合、申請から交付決定までに1ヶ月程度、gBizIDプライムの取得に2〜3週間かかるため、導入予定の3ヶ月前には準備を始めるのが安全です。見積ソフト単体での申請も可能ですが、施工管理アプリや会計ソフトとセットで申請するとまとまった補助額を受けられる場合があります。

補助金申請時のポイントとして、「どの業務課題をどのくらい改善するか」の根拠を事前に整理しておくことが採択率の向上につながります。たとえば「見積作成時間を月20時間削減することで、同じ人員で受注件数を20%増加させる」という具体的な数値目標を設定しておくと、申請書の記述に説得力が生まれます。

IT導入支援事業者(ベンダーや認定支援機関)と連携して申請する場合、申請書の作成支援を受けられるケースが多いです。初めての補助金申請であれば、慣れた支援事業者と組んで進めるのが効率的です。

見積書作成の品質管理 — 提出前のチェック習慣

見積ソフトを導入しても、提出前のチェックプロセスを設けないと見落としが発生します。以下の確認を習慣化してください。

数量チェックは必ず行います。積算ソフトが自動計算しても、設計書から拾い出した数量そのものが正しいかどうかは人間が確認するしかありません。面積や体積の計算は単純ミスが起きやすいため、担当者以外の第三者が確認するダブルチェック体制を設けると精度が上がります。

単価の有効期限も確認します。公共単価は年度ごとに更新され、民間工事では材料費の変動が大きい時期はとくに注意が必要です。「この単価はいつ時点か」を確認する習慣が積算精度を維持します。

諸経費の計上漏れも注意が必要です。現場管理費・一般管理費・廃材処理費・安全費など、直接工事費以外の費用を見積に含め忘れると赤字の原因になります。ソフトの見積テンプレートに諸経費項目を標準で含める設定にしておくことで防止できます。

見積ソフトと他ツールの連携

見積ソフトを単独で使うのも効果はありますが、他の業務ツールと連携させることでさらに大きな効率化が実現します。

連携先効果連携例
施工管理アプリ見積→受注→施工の一気通貫ANDPAD見積 → ANDPAD施工管理
会計ソフト見積→原価→会計の自動連携見積データ → 建設大臣NX
原価管理ソフト見積と実績の比較で利益率管理どっと原価NEOとの連携
電子契約サービス見積→契約までペーパーレス化PDF見積 → クラウドサイン

特に見積と原価管理の連携は、建設業の利益管理において極めて重要です。見積段階の想定原価と、実際の施工にかかった原価を比較分析できれば、赤字工事の早期発見や次回の見積精度向上につながります。詳しくは「建設業向け会計ソフト比較」もご覧ください。

電子契約サービスとの連携も注目です。見積書をPDFで送付し、承認を得た後に電子契約(クラウドサイン等)で工事契約を締結する流れが、特に遠方の顧客や複数現場を抱えるケースで普及しています。紙の契約書の印刷・押印・郵送にかかるコストと時間を削減できるため、見積ソフトとセットで検討する価値があります。

実際の導入コスト試算(従業員20名の建設会社の場合)

具体的なコスト感を掴むために、従業員20名・年間見積件数120件(月平均10件)のモデル会社で試算します。

現状(Excel管理)のコスト

見積1件あたりの作業時間を2時間とすると、月20時間(120件×2時間÷12ヶ月)が見積作業に費やされます。担当者の時給換算を2,500円(月給35万円相当)とすると、見積作業のコストは月5万円です。加えて、積算ミスによる赤字工事が年1〜2件発生した場合の損失(50〜100万円)も潜在コストとして存在します。

クラウド見積ソフト導入後のコスト

みつもりプロ(月額5,000円程度)を導入し、見積作業時間が75%削減(2時間→30分)されると仮定します。月の見積作業時間は5時間に短縮され、担当者の解放時間は15時間。月5万円のコストが月1.25万円に下がり、差額3.75万円(年間45万円)が削減されます。ソフト代月額5,000円を差し引いても、年間39万円の実質削減効果が見込めます。

比較項目Excel管理見積ソフト導入後
月の見積作業時間20時間5時間
月の人件費コスト(見積作業分)50,000円12,500円
ソフト月額費用0円5,000円
実質月次コスト50,000円17,500円
年間削減効果約390,000円

初年度はソフト設定・移行工数(約10時間)がかかりますが、2年目以降は年間30〜40万円の純粋なコスト削減が継続します。

見積ソフト導入後のデータ活用

見積ソフトの価値は「作成が早くなる」だけではありません。蓄積されたデータを経営判断に活かすことで、さらなる効果が生まれます。

工種別・得意先別の利益率分析

ソフトに蓄積された見積データを集計すると、「塗装工事は利益率15%が取れているが、解体工事は8%しかない」「A社向けは競合が多く値引きが多発している」といった傾向が見えてきます。この分析によって、受注すべき案件の優先順位付けと値付け戦略の改善が可能になります。

競合他社との見積差分の把握

失注した案件の見積金額と、後から入手できた落札金額を比較するデータを蓄積すると、「自社は相場よりX%高い」「○○工種は競合に負けやすい」という傾向が把握できます。見積精度の継続的な改善につながります。

材料費高騰への対応

2022年以降、鋼材・コンクリート・木材の価格が大幅に変動しています。単価マスタを最新状態に保ち、材料費の変動を見積にタイムリーに反映させることが赤字防止の基本です。クラウド型の見積ソフトでは単価マスタの一括更新機能があるため、材料費改定時の更新漏れリスクを最小化できます。

見積ソフト導入の失敗パターンと対策

失敗パターン1 — 単価マスタの整備をせずに使い始める

見積ソフトを導入しても、単価マスタが整備されていなければ積算精度は上がりません。導入前に「自社がよく使う30〜50品目の単価」を確定させ、ソフトに入力することを最初の作業として位置づけてください。公共単価(積算資料ポケット版等)と自社の仕入れ実績を照合して単価を設定するのが基本です。

失敗パターン2 — 複数フォーマットを乱立させてしまう

移行期に「案件によってExcelを使う人とソフトを使う人が混在する」状態が続くと、単価が二重管理になり、どちらが最新か分からなくなります。移行期間を明確に設定し、「○月○日以降は全件ソフトで作成」というルールを徹底してください。

失敗パターン3 — 過去見積の流用に頼りすぎて精度が下がる

流用機能は便利ですが、材料費や労務単価が変動している場合は流用元の単価が陳腐化しています。流用後は必ず単価を最新値に更新するルールを設けてください。単価マスタが常に最新であれば、流用しても自動的に最新単価が反映されます。

よくある質問(FAQ)

よくある質問

見積ソフトで電子帳簿保存法に対応できますか?
2024年1月から義務化された電子帳簿保存法では、電子取引のデータ保存が義務付けられています。クラウド型の見積ソフトでPDF出力・保存が可能なものは、発行した見積書の保存要件を満たすケースが多いですが、受取書類(発注書等)の保存については別途対応が必要な場合があります。導入前に販売元に確認することをおすすめします。
下請けへの見積依頼にも見積ソフトは使えますか?
見積の作成・送付機能を備えたソフトは、協力会社への見積依頼書の送付にも活用できます。ただし、協力会社側も同じソフトを使っている必要があるケースと、PDFで送付するだけで完結するケースがあります。協力会社との見積授受をデジタル化したい場合は、ソフトの外部共有機能を事前に確認してください。
公共工事の設計金額積算にも使えますか?
ATLUS等の公共工事積算特化型は、国交省の積算基準に準拠した設計金額の積算が可能です。民間工事向けのクラウド見積ソフトでは公共工事の積算精度を満たせないケースが多いため、受注構成に合わせてソフトを選ぶことが重要です。公共工事5割以上の場合は積算特化型を選択することをおすすめします。

まとめ

見積作成のデジタル化は「すぐに効果が見える」DXの入口です。1件あたりの見積作成時間を2時間から30分に短縮できれば、月10件の見積で15時間の削減になり、その時間を営業や現場管理に充てられます。

ツール選びで迷ったら、まずは自社の規模と受注構成で絞り込むのが効率的です。1人親方〜5名ならSMAC工事見積のような低価格クラウド型、5〜30名ならみつもりプロやANDPAD見積、公共工事が中心ならATLUSが候補になります。いずれも無料トライアルやデモが用意されているため、まずは触ってみるところから始めてみてください。

見積業務のデジタル化を皮切りに、施工管理・原価管理・会計まで段階的に連携範囲を広げていくことが、中小建設会社のDX推進における現実的なロードマップです。一気に全部入れようとせず、まず「見積作成の時間が半分になった」という小さな成功体験を積み重ねることが、社内のデジタル化への抵抗感を取り除く最善の方法です。


参考情報

よくある質問

建設業の見積ソフトの費用はどのくらいですか?
クラウド型で月額1,980〜10,000円程度、買切り型(インストール型)で初期費用5〜30万円程度が相場です。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を使えば導入費用の一部が補助されます。
Excelから見積ソフトに移行するメリットは?
見積作成時間の75%削減、入力ミス・計算ミスの防止、過去の見積データの再利用、単価マスタの自動更新などのメリットがあります。特に積算作業の効率化と正確性向上の効果が大きいです。
見積ソフトはデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象ですか?
はい。見積・積算ソフトは補助金の対象です(※最新の登録状況は公式サイトでご確認ください)。補助率は年度により変更の可能性があります。施工管理アプリや会計ソフトとセットで申請することも可能です。
小規模(5名以下)の建設会社にはどの見積ソフトがおすすめですか?
低コストで始められるクラウド型がおすすめです。SMAC工事見積は月額1,980円から利用でき、スマホ対応もしているためExcelからの移行もスムーズです。
積算と見積の違いは何ですか?
積算は工事に必要な材料費・労務費・経費を積み上げて原価を算出する作業。見積はその積算結果に利益を乗せて発注者に提示する金額を決める作業です。見積ソフトの多くは積算機能も含んでいます。
見積ソフトと会計ソフトは連携できますか?
建設業特化の見積ソフトと会計ソフトを同じメーカーで揃えれば、見積→受注→原価管理→会計のデータ連携が可能です。異なるメーカー同士でもCSVでの連携は概ね可能です。
クラウド型とインストール型どちらがおすすめですか?
中小建設会社にはクラウド型を推奨します。初期費用が安く、複数端末で利用でき、バージョンアップも自動。外出先からスマホで見積を確認できるのも利点です。買切り型はランニングコストを抑えたい会社に向いています。
見積ソフトの導入にどのくらいの期間がかかりますか?
クラウド型なら最短即日〜1週間で利用開始できます。過去の見積データの移行や単価マスタの設定を含めると、本格稼働まで1〜2ヶ月が目安です。並行運用期間を設けると、よりスムーズに移行できます。
公共工事の積算に特化したソフトはありますか?
ATLUSが代表的です。国交省の積算基準に完全対応しており、公共単価DBを標準搭載。土木・建築・電気・機械設備の各分野に対応した積算が可能で、CORINSとの連携にも対応しています。

建設業の見積・積算業界の動向

建設業の見積積算ソフト市場は、2024〜2026年にかけてクラウド化と中小企業への普及が加速しています。背景には以下の3つの要因があります。

2024年問題(時間外労働の上限規制)への対応で、事務作業の効率化ニーズが高まっています。見積積算に費やしていた残業時間を削減する手段として、ソフト導入の優先度が上がっています。

電子帳簿保存法への対応で、見積書・発注書のデジタル保存が義務化の方向に進んでいます。紙の見積書を発行し続けることのコンプライアンスリスクが高まっており、クラウド型ソフトへの移行が自然な流れになっています。

材料費の急激な変動(コロナ後の資材高騰)により、単価管理の重要性が急上昇しています。単価を一元管理できる見積ソフトがなければ、適正価格での受注ができなくなるリスクが顕在化しています。

このような業界環境の変化を受け、中小建設会社の見積ソフト導入意欲は高まっています。「3〜5年前は大手だけが使うもの」というイメージだった見積ソフトが、従業員5〜10名の会社でも標準的なツールになりつつあります。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用することで、中小企業でも費用負担を最小化しながら導入できる環境が整っています。

出典: 中小企業庁 中小企業白書 — デジタル化取り組みの実態に関する調査


まとめ — 見積ソフト選びの最終チェックポイント

建設業の見積ソフト選びで最終的に判断軸となるのは、「施工管理や原価管理との連携がどこまでできるか」です。見積作成だけをデジタル化しても、その後の実行予算管理や出来高管理と連動しなければ、入力の二度手間が発生します。

従業員20名以下の中小建設会社なら、まず月額1〜2万円程度の中堅価格帯ソフトから始め、業務フローが固まったタイミングでより高機能な製品に移行するのが現実的なアプローチです。無料トライアルを活用して、見積書テンプレートの作りやすさと実際の計算ロジックを必ず自社で確認してください。

導入後は「見積書の承認フロー」「顧客への送付方法」「変更見積の管理方法」を社内ルールとして整備することが、効果を最大化するうえで重要です。ソフトの機能だけでなく、運用ルールの設計がセットになって初めて生産性向上につながります。


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