この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

工事台帳はExcelで回しているが、完工してから赤字に気づくことがあります。外注費の請求が翌月にずれ込んで、粗利の実態がつかめません。こうした悩みを抱える中小建設会社は少なくありません。

国交省「建設業の経営分析(令和4年度)」では、中小建設会社の売上高営業利益率は約2.5%と、大企業の約4.2%を大きく下回っている。原価率が1%ずれるだけで利益が吹き飛ぶ構造だからこそ、工事別にリアルタイムで原価を把握する仕組みが経営を左右する。

この記事では、建設業向け原価管理ソフト7製品を機能・料金・IT導入補助金対応の3軸で比較した。従業員規模別のおすすめ早見表、Excelとの違い、予実管理による利益改善シミュレーションまで、ソフト選定に必要な判断材料をまとめている。

建設業の原価管理が難しい理由 — 構造的な課題から整理する

一般的な小売業や製造業と異なり、建設業では案件ごとに原価の構成が大きく異なる。材料費・外注費・労務費・機械損料・経費のバランスは工事の種類・規模・地域によって変わるため、全社の損益計算だけでは個別工事の採算性が見えてこありません。

建設業の原価管理を難しくしている要因は主に4つあります。

第一に、工事期間の長さです。住宅リフォームであれば数日から数週間、大型工事では数ヶ月から1年以上かかる。この間に材料費・外注費・労務費が日々発生するため、完工時点まで実際の原価を集計しない管理では、赤字になっていても気づきません。

第二に、外注費の後払い構造です。協力会社への外注は月末締め・翌月末払いが多く、工事が進んでいる最中は外注費の実績がゼロのまま工事台帳に残るケースが多くあります。コストの後追い計上が常態化すると、予実管理の精度は著しく落ちる。

第三に、労務費の配賦の難しさです。現場作業員が複数の現場を掛け持ちするケースでは、人件費を工事別に正確に配賦するには日報や出面管理が必要になる。この仕組みがないと、労務費は概算で計上するしかなく、工事別の利益率が実態とかけ離れる。

第四に、見積もりと実行予算の乖離です。受注時の見積もりで想定した原価(計画原価)と、工事中に決定する実行予算・実際の発注金額の間にずれが生じても、それを追跡する仕組みがない会社が多くあります。

国土交通省の経営分析データによると、建設業の平均原価率は約76.5%です。この数字は「売上100円に対してコストが76.5円かかる」ことを意味する。わずか1〜2%の原価超過が、利益をほぼゼロにする構造があります。

出典: 国土交通省「建設業の経営分析(令和4年度)」

原価管理の3手法を比較 — Excel・専用ソフト・ERP

自社の規模と現在の管理体制に合った手法を選ぶことが、無理なく継続できる運用の第一歩になる。

管理手法初期費用月額費用リアルタイム性向いている企業規模
Excel管理0円0円年間完工10件以下、1人親方〜5名
原価管理ソフト(クラウド型)0〜数万円15,000〜50,000円5〜50名、同時3現場以上
原価管理ソフト(オンプレミス型)50〜200万円保守費用のみ20名以上、カスタマイズ重視
建設業ERP200万円〜保守費用50名以上、年商10億円以上
Excelでの原価管理に限界を感じたら

同時に3現場以上を管理している場合、Excelでは入力漏れや転記ミスが増え、月次の原価集計に丸2〜3日かかるケースが出てくる。赤字工事を完工後にしか発見できない状態が続いているなら、専用ソフトへの移行を検討するタイミングです。

Excel管理が限界になるサインは明確です。「ファイル名に『最終版』や『修正2』がつくファイルが乱立している」「月次の原価集計に2日以上かかる」「同時に複数の現場が進行中で、どの現場がどのくらい予算を使ったか誰もわからない」——これらに当てはまるなら、専用ソフトへの移行が投資対効果に見合うタイミングです。

原価管理ソフトを選ぶ5つの判断基準

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製品を比較する前に、自社が重視する要件を整理しておくと選定が効率的になる。

1. 自社の規模と年間完工件数

年間完工件数が10件以下の小規模事業者であれば、Excelにクラウド会計ソフトを組み合わせる方法でも対応できる。年間20件を超える中規模以上では、専用ソフトの導入によるリターンが明確に出やすい。

目安として、年間完工高が1億円を超えるあたりから、工事の同時進行数が増えてExcelの限界が露呈する。年商3億円超であれば、本格的な原価管理ソフトへの移行を強く推奨する。

2. 経営事項審査(経審)への対応

公共工事を受注している建設会社には、経審対応が外せない要件になる。工事経歴書や完成工事原価報告書のデータを自動出力できるソフトなら、経審の準備工数を大幅に削減できる。

民間工事のみの場合は経審対応は必須ではないが、将来的に公共工事への参入を検討しているなら、対応ソフトを選んでおくことで後の追加投資を避けられる。

3. 既存の会計ソフトとの連携方式

原価管理ソフトと会計ソフトのデータ連携は、導入の成否を分ける重要なポイントです。仕訳データの二重入力は経理担当者の負担になる。API連携、CSV連携、統合型ERPの3パターンから、自社の会計環境に合ったものを確認する必要があります。

弥生会計、マネーフォワード クラウド、PCA会計、勘定奉行など、現在使っている会計ソフトとの連携状況を事前に確認することが重要です。

4. 現場からのモバイル入力対応

原価管理ソフトの導入で最も多い失敗パターンは「経理だけが使って、現場から情報が上がってこない」という状態です。現場の職長や工事担当者がスマートフォンやタブレットから日報・出面を入力できるかどうかが、リアルタイム原価管理の実現に直結する。

クラウド型はブラウザやアプリから入力できるため、現場との情報連携に優れている。オンプレミス型では、VPNやリモートアクセスの環境構築が別途必要になる。

5. IT導入補助金の対象ツールか

補助金対応のツールを選べば、導入費用の一部を国の補助金で賄える。2026年度のデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)では、原価管理ソフトも支援対象になっている。補助率や補助額は年度により変更されるため、公式サイトで最新情報を確認してほしい(※最新の登録状況は公式サイトでご確認ください)。

建設業向け原価管理ソフト7選 — 機能・料金を一覧比較

サービス名料金主な機能補助金対応
どっと原価NEO クラウド版 年額240,000円〜
  • 工事原価管理
  • 工事台帳
  • 予実管理
  • 経審対応
  • 実行予算
  • モジュール選択式
対応
レッツ原価管理Go2 クラウド版 年額240,000円〜
  • 原価管理
  • 工事台帳
  • 予実管理
  • 承認ワークフロー
  • 会計ソフト連携
対応
クラウド原価Pro 月額15,000円〜
  • クラウド原価管理
  • 工事台帳
  • 予実管理
  • レポート出力
対応
建設大臣NX 要問合せ(買切り型)
  • 建設業会計
  • 工事原価管理
  • 工事台帳
  • 経審対応
  • 財務諸表
対応
ガリバー匠 要問合せ
  • 原価管理
  • 工事台帳
  • JV会計
  • 予実管理
  • 経審対応
  • ERP統合
対応
ANDPAD受発注 要問合せ
  • 受発注管理
  • 原価集計
  • 施工管理連携
  • 協力会社管理
対応
マネーフォワード クラウド会計Plus 月額5,980円〜
  • クラウド会計
  • 部門別管理
  • プロジェクト別損益
  • API連携
対応

※価格は2026年4月時点の公開情報に基づく。最新料金は各製品の公式サイトで確認してほしい。

各ソフトの詳細レビュー — 強みと向いている企業を正直に評価

1. どっと原価NEO — 9年連続導入企業数No.1の定番

建設ドットウェブが開発する原価管理専門のソフトです。2015〜2023年度まで9年連続で建設業向け原価管理パッケージの累積導入企業数第1位を達成している(自社発表)。業界での導入実績は群を抜いており、信頼性の高さが選ばれる最大の理由になっている。

最大の特徴は、必要な機能だけを選んで導入できるモジュール選択方式です。実行予算作成、発注管理、出来高管理、予実対比など、原価管理のワークフロー全体をカバーしつつ、不要な機能に費用をかけずに済む設計になっている。クラウド版は年額240,000円からで、モジュール追加に応じて段階的に費用が上がる仕組みです。

経審対応の帳票出力機能が標準搭載されており、公共工事を受注する企業にとっては工数削減の効果が特に大きい。弥生会計、PCA会計など主要会計ソフトとのCSV連携にも対応しており、既存の会計環境を変えずに導入できる点もメリットといえる。

向いている企業は、従業員20名以上の中規模建設会社で、公共工事と民間工事の両方を手がける企業です。専門工事業・総合建設業のどちらにも対応しており、工事件数が年間50件以上になると特に投資対効果が出やすい。

注意点として、操作画面はやや専門的で、建設業の原価管理に慣れていない担当者には学習コストがかかる。導入後1〜2ヶ月程度は、操作に慣れるまでのサポートが必要になることを見込んでおきたい。

2. レッツ原価管理Go2 — 累計4,000社超の中小建設会社に選ばれる理由

株式会社レッツが1996年から開発を続けている建設業向け原価管理ソフトです。累計導入社数は4,000社を超え、中小建設会社の現場に根ざした機能設計に定評があります。

見積書作成、工事登録、発注、仕入、出面管理、支払査定、請求、入金まで、原価管理の一連のフローをカバーしている。承認ワークフロー機能を搭載しており、利用者ごとに承認権限から閲覧のみまで細かい権限設定が可能です。内部統制を意識した運用にも対応できる。

特筆すべきはExcelクリエート機能です。自社様式の請求書や独自の工事一覧帳票を設計できる点が特徴で、「既存のExcel帳票をそのまま使いたい」という要望に応えられる。Excel管理からの移行ハードルが低く、導入後の現場定着率が高い傾向があります。

クラウド版は年額240,000円から利用可能で、弥生会計・PCA会計・勘定奉行など主要会計ソフトとの連携にも対応している。

向いている企業は、従業員5〜50名の中小建設会社で、既存のExcel帳票を活かしながらステップアップしたい企業です。シンプルな移行手順と手厚いサポートを重視するなら、選択肢の上位に入れるべきソフトです。

3. クラウド原価Pro — 月額15,000円から始める手軽さ

月額15,000円から利用できるクラウド型の原価管理ソフトで、インストール不要でブラウザから即座に使い始められる。小規模建設会社でも導入のハードルが低いのが最大の魅力です。

工事台帳の自動作成、予実管理のレポート出力など、原価管理に必要な基本機能は揃っている。「大規模な機能は不要で、まず工事別の利益を見える化したい」という企業に適している。

クラウド型のため、現場からスマートフォンやタブレットでアクセスできる。日報入力や出面管理を現場で完結できるため、事務所に戻ってからの転記作業が不要になる点は、作業効率の改善に直結する。

向いている企業は、従業員5〜20名で原価管理ソフトを初めて導入する企業です。月額コストを抑えながら工事別の原価管理を始められるエントリーモデルとして、初期検討の候補として挙げておきたい。

注意点として、経審対応の帳票出力は搭載されていないため、公共工事を受注する企業は別途確認が必要です。

4. 建設大臣NX — 会計と原価管理を1本で完結

応研株式会社が開発する建設業特化の会計ソフトです。会計処理と原価管理を1つのソフトで完結できるため、データの二重入力が発生しありません。「原価管理は必要だが、会計ソフトも同時に見直したい」という企業に向いている。

買切り型のライセンス体系を採用しており、月額費用が発生しない点が特徴だ(保守費用は別途)。長期間使い続ける前提であれば、クラウド型よりもトータルコストが抑えられるケースもあります。

工事台帳から完成工事原価報告書まで、建設業会計に必要な帳票を標準で出力でき、経審対応もカバーしている。応研の他シリーズ(給与大臣・販売大臣)と組み合わせれば、バックオフィス全体を統一環境で管理することも可能です。

向いている企業は、従業員20〜50名で会計ソフトを含めたバックオフィス全体のデジタル化を進めたい企業です。長期運用を前提にトータルコストを重視するなら、買切り型は検討の価値があります。

5. ガリバー匠 — JV工事にも対応する中堅向けERP

あさかわシステムズが提供する建設業向けERPです。1996年の初版リリース以降、中堅建設会社を中心に導入実績を積み重ねてきた。JV(共同企業体)の配賦計算にも対応しており、大型公共工事を手がける企業で多く採用されている。

会計・原価・勤怠・給与をまとめて管理できるERP型のため、バックオフィス全体を一気にデジタル化したい企業に向いている。工事原価と会計データがリアルタイムに連動するため、月次決算の早期化にも貢献する。

向いている企業は、年商10億円以上の中堅建設会社で、JV工事が多い企業や公共工事の比率が高い企業です。導入費用は高額になるが、ERP型ならではの情報統合効果は大きい。

導入プロジェクトには通常3〜6ヶ月を要し、業務フローの整理と現場への教育も含めた計画が必要になる。この導入プロセス自体が業務改善のきっかけになるという声も聞く。

6. ANDPAD受発注 — 施工管理アプリとの連携が最大の強み

施工管理アプリで導入企業数シェアが首位とされるANDPADが提供する受発注管理機能です。施工管理アプリとの連携が最大の強みで、現場の進捗情報と発注・原価情報をシームレスにつなげられる。

すでにANDPADを施工管理に使っている建設会社であれば、追加モジュールとして受発注機能を利用することで、別途原価管理ソフトを導入するよりも効率的です。現場の写真管理や工程管理と原価データが同じプラットフォーム上で確認できるため、工事の全体像を把握しやすくなる。

協力会社との受発注もANDPAD上で完結するため、発注漏れや金額の食い違いを減らす効果が期待できる。ただし、原価管理専用ソフトと比較すると実行予算の詳細管理や経審対応は限定的です。ANDPADを施工管理で使っている企業の「原価管理の第一歩」として位置づけるのが現実的です。

7. マネーフォワード クラウド会計Plus — 小規模事業者の原価管理代替

一般向けクラウド会計ソフトのマネーフォワード クラウドに、プロジェクト別損益管理機能を追加したプランです。本格的な工事原価管理ソフトではないが、年間工事件数が少ない小規模事業者であれば、プロジェクト別管理で原価把握を代用できる。

月額5,980円からという価格は、原価管理の観点では破格です。給与・経費・請求書との連携がスムーズなため、バックオフィス全体の効率化を優先したい企業に向いている。

向いている企業は、従業員5名以下で年間完工件数が10件程度の小規模事業者です。工事台帳や経審対応の機能は搭載されていないため、建設業特有の帳票が必要な場合は専用ソフトとの併用が前提になる。

従業員規模別のおすすめ選定ガイド

自社規模から最適なソフトを選ぶための目安を整理した。

企業規模年間完工件数おすすめソフト選定理由
1人親方〜5名10件以下マネーフォワード + Excel工事件数が少なければExcelで補完可能。月額費用を最小限に抑えられる
5〜20名10〜30件クラウド原価Pro / レッツ原価管理Go2クラウド型で初期費用を抑えつつ工事別原価管理を開始できる
20〜50名30〜100件どっと原価NEO / 建設大臣NX / レッツ原価管理Go2本格的な原価管理と経審対応が必要。モジュール選択で過不足なく導入
50名以上100件以上ガリバー匠ERP型で会計・原価・勤怠を一体管理。JV対応が必要な場合に特に有効

判断に迷ったとき、3つの問いで絞り込める。

公共工事を受注しているか。受注しているなら経審対応は必須で、どっと原価NEO・建設大臣NX・ガリバー匠が候補になる。すでにANDPADを施工管理に使っているか。使っているならANDPAD受発注との連携が最も効率的です。既存の会計ソフトを変えたくないか。変えたくないなら、CSV連携やAPI連携が豊富なソフトを選ぶべきです。

予実管理を活用した利益改善シミュレーション

原価管理ソフトの導入効果を、具体的な数値で確認します。ここでは年間完工高3億円の住宅リフォーム会社をモデルケースとして使う。

モデルケース: 内装リフォーム工事(契約金額1,200万円)

原価項目実行予算実績(管理なし)実績(ソフト管理)
材料費360万円396万円(+10%)367万円(+2%)
外注費480万円504万円(+5%)490万円(+2%)
労務費180万円198万円(+10%)184万円(+2%)
経費60万円66万円(+10%)62万円(+3%)
原価合計1,080万円1,164万円1,103万円
粗利益120万円36万円97万円
粗利率10.0%3.0%8.1%

原価管理なしの場合、材料の過剰発注・外注費の後追い計上・労務費の概算計上が積み重なり、予算超過が見えない状態が続く。粗利率10%を見込んでいた工事が、完工後に3%だったと判明するケースは珍しくありません。

原価管理ソフトを導入した場合、発注段階での予算チェック、週次の原価集計、予実乖離のアラート通知によって超過を早期に発見できる。1工事あたり粗利が61万円改善する試算です。

年間での効果試算

年間30件の工事に蓄積すると、管理なしの場合は年間粗利1,080万円、ソフト管理の場合は年間粗利2,910万円となり、差額は1,830万円です。月額数万円のソフト利用料は、2件の工事改善だけで十分に回収できる計算になる。

利益率の改善目安

原価管理ソフトの導入企業では、利益率が平均2〜5%改善したという報告が複数出ている。年間完工高3億円の企業で利益率が3%改善すれば、年間900万円の利益増に相当する。ソフトの年間コストが24〜60万円であることを考えると、回収期間は数ヶ月から1年程度になる。

IT導入補助金を活用して導入コストを抑える

原価管理ソフトの導入には、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用できる。2026年度から名称が変更されたが、建設業のITツール導入は引き続き支援対象です。

項目内容
補助額5万円〜450万円(業務プロセス数に応じて変動)
補助率1/2以内(賃上げ要件等を満たすと最大4/5)
対象ツールIT導入支援事業者が登録したITツール
申請方法IT導入支援事業者と共同で申請

補助金を活用すれば、年額240,000円のクラウドソフトであれば実質120,000円(月額換算1万円)で利用を開始できる。初期費用が100万円規模のオンプレミス型でも、補助率1/2なら自己負担を50万円に抑えられる計算です。

IT導入補助金の申請手順

申請にはIT導入支援事業者を通じた手続きが必要です。各ソフトの公式サイトで補助金対応状況を確認するのが最初のステップになる。2026年度の公募スケジュールは公式サイトに掲載されている。補助金の詳細は「建設業のIT導入補助金活用ガイド」で解説している。

Excel管理から原価管理ソフトへの移行手順

Excel管理から専用ソフトへの移行は、段階的に進めることが成功の鍵です。

移行前の準備(1〜2週間)

現在使っているExcelファイルをすべて棚卸しする。工事台帳、実行予算書、支払管理表、出面表など、どのファイルが誰に使われているかを整理してほしい。この段階で「実は誰も使っていない帳票」が見つかることもあります。

直近1年分の工事データ(工事名・契約金額・原価実績・利益率)をまとめておくと、新しいソフトへの過去データ移行がスムーズになる。

ソフト選定とトライアル(2〜4週間)

候補を2〜3製品に絞り、無料デモやトライアルに申し込む。トライアルでは実際の工事データを1〜2件入力してみて、操作感を確認することが重要です。経理担当者だけでなく、工事担当者にも触ってもらってほしい。現場の人間が使えないソフトは、どれだけ機能が豊富でも意味がありません。

並行運用期間(1〜3ヶ月)

新しいソフトとExcelを並行運用する期間を設ける。新規の工事から順次ソフトに入力し、進行中の工事はExcelで管理を継続する。並行運用中に操作マニュアルとFAQ集を整備しておくと、本格移行後のトラブルが大幅に減る。

本格移行後の振り返り(1ヶ月後)

すべての工事をソフトで管理する状態に移行したら、1ヶ月後に振り返りの場を設ける。「入力に手間がかかる工程はどこか」「Excel時代より改善した点は何か」を関係者で共有し、運用ルールを微調整してほしい。定期的な予実レビューの習慣が、導入効果を最大化するカギになる。

導入後の失敗を防ぐ運用ポイント

工事コードと費目区分を最初に決める

ソフトの導入前に、工事コードの採番ルールと原価の費目区分を決めておくことが重要です。「材料費・外注費・労務費・経費のどの項目に何を分類するか」のルールを事前に決めないと、担当者ごとに入力方法がバラバラになり、集計結果の信頼性が落ちる。

週次の予実レビューを仕組みにする

ソフトを入れても、予実データを見る習慣がなければ意味がありません。週に1回、工事担当者と経理で予実乖離レポートを確認するミーティングを設定してください。所要時間は15〜30分程度で十分です。赤字工事の兆候を早期に発見できれば、工期中に対策を打てます。完工後に「この工事は赤字だった」と気づいたのでは手遅れになります。

入力のタイミングとルールを徹底する

日次入力か週次入力かのルールを決め、入力の締め切りを設けることで、リアルタイム性が担保される。「現場が落ち着いたら入力する」という運用では、繁忙期に入力漏れが続出する。建設業の特性上、工事が集中する時期と閑散期の差が大きいため、ルール化と習慣化が特に重要です。

建設業の工事原価を構成する5つの費目 — 費目別の管理ポイント

原価管理ソフトで管理する「原価」が何を指すのかを理解しておくことで、ソフトの機能評価がより正確にできる。建設業の工事原価は主に5つの費目で構成される。

材料費

工事に直接使用する資材・材料の費用です。鉄筋・型枠・コンクリート・配管材・電線など、工種によって内容は大きく異なる。材料費管理の課題は「過剰発注」「残材の扱い」「値上がりリスク」の3点です。

原価管理ソフトでは、実行予算で計上した材料費と実際の発注・仕入れ実績を対比できる。発注段階でアラートを出す機能があれば、予算超過を事前に防げる。国土交通省の調査によると、建設資材価格は2020年比で鉄筋が約1.3倍、生コンクリートが約1.2倍(2024年時点)に上昇しており、材料費の管理精度が利益に直結している。

出典: 建設工事施工統計調査 — 国土交通省

外注費

協力会社・下請けへの工事発注費用です。建設業では外注費が原価全体の40〜60%を占めることも多く、管理上の比重が大きいといえます。外注費管理の課題は「発注書の管理」「請求金額の照合」「追加工事の管理」です。

外注費の実績データが月末にまとめて入力される運用では、工事中に「今この現場の外注費がいくらかかっているか」が見えません。リアルタイムでの外注費把握には、発注書を原価管理ソフト上で起票し、仕入れ実績と自動照合できる機能が必要になる。

労務費

自社の技術者・作業員の人件費を工事別に配賦したものです。建設業では1人の作業員が複数の現場を掛け持ちするケースがあり、労務費の配賦が原価管理の中で最も難しい費目といわれる。

正確な労務費配賦には、現場別の日報・出面記録が必要です。施工管理アプリとの連携で出面データを自動取込できるソフトなら、手入力の手間と転記ミスを大幅に減らせる。

機械・器具損料

建設機械のリース料・損耗費です。重機のリース代、足場の設置・解体費、測量機器の使用料などが該当する。機械損料の管理は比較的シンプルだが、工期が延びた際の追加リース代が計上漏れになりやすい。

工事経費

現場経費(現場管理費・安全対策費・廃棄物処理費など)です。工事直接費に算入する経費と、会社全体の経費(一般管理費)に算入する経費の区分けが建設業会計のポイントになる。この区分けを誤ると、工事別の利益率計算に狂いが生じる。

機能の詳細比較 — 7製品の機能対応表

7製品の機能対応を一覧化した。製品選定の参考にしてほしい。

機能どっと原価NEOレッツGo2クラウド原価Pro建設大臣NXガリバー匠ANDPAD受発注MF会計Plus
工事台帳
実行予算管理××
発注書・請求書管理
予実対比レポート
経審対応帳票×××
会計ソフト連携CSVCSV/APICSV統合型統合型CSVAPI
スマホ・タブレット入力×
承認ワークフロー×××
JV工事対応××××××
施工管理との連携×××××ANDPAD連携×

○: 標準対応 △: 部分対応 ×: 非対応(※各社公式サイト情報をもとにした概要。詳細は各製品の公式サイトで確認してほしい)

この表から読み取れる傾向は3点ある。経審対応が必要ならどっと原価NEO・建設大臣NX・ガリバー匠の3択に絞られる。スマホ・タブレット入力を重視するならクラウド原価Pro・ANDPAD受発注・マネーフォワードのクラウドファースト製品が有利です。JV工事を手がけているなら現実的にガリバー匠一択になる。

無料トライアルを最大限活用する方法

原価管理ソフトの多くが30日前後の無料トライアルを提供している。トライアル期間をどう使うかで、選定の精度が大きく変わる。

トライアル前にやること

トライアルに申し込む前に、自社の実際の工事データを1〜2件用意しておく。「仮の工事名で試す」よりも、実際に発生した工事(契約金額・主要な原価費目・概算の実績値)をそのまま入力することで、自社業務での操作感が正確に確認できる。

あわせて、トライアルに参加する社内メンバーを経理担当者と工事担当者の2名以上にすることが重要です。どちらか一方の視点だけでは、実際の運用上の課題が見えにくい。

トライアル中に確認すること

確認項目着目点
工事の登録・更新のしやすさ1工事の登録に何ステップかかるか
予実対比画面の見やすさどの現場がどのくらい予算を使ったか一目でわかるか
会計ソフトとのデータ連携CSVの項目が合うか、インポート・エクスポートが手軽か
モバイル入力の使いやすさ現場のスマホで実際に試す
サポートの反応速度チャットや電話で質問してみる

特に「サポートの反応速度」はトライアル中にしか確認できません。導入後に困ったときに頼れるサポートがあるかどうかは、中小建設会社の運用定着率に大きく影響する。

2製品を並行でトライアルする

1製品だけのトライアルでは評価基準が「使えそう/使えなさそう」の2択になりがちです。2製品を同時にトライアルすれば「AよりBの方が入力画面が見やすい」「AはCSV連携が簡単だがBのほうが帳票が充実している」という相対評価ができる。選定の精度が上がり、後悔のない意思決定につながる。

建設業の原価管理DXに向けた中長期的なロードマップ

原価管理ソフトの導入は、建設業DXの全体像から見ると「財務・経営管理のデジタル化」に位置づけられる。単独で導入して完結するものではなく、施工管理・勤怠管理・会計との連携を段階的に進めることで、より大きな効果が生まれる。

フェーズ1: 原価管理の可視化(導入〜6ヶ月)

まず工事別の粗利率をリアルタイムに把握できる状態を作ることが最初のゴールです。専用ソフトへの移行、入力ルールの整備、週次の予実レビュー習慣の定着が、このフェーズの主なアクションになる。「どの工事が今いくら使っているか」がわかる状態にするだけで、赤字工事の早期発見が可能になる。

フェーズ2: 現場との連携強化(6ヶ月〜1年)

施工管理アプリや勤怠管理ツールと連携し、現場からのデータをリアルタイムで原価に反映させる段階です。日報・出面・写真がクラウド上に集まれば、経理担当者が毎週現場監督から情報を集めて手入力するという作業が不要になる。この連携が実現すると、労務費配賦の精度が大幅に上がる。

フェーズ3: 経営判断への活用(1年以上)

工事別・工種別・担当者別の利益率データが蓄積されると、「どの種類の工事を増やすべきか」「どの営業エリアが利益率が高いか」「どの担当者の見積もり精度が低いか」という経営判断に使えるデータが手に入る。このフェーズに到達すると、原価管理ソフトは「コスト管理ツール」から「経営戦略ツール」に変わる。

国土交通省が推進するi-Construction 2.0では、BIM/CIMデータとの連携による工事原価の自動集計も視野に入っており、建設業の原価管理は今後さらにデジタル化が進む方向にある。今からソフトを導入してデータを蓄積しておくことが、将来の高度化への準備になる。

出典: 国土交通省 i-Construction 2.0 — インフラ分野のDX推進

参考情報

よくある質問

原価管理ソフトの費用はどのくらいですか?
クラウド型で月額15,000〜50,000円程度、オンプレミス型で初期費用50〜200万円程度が相場です。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用すれば、補助率1/2〜4/5で導入費用の一部が補助されます。
Excel管理から原価管理ソフトに移行するタイミングはいつですか?
同時に3現場以上を管理している場合や、月次の原価集計に丸1日以上かかる場合が目安です。年間完工高が1億円を超えるあたりから、Excelのファイル管理が混乱しやすくなります。
経営事項審査(経審)対応のソフトはどれですか?
どっと原価NEO・建設大臣NX・ガリバー匠が経審対応を標準搭載しています。工事経歴書や完成工事原価報告書を自動出力できるため、経審準備の工数を大幅に削減できます。
クラウド型とオンプレミス型のどちらを選ぶべきですか?
初期費用を抑えて手軽に始めたいならクラウド型、カスタマイズ性や長期コストを重視するならオンプレミス型が適しています。現場からのモバイル入力を重視するなら、クラウド型が有利です。
ANDPADを使っているなら原価管理ソフトは不要ですか?
ANDPAD受発注で受発注管理・原価集計は可能ですが、実行予算の詳細管理や経審対応が必要な場合は専用の原価管理ソフトとの併用を検討してください。施工管理はANDPAD、原価管理は専用ソフトという役割分担が効果的です。
原価管理ソフトを導入するとどのくらい利益が改善しますか?
導入企業では利益率が平均2〜5%改善したという報告があります。年間完工高3億円の企業で3%改善すれば、年間900万円の利益増に相当します。月次の原価集計にかかる時間も、3日から半日程度に短縮されるケースが一般的です。
小規模(5名以下)でも原価管理ソフトは必要ですか?
年間完工件数が10件以下であれば、マネーフォワード クラウド会計PlusとExcelの組み合わせで対応できます。件数が増えてきたらクラウド原価Proのような月額15,000円から始められるソフトへのステップアップを検討してください。
建設大臣NXとどっと原価NEOの違いは何ですか?
建設大臣NXは会計機能を内蔵した統合型で買切りライセンス、どっと原価NEOは原価管理に特化したモジュール選択型でサブスクリプション方式です。会計ソフトごと見直したいなら建設大臣NX、既存の会計ソフトを変えずに原価管理だけを強化したいならどっと原価NEOが適しています。

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