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用語集

i-Construction

あい・こんすとらくしょん

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

ドローンとICT建機が変える公共工事——i-Constructionの全体像

2016年、国土交通省は建設現場の生産性を2025年度までに2割向上させるという目標を掲げ、i-Construction(アイ・コンストラクション)の旗を上げました。測量から設計、施工、検査、維持管理に至るまで、3次元データやドローンなどのICT(情報通信技術)を全プロセスに導入し、建設業を「魅力ある産業」へ転換させる国家施策です。

なぜ重要か

建設業界は深刻な人手不足に直面しています。技能労働者の高齢化が進み、若年入職者の確保も年々難しくなっているため、従来と同じやり方では事業の継続すら危ぶまれる状況です。

i-Constructionは、限られた人員でも高い品質と効率を実現するための国家的な枠組みとして位置づけられています。国土交通省の直轄工事では、ICT活用工事の発注が年々拡大しており、対応できない企業は受注機会を失うリスクがあります。

経営者にとっては、単なる技術トレンドではなく、今後の公共工事受注に直結する経営課題として捉える必要があります。

具体的な内容・仕組み

i-Constructionの中核となるのは、ICT土工をはじめとしたICT施工技術の活用です。ドローンによる3次元測量で現場の地形データを取得し、そのデータをもとに3次元設計を行い、ICT建機で自動制御による施工を実施します。

従来は人手で行っていた丁張り(施工の基準となる目印の設置)が不要になるなど、工程の大幅な省力化が実現します。検査においても、3次元データを用いた出来形管理により、従来の断面測定と比べて圧倒的に少ない手間で高精度な品質管理が可能です。

国土交通省はi-Constructionの推進にあたり、技術基準の整備や積算基準の改定も進めています。ICT施工に必要な機材のリース費用が積算に反映されるようになったことで、受注者側の費用負担も軽減されつつあります。

さらに、施工だけでなく維持管理段階でも3次元データの活用が進んでおり、インフラの長寿命化やライフサイクルコストの低減にも貢献しています。

中小建設会社への影響

中小建設会社にとって、i-Constructionへの対応は避けて通れない経営課題になりつつあります。国土交通省の直轄工事ではICT活用が標準化される方向にあり、都道府県や市区町村の発注工事にも波及しています。対応が遅れれば、受注機会の縮小につながりかねません。

一方で、初期投資の負担は大きな課題です。ICT建機の導入やソフトウェアの習得には相応のコストと時間がかかります。しかし、リース活用や段階的な導入、国や自治体の補助金制度を活用することで、無理のない範囲から取り組みを始めることも十分に可能です。まずはドローン測量など比較的導入しやすい技術から着手し、社内にノウハウを蓄積していく戦略が現実的でしょう。

具体的な導入事例とBefore/After

国土交通省が公開している「ICT活用工事の施工事例集」によると、ICT土工を導入した現場では、平均して以下のような生産性向上が確認されています。

測量・検査工程の削減として、起工測量と出来形管理の時間がそれぞれ従来比で50〜70%削減された現場が報告されています。従来は丁張り設置に1週間かかっていた区間が、ICT建機の3次元制御データ活用により不要になったケースも多く、工期全体が10〜20%短縮された事例もあります。

中小土木工事会社の実例として、地方の従業員30名規模の会社が道路改良工事(土工量5,000m3規模)でICT施工を初採用した結果、測量・検査の人工数が従来工事の半分以下となり、工期を予定より3週間短縮できたという報告があります。この会社は翌年度以降も継続的にICT施工を採用し、現在では自社ドローンを購入して測量を内製化するまでに至っています。

i-Construction 2.0への進化

国土交通省は2024年度から「i-Construction 2.0」を推進し、従来の「ICT施工の普及」から「建設現場のオートメーション化」へと政策の重心を移しています。

i-Construction 2.0の核となる概念は「建設生産プロセス全体のデジタルツイン化」です。現場の3次元情報をリアルタイムで取得・更新し、設計から施工・維持管理まで一貫したデータ活用を実現することを目指しています。具体的には以下の3つの柱で構成されています。

施工オートメーションでは、ICT建機のさらなる自動化・自律化を推進します。既存のICT施工が「オペレーターの操作をセンサーで補助する」段階にあるのに対し、自律施工では「目標値を設定すれば機械が自動で掘削・整形する」段階を目指しています。2025年度以降の直轄工事では、一部の工種で自律施工の試験導入が始まる予定です。

施工管理のリモート化では、現場の映像・センサーデータをリアルタイムで収集し、遠隔からの品質確認や検査を可能にする仕組みの整備が進んでいます。特に2024年問題への対応として、管理者が複数現場を遠隔で管理できる体制の構築が急務とされています。

データ連携基盤の整備では、設計から施工、維持管理まで3次元データを共有できるプラットフォーム(建設データプラットフォーム)の構築が進んでいます。国土交通省が整備を進めるプラットフォームに発注者・受注者・コンサルが接続することで、書類のデジタル化・ペーパーレス化が大幅に進む見込みです。

BIM/CIMとの関係

i-Constructionを語るうえでBIM/CIMとの関係を理解することは重要です。BIM(Building Information Modeling)は建築設計で活用される3次元モデル技術で、土木インフラに適用したものがCIM(Construction Information Modeling)です。

国土交通省は2023年度から直轄工事・業務でのBIM/CIM活用を原則化しました。測量・調査から設計、施工、維持管理まで3次元モデルを一貫して活用する体制を整備し、従来の2次元図面中心の業務フローを刷新する方針です。

i-ConstructionとBIM/CIMは相互補完の関係にあります。CIMで作成した3次元設計モデルをICT建機に取り込んで施工し、施工後の出来形データをCIMモデルに反映するというサイクルが、建設生産プロセスのデジタル化の理想形とされています。

導入コスト・費用の目安

i-Constructionへの対応コストは、導入する技術の範囲と自社に既存の機器・人材によって大きく異なります。

ドローン測量の場合、機体購入で50〜200万円、測量ソフト(点群処理・オルソ画像作成)で月額1〜5万円程度が目安です。操縦者は航空法に基づくドローン操縦者資格が必要で、取得コストは講習受講で5〜15万円程度です。

ICT建機の利用は、リース・レンタルが一般的です。ICT対応の油圧ショベル(20t級)のレンタルは月額50〜100万円程度で、公共工事ではこの費用が積算に反映されます。自社購入する場合は3,000〜5,000万円の投資となりますが、複数の大型工事を継続的に受注できる規模の企業向けの選択肢です。

3次元設計データの作成は、外注費として1件50〜200万円程度が相場です。社内にCADオペレーターがいれば内製化できますが、専用ソフト(Civil 3Dなど)の習得には数ヶ月の学習が必要です。

よく混同される概念・注意点

i-ConstructionとICT施工は同義ではありません。ICT施工はi-Constructionを構成する重要な要素の一つですが、i-Constructionはそれ以外にも「規格の標準化」「施工時期の平準化」「コンクリート工の品質向上」なども含む幅広い施策の総称です。

「ICT活用工事」と「ICT施工」も混用されることがありますが、ICT活用工事は発注者(国土交通省など)が工事発注時にICT活用を求める工事の呼称で、その工事の中で行う施工方法がICT施工という位置づけです。

i-Constructionへの対応は「すべて自社でやらなければならない」わけではありません。ドローン測量を専門会社に外注する、ICT建機は現場ごとにリースするという形でも対応は可能です。重要なのは「3次元データの流れ」を理解し、自社がどの工程を担当するかを明確にした上で、パートナーや発注者との調整を行うことです。

参考情報

よくある質問

i-Constructionは大手ゼネコンだけの話ですか?
いいえ。国土交通省はすべての規模の建設会社を対象にi-Constructionを推進しています。中小企業向けの補助金制度やICT活用工事の簡易型も整備されており、段階的に取り組める環境が整いつつあります。
i-Constructionに取り組むと経審の評点は上がりますか?
直接的な加点項目ではありませんが、ICT活用工事の実績は技術力の評価につながります。総合評価落札方式の入札において、ICT施工の実績が加点要素となるケースが増えています。
i-Constructionの導入にはどのくらいの費用がかかりますか?
導入する技術の範囲によって大きく異なります。ドローン測量であれば数十万円から始められますが、ICT建機のフル導入には数百万円以上かかることもあります。リース活用や補助金の併用で初期費用を抑えるのが一般的です。
i-Construction 2.0と従来のi-Constructionの違いは何ですか?
従来のi-ConstructionがICT施工(特にICT土工)の普及拡大を中心としていたのに対し、i-Construction 2.0は建設現場全体のオートメーション化・自律化・デジタルツイン化を目指す、より広範かつ高度な段階への発展です。2024年度から本格展開されており、施工の自律化や遠隔管理、データ連携基盤の整備が主要テーマになっています。

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