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CIM

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この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

設計変更コスト30%削減 ── 土木工事を変える3次元モデル活用

国土交通省が実施したBIM/CIM導入効果の調査では、設計段階でのモデル確認によって設計変更件数が従来比で約30%削減されたという結果が出ています。土木工事において「着工後に初めて問題が発覚し、設計変更と追加費用が生じる」という長年の課題に対し、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)は具体的な解決手段を提供しています。

CIMとは、土木構造物の計画・調査・設計・施工・維持管理の各段階において、3次元モデルを軸に情報を共有・連携する取り組みです。国土交通省では2018年度からBIMと統合して「BIM/CIM」と呼称しており、土木・建築を問わず3次元モデルの活用を推進しています。

2023年度から国土交通省の直轄工事では詳細設計へのBIM/CIM原則適用が始まり、土木工事を請け負う建設会社にとって対応が急務となっています。

2次元図面の限界と3次元モデルが解決する課題

土木工事は地形や地質条件の影響を大きく受けるため、2次元図面だけでは現場の状況を正確に把握しきれないケースが多くあります。設計図と現場条件の齟齬が施工段階で判明し、設計変更や追加コストが発生するという問題は、業界全体の長年の課題でした。

CIMでは、地形データと構造物の3次元モデルを統合して可視化できるため、設計段階で施工上の課題を事前に検討できます。ドローン測量で取得した3次元地形データとの連携も進んでいます。関係者間の合意形成もスムーズになり、住民説明会などでの理解促進にも効果を発揮します。

国土交通省は2023年度から原則としてすべての詳細設計にBIM/CIMの適用を求める方針を打ち出しました。公共土木工事を受注する建設会社にとって、CIMへの対応は事業継続に関わる重要事項です。

国土交通省が実施したBIM/CIM導入効果の調査では、設計段階でのモデル確認による設計変更件数が従来比で約30%削減され、施工段階での手戻りコストが平均15〜20%低減したという結果が報告されています。

地形データと構造物モデルの統合 ── CIMの基本構造

CIMの基本的な仕組みは、測量で取得した3次元地形データの上に、橋梁やトンネル、道路などの土木構造物の3次元モデルを配置し、属性情報(材料、強度、施工手順など)を付与するというものです。

設計段階では、構造物と地形の位置関係を3次元で確認できるため、土量計算の精度向上や、施工時に必要な仮設計画の検討に役立ちます。さらに、構造物同士や地中埋設物との干渉チェックを設計段階で行うことで、施工中の手戻りリスクを低減できます。

施工段階では、CIMモデルとICT建機を連携させることで、設計データに基づいた自動制御施工が可能になります。完成後のモデルは維持管理段階に引き継がれ、点検や補修の計画策定に活用されます。

国土交通省はCIMの導入を促進するため、3次元モデルの納品要領や活用ガイドラインを策定しています。モデルの作成に使用するソフトウェアの種類を問わず、IFC(Industry Foundation Classes)やLandXMLといった標準的なデータ形式での連携が推奨されています。

CIMとBIMの違い

BIM(Building Information Modeling)とCIMはしばしば混同されますが、元々は対象とする分野が異なります。

BIMは主に建築分野で発展した手法です。建物の設計・施工・維持管理に3次元モデルを活用するもので、建築設計事務所やゼネコンの建築部門を中心に普及が進んできました。

CIMは土木分野のために発展したもので、橋梁、トンネル、道路、河川など、土木インフラの設計・施工・維持管理に3次元モデルを活用することを指します。地形情報との統合、大規模な空間スケールへの対応が特徴です。

2018年以降、国土交通省はこれら2つを「BIM/CIM」として統合的に推進しています。建築と土木の境界を超えた一体的な3次元モデル活用が求められているため、現在は「BIM/CIM」という呼び方が正式です。

比較項目BIMCIM
主な対象分野建築(建物)土木(インフラ)
主なモデル対象建物の部材・設備地形+土木構造物
代表的なソフトRevit、ArchiCADCivil 3D、InfraWorks
国の方針BIM/CIMとして統合推進BIM/CIMとして統合推進

建設業における具体的な活用事例

事例1:橋梁工事での設計変更ゼロ達成

ある建設会社が受注した橋梁架け替え工事で、CIMモデルを活用した事例があります。地形・地質データを3次元モデルに統合し、設計段階で地盤条件と橋脚の位置関係を詳細に確認しました。その結果、従来なら施工開始後に発覚していた軟弱地盤への追加対策を設計段階で計画に組み込め、施工中の設計変更がゼロになりました。

追加地盤対策費として想定されたコストは約800万円でしたが、CIM活用による事前対処で追加コストを回避できたと試算されています。

事例2:住民説明会での3Dモデル活用

道路改良工事の住民説明会で、2次元図面に代わって3Dモデルを使って完成後のイメージを示した事例があります。視覚的にわかりやすいプレゼンテーションにより、住民からの理解が得られるまでの説明回数が従来の3回から1回に短縮されました。工事に対する地域住民の反対意見も減少し、工期短縮に貢献しました。

事例3:ICT建機との連携による施工精度向上

法面整形工事でCIMの設計データをICT重機(MC機能付きバックホウ)に入力し、自動制御施工を実施した事例があります。オペレーターの技量に依存せず、均一な施工精度が確保されました。従来工法と比較して丁張り設置作業がゼロになり、1日あたりの施工量が約1.5倍に向上したとのことです。

導入コスト・費用の目安

CIM導入にかかる費用は、取り組みの範囲によって大きく異なります。

CIMモデルの閲覧・活用から始める場合(受け手として活用する場合)は、無料のビューワーソフトの導入と基本操作の習得が中心であり、費用はほぼゼロです。発注者や設計コンサルタントが作成したモデルを施工段階で参照するだけであれば、この段階から始めることができます。

CIMモデルを自社で作成・納品する段階に進む場合は、専用ソフトウェアのライセンス費用(年間30〜100万円程度)と人材育成費が必要です。Civil 3DやInfraWorksなど主要なCIM対応ソフトのサブスクリプション費用は年間30〜60万円程度が一般的です。

ICT建機との連携(MC/MG施工)を含む本格的なCIM活用では、機器の購入またはリースに加えて、現場への導入支援費用が必要であり、工事規模にもよりますが数百万〜数千万円規模の投資になります。補助金(IT導入補助金、ものづくり補助金等)の活用で負担を軽減できます。

最新動向(2024〜2026年)

BIM/CIM原則適用の拡大

国土交通省の直轄工事では、2023年度から詳細設計へのBIM/CIM原則適用が始まり、2025年度以降は施工段階への適用拡大が進んでいます。地方自治体の工事でも同様の方針を採用する動きが広がっており、中小建設会社にも確実に影響が及ぶ状況です。

点群データとの自動連携

3Dスキャナーやドローン測量で取得した点群データと、CIMモデルを自動的に照合する技術が実用化されています。出来形管理の精度と効率が大幅に向上しており、現場での確認作業が削減されています。

AIによる自動モデル生成

土木構造物の図面データからCIMモデルを自動生成するAI技術の開発が進んでいます。2025年以降、設計コンサルタントや大手建設会社での試験導入が始まっており、モデル作成にかかる工数の大幅削減が期待されています。

デジタルインフラ台帳との統合

国土交通省が推進する「デジタルインフラ台帳」整備の動きと連動し、竣工したCIMモデルが維持管理データとして長期保存・活用される仕組みが整いつつあります。老朽化インフラの管理にCIMデータが活用される事例が増えています。

CIM導入を支える研修制度と資格

CIMの技術力を高めるための研修プログラムや資格制度が整備されつつあります。中小建設会社が活用できる主な制度を紹介します。

国土交通省が提供する「BIM/CIM講習」は、全国の建設業者を対象にした無料の研修プログラムです。基礎編と実践編があり、3次元モデルの閲覧から簡易なモデル作成まで段階的に学べる内容になっています。Webでのオンライン受講も可能で、地方の建設会社でも参加しやすい体制が整っています。

建設業団体(全国建設業協会、各県の建設業協会)が主催する研修プログラムもあります。ICT施工の基礎研修の中にCIMの要素が含まれていることが多く、ドローン測量からCIMモデルへのデータ連携など、実務に即した内容が学べます。

民間の資格として「BIM/CIMコーディネータ」の認定制度があり、CIMの実務経験を客観的に証明する手段として活用できます。技術者のスキル証明は採用場面でも有効であり、CIM対応力を持つ人材の採用・定着にプラスに働く側面もあります。

研修費用は、IT導入補助金の「デジタル化基盤導入枠」やものづくり補助金の「デジタル枠」で一部補助の対象になるケースがあります。自治体独自の研修費補助制度が設けられている地域もあるため、事前に確認しておくことをおすすめします。

「3D設計をやっている=CIM対応」ではない

BIM/CIMと3次元CADの違い

3次元CADは形状のみを3次元で表現するツールですが、BIM/CIMは3次元形状に加えて、材料・コスト・施工手順・設備仕様などの「属性情報」を紐づけることが特徴です。単に3Dで図面を描くことと、BIM/CIMで情報モデルを構築することは根本的に異なります。「3D設計をやっているからBIM/CIMに対応している」という誤解が生じやすい点は注意が必要です。

IFCの互換性問題

CIMモデルのやり取りには、異なるソフトウェア間での互換性を確保するためにIFC(Industry Foundation Classes)などの標準形式が使われます。しかし、ソフトウェアごとにIFCへの対応状況が異なり、データ変換時に属性情報が失われるケースがあります。発注者への納品前に、指定された形式での出力品質を確認することが重要です。

土木主体の中小建設会社が受注力を維持するために

CIMの導入は、土木工事を主力とする中小建設会社にとって特に影響が大きいといえます。公共工事の発注条件としてBIM/CIMの活用が求められるケースが増えているため、対応できるかどうかが受注力に直結します。

導入のハードルを下げるために、まずはCIMモデルの閲覧や簡易な活用から始めることが推奨されます。発注者や設計コンサルタントが作成したモデルを施工段階で活用する立場であれば、高価なモデリングソフトを自社で保有しなくても取り組みを始めることは可能です。業界団体や自治体が開催する研修プログラムも活用しながら、段階的にスキルを高めていく姿勢が大切です。CIMの導入に使える補助金制度の一覧も確認しておくとよいでしょう。

CIM対応の技術者を社内に育成するためには、国土交通省が提供するBIM/CIM講習や、建設業団体が主催する研修プログラムの活用が現実的です。

参考情報

よくある質問

CIMとBIMは何が違うのですか?
BIMは主に建築分野、CIMは土木分野で使われてきた用語です。現在は国土交通省が「BIM/CIM」として統合的に推進しており、いずれも3次元モデルに属性情報を付与して事業全体で活用するという基本的な考え方は共通しています。
CIMは義務化されているのですか?
国土交通省の直轄事業では2023年度から詳細設計へのBIM/CIM原則適用が始まっています。施工段階への適用も段階的に拡大しており、将来的にはより広範な工事で求められる方向にあります。
CIMの導入にはどのような準備が必要ですか?
3次元モデルを閲覧できるビューワーソフトの導入と、基本操作を担える人材の育成が最初のステップです。3次元測量データの取り扱いや、ICT建機との連携については、実際のプロジェクトを通じて経験を積みながら習熟していくのが一般的です。
中小建設会社がCIMを始めるにはどうすればいいですか?
まずはビューワーソフト(無料のものもあります)でCIMモデルを閲覧するところから始めましょう。発注者や設計コンサルが作成したモデルを施工時の参考資料として活用するだけでも、現場の理解が深まります。その後、自社でモデルを作成・納品する段階に段階的に移行するのが現実的なアプローチです。

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