建設業でのドローン活用 — 3つの主な用途
国内のドローン市場規模は2024年度に約5,000億円と推計されており、インフラ点検・測量分野の成長が特に顕著です。建設業でのドローン活用は年々拡大しており、国土交通省が推進するi-Constructionでもドローン測量は中核技術として位置づけられています。
1. 測量(写真測量・3D測量)
ドローンで上空から撮影した写真をソフトウェアで処理し、3D地形データを作成。従来の測量と比べて大幅な時間短縮が可能です。
| 項目 | 従来の測量 | ドローン測量 |
|---|---|---|
| 作業時間 | 3〜5日(1ha) | 半日〜1日(1ha) |
| 必要人数 | 2〜3名 | 1〜2名 |
| 精度 | 高精度 | 中〜高精度(用途により十分) |
| 安全性 | 危険箇所での作業あり | 遠隔操作で安全 |
| コスト | 50〜100万円/回 | 20〜50万円/回 |
ドローン測量の精度は、GCP(地上基準点)を設置することで数cm単位まで向上させられます。公共工事の出来形管理に求められる精度(一般的に5cm以内)にも対応可能です。2016年に国土交通省がUAVを用いた公共測量マニュアルを策定して以降、ドローン測量の活用は急速に広がりました。
国土交通省のi-Constructionでは、ICT活用工事でのドローン測量が推奨されています。公共工事でドローン測量を活用すると、工事成績評定での加点が期待できます。
2. 点検(屋根・外壁・橋梁・高所設備)
高所や危険箇所の点検にドローンを活用。足場を組む必要がなくなり、コストと安全性の両面で大きなメリットがあります。
国土交通省が管理する橋梁は約72万橋(2024年時点)で、建設後50年を超える橋梁の割合は2033年には約63%に達する見通しです。従来の近接目視が原則だった点検基準も2019年に改定され、ドローンやカメラ等の新技術の活用が認められるようになりました。
ドローン点検の活用例を挙げます。
- 屋根の損傷状況の確認(雨漏り調査)
- 外壁タイルのひび割れ・浮き検出
- 橋梁の下面・側面の点検
- 太陽光パネルの異常検出
- 高層ビルの外装点検
- 法面・斜面の崩落リスク調査
特に屋根点検では、従来は足場を組んで職人が登る必要があったため、1回の点検に10〜30万円の足場代がかかっていました。ドローンを使えば足場不要で30分〜1時間程度の飛行で点検が完了し、コストは数万円に抑えられます。
3. 工事記録・進捗管理
定期的にドローンで現場を撮影し、工事の進捗を記録。上空からの俯瞰写真は、地上からでは撮れない全体像を把握できます。
活用例として、
- 月次の進捗写真(定点観測)
- 竣工前後の比較写真
- 元請けへの報告資料
- 土量の変化計測(切土・盛土の進捗把握)
- 近隣説明会での現場状況の説明
工事の進捗を俯瞰で記録しておくと、元請けや発注者への報告がスムーズになるだけでなく、近隣住民への説明資料としても活用できます。施工前・施工中・施工後の3時点で撮影しておけば、竣工後のトラブル対応にも有効です。
ドローン導入に必要な資格・許可
国家資格(無人航空機操縦者技能証明)
2022年12月から無人航空機の国家資格制度がスタートしました。
| 資格 | 対象 | 試験内容 | 取得費用目安 |
|---|---|---|---|
| 一等無人航空機操縦士 | 目視外飛行・人口集中地区上空飛行等 | 学科+実地+身体検査 | 30〜50万円 |
| 二等無人航空機操縦士 | 基本的な飛行 | 学科+実地+身体検査 | 20〜40万円 |
建設現場での活用には二等資格があれば十分な場合が多いです。ただし、DID(人口集中地区)上空での飛行や目視外飛行が必要な場合は一等資格が必要です。
登録講習機関(ドローンスクール)で講習を受けてから試験を受ける方法と、直接試験を受ける方法がありますが、合格率を考えるとスクール経由がおすすめです。講習期間は二等で2〜5日、一等で10〜14日が一般的です。
機体登録制度
2022年6月から、100g以上のドローンは機体登録が義務化されました。国土交通省の「ドローン登録システム」でオンライン登録が可能で、登録手数料は1機あたり900円〜2,400円です。未登録のドローンを飛行させると、50万円以下の罰金が科される可能性があります。
飛行許可・承認
国家資格を取得しても、以下の場合は国土交通省への飛行許可・承認が必要です。
- 空港周辺での飛行
- 150m以上の高度での飛行
- イベント上空での飛行
- 危険物の輸送
- 物件投下
飛行許可の申請はDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)からオンラインで行えます。標準処理期間は約10開庁日ですが、余裕を持って飛行予定日の1ヶ月前には申請を出しておくのが安全です。
導入費用
| 項目 | 費用目安 |
|---|---|
| ドローン本体(測量用) | 50〜200万円(DJI Matrice等) |
| ドローン本体(点検・撮影用) | 15〜50万円(DJI Mini/Air等) |
| 測量ソフトウェア | 月額5〜20万円 |
| 登録講習機関(二等資格取得) | 数万〜20万円 |
| 登録講習機関(一等資格取得) | 40〜100万円 |
| 保険(賠償責任保険) | 年間2〜5万円 |
| 合計(測量用フルセット) | 約100〜300万円 |
| 合計(点検・撮影用ミニマム) | 約30〜80万円 |
ドローン本体+測量ソフトの購入費用は「ものづくり補助金」で申請可能。補助率1/2〜2/3、上限1,250万円。200万円のドローンセットなら、自己負担70〜100万円で導入できます。
詳しくは「建設業で使える補助金・助成金一覧」をご覧ください。
機体選定のポイント
ドローンの機体は用途によって最適な選択が異なります。
| 用途 | おすすめ機体クラス | 目安価格 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 現場の進捗写真 | 小型(DJI Mini 4 Pro等) | 15〜20万円 | 軽量で持ち運びやすい。249g以下は一部規制が緩和 |
| 屋根・外壁点検 | 中型(DJI Air 3等) | 20〜30万円 | 高画質カメラ搭載。風にも比較的強い |
| 測量 | 大型(DJI Matrice 350 RTK等) | 100〜200万円 | RTK対応で高精度。PPK後処理にも対応 |
| 橋梁点検 | 産業用(Skydio 2+等) | 50〜100万円 | 障害物回避性能が高い。狭所飛行対応 |
中小建設会社のドローン活用パターン
パターン1: 自社で導入する
| メリット | デメリット |
|---|---|
| いつでも使える | 初期投資が大きい |
| ノウハウが社内に蓄積 | 操縦者の育成が必要 |
| 長期的にコスト安 | 機体のメンテナンス・保険が必要 |
| 急な撮影依頼にも対応 | バッテリー管理・予備機の確保 |
パターン2: 外注する
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 初期投資ゼロ | 1回あたり10〜50万円の外注費 |
| 専門家の高品質な撮影 | スケジュール調整が必要 |
| 資格不要 | ノウハウが社内に残らない |
| 最新機体を使える | 天候による延期のリスク |
判断基準
年間10回以上ドローンを使う見込みなら自社導入がコスパ良いでしょう。それ以下なら外注のほうが合理的です。まずは外注で2〜3回使ってみて、効果を実感してから自社導入を検討する「段階的アプローチ」が失敗リスクを抑えられます。
導入ステップ
用途を明確にする
測量か、点検か、写真撮影か。用途によって必要な機体・スペックが異なる。
登録講習機関で資格を取得
二等資格の取得には2〜5日の講習+試験。費用は数万〜20万円。一等資格は40〜100万円。
機体を選定・購入
用途に応じた機体を選定。点検用ならDJI Mini/Air(15〜30万円)、測量用ならMatrice(100〜200万円)。
保険に加入
賠償責任保険は必須。年間2〜5万円。対人・対物で1億円以上の補償が目安。
小規模案件で実践
まずは簡単な現場写真撮影から。徐々に測量・点検に活用範囲を広げる。
ドローン運用の注意点
ドローンを安全に運用するために、以下の点を押さえておく必要があります。
飛行前の確認事項として、天候(風速5m/s以上は飛行中止が目安)、飛行エリアの確認(DID・空港周辺・飛行制限区域でないか)、バッテリー残量の確認(飛行時間の目安は15〜40分)があります。
事故が起きた場合は、国土交通省への報告義務があります。報告を怠ると罰則の対象になるため、万が一の事故に備えて報告手順を社内で共有しておくことが重要です。
また、建設現場の近隣に住宅がある場合は、飛行前に近隣への告知を行っておくとトラブル防止につながります。
建設業ドローン活用の具体的な成功事例
実際にドローンを活用して成果を上げた建設会社の事例を3社紹介します。
事例A: 年商20億円の中堅ゼネコン(従業員100名)
導入背景: 官公庁の土木工事が多く、毎回の出来形測量に多大な工数がかかっていた。測量業者への外注費も年間1,000万円を超えていた。
取り組み: DJI Matrice 350 RTKを2機導入し、測量専任のオペレーター2名が国家資格(一等)を取得。社内でドローン測量チームを設立し、全直轄工事のICT測量をインハウス化した。
結果: 測量外注費が年間1,000万円から400万円に削減(前年比60%減)。ドローン導入・資格取得コスト(約350万円)は初年度で回収できた。公共工事の工事成績評定でICT活用の加点も得られ、入札競争力も向上した。
事例B: 年商5億円の住宅リフォーム会社(従業員20名)
導入背景: 屋根の雨漏り調査・修理工事が主力事業だったが、毎回足場を組んで調査していたため、初期調査コストが高く、受注率に影響していた。
取り組み: DJI Air 3(20万円台)を1機導入し、営業担当者が二等資格を取得。問合せがあった物件の現地調査にドローンを活用するフローを確立した。
結果: 屋根調査の足場仮設が不要になり、調査コストを1回あたり15万円〜30万円削減。調査報告書に上空からの高解像度写真を添付できるようになり、顧客への説明がスムーズになった。調査から見積提出までの期間が平均5日から2日に短縮し、受注率が12%向上した。
事例C: 年商3億円のインフラメンテナンス会社(従業員15名)
導入背景: 橋梁・護岸の点検が主業務で、近接目視のために毎回大型足場や高所作業車を手配していた。費用・準備時間ともに大きな負担だった。
取り組み: Skydio 2+(産業用ドローン、60万円台)を導入し、橋梁下面など狭い空間での撮影ができる体制を整えた。撮影データをAIで解析するひび割れ検出ソフトと組み合わせて活用。
結果: 橋梁1橋あたりの点検費用が平均80万円から35万円に削減。点検期間も平均3日から1日に短縮した。AI解析でミクロ単位のひび割れも検出できるようになり、「見落とし」によるクレームリスクが大幅に低下した。
現場スタッフの教育とドローン運用体制の作り方
ドローンの導入は機体の購入だけでは完結しません。社内の運用体制を整えることが、安全で効果的な活用の前提になります。
社内オペレーターの育成
建設会社がドローンを内製化する場合、最低1名の資格保有者が必要です。ドローンスクールの選び方のポイントを整理します。
スクールを選ぶ際は、国土交通省の「登録講習機関」に認定されているかどうかを確認してください。認定機関での講習修了者は、国家試験の一部免除が受けられます(実地試験の免除)。
建設業向けのカリキュラムを持つスクールを選ぶと、測量や点検といった業務に直結した実践的なスキルが習得できます。単に「飛ばせるようになる」だけでなく、測量ソフトの操作や点検データの取り扱いまで学べるスクールを選びましょう。
受講費用の目安は二等で20〜40万円、一等で30〜50万円です。スクールによって差があるため、複数を比較することをおすすめします。
飛行記録と整備管理の仕組み化
国土交通省の規則により、ドローン飛行時には飛行記録(日時、場所、飛行時間、異常の有無等)を作成・保管する義務があります。また、100時間ごとまたは1年ごとの点検も法的に必要です。
これらの管理をExcelや紙で行っている会社も多いですが、フライトログ管理アプリ(DroneDeploy、Pix4Dなど)を活用すると記録の自動生成や点検リマインドが届くため、管理の手間が大幅に減ります。
外注パートナーの確保
「自社でドローンを持つ必要はない」という選択肢も有力です。特に測量用のRTK対応機材は高価であるため、外注パートナーとして測量ドローン専門の業者と関係を構築しておく方法もあります。
外注の相場感として、写真測量(1ha以内、1日)は15〜30万円、橋梁点検(1橋、4時間)は10〜20万円、現場進捗撮影(90分、写真+動画)は3〜8万円程度が目安です。
ドローンで変わる建設業の競争力
ドローンの活用は単なる「業務効率化」にとどまらず、建設会社の競争力そのものを変える可能性があります。特に入札・受注の観点で、ドローン活用による差別化が見えてきています。
公共工事のICT加点とドローン
国土交通省が推進するi-Construction(ICT活用工事)では、ドローン測量や3D施工管理を活用した工事に対して工事成績評定の加点があります。加点は直轄工事の工事成績に反映されるため、継続して公共工事を受注する建設会社にとっては「ドローン活用できる=評定が上がる=次の入札で有利」というサイクルが生まれます。
2024年度時点で、国土交通省直轄工事のICT施工の実施率は土工で約95%に達しており、ドローン測量を使えるかどうかが公共工事の受注力に直結する時代になっています。地方自治体の工事でも、ICT活用を評価する動きが広がっています。
元請けからの信頼獲得
下請け・専門工事会社の場合、ドローンで撮影した高品質な進捗報告写真や俯瞰映像を定期的に提供できると、元請けゼネコンからの信頼が高まります。「この会社に頼むと報告が丁寧で、現場管理がしっかりしている」という評価が次の発注につながります。
特に、ドローンで撮影した月次進捗の動画を元請けの工事担当者に共有する運用を続けることで、「現場を見に行かなくても状況が把握できる」という評価につながり、関係性の強化に役立ちます。
自社の強みとしてのPR
「ドローン測量に対応しています」という実績は、発注者向けの提案書や自社ウェブサイトでのPRポイントになります。同じ規模の競合他社がドローンを導入していなければ、差別化要因として機能します。
特に個人施主向けのリフォーム・外壁工事分野では、調査段階からドローンを使って「見えなかった場所まで確認してから提案します」という訴求は、顧客の安心感につながります。ドローン調査報告書を見積書に添付する運用で、受注率の向上を実現している会社が出てきています。
2026年のドローン法規制と最新動向
ドローンに関する法律・規制は年々変化しています。2026年時点の最新状況をまとめます。
レベル4飛行と建設業への影響
2022年12月から、国家資格(一等)取得と機体認証を条件に、目視外・第三者上空での飛行(レベル4飛行)が可能になりました。従来は人が多い市街地の上空でドローンを飛ばすことが難しかったのですが、一等資格を取得すれば適切な安全対策のもとで都市部のビル点検や橋梁点検が実施できるようになっています。
建設業への影響として、都市部の建設現場でも足場なしのドローン点検が可能になったため、高層ビルの外壁・屋上点検の市場が拡大しています。一等資格を持つオペレーターを社内に確保することで、この市場にアクセスできます。
第三者賠償保険の重要性
2022年の規制改正以降、飛行前の機体登録と保険加入の重要性が高まっています。万が一ドローンが墜落して第三者に損害を与えた場合、補償が必要になります。
建設業向けドローン保険の相場は、年間2〜5万円(対人・対物で1億円以上の補償)です。日本損害保険協会や各保険会社がドローン専用の保険商品を提供しています。現場でドローンを使う場合は必ず保険加入を確認してください。
ドローン情報基盤システム(DIPS2.0)の活用
2022年から全面移行したDIPS2.0(ドローン情報基盤システム)では、機体登録・飛行許可申請・飛行計画の届出がオンラインで一元管理できます。
建設現場でドローンを定期的に飛ばす場合、「包括申請」という形で3ヶ月〜1年間の飛行許可をまとめて取得できます。毎回申請する手間が省けるため、頻繁に使う会社は包括申請を活用してください。
ドローン点検の詳細と応用シーン
建設業でドローン点検の需要が最も高い応用シーンを詳しく解説します。
橋梁点検の実際
橋梁点検でのドローン活用は、特にコスト削減効果が大きい領域です。従来、橋梁の下面点検には足場・ゴンドラ・高所作業車が必要で、点検1橋あたり50万〜200万円のコストがかかっていました。
ドローンを使った点検では、障害物回避性能の高い産業用ドローン(Skydio 2+、DJI Matrice 350 RTKなど)を使って橋梁下面に接近し、4Kカメラでひび割れや錆の詳細写真を撮影します。コストは1橋あたり15万〜40万円程度と、従来の1/3〜1/5に抑えられます。
国土交通省が2019年に改定した「道路橋定期点検要領」では、「近接目視を基本としつつ、新技術の活用も可とする」とされており、ドローン点検の活用が公式に認められています。ただし、ひび割れ幅0.2mm以上の損傷を確認できる解像度と、適切な距離から撮影できる機動性が必要です。
外壁・屋根点検と保険調査
住宅・建築物の外壁タイルや屋根の損傷調査でのドローン活用も急拡大しています。
火災保険や地震保険の調査において、保険会社がドローン点検の結果を受理するケースが増えており、「ドローンで撮影した写真+損傷報告書」で保険申請が通るようになっています。これにより、リフォーム・メンテナンス会社では「ドローン調査→保険申請サポート→工事受注」というビジネスモデルが成立しています。
赤外線カメラ(サーモカメラ)搭載のドローンを使うと、外壁タイルの浮き(タイルと下地の間の剥離)を熱分布の差として可視化できます。通常の目視では発見困難な浮き部分を効率的に発見できるため、建物診断の精度が大幅に向上します。
太陽光パネルの異常検出
太陽光発電設備のメンテナンス市場でも、ドローン点検の需要が高まっています。太陽光パネルの異常(ホットスポット、セル割れ、汚損)は地上からの目視では発見困難です。
赤外線カメラ搭載のドローンで太陽光パネルを上空から撮影すると、発熱異常(ホットスポット)があるパネルが一目で判別できます。大規模太陽光発電所(メガソーラー)では、従来の地上点検(数日)がドローン点検(数時間)に短縮され、人件費コストの削減と見落とし防止の両方が実現します。
ドローン測量と従来の測量を使い分けるケース
ドローン測量はあらゆるケースで従来測量を上回るわけではありません。適切な使い分けが重要です。
ドローン測量が特に有効なケース
面積が広い場合(0.5ha以上)はドローン測量のアドバンテージが際立ちます。地上測量では2〜3日かかる1haの土地も、ドローンなら半日で撮影が完了し、後処理を含めても1日で3Dデータが完成します。
危険な地形(崖・急斜面・法面)の計測もドローンの得意分野です。人が踏み込めない急斜面でも上空から正確に計測できるため、安全性と精度を両立できます。
施工前後の比較計測(土量算定)にも強い。同じフライトルートで定期的に撮影することで、切土・盛土の進捗を定量的に把握できます。
従来測量が向いているケース
精度最優先の場合(ミリ単位の誤差が許されない境界測量等)は、トータルステーションによる地上測量が必要です。ドローン測量のGCP使用でもcm単位が限界で、境界確定測量には対応しません。
狭い場所(都市部の狭小地、地下)はドローンが飛べないため、地上測量一択です。また、木が茂った林内は上空からの写真に障害物が入り込み、点群データに欠損が生じやすいため、地上測量と組み合わせる必要があります。
ドローン導入で変わる書類・申請業務
建設現場でドローンを活用すると、工事に関わる書類・申請業務にも効率化の恩恵が及びます。
出来形管理図書の作成
国土交通省の公共工事では、施工後の「出来形管理図書」の提出が求められます。ドローン測量で得た3D点群データ(PCLまたはDEMデータ)と設計図面を比較することで、出来形の確認作業が大幅に効率化されます。
測量ソフト(Pix4D、DJI Terra、Agisoft Metashapeなど)は、ドローンで撮影した写真から3D点群を生成し、設計値との差分を自動計算してレポートを出力する機能を持っています。従来は現場に数回足を運んで測量・計算・図面作成を行っていた作業が、フライト1回と後処理作業で完結します。
工事写真管理の合理化
公共工事の工事写真は「撮影箇所・工種・施工状況」を整理して提出する義務がありますが、ドローンで撮影した俯瞰写真は「全体の施工状況」を一目で示せるため、写真台帳の構成をシンプルにできます。
地上から撮れない角度の写真(上空からの全体写真、高所の詳細写真)を系統立てて台帳に含めることで、工事内容の説明力が高まります。発注者や監督員への説明時間の短縮にもつながります。
近接目視に代わる点検書類
橋梁・法面・トンネル坑口など、近接目視が原則だった点検業務でも、ドローンを使った写真点検が認められるケースが増えています(国土交通省の点検要領改定による)。
ドローンで撮影した4K写真と座標データを組み合わせた点検報告書は、従来の近接目視点検と同等以上の情報を提供できる場合があります。ひび割れの座標位置と幅・長さをデジタルデータとして記録できるため、経年変化の追跡管理にも役立ちます。
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ドローンと組み合わせて活用される遠隔技術・インフラ点検DXは次の記事で深掘りしています。
- 遠隔臨場とは?建設現場での導入手順・必要機材・費用 — 国交省推奨の遠隔臨場(ウェブカメラ立会い)の実務手順、ドローンとの併用パターン
- 建設業のインフラ点検DX — 維持管理市場の最新動向 — 橋梁・トンネル・道路の点検にドローンとAIをどう組み合わせるか
- スマートグラスの建設現場活用ガイド — ドローン映像と現場ウェアラブルを連動した遠隔支援
- 橋梁点検にドローンを活用した事例5選 — コスト40%削減・点検期間3分の1 — 実際の橋梁点検プロジェクトでのドローン投入とコスト構造の事例
参考情報
- 国土交通省 無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール — ドローンの飛行ルール・許可申請
- DIPS2.0(ドローン情報基盤システム) — 飛行許可・機体登録のオンライン申請
- 国土交通省 i-Construction — ICT活用工事・ドローン測量の推進
- 国土交通省 UAVを用いた公共測量マニュアル — ドローン測量の技術基準
ドローン活用を社内提案するためのデータ
「ドローンを導入したい」と社内や経営者に提案する際に使えるデータと費用対効果の試算方法を整理します。
試算例: 屋根点検会社の場合
月に10件の屋根点検案件がある住宅メンテナンス会社で、現在は毎回足場仮設を行っている場合の比較です。
従来の方法では、調査用足場の仮設費用が1件あたり平均20万円かかっていたとします。月10件で月200万円のコスト。ドローン点検に切り替えると調査は足場不要になり、機体購入費(30万円)と二等資格取得費用(10〜20万円)の合計40〜50万円は約1ヶ月分の足場代削減で回収できます。
さらに、「ドローンで詳細な屋根状況を調査してから見積提出」という訴求で、近隣の競合他社との差別化ができます。「足場を組まずに調査できる」という顧客メリットも、問合せ率や受注率の向上につながります。
試算例: 土木工事会社の測量内製化
年間5回の測量を外部に発注している土木工事会社で、外注費の平均が1回40万円(年計200万円)の場合。
ドローン測量機材(DJI Matrice 350 RTK + 測量ソフト)の初期投資が約250万円、一等資格取得費用が40〜100万円とすると合計290〜350万円。年間の測量外注費200万円との比較では、1.4年(約17ヶ月)で投資が回収できる計算になります。
ただし自社で行う場合、オペレーターの時間コスト(飛行時間+後処理作業で1回あたり3〜4時間)も加味する必要があります。年間5回程度なら外注との差が縮まるため、自社の測量頻度を正確に把握してから判断することが重要です。
よくある質問
- 建設業でドローンはどのように使えますか?
- 主に3つの用途があります。測量(写真測量・3D地形データ作成)、点検(屋根・外壁・橋梁などの高所点検)、工事記録・進捗管理(定期的な俯瞰写真撮影)です。
- 建設業でドローンを使うにはどんな資格が必要ですか?
- 2022年12月から始まった国家資格制度で、二等無人航空機操縦士の資格があれば建設現場での基本的な活用には十分です。DID上空や目視外飛行が必要な場合は一等資格が必要になります。
- ドローン導入の費用はどれくらいですか?
- 点検・撮影用なら約30〜80万円、測量用フルセットなら約100〜300万円が目安です。資格取得費用は登録講習機関で二等が数万〜20万円、一等が40〜100万円。保険は年間2〜5万円です。
- ドローンを自社導入すべきか、外注すべきか?
- 年間10回以上ドローンを使う見込みなら自社導入がコスパ良いです。それ以下なら1回10〜50万円の外注費で対応するほうが合理的です。まずは外注で効果を確認してから自社導入を検討する方法もおすすめです。
- ドローン導入に使える補助金はありますか?
- ものづくり補助金(補助率1/2〜2/3、上限1,250万円)でドローン本体と測量ソフトの購入費用を申請できます。200万円のドローンセットなら自己負担70〜100万円で導入可能です。
- ドローン測量の精度は従来の測量と比べてどうですか?
- 中〜高精度で、GCP(地上基準点)を設置すれば数cm単位の精度が出せます。作業時間は従来の3〜5日(1ha)に対してドローンは半日〜1日で完了し、大幅な時間短縮が可能です。
- ドローンの機体登録は必要ですか?
- はい、2022年6月から100g以上のドローンは機体登録が義務化されています。国土交通省のドローン登録システムでオンライン登録が可能で、手数料は1機あたり900円〜2,400円です。未登録での飛行は50万円以下の罰金の対象になります。
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