この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「図面の最新版がどれかわからない」「構造と設備の干渉を施工段階で発見して手戻りが発生した」。2D図面ベースの業務でこうした問題を繰り返していた建設会社が、BIM(Building Information Modeling)を導入して設計品質と工期の両面で成果を出す事例が増えています。国土交通省は2023年度から公共工事でBIM/CIMの原則適用を開始し、2026年4月にはBIM図面審査の運用も始まる見込みです。「そろそろ対応しなければ」と感じている中小建設会社の経営者に向けて、主要5製品の機能・料金・得意分野を比較しながら、自社に合ったBIMソフトの選び方を整理しました。

BIMとCADの違い — 何が変わるのか

BIMの導入を検討するうえで、まず従来のCADとの違いを押さえておく必要があります。

比較項目2D CAD3D CADBIM
成果物2D図面3Dモデル3Dモデル + 属性情報
情報の内容線・寸法形状形状 + 材質・コスト・工程・仕様
図面間の整合性手動で管理部分的に連動モデルから各図面を自動生成
ライフサイクル対応設計段階のみ設計段階のみ設計から維持管理まで一貫活用
干渉チェック目視確認手動確認自動検出(配管と構造の干渉など)
データの再利用性低い(図面ごとに独立)中程度高い(一つのモデルからすべて出力)

CADは「図面を描くためのツール」であるのに対し、BIMは「建物の情報データベースを構築するツール」と考えるとわかりやすいでしょう。平面図・立面図・断面図がすべて一つの3Dモデルから自動生成されるため、ある図面を修正すれば関連するすべての図面に修正が反映されます。

設計段階で配管と梁が干渉している箇所を自動検出できるのもBIMの大きな利点です。国土交通省の調査によると、BIM活用によって施工段階の手戻りが平均20〜30%削減されたと報告されています。BIMの基本概念や建設業での活用メリットについては、ケンテクのBIM導入ガイドでも詳しく解説しています。

国交省BIM/CIM原則適用のスケジュール — 2026年以降の動き

BIMソフトの選定を急ぐ背景には、国土交通省による制度面の動きがあります。公共工事を受注する建設会社は、以下のスケジュールを把握しておくべきです。

年度主な動き対象範囲
2023年度BIM/CIM原則適用を開始国土交通省直轄の公共工事(小規模を除く)
2025年度BIM/CIMによる設計照査・監督・検査要領の標準化国土交通省直轄事業全般
2026年4月BIM図面審査の運用開始建築確認申請のデジタル対応
2029年(予定)BIMデータ審査の実現BIMモデルそのもので建築確認

2026年4月から始まるBIM図面審査は、BIMで作成した図面データによる建築確認申請を受け付ける仕組みです。現時点では「BIMから出力した図面」での審査ですが、2029年には「BIMデータそのもの」で審査する体制に移行する計画が進んでいます。

中小建設会社への影響

「うちは民間工事が中心だから関係ない」と考える経営者もいるかもしれません。しかし実態として、大手ゼネコンが下請けに対してBIMデータの納品を求めるケースが増えています。BIM/CIMの原則適用が進むほど、サプライチェーン全体でBIM対応が求められる流れは加速します。

BIMソフトを選ぶ際の判断基準

ここまで読んだ方へ

建設業のDX・採用・補助金活用について、無料でご相談いただけます。150プロジェクト以上の支援実績をもとに、御社に合った解決策をご提案します。

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BIMソフトは製品ごとに得意分野が大きく異なります。高額な投資になるため、自社の業務内容に合った製品を選ぶことが失敗を防ぐ最大のポイントです。

自社の業種・工種で選ぶ

BIMソフトは意匠設計向け、構造設計向け、設備設計向け、土木向けと専門分化しています。建築の意匠設計がメインならRevitかARCHICAD、設備設計ならRebro、鉄骨造の構造詳細設計ならTekla Structuresといった棲み分けがあり、「すべてに万能な1本」は存在しません。

自社が受注する工事の8割以上を占める分野に強いソフトを最優先で選ぶのが鉄則です。残りの2割は、IFC形式でのデータ連携で対応する方法が現実的でしょう。

取引先・協力会社との互換性

BIMのメリットは関係者間でモデルを共有できることにあります。ところが、元請けがRevitを使っているのに下請けが異なるソフトを使うと、データ変換のたびに情報が欠落するリスクが生まれます。

IFC(Industry Foundation Classes)というオープン規格でデータ交換は可能ですが、完全な互換性は保証されていないのが現状です。主要な取引先が使っているソフトを事前に確認し、同じソフトか、IFC連携の実績が豊富なソフトを選ぶことをおすすめします。

ハードウェア要件

BIMソフトは2D CADに比べてPCに求めるスペックが高くなります。Revitの推奨環境を例にとると、メモリ32GB以上、GPU搭載のワークステーションが必要です。既存のPCで動作しない場合、ソフト代に加えてハードウェアの更新費用も発生する点は見積もりに含めておく必要があります。

学習コストとサポート体制

BIMソフトの習得には一定の時間がかかります。2D CADの経験者でも、BIMの概念(オブジェクト指向のモデリング、属性情報の管理など)に慣れるまで3〜6か月、実務レベルで使いこなすまでは6か月〜1年が目安です。メーカーの研修プログラムやオンラインコミュニティの充実度も、ソフト選びの判断材料になります。

建設業向けBIMソフト5選 — 比較一覧

サービス名料金主な機能補助金対応
Autodesk Revit 年額約48万円(税込)
  • 意匠/構造/設備統合
  • ファミリ(部品)が豊富
  • Navisworks連携
  • クラウド連携(BIM 360)
対応
ARCHICAD 年額約35万円
  • 意匠設計に強い
  • 直感的な操作
  • BIMx(3Dビューア)
  • IFC対応が充実
対応
Rebro 要問合せ(買切り型あり)
  • 設備設計特化
  • 配管/電気/空調
  • 自動干渉チェック
  • Revit連携
対応
GLOOBE 要問合せ
  • 国産BIM
  • 確認申請対応
  • 日本の建築基準法準拠
  • 意匠設計向け
対応
Tekla Structures 要問合せ
  • 鉄骨/鉄筋/PC構造
  • 構造詳細設計
  • 製作図・加工データ出力
  • 施工計画連携
対応

上記5製品はいずれもデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象となりうるクラウド版・サブスクリプション版を提供しています。ただし補助金の対象可否は年度ごとに変わるため、申請前に公式サイトで最新情報を確認してください。

Autodesk Revit — BIMの世界標準

Autodesk社が提供するBIMソフトで、世界で最も広く使われている製品です。意匠設計・構造設計・設備設計を一つのプラットフォームで統合できる点が最大の強みとなっています。

Revitが業界標準になっている理由は明確です。大手ゼネコンの多くがRevitを採用しており、BIMデータの納品を求める際に「Revit形式(RVT)」を指定するケースが増えています。ファミリ(BIM部品)のライブラリも業界随一の規模で、建材メーカーや設備機器メーカーが公開している3Dモデルデータをそのまま取り込んで使えます。

Navisworksとの連携により、複数のBIMモデルを統合して干渉チェックを実行したり、4Dシミュレーション(3Dモデル+工程表の連動)で施工計画を視覚化したりすることも可能です。BIM 360(現Autodesk Construction Cloud)を使えば、クラウド上でモデルを共有し、現場と事務所の間でリアルタイムに情報をやり取りできます。

年額約48万円(税込)と高額な部類に入りますが、業界標準であることの安心感と、エコシステム(連携ソフト・部品ライブラリ・人材の確保しやすさ)の広さを考慮すると、投資に見合う選択肢といえるでしょう。

項目内容
開発元Autodesk
得意分野意匠/構造/設備の統合設計
年額ライセンス約48万円(税込)
推奨メモリ32GB以上
IFC対応入出力対応
主な連携ソフトNavisworks、AutoCAD、BIM 360

Revitに向いている会社

元請けゼネコンからRevit形式でのデータ納品を求められている企業、意匠・構造・設備を社内で一貫して設計する中〜大規模の設計事務所には第一選択肢となります。一方で、年額48万円に加えてハードウェアの更新費用も考慮すると、従業員数名の小規模事業者にはコスト負担が重い点は否めません。

ARCHICAD — 意匠設計者に支持される操作性

Graphisoft社が開発するBIMソフトで、建築の意匠設計に強みを持っています。Revitと並ぶ「2大BIMソフト」として、設計事務所を中心に高い採用率を誇ります。

ARCHICADの特徴は操作の直感性です。2D CADからの移行がスムーズな点が評価されており、「Revitは設定項目が多すぎて覚えきれないが、ARCHICADなら感覚的に使える」という声は設計者の間でよく聞かれます。デザイン性の高い建築プロジェクトで選ばれる傾向があるのも、この操作性の良さが理由です。

BIMx(ビマックス)という無料ビューアアプリが付属しており、施主や協力会社がスマートフォンやタブレットでBIMモデルを閲覧できます。施主へのプレゼンテーションや現場での図面確認に活用されており、「BIMモデルを共有するだけで施主の理解度が格段に上がった」という事例は少なくありません。

IFCへの対応も充実しており、Revitユーザーが多い現場でもIFC経由でデータ交換が可能です。年額約35万円と、Revitより13万円ほど安い点もコスト面での利点となります。

項目内容
開発元Graphisoft(Nemetschek Group)
得意分野建築の意匠設計
年額ライセンス約35万円
無料ビューアBIMx(スマホ/タブレット対応)
IFC対応入出力対応(Revitとの連携実績豊富)
教育支援学生版無料、オンライン学習コンテンツ充実

ARCHICADに向いている会社

デザイン重視の建築プロジェクトが多い設計事務所、施主へのプレゼンテーションを重視する企業に向いています。Revitに比べて学習コストが低いため、BIMを初めて導入する中小規模の設計事務所にも適した選択肢です。

Rebro — 設備BIMの国内トップシェア

NYKシステムズが開発する設備設計に特化したBIMソフトです。空調・衛生・電気の配管・ダクト・ケーブルトレイの3Dモデリングに特化しており、設備BIM分野では国内トップシェアを獲得しています。

設備設計の現場では、配管と構造体の干渉、ダクトと梁の干渉が深刻な手戻りの原因になります。Rebroはこの干渉チェック機能が充実しており、設計段階で問題箇所を自動検出します。「Rebroの干渉チェックで施工前に問題を発見できたおかげで、手戻り工事がほぼゼロになった」という声はユーザーから頻繁に寄せられています。

Revitとのデータ連携にも対応しているため、「意匠・構造はRevit、設備はRebro」という使い分けが多くの現場で採用されています。国産ソフトのため日本語サポートが手厚く、マニュアルや研修プログラムもすべて日本語で提供される点は、海外製品にはない安心感です。

項目内容
開発元NYKシステムズ
得意分野空調/衛生/電気の設備設計
価格要問合せ(買切り型あり)
干渉チェック配管-構造、ダクト-梁など自動検出
Revit連携対応(RVT/IFC双方)
サポート日本語対応(国産ソフト)

Rebroに向いている会社

設備工事を主力とする専門工事会社、設備設計事務所が主なターゲットです。意匠や構造のBIM化はRevitやARCHICADに任せ、設備部分をRebroで担当するという分業体制が現場では一般的な運用パターンとなっています。

GLOOBE — 日本の建築基準法に最適化された国産BIM

福井コンピュータアーキテクト社が開発する国産BIMソフトです。日本の建築基準法に準拠した設計チェック機能が標準搭載されており、確認申請に必要な図面・帳票の出力がスムーズに行えます。

海外製BIMソフトは日本の建築基準法への対応がアドオン(追加機能)任せになることが多いのに対し、GLOOBEは最初から日本の法規に合わせて設計されています。斜線制限、日影規制、容積率チェックといった日本固有の規制に対応した機能が標準で組み込まれている点は、確認申請業務を効率化したい設計事務所にとって大きな魅力です。

2026年4月のBIM図面審査開始に向けて、GLOOBEはBIMから確認申請図面を出力するワークフローを整備しています。日本の建築確認制度に最も親和性の高いBIMソフトといえるでしょう。

UI設計も日本の建築設計の実務フローに合わせて作られているため、「海外製ソフトのメニュー体系が理解しづらい」と感じる実務者にとって、導入のハードルが低い製品です。

項目内容
開発元福井コンピュータアーキテクト
得意分野日本の建築意匠設計・確認申請
価格要問合せ
建築基準法対応斜線制限/日影規制/容積率チェック標準搭載
IFC対応入出力対応
特徴日本語UI・日本の実務フローに最適化

GLOOBEに向いている会社

確認申請業務が多い中小建築設計事務所、初めてBIMを導入する事務所が主なターゲットです。海外製品に対する言語や操作の壁を感じる場合には、有力な選択肢になります。

Tekla Structures — 鉄骨・RC構造の詳細設計に特化

Trimble社が開発する構造詳細設計に特化したBIMソフトです。鉄骨、鉄筋コンクリート(RC)、プレキャストコンクリート(PC)の構造モデリングで業界トップクラスの精度を誇ります。

鉄骨ファブリケーター(鉄骨加工会社)での採用率が高く、BIMモデルから鉄骨の製作図や加工データを直接出力できます。CADで製作図を描き直す工程が不要になるため、設計から加工までのリードタイムを大幅に短縮可能です。

RC造の配筋モデリングでも高い精度を発揮し、複雑な配筋の干渉チェックや数量算出を自動化できます。大規模な建築プロジェクトで構造設計と施工計画を連動させる場合には、Tekla Structuresの精度が威力を発揮します。

項目内容
開発元Trimble
得意分野鉄骨/RC/PC構造の詳細設計
価格要問合せ
製作図出力鉄骨の製作図・加工データを直接出力
IFC対応入出力対応
主な連携Tekla Model Sharing(クラウド共有)

Tekla Structuresに向いている会社

鉄骨ファブリケーター、構造設計事務所、鉄骨造・RC造の施工を多く手がけるゼネコンがメインターゲットです。意匠設計には向いていないため、Revitとの併用が一般的です。

分野別・規模別のおすすめBIMソフト

5製品の得意分野を整理すると、自社の業務内容に合わせた選択基準が見えてきます。

自社の主要業務第一選択補足
意匠設計(ゼネコン連携が多い)Revit業界標準、データ互換性が最も高い
意匠設計(デザイン重視・中小規模)ARCHICAD学習コスト低、コストパフォーマンス良好
設備設計(空調/衛生/電気)Rebro国内設備BIMのデファクトスタンダード
確認申請重視の建築設計GLOOBE日本の法規チェック機能が標準搭載
鉄骨・RC構造の詳細設計Tekla Structures製作図出力まで一気通貫
大規模プロジェクト(統合運用)Revit + Rebro + Navisworks分野別ソフトをIFC/RVTで統合

従業員規模で見ると、10名以下の小規模事業者はARCHICADかGLOOBEの単体導入が現実的です。30名以上の中規模企業であれば、Revitを基盤として設備はRebro、構造はTeklaと分野別に最適なソフトを組み合わせる運用が効果を発揮します。

BIM導入にかかるコスト — 中小建設会社のリアルな試算

「BIMの導入にはいくらかかるのか」は、経営者が最も気にするポイントです。ソフトウェアのライセンス費用だけでなく、ハードウェア更新、人材育成、一時的な生産性低下まで含めた総コストを把握しておく必要があります。

コスト項目の内訳

コスト項目初年度の目安2年目以降
ソフトウェアライセンス35〜48万円/年(1ライセンス)同額
ハードウェア(PC更新)30〜50万円/台3〜5年ごとに更新
外部研修(メーカー研修・講習会)5〜30万円/人必要に応じて
社内教育の機会コスト通常業務の10〜20%を教育に充当段階的に縮小
導入コンサルティング(任意)50〜200万円なし

国土交通省の調査によると、国内企業のBIM関連投資の平均額は年間約856万円(ソフトウェア357万円、ハードウェア346万円、技術者育成153万円)です。ただしこれは大手〜中堅企業を含む平均値であり、中小建設会社が1〜2ライセンスで始める場合は、初年度100〜200万円程度が現実的な投資レンジとなります。

従業員15名の建築会社のコスト試算例

ケンテクが取材した従業員15名の建築会社のBIM導入事例では、以下のような初年度コストが発生しています。

項目金額
ARCHICAD ライセンス 2本約70万円
PC更新 2台(メモリ32GB/GPU搭載)約80万円
メーカー研修 2名約20万円
合計約170万円

この会社はBIM導入後1年で手戻り工事を80%削減し、工期を平均15%短縮しています。年間の手戻りコストが約300万円だったことを考えると、初年度で投資を回収した計算になります。

人材育成のコストと期間

BIM人材の育成は、ソフトの購入以上に重要な投資です。

段階内容期間の目安コスト
基本操作の習得3Dモデリング、図面出力1〜3か月メーカー研修5〜10万円/人
実務レベルへの移行属性情報管理、ファミリ作成3〜6か月OJT中心(外部研修は10〜20万円/人)
社内BIM管理者の育成運用ルール策定、テンプレート管理6か月〜1年コンサル費用50〜150万円(任意)

BIM導入に至らない理由として「習熟するまで業務負担が大きい」(59.3%)、「BIMを活用する人材がいない、または育成・雇用に費用がかかる」(51.8%)が上位に挙がっています。裏を返せば、人材育成の計画を最初に立てておくことが導入成功の鍵を握っているということです。

教育期間中は通常業務の生産性が10〜20%低下することを見込んでおくべきです。「繁忙期を避けて閑散期にトライアルを開始する」「最初の1プロジェクトは工期に余裕があるものを選ぶ」といった工夫で、業務への影響を抑えられます。

中小建設会社がBIMを始める実践ステップ

BIMの導入は「ソフトを買って終わり」ではありません。段階的に進めることで、失敗のリスクを最小限に抑えながら確実に定着させていけます。

1

情報収集・デモ参加

各メーカーの無料セミナーやデモに参加し、操作感と自社業務への適合度を確認します。取引先が使っているソフトもヒアリングしておくことが重要です。

2

トライアル導入(1プロジェクト限定)

工期に余裕があるプロジェクト1件を選び、BIMで設計を試行します。並行して2D CADでも図面を作成し、成果物を比較します。

3

社内人材の育成

メーカー研修を受講させたうえで、社内勉強会を定期開催します。まずは2〜3名のBIM担当者を育て、社内の推進役にします。

4

運用ルールの策定

ファイル命名規則、フォルダ構成、属性情報の入力ルールなどを文書化し、担当者によってモデルの品質がばらつかない仕組みを作ります。

5

本格運用・複数プロジェクトへ展開

トライアルで得た知見を踏まえて運用ルールを改善しながら、対象プロジェクトを順次拡大していきます。

ステップ1〜2に1〜3か月、ステップ3〜4に6か月〜1年、ステップ5で本格運用に移行するまで合計1.5〜2年程度を見込んでおくのが現実的なスケジュールです。建設業のDXを何から始めるべきか迷っている方は、BIMに限らず自社に合ったDXの優先順位を整理してみてください。

デジタル化・AI導入補助金でBIM導入コストを抑える

BIMソフトのサブスクリプション版(クラウド型)は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象になる場合があります。2026年度は補助率1/2〜2/3、補助額は最大450万円(通常枠)の制度が用意されています。

補助金活用のポイント

補助金を使えば、たとえばRevitの年額48万円のうち24〜32万円が補助される可能性があります。ハードウェア費用は対象外のケースが多いものの、ソフトウェアと研修費用をまとめて申請できる枠もあります。申請には「IT導入支援事業者」の登録が必要なため、ソフトの販売代理店が支援事業者かどうかを事前に確認してください。

国土交通省は建築BIM加速化事業として60億円規模の補助金制度も実施しており、複数事業者が連携してBIMデータを作成する場合にはソフトウェア購入費から講習費用まで幅広い経費が補助対象になります。建設業で使える補助金の全体像もあわせて確認しておくと、活用の幅が広がります。

2026年度の公募スケジュールはデジタル化・AI導入補助金の公式サイトで随時更新されています。

BIM Level 2(2024年義務化)への製品別対応状況

国土交通省は2023年度からBIM/CIMの原則適用を開始し、公共工事では「レベル2(複数のソフトで作成したBIMデータを統合管理する段階)」への対応が求められています。BIM活用のレベルは国際的に以下の4段階で定義されています。

BIMレベル内容主な要件
Level 02D CADによる設計紙またはデジタル2D図面
Level 12D CADと3D CADの混在中央ファイルサーバーでのデータ管理
Level 2各専門分野がBIMで設計し、統合モデルで干渉チェックIFCでのデータ交換、干渉チェック実施
Level 3全関係者がリアルタイムで統合BIMモデルにアクセスクラウド上での共同編集

2024年以降、国土交通省直轄の公共工事(小規模を除く)ではLevel 2相当のBIM/CIM活用が原則となっています。各製品のLevel 2対応状況を整理します。

製品Level 2対応統合モデル連携クラウド共有干渉チェック
Autodesk Revit完全対応BIM 360(Autodesk Construction Cloud)ありNavisworks連携で自動化
ARCHICAD完全対応BIMcloudありIFC経由での統合対応
Rebro対応(設備分野)Revit/ARCHICADと連携一部対応自動干渉チェック機能あり
GLOOBE対応(意匠)IFC連携一部対応他ソフトとのIFC統合で対応
Tekla Structures完全対応(構造)Tekla Model Sharingあり構造詳細の干渉検出に強い

Level 2対応で最も重要なのは「IFC形式によるデータ交換の信頼性」です。意匠・構造・設備の各担当者が異なるソフトを使っていても、IFC形式でデータを統合してNavisworksや専用ビューアで干渉チェックを行う体制が国内でも標準化しつつあります。

中小建設会社が入門できる低価格・クラウドBIM

「BIMを始めたいが、RevitやARCHICADは高額すぎる」という中小建設会社向けに、入門レベルのBIM体験ができる低価格・クラウド型の選択肢を整理します。

入門向けBIM/3D設計ツールの比較

ツール価格特徴向いている用途
Vectorworks Fundamentals年額約20万円2D/3D対応。BIM機能は限定的小規模建築の3D化の第一歩
BricsCAD BIM年額約9〜12万円AutoCAD互換+BIM機能2D CADユーザーのBIM入門
ARCHICAD Solo年額約10万円(1人用)ARCHICADの個人版。機能制限あり個人・小規模事務所
Autodesk Forma要問合せ(クラウド型)初期段階の設計・検討用企画・ボリューム検討段階
GLOOBE要問合せ(サブスク型あり)日本の法規対応。確認申請に強い申請業務を効率化したい小規模事務所

BricsCAD BIMは、AutoCADに近いコマンド体系でBIMモデルの作成が可能なため、「AutoCADは使えるがBIMは未経験」という担当者が移行しやすい選択肢です。年額9万円程度から導入でき、永久ライセンス版も用意されています。

ARCHICAD Soloは、フル版ARCHICADと同じエンジンで動作しますが、同時にプロジェクトを開ける数に制限があります。個人事業主や少人数の設計事務所では、Soloから始めてフル版へのアップグレードを検討するパスが費用負担を抑えられます。

無料ビューアを活用した段階的なBIM体験

BIMソフトの本格導入前に、まず「BIMモデルを閲覧する」だけであれば無料で始められます。

ビューア提供元特徴
BIMxGraphisoft(ARCHICAD)スマートフォン・タブレット対応。施主プレゼンに最適
Autodesk ViewerAutodeskブラウザ上でRVT/IFCを表示
Tekla BIMsightTrimble干渉チェック機能付き無料ビューア
IFC ViewerbuildingSMART等IFCファイルのオープンソースビューア

元請けや設計事務所からBIMモデルを受け取り、現場で確認したいという用途であれば、無料ビューアの活用から始めて、段階的にモデル作成能力を身につけていく方法が現実的です。

IT導入補助金・建設DX補助金との組み合わせ活用

BIMソフトの導入費用を抑えるために活用できる補助金は、デジタル化・AI導入補助金だけではありません。建設業に特化した補助スキームも整備されています。

活用可能な主要補助金

補助金名所管補助率補助上限BIMソフトの対象可否
デジタル化・AI導入補助金(通常枠)中小機構1/2450万円クラウド型は対象になりやすい
建築BIM加速化事業国土交通省2/3〜3/4数百万円規模ソフト・研修・PC等が対象
中小企業省力化投資補助金中小機構1/2〜2/31,500万円設備投資型(ソフト単体は不可)
事業再構築補助金中小機構1/2〜2/31,500〜7,000万円BIM化を伴う事業転換

建築BIM加速化事業は国土交通省が2022年度から実施しており、複数の事業者が連携してBIMデータを作成・活用するプロジェクトを対象にソフトウェア購入費、人材育成費、コンサルティング費用を補助します。2025年度も継続実施の見込みで、補助率は事業規模・連携者数によって変わります。

補助金を活用した具体的なコスト削減例

従業員20名の建築会社がARCHICADを2ライセンス導入した場合の試算です。

費用項目定価補助率2/3の場合の補助額実質負担
ARCHICADライセンス2本(年額)700,000円466,667円233,333円
PC更新2台600,000円補助対象外の場合あり600,000円
メーカー研修2名200,000円133,333円66,667円
合計1,500,000円600,000円900,000円

補助金を活用しない場合の150万円に対し、実質負担は90万円に圧縮されます。初年度で手戻り工事を削減できれば、数か月で投資回収が可能な計算です。

補助金の申請手続きは「IT導入支援事業者」を通じて行います。ソフトの販売代理店が支援事業者の登録を持っているケースが多いため、購入を検討するベンダーに確認してください。補助金の全体像については「建設業で使える補助金一覧」で解説しています。

BIMソフト選定でよくある失敗と対策

BIMの導入で失敗するケースにはパターンがあります。事前に知っておけば避けられる問題ばかりなので、自社の検討時にチェックリストとして活用してください。

よくある失敗原因対策
高額ソフトを買ったが社内で使える人がいない人材育成の計画なしに購入ソフト選定と同時に研修計画を策定
取引先とデータ交換できないソフトの互換性を事前確認せず主要取引先のBIM環境をヒアリング
1年使って更新を見送った効果を測定していないトライアル段階でKPI(手戻り件数、工期など)を設定
2D CADとの二重作業が続く一気に全面移行しようとして頓挫段階的な移行計画を立てる
BIMモデルの品質がばらばら運用ルールが未整備ファイル命名・属性入力のルールを文書化

とくに「人材育成の計画なしにソフトだけ買う」失敗は非常に多い事象です。ソフトの選定と研修プログラムの確保はセットで進めることをお勧めします。建設業のDX導入でよくある失敗パターンを事前に把握しておくと、同じ轍を踏むリスクを減らせます。

参考情報

よくある質問

BIMソフトの導入費用はどのくらいですか?
ソフトウェアのライセンス費用は年額35〜48万円程度(Revit、ARCHICAD等)が相場です。これに加えてPC更新費用が1台あたり30〜50万円、研修費用が1人あたり5〜30万円かかります。中小建設会社が1〜2ライセンスで始める場合、初年度の投資額は100〜200万円程度が目安です。
BIMは中小建設会社にも必要ですか?
国土交通省のBIM/CIM原則適用により、公共工事でのBIM活用は今後さらに加速します。2026年4月にはBIM図面審査も始まります。民間工事でも元請けからBIMデータの提出を求められるケースが増えており、取引先との関係を維持するためにもBIM対応の準備は進めておくべきです。
CADからBIMへの移行にどのくらい時間がかかりますか?
2D CADの経験があれば基本的な3Dモデリングは1〜3か月程度で習得可能です。属性情報の管理やファミリの設定まで含めた実務レベルに達するまでは6か月〜1年が目安です。メーカー研修の受講と社内でのOJTを組み合わせるのが効果的です。
RevitとARCHICADのどちらを選ぶべきですか?
大手ゼネコンとの協業が多い場合はRevitが安全です(Revit形式でのデータ納品を求められることが多いため)。デザイン性を重視する建築プロジェクトや、学習コストを抑えたい中小設計事務所にはARCHICADが向いています。どちらもIFC形式でのデータ交換に対応しています。
BIMソフトはデジタル化・AI導入補助金の対象ですか?
サブスクリプション型(クラウド版)のBIMソフトは補助金の対象になる場合があります。2026年度は補助率1/2〜2/3、最大450万円の制度が用意されています。また、国交省の建築BIM加速化事業(60億円規模)では、ソフト購入費から講習費用まで幅広い経費が対象になります。
BIMモデルは施工現場でどう使いますか?
タブレットでBIMモデルを表示して施工図の確認に使ったり、干渉箇所の事前確認や施工手順のシミュレーションに活用したりできます。AR(拡張現実)技術を使って現場にBIMモデルを重ね合わせ、施工精度を確認する活用方法も広がっています。

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