この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

建設業のDX、7割は「定着しない」

DXツールを導入した建設会社の多くが、導入後に「結局使われなくなった」「紙に戻った」という経験をしています。

総務省が2024年に公表した「デジタル・トランスフォーメーションによる経済へのインパクトに関する調査研究」によると、DXに取り組む企業のうち成果を実感できているのは約30%にとどまります。建設業はIT投資額が全産業平均を下回る傾向にあるため、ツールを入れたものの活用しきれていない企業の割合はさらに高いと見られます。

国土交通省は「i-Construction」として建設業のICT活用を推進しており、2025年度までにすべての直轄工事でICT施工を標準化する方針を掲げています。しかし、ICT施工の適用率は大手ゼネコンの大規模工事が中心で、中小建設会社への浸透は道半ばの状態です。

なぜ失敗するのか。よくある5つのパターンと、それぞれの回避策を整理しました。

失敗パターン1: ツールから入る

どういう状態か

「ANDPADが流行っているらしい」「同業者が使っていた」→ とりあえず導入 → 自社の課題と合っていない → 使われない → 解約

コンサルティングの現場でも見かける典型的なケースです。展示会やベンダーのデモを見て「これさえ入れれば解決しそう」と感じ、社内の課題を棚卸しせずに契約してしまうパターンが後を絶ちません。

なぜ起きるか

DXツールのベンダーは営業が上手い。デモを見ると「これさえ入れれば解決しそう」に見える。しかし、自社の課題が明確でないまま導入すると、ツールの機能と自社のニーズがズレる。

中小建設会社の場合、現場によって使うソフトがバラバラだったり、そもそもパソコンが苦手な社員が多かったりと、前提条件がベンダーの想定と合わないことが珍しくありません。結果として、導入費用だけかかって現場では誰も使わないまま月額料金を払い続けるケースも発生します。

回避策

課題から入ることが大切です。「現場写真の整理に月20時間かかっている」→ この課題を解決できるツールを探す。ツールを先に見るのではなく、課題を先に特定する。

具体的な手順

  1. 自社の業務で「最も時間がかかっている作業」を3つ挙げる
  2. それぞれの作業に月何時間かかっているか計測する
  3. 最も時間がかかっている1つに絞る
  4. その課題を解決できるツールを3つ比較する
  5. 無料トライアルで試す

この手順を踏むだけで、「とりあえず導入」の失敗を大幅に減らせます。ポイントは、ステップ2の計測です。感覚ではなく数字で把握することが、正しいツール選定の出発点になります。

課題を特定するためのヒアリングシート例

現場の社員に以下の質問をしてみてください。時間のかかる業務を具体化するきっかけになります。

質問回答欄
1日の中で最も面倒だと感じる業務は何ですか
その業務に毎日何分くらいかかっていますか
その業務を楽にするために何があれば助かりますか
書類の受け渡しで不便を感じる場面はどこですか
最近、手戻りが発生した原因は何でしたか

失敗パターン2: トップが使わない

ここまで読んだ方へ

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どういう状態か

社長が「DXやるぞ」と号令 → しかし社長自身はアプリを使わない → 管理職も「自分は別にいいだろう」 → 若手だけに押し付け → 若手も「上が使ってないのに何で自分だけ」 → 定着しない

なぜ起きるか

建設業の現場は「社長が見ているか見ていないか」で文化が決まる。社長が使わないツールは、社員も使わない。

国土交通省が2023年に行った「建設業におけるICT活用実態調査」でも、DXの取り組みが進んでいる企業ほど経営トップのコミットメントが強いという相関が報告されています。経営層が「号令を出すだけ」の企業と「自ら使っている」企業では、ツールの定着率に2倍以上の差があるとされています。

60代以上の経営者にとってスマホアプリを使うこと自体がハードルに感じられるケースもありますが、日報の閲覧や承認ボタンを押す程度であれば、操作は簡単です。「自分が率先して使う」という姿勢が全社に伝わることのインパクトは、業務マニュアルよりもはるかに大きいと言えます。

回避策

社長が最初のユーザーになることです。朝礼で「今日から私もこのアプリで日報を出します」と宣言する。社長が毎日使っていれば、社員も使わざるを得ない。

トップが取るべき具体的なアクション

タイミングやること
導入発表時朝礼で「私が最初に使います」と宣言
導入初日社長自身が日報をアプリで提出
導入1週間毎日アプリでコメント・承認を行う
導入1ヶ月経営会議でアプリのデータを使って報告する
導入3ヶ月「紙に戻さない」方針を改めて全社共有

失敗パターン3: 一気に全部やろうとする

どういう状態か

勤怠も施工管理も会計も写真も全部一気にデジタル化 → 現場が混乱 → 「前のやり方のほうが楽」 → 全部元に戻る

なぜ起きるか

「どうせやるなら一気に」は効率的に見えるが、現場の学習コストを無視している。50代・60代の職人にとって、1つのアプリを覚えるだけでも負荷が大きい。若手の育成と合わせてITリテラシーの底上げを図ることも重要です。

中小企業庁の調査によると、IT導入に成功した中小企業の約6割は「段階的に導入した」と回答しています。一方、「一括で導入した」企業のうち計画通りに定着したのは2割程度です。これは建設業に限った話ではなく、人がツールに慣れるには一定の時間が必要だという普遍的な課題です。

回避策

1つずつ進めましょう。最初の3ヶ月は1つのツールだけに集中する。例えば「まずは勤怠管理だけ」。それが定着してから次のツールに進む。

推奨スケジュール

期間やること定着の目安
1〜3ヶ月目勤怠管理のデジタル化全社員がスマホで打刻できる状態
4〜6ヶ月目現場写真・施工管理アプリ写真の自動分類と共有ができる状態
7〜9ヶ月目会計・原価管理月次の原価データがリアルタイムで確認できる状態
10〜12ヶ月目各ツールの連携・データ一元管理勤怠→原価→会計のデータが自動連携する状態

勤怠管理を最初に選ぶ理由は、毎日全社員が必ず使う業務だからです。全員が「アプリを開く」習慣を身につけるには、毎日触れるツールからスタートするのが最も効果的です。

段階導入で「小さな成功体験」を積む

各段階で「Before/After」を数字で記録しておくと、次のステップに進む際の社内説得材料になります。「勤怠集計が月3日→30分に短縮された」という事実があれば、「次は写真管理もデジタル化しよう」という提案に説得力が生まれます。

失敗パターン4: 現場の声を聞かない

どういう状態か

本社の管理部門がツールを選定 → 現場に「来月からこれを使え」と通達 → 現場の実態に合わない → 「こんなもん使えるか」と反発 → 定着しない

なぜ起きるか

本社が選んだツールと、現場で本当に必要な機能がズレている。特に建設業は現場によって状況が異なるため、「全社一律のツール」が合わないことが多い。

たとえば、本社が「図面の共有に便利」と判断して選んだアプリが、現場ではモバイル通信環境が悪くて使い物にならない、という事態は珍しくありません。山間部のトンネル工事やビルの地下工事では電波状況が極端に悪い場合がありますし、大きなファイルのダウンロードに何分もかかるような環境では「紙のほうが早い」となってしまいます。

回避策

パイロット運用でフィードバックを集めることです。まず1つの現場で2〜3週間試し、現場の声を聞いてから全社展開する。「使いにくい」「ここが足りない」というフィードバックを改善に反映することで、定着率が大幅に上がる。

パイロット運用の進め方

ステップ内容期間
1パイロット現場を1〜2つ選定する1日
2現場担当者にツールの趣旨と使い方を説明半日
3実際の業務でツールを使ってもらう2〜3週間
4使い勝手のフィードバックを収集(アンケート+面談)2日
5フィードバックを基にツールの設定を調整1週間
6全社展開の可否を判断し、展開計画を策定1週間

パイロット現場には、ITに詳しい若手だけでなく、50代以上のベテラン社員がいる現場を選ぶのがポイントです。ITリテラシーが低い社員でもスムーズに使えることが確認できれば、全社展開の際に「うちの現場では無理」という反発を抑えやすくなります。

フィードバックで聞くべき5つの質問

  1. このツールで一番使いやすかった機能は何ですか
  2. 使いにくかった点、改善してほしい点はありますか
  3. 従来のやり方と比べて、時間は短くなりましたか
  4. 他の現場にもこのツールを展開すべきだと思いますか
  5. ツールを使い続けるために必要なサポートはありますか

失敗パターン5: 効果を測定しない

どういう状態か

ツールを導入 → 「なんとなく便利になった気がする」 → 経営会議で「DXの効果は?」と聞かれる → 「えーと…」 → 「効果がないならやめよう」

なぜ起きるか

導入前に「何を改善するか」を数字で決めていない。効果測定の基準がないまま導入するため、成功も失敗も判断できない。

経済産業省が公表している「DXレポート」でも、DXの効果を定量的に測定できている企業は全体の4割に満たないと指摘されています。建設業は他産業と比べてIT部門や専任のDX推進担当を置いている企業が少ないため、効果測定が後回しになりがちです。

回避策

導入前にBefore数値を記録しておくことです。「現場写真の整理に月20時間」「日報作成に1日30分」「勤怠集計に月3日」。これをメモしておけば、導入後に「月20時間→月3時間に削減(85%減)」と明確に効果を示せる。

効果測定テンプレート

項目導入前(Before)目標(3ヶ月後)実績(3ヶ月後)削減率
現場写真の整理時間月__時間月__時間月__時間__%
日報作成時間日__分日__分日__分__%
勤怠集計時間月__日月__日月__日__%
残業時間月__時間月__時間月__時間__%
書類の手戻り回数月__回月__回月__回__%

効果を「見える化」して社内共有する

効果測定の結果は、経営会議だけでなく現場にもフィードバックしてください。「みなさんが使ってくれたおかげで、写真整理の時間が月20時間から3時間に減りました」と具体的な成果を伝えることで、現場のモチベーションが上がり、次のDX施策への協力も得やすくなります。

DX投資の費用対効果を経営層に説明する方法

経営層に対しては「投資回収期間」で語るのが効果的です。たとえば施工管理アプリに月額5万円(年間60万円)を投じ、現場監督の書類作業が月20時間削減されたとします。現場監督の時給を3,000円と仮定すると、月6万円分の工数削減効果が生まれ、年間72万円相当。つまり約10ヶ月で投資を回収できる計算です。こうした試算を提示できれば、「効果がないならやめよう」という議論を未然に防げます。

DX推進のための社内体制づくり

5つの失敗パターンに共通するのは「推進体制の不備」です。DXを成功させるために、社内にどのような体制を整えるべきかを整理します。

DX推進リーダーを任命する

専任でなくても構いませんが、「DXのことはこの人に聞く」と全社員が認識しているリーダーを1人決めてください。兼務で十分です。ITに強い若手社員を抜擢し、社長直轄で動かす形が中小建設会社には合っています。

月1回のDX定例ミーティングを開く

議題内容
定着状況の確認ツールの利用率を数字で確認する
困りごとの共有現場から上がっている課題を共有する
効果の報告Before/After数値を報告する
次のアクション翌月に何をやるかを決める

所要時間は30分で十分。このミーティングがあるだけで、DXが「やりっぱなし」にならず、PDCAが回り続けます。

補助金を活用してDX投資のリスクを下げる

DXツールの導入には費用がかかりますが、各種補助金を活用すれば自己負担を抑えることができます。

補助金名補助率上限額対象
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)1/2〜3/450〜450万円施工管理アプリ、クラウドストレージ等
小規模事業者持続化補助金2/350〜200万円業務効率化のためのIT投資
ものづくり補助金1/2〜2/3最大1,250万円生産性向上のための設備投資

※補助金の内容は公募回ごとに変わります。最新情報は各補助金の公式サイトでご確認ください。

詳しくは「建設業のIT導入補助金活用ガイド」をご覧ください。

よくある「定着しない」パターンの深掘り

DXツールが「定着しない」原因を、もう少し深く見てみます。失敗の表面だけを捉えず、根本原因を理解することが重要です。

「使いこなせない」と「使いたくない」は別物

ツールが定着しない理由として「使いこなせない(技術的な問題)」と「使いたくない(心理的な問題)」を混同しているケースがあります。

技術的な問題であれば、操作マニュアルの整備やベンダーの研修で解決できます。一方、心理的な問題——「監視されている感じがする」「今のやり方のほうが楽」「意味が理解できない」——は、いくら操作方法を教えても解決しません。

心理的な抵抗に対しては、「なぜこのツールを入れるのか」という目的の丁寧な説明と、「自分たちの仕事が楽になる」という実感を与えるアプローチが有効です。試験導入で「写真の整理が楽になった」という体験を積ませることが、最短の解決策です。

「便利だが使われない」ツールが生まれる理由

導入した側は「これは便利なはずだ」と思っているのに、現場では使われない——というケースは珍しくありません。この乖離は「設計者と使用者の視点の違い」から生まれます。

事務所の管理部門が「書類の提出状況を管理したい」という目的でツールを選んでも、現場担当者には「書類の提出をさらに管理されるようになった(締め付けが厳しくなった)」と映ることがあります。ツールの目的を「現場の負担を減らすため」に設定し直し、現場担当者が「自分にもメリットがある」と感じられる機能を前面に出す工夫が必要です。

DXツールのコスト試算と比較

導入を検討する建設会社が最も悩む「費用の妥当性」を判断するための試算方法を整理します。

施工管理アプリの費用対効果試算

施工管理アプリを導入した場合の費用対効果を、現場監督2名の会社を例に試算します。

導入前の状況:

  • 写真整理・台帳作成: 2名×月20時間 = 月40時間
  • 日報作成・集計: 2名×月10時間 = 月20時間
  • 書類作成・共有: 2名×月10時間 = 月20時間
  • 合計: 月80時間、時給3,000円換算で月24万円相当

施工管理アプリ導入後の見込み:

  • 写真整理は70%削減 → 月12時間
  • 日報作成は60%削減 → 月8時間
  • 書類作成・共有は50%削減 → 月10時間
  • 合計削減: 月50時間、月15万円相当

コスト比較:

  • アプリ月額: 5万円(2名分)
  • 削減効果: 月15万円
  • 純削減効果: 月10万円、年間120万円

この試算では、アプリ導入から即座に月10万円の費用対効果が生まれる計算になります。経営者向けには「月5万円の投資で月15万円の効率化」という表現で伝えると、投資判断がしやすくなります。

クラウド型と買い切り型の比較

DXツールには月額課金のSaaS型と、一度購入すれば使い続けられる買い切り型があります。建設業向けの施工管理ソフトは買い切り型も存在しますが、一般的にはSaaS型が現代の主流です。

比較項目SaaS型(月額課金)買い切り型
初期費用低い(0〜50万円)高い(100〜300万円)
月額ランニング高い(数万〜十数万円)低い(保守費程度)
5年間総コスト高くなる傾向安くなる傾向
バージョンアップ自動で最新版に都度費用が発生
カスタマイズ性低い高い
導入リスク合わなければすぐ解約できる投資が無駄になるリスク

中小建設会社には、初期リスクの小さいSaaS型がおすすめです。「試して合わなければやめられる」という柔軟性が、DX失敗リスクを下げます。3ヶ月から半年の無料トライアルや月次解約可能なプランを選ぶと、判断しやすい。

DXを成功させた建設会社の共通点

数多くの建設会社のDX事例を分析すると、成功している会社には共通した特徴があります。

特徴1: 「IT担当者」ではなく「DX推進委員会」を持っている

IT担当者が1人いるだけでは、その人が異動・退職した瞬間にDXが止まります。成功している会社は、経営者・管理職・若手の混合チームで定期的にDXの進捗を議論する場を設けています。

「月に一度、30分のDX定例ミーティング」だけでも、PDCAが継続します。チームで進捗を共有することで「やりっぱなし」を防ぎ、課題が出たときの解決スピードも上がります。

特徴2: 小さな成功を社内で「見える化」している

初期の成果を社内報告会や朝礼で共有している会社は、次のステップへの社内合意が取りやすくなっています。「先月、A現場で写真管理アプリを試したところ、月20時間の作業が5時間になりました」という具体的な報告は、他の現場担当者にも「やってみたい」という意欲を生みます。

数字での見える化が重要で、「便利だった」という感想レベルの報告では他のメンバーへの訴求力が弱い。「〇〇時間削減」「〇〇万円削減」という定量的な成果に変換することで、社内展開が加速します。

特徴3: ベンダーに頼りすぎない

ツールベンダーは「導入後のサポート」を売り文句にしていますが、完全にベンダー依存になると、担当者が変わったり契約が変わったりした際にリスクが生まれます。

自社でナレッジを蓄積するために、導入したツールの「使い方マニュアル」を社内で作る習慣が大切です。難しいものである必要はなく、A4一枚の「よくある操作メモ」でも十分です。

特徴4: 失敗を「学習機会」として扱う文化がある

完全な失敗はほとんどありません。うまくいかなかった部分を振り返り、「次にどうする」という方向に議論を向けられる文化が、DXの継続力を生みます。「一度試してダメだったからもうやらない」ではなく、「なぜダメだったか」を分析して次の施策に活かすアプローチが重要です。

中小建設会社がDXに成功した実例

失敗パターンを反面教師として、実際にDXに成功した中小建設会社の事例を3社紹介します。共通しているのは「準備」と「段階的実施」です。

成功事例A: 従業員30名の内装工事会社

状況: 現場担当者5名が毎日紙の日報を記入し、事務員が週次で集計してExcelに転記していた。集計作業に月8時間かかり、入力ミスも多かった。

取り組み: 課題を「日報の集計工数削減」に一点絞りし、スマホで入力できる日報アプリ1つを選定。月1回のDX定例ミーティングを設置し、社長が最初のユーザーとして毎日使い続けた。最初の1ヶ月は現場担当者への個別フォローを丁寧に実施。

結果: 3ヶ月で全担当者がスマホ日報に完全移行。月8時間の集計作業がゼロになった。成功体験が生まれたことで、翌年は施工管理アプリの導入にも挑戦し、現在は写真管理・工程管理もデジタル化されている。

成功事例B: 従業員50名の建築工事会社

状況: 施工管理アプリを3年前に導入していたが、利用率が20〜30%にとどまっていた。「忙しいから使えない」という声が多く、紙との二重管理が常態化していた。

取り組み: 利用率が低い原因をヒアリングで調査したところ、「アプリの操作が複雑すぎる」「写真をアップロードするのに時間がかかる」という具体的な問題が判明。アプリを乗り換えるのではなく、「現場担当者が使う機能を3つに絞る」という運用ルールの変更で対応した。

結果: 機能を絞ったことで抵抗感が減り、利用率が3ヶ月で20%から75%に改善。「難しそう」というイメージが「これくらいなら使える」に変わり、徐々に利用機能を広げる段階的アプローチが定着した。

成功事例C: 従業員15名の土木工事会社

状況: 社長がDXに前向きで、施工管理アプリ・クラウドストレージ・勤怠管理システムを一気に3つ同時導入した。しかし現場が混乱し、半年後には3つとも使われなくなった。

取り組み: 失敗を認め、仕切り直し。「最初の3ヶ月は勤怠管理だけ」と決め、他は凍結。社長が毎朝スマホで勤怠確認する姿を見せ続け、勤怠アプリの定着に集中した。定着した3ヶ月後、クラウドストレージの運用を開始。さらに3ヶ月後に施工管理アプリを再導入した。

結果: 1年がかりで3つのツールすべてが定着。一気に失敗した経験が「段階的に進める大切さ」を全社員に実感させ、次のDX施策への協力体制が整った。「失敗→学習→成功」のサイクルが社内文化として定着した。

DX推進を外部支援に相談するタイミング

社内リソースだけでDXを進めることに限界を感じたら、外部の専門家に相談することも有力な選択肢です。

活用できる公的支援制度

中小企業庁が運営する「よろず支援拠点」は、各都道府県に設置された無料の経営相談窓口で、DX推進に関する相談も受け付けています。IT導入を専門とするコーディネーターが在籍しており、自社の課題に合ったツール選定から導入計画まで、費用をかけずに相談できます。

「ITコーディネーター(ITC)」は国家資格ではありませんが、中小企業のIT化を支援する専門家の資格です。ITコーディネーター協会のウェブサイトで地域の有資格者を検索できます。

認定支援機関(税理士・中小企業診断士等)は、補助金申請のサポートだけでなく、DXの計画立案も支援しています。特にDXツールの導入と補助金申請をセットで進める場合、認定支援機関のサポートは欠かせません。

相談する際に準備しておくべき情報

専門家への相談を実りあるものにするために、以下の情報を整理してから臨むことをおすすめします。自社の現状(従業員数・主な業種・年商規模)、今困っている業務課題の具体的な内容(「月何時間かかっている」という数字つき)、過去に試みたDXツールとその結果、予算感(年間いくらまでの投資を検討しているか)が揃えば、的確なアドバイスを受けられます。

参考情報

よくある質問

建設業のDXが失敗する最も多い原因は何ですか?
最も多い失敗パターンはツールから入ることです。自社の課題が明確でないまま導入すると、ツールの機能と自社のニーズがズレて使われなくなります。課題を先に特定し、それを解決できるツールを探すことが重要です。
DXツールが現場で定着しないのはなぜですか?
主な原因は、トップ(社長)が使わない、一気に全部やろうとする、現場の声を聞かない、効果を測定しないなどです。社長が最初のユーザーになり、1つずつ段階的に導入することが定着の鍵です。
DXツール導入の効果をどう測定すればよいですか?
導入前にBefore数値を記録しておくことが重要です。現場写真の整理時間、日報作成時間、勤怠集計時間などを計測し、導入後3ヶ月で比較します。数字で効果を示せれば経営判断もしやすくなります。
現場の職人がDXツールに反発する場合はどうすればよいですか?
まず1つの現場で2〜3週間パイロット運用を行い、現場の声を聞いてフィードバックを改善に反映します。使いにくい点を具体的に聞いてベンダーに改善要望を出すことで定着率が上がります。
建設業のDXはどのような順番で進めるべきですか?
1〜3ヶ月目に勤怠管理のデジタル化、4〜6ヶ月目に現場写真・施工管理アプリ、7〜9ヶ月目に会計・原価管理、10〜12ヶ月目に各ツールの連携・データ一元管理という順番が推奨です。
DXツールの導入費用を抑える方法はありますか?
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)で費用の1/2〜3/4が補助されます。小規模事業者持続化補助金やものづくり補助金も活用可能です。まずは無料トライアルで試し、効果を確認してから正式契約するのが安全です。

参考情報


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