この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「DXをやりたい気持ちはあります。ただ、いくらかかるのかがさっぱりわからない」——中小建設会社の経営者から、こういう声を何度も聞いてきました。施工管理アプリのWeb広告を見て問い合わせると、営業担当者の説明が製品の機能の話ばかりで、「自社にかかる年間コスト」と「それで何が改善されるか」がなかなか見えてこありません。そのまま商談が進み、導入後に想定外のコストが積み上がって後悔する。これが建設業DXの典型的な失敗パターンです。

この記事では、建設業のDX投資にかかるコストを、ツールのカテゴリ別・従業員規模別に具体的な数字で整理します。補助金を活用したときの実質負担額の試算、投資回収までのROIシミュレーション、そして「どの順番で予算を積み上げるか」のロードマップまで、経営者が社内稟議を通せるレベルの情報をまとめました。

建設業DXに必要なツールカテゴリとコスト早見表

建設業のDXで導入されるツールは大きく7つのカテゴリに分かれます。全部を一度に導入する必要はなく、自社の課題に合わせて優先順位をつけるのが現実的な進め方です。まずはカテゴリ別のコスト感を把握することから始めましょう。

カテゴリ代表的なツール月額目安(1ユーザー)初期費用補助金対象
施工管理アプリANDPAD、Photoruction、工事クラウドEX3,000〜8,000円0〜50万円
勤怠管理KING OF TIME、ジョブカン200〜500円0〜10万円
会計・原価管理建設クラウド、勘定奉行クラウド7,750〜30,000円10〜50万円
見積・積算ソフトデキスパート、KIZUKU10,000〜30,000円30〜100万円
BIM/CADAutodesk Revit、ArchiCAD10,000〜50,000円50〜200万円
ドローン測量スカイマティクス、Terra Mapper月額3〜10万円(機器別途)50〜300万円
安全・労務管理グリーンサイト、安全衛生クラウド1,000〜3,000円0〜10万円

月額費用はユーザー数によって変動します。10名規模の会社が施工管理アプリを全社導入すると、月額は3〜8万円になるのが一般的です。また「初期費用0円」と表示されていても、導入支援費用・データ移行費用・社内研修費用が別途かかるケースは少なくありません。見積もりを取る際は「導入にかかる全費用の内訳」を明示してもらうことが重要です。

出典: 建設業における ICT 活用実態調査 — 国土交通省(2026-04-27確認)

ドローン測量だけは少し特殊で、ツールの月額ライセンスに加えてドローン機器本体(50〜200万円)やオペレーター育成コスト(資格取得費用:登録講習機関で二等が10万〜25万円、一等が30万〜100万円)が発生します。ドローン導入を検討する場合は、機器・資格・ライセンスをセットで総費用を試算することが必要です。

ツール別の費用構造と注意点

各カテゴリの費用感を理解する上で、「どこに費用が発生しやすいか」を押さえておくことが大切です。

施工管理アプリは、SaaS型の場合は初期費用が抑えられる製品が多いですが、現場写真の大量保存が前提となるためストレージ追加費用が発生するケースがあります。契約前に「写真の保存上限」と「超過時の費用」を確認することが必要です。

会計・原価管理ソフトは、建設業専用の機能(工事台帳・原価配賦・出来高請求)を持つものは専用設計のぶん割高です。汎用クラウド会計(マネーフォワードクラウド会計、freee会計など)と比べると月額2〜5倍程度の差があります。ただし建設業特有の帳票(工事別損益・完成工事高)が標準で出力できるため、専用ソフトを選ぶ価値は十分あります。

見積・積算ソフトは、買い切り型が主流でしたが近年はクラウド型への移行が進んでいます。買い切り型は購入後の法改正(建設業法改正・電子帳簿保存法対応など)に対応するためのアップグレード費用が別途発生することがあります。クラウド型であれば法改正対応は自動更新されるケースが多く、長期のTCO比較ではクラウド型の優位性が高まっています。

従業員規模別 DX投資の予算配分モデル

建設業のDX投資は、従業員規模によって適切な予算感が大きく異なります。「建設業だから○○万円」ではなく、「何名の会社が、何の課題を解決するために使うか」で試算するのが正確です。以下に3つの規模モデルを示します。

10名以下の会社モデル(月額3〜5万円から始める)

従業員10名以下の小規模建設会社では、DXの入り口として月額3〜5万円の範囲でスタートすることが現実的です。最初の1年は「施工管理アプリ + 勤怠管理」の2本柱に絞ることを推奨します。

ツールユーザー数月額
施工管理アプリ(例:ANDPAD)8ユーザー24,000〜32,000円
勤怠管理(例:KING OF TIME)10ユーザー3,000〜5,000円
合計(月額)27,000〜37,000円
年間ランニングコスト約32〜45万円
初期費用(概算)0〜30万円

1年目の総費用は、補助金なしで40〜75万円が目安になります。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用すると、1/2〜2/3の補助が受けられるため、実質負担は15〜38万円まで圧縮できます。

この規模では「まず試してみる」ことが最優先です。施工管理アプリを全現場に一気に展開するのではなく、特定の1〜2現場で3ヶ月試験運用し、定着してから全社展開するアプローチが失敗リスクを下げます。試験期間中のコストは月1〜2万円で抑えられるため、効果確認後に全社展開を決断できます。

10〜30名規模の会社モデル(月額8〜15万円)

この規模になると、施工管理に加えて会計・原価管理のデジタル化が経営インパクトの大きい投資になります。現場と事務所の情報連携が課題になりやすい規模帯でもあるため、ツール間の連携(データの二重入力をなくす)を意識したツール選定が重要です。

ツールユーザー数月額
施工管理アプリ20ユーザー60,000〜80,000円
勤怠管理30ユーザー9,000〜15,000円
会計・原価管理クラウド5ユーザー25,000〜75,000円
電子契約サービス全社5,000〜10,000円
合計(月額)99,000〜180,000円
年間ランニングコスト約120〜216万円
初期費用(概算)50〜150万円

1年目の総費用は補助金なしで170〜366万円となります。ただしものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)を組み合わせると、初期費用の最大2/3(小規模事業者の場合。中小企業は1/2)が補助されます。上限は従業員規模によって異なり、5名以下750万円、6〜20名1,000万円、21〜50名1,500万円です。積算ソフトや会計ソフトの入替えを同時に申請するなら、ものづくり補助金の活用を検討する価値があります。

この規模で特に重要なのが「ツール間のデータ連携」です。施工管理と会計が別々のシステムで動いている場合、現場の原価データを会計ソフトに手入力するという二度手間が発生します。APIでデータ連携できるツールの組み合わせを選ぶか、あるいは施工管理と会計の両機能を持つ統合型クラウド(建設クラウドEX等)を検討することで、データの一元化とコスト削減を同時に実現できます。

30名以上の会社モデル(月額20万円〜)

30名を超えると、BIM対応や複数現場の統合管理など、より高度なDX投資が競争力に直結します。この規模では「ツールをバラバラに導入する」よりも「プラットフォームを統合する」方向での投資設計が効率的です。

ツールユーザー数月額
施工管理アプリ(基幹)35ユーザー105,000〜175,000円
勤怠・労務管理40ユーザー12,000〜20,000円
会計・原価管理(ERPクラス)10ユーザー50,000〜150,000円
BIM/CIM対応CAD5ユーザー50,000〜250,000円
安全・グリーンサイト全社10,000〜30,000円
ドローン測量(ライセンス)30,000〜100,000円
合計(月額)257,000〜725,000円
年間ランニングコスト約310〜870万円
初期費用(概算)200〜500万円

30名以上の規模では、DXへの年間投資が500〜1,000万円を超えることもあります。この規模になると、補助金だけでなく「DXによって生まれる収益効果・コスト削減効果」をきちんと試算して経営判断を行うことが求められます。

元請けゼネコンや発注者からBIM対応を求められるケースも増えており、BIM/CIM未対応では入札参加要件を満たせない案件が増加しています。国土交通省の「BIM/CIM原則適用」方針では、当初2025年度としていた目標を前倒しし、2023年度から直轄工事・業務においてBIM/CIMの原則適用を開始しています。30名以上の規模で公共工事を主体とする建設会社は、BIM投資を「受注機会の維持」という観点からも優先度を上げる必要があります。

出典: BIM/CIM関連基準要領等 — 国土交通省(2026-04-27確認)

初期費用 vs ランニングコストの構造を理解する

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DXの費用を適切に把握するためには、「初期費用だけで判断しない」という視点が欠かせません。導入時に安く見えても、5年間のトータルコストでは高くつくケースがあります。

クラウドSaaS / オンプレミス / 買い切りの比較

形態初期費用月額コスト5年総コスト(目安)向いている規模
クラウドSaaS低(0〜50万円)中〜高(月3〜20万円)180〜1,200万円全規模
オンプレミス高(100〜500万円)低(保守費のみ)150〜700万円50名以上
買い切り(パッケージ)中(30〜200万円)低(バージョンアップ時のみ)50〜350万円10〜30名

クラウドSaaSはソフトウェアのアップデートや機能追加が自動で行われ、IT担当者がいない中小建設会社でも運用しやすいのが強みです。一方で、月額費用が長期にわたって発生するため、5年・10年のスパンで見るとオンプレミスより割高になることもあります。

オンプレミスは初期投資が重く、社内にサーバー管理ができる人材が必要です。建設業の中小企業では扱いにくいケースが多く、現在はクラウドSaaS移行の流れが主流です。

買い切り型のパッケージソフト(積算ソフトなど建設業専用ソフトに多い)は、購入後は月額費用がかかりませんが、バージョンアップや法改正対応のタイミングで追加費用が発生します。

総費用(TCO)の考え方 — 見えにくいコストを洗い出す

DXのトータルコスト(TCO)を正確に把握するには、ライセンス費用だけでなく以下のコストを含める必要があります。

コスト項目具体的な内容目安金額
導入支援費用ベンダーによる初期設定・データ移行10〜100万円
社内研修費用従業員への操作研修・マニュアル整備5〜50万円
社内推進コスト担当者の工数(既存業務との並走期間)月10〜30時間相当
他システムとの連携開発APIでのシステム連携・カスタマイズ0〜300万円
保守・サポート費用年間保守契約年10〜50万円

特に「社内推進コスト」は見落とされがちです。新しいツールを現場に定着させるまでの3〜6ヶ月間、担当者が現場への説明・フォロー・入力サポートに費やす時間は無視できません。20名規模の会社でDX推進担当者が月30時間をこれに使うとすれば、時給換算で月4〜6万円相当のコストです。TCOには必ずこの人的コストを含めて試算してください。

IT導入補助金・ものづくり補助金で実質コストを下げる

補助金を正しく活用すれば、DX投資の初期負担を大幅に圧縮できます。2026年時点で建設業のDXに活用できる主要補助金と、具体的な試算例を示します。

補助金情報の注意点

補助金の公募要件・補助率・上限額は年度や公募回によって変更されます。本記事の情報は2026年4月時点のものです。申請前に必ず各補助金の公式サイトで最新情報をご確認ください。

主要補助金の比較

補助金名補助率補助上限額対象経費の特徴申請のしやすさ
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)1/2〜2/3最大450万円SaaS・クラウドサービスの導入費・ライセンス費やさしい
ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)1/2〜2/3750〜2,500万円設備投資(ハードウェア含む)・システム構築ふつう〜難しい
中小企業省力化投資補助金1/2200〜1,500万円カタログ登録製品の購入やさしい

補助金活用シミュレーション(10〜30名規模モデル)

施工管理アプリ・会計ソフト・勤怠管理の3点セットをデジタル化・AI導入補助金で申請した場合の試算です。

費用項目補助金なしの実費補助額(補助率2/3)実質負担額
施工管理アプリ(初年度)800,000円533,000円267,000円
会計・原価管理クラウド(初年度)600,000円400,000円200,000円
勤怠管理(初年度)120,000円80,000円40,000円
導入支援費用500,000円333,000円167,000円
合計2,020,000円1,346,000円(約66%)674,000円

補助なしで約202万円かかるDX投資が、補助金活用後は約67万円まで圧縮されます。1年目の実質負担を67万円に抑えながら、2年目以降のランニングコスト削減効果(人件費・紙代・工数)で投資を回収していくのが、この規模での標準的なシナリオです。

補助金対応ツールを選ぶ際の確認ポイント

補助金を活用するには、いくつかの要件を満たすツールを選ぶ必要があります。デジタル化・AI導入補助金では「登録済みITツール」から選ぶ必要があり、全ての製品が対象になるわけではありません。

  • ツールがデジタル化・AI導入補助金の「登録ツール」に掲載されているか確認する
  • ベンダーが「IT導入支援事業者」として登録されているかを確認する(申請はベンダーと共同で行う)
  • ものづくり補助金の場合は、認定経営革新等支援機関(認定支援機関)の確認書が必要
  • 補助金の交付決定が出る前に契約・発注した費用は補助対象外になる(交付決定後に契約すること)

補助金活用の詳細な手順については、建設業のIT導入補助金活用ガイドをご覧ください。

出典: デジタル化・AI導入補助金 公式サイト — 中小企業庁

DX投資のROIをどう測るか

経営者が最も気にする「で、元が取れるの?」という問いに答えるためには、DX投資のROIを事前に試算しておく必要があります。建設業のDXは、主に「工数削減」「ミスの減少」「受注機会の拡大」の3つのルートでROIが生まれます。

工数削減による時間コスト換算

DXの効果として最も定量化しやすいのが、業務工数の削減です。施工管理アプリの導入効果について、ANDPADの導入事例では「図面共有の手間が月20時間削減」、ダンドリワークでは「報告書作成時間が75%削減」といった数値が報告されています(各社公式サイトの導入事例より)。これらを合算すると、1現場あたり月30〜60時間の事務処理削減が見込める計算です。

削減効果の項目削減時間(月)時給換算(2,500円)月間削減金額
日報・写真整理の電子化15時間37,500円37,500円
勤怠集計の自動化8時間20,000円20,000円
図面共有・連絡の効率化12時間30,000円30,000円
見積・積算の効率化10時間25,000円25,000円
合計45時間/月112,500円/月

月45時間の工数削減は、年間換算で約135万円のコスト削減に相当します。施工管理アプリ1本の年間ランニングコスト(10名規模で約40〜60万円)を大きく上回る効果が見込めます。

なお、工数削減効果の試算に使用する「時給」は、対象となる業務の担当者の実際の時給(残業代込みの実態賃金)を使うことが重要です。現場担当者の時給を1,500円と見積もるか2,500円と見積もるかで、効果試算が大きく変わります。厚生労働省「賃金構造基本統計調査(2024年)」では、建設業の所定内給与の月間実労働時間ベースの推計時給は2,000〜3,000円程度(役職・年齢によって異なる)とされています。保守的に2,000円で試算しても、月45時間削減で月9万円・年間108万円の削減効果が出ます。

出典: 令和5年賃金構造基本統計調査 — 厚生労働省、2024年

3年間ROIシミュレーション(10〜30名規模モデル)

項目1年目2年目3年目3年合計
DX投資コスト(補助金後)674,000円480,000円480,000円1,634,000円
工数削減効果(月11.25万円×12)1,350,000円1,500,000円1,650,000円4,500,000円
ミス・手戻り削減効果(推定)300,000円400,000円500,000円1,200,000円
累計効果合計1,650,000円1,900,000円2,150,000円5,700,000円
累計純効果(効果−コスト)+976,000円+1,420,000円+1,670,000円+4,066,000円

このモデルでは、補助金活用後の実質投資額167万円(3年間)に対して、3年間の効果累計が570万円となり、ROIは約3.4倍です。1年目で既に投資回収が完了し、2年目以降はほぼ純利益の増加につながります。

もちろんこれは試算であり、実際のROIはツールの定着率・現場の使いこなしレベルによって大きく変わります。「入れたけど使われなかった」というケースでは、この効果は得られません。

「導入後に失敗する」パターンとコスト回収できない原因

ROIを得られなかった建設業のDX事例には、共通するパターンがあります。

  • 現場が使わない — 導入前に「なぜ使うのか」の説明がなく、経営層だけが決めて現場が置いてけぼりになるケース。ツールは入ったが、結局紙に戻る
  • 誰も管理しない — DX推進担当者を決めないまま導入し、初期設定が中途半端なまま放置される
  • ツールが多すぎる — 複数のベンダーから勧められるままにツールを入れてしまい、データが各ツールに分散して結局Excelで集計する
  • 効果測定をしない — 導入前に「何をどれだけ改善するか」を決めていないため、改善されているかどうかがわからないまま月額費用だけが続く

これらの失敗を防ぐには、「ツールを選ぶ前に課題を決める」という順序が大切です。DX導入の進め方の詳細は建設業のDX、何から始める?で解説しています。

予算を段階的に積み上げるロードマップ

DX投資は一度に全部やる必要はありません。段階的に積み上げることで、リスクを抑えながら効果を確認しつつ投資を拡大できます。

Phase 1(0〜6ヶ月): 月額5万円以内で始める

最初の半年は、業務の中で最も工数がかかっている1つの領域だけに絞ります。大半の建設会社では「現場の情報共有・写真管理・日報」か「勤怠管理」が最初のターゲットになります。

取り組み目的予算目安
施工管理アプリの試験導入(1〜2現場)現場の情報共有・写真管理の効率化月1〜3万円
勤怠管理クラウドの全社導入時間外労働の可視化・集計自動化月0.5〜1万円
デジタル化・AI導入補助金の申請初期費用の2/3を補助金でカバー

Phase 1で重要なのは「小さく始めること」です。5名の現場で施工管理アプリを3ヶ月試験運用してから全社展開を決める、という進め方が定着率を高めます。

Phase 2(6ヶ月〜1年): 拡張投資

Phase 1で定着したツールを全社展開し、次のカテゴリへ投資を広げます。会計・原価管理のデジタル化が、この段階で経営インパクトの大きい投資になります。

取り組み目的予算目安
施工管理アプリの全社展開全現場への情報基盤整備月3〜8万円
会計・原価管理クラウドへの移行現場コストのリアルタイム把握月3〜10万円
電子契約サービスの導入契約業務の効率化・ペーパーレス化月0.5〜1万円
合計月6〜19万円

Phase 2の会計・原価管理クラウド導入は、ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)の対象になる可能性があります。会計ソフトの入替えと合わせて複数ツールを同時に申請すると、補助額を最大化できます。

Phase 3(1年〜): 統合・BIM化

ツール間のデータ連携と、BIMや測量ドローンの活用が次のステージです。この段階では「複数のツールを一元管理する」ための統合投資が焦点になります。

取り組み目的予算目安
BIM対応CADの導入(設計部門)国土交通省i-Construction対応・受注拡大月3〜15万円
ドローン測量の自社化外注費削減・測量精度向上機器購入100〜300万円
基幹システムとの連携開発施工管理→会計→給与の自動連携100〜300万円(一時費用)

Phase 3の投資は規模が大きくなるため、ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠)の活用を前提に計画を立てることが現実的です。認定支援機関(よろず支援拠点、商工会議所など)に相談しながら申請書を作成することを強く推奨します。

DX予算の年度計画への組み込み方

DX投資を経営計画に組み込む際は、「単年度のツール費用」ではなく「3〜5年の投資計画」として予算化することが合理的です。毎年度にツール選定から稟議を行うよりも、3年分の投資計画を一括で承認してもらうことで、スムーズに投資継続できます。

年次予算への組み込みの目安として、売上高対比で見ると建設業のIT投資比率は平均0.5〜1.5%程度です。DXを積極推進している企業は2〜3%を目安にしているケースもあります。年商3億円の会社であれば、年間150〜450万円をDX投資に充てることが、業界平均から見て現実的な水準です。

ランニングコストは経費として確定するため、資金繰り計画にも影響します。月額20万円のDXツール費用が固定費に加わることを、資金繰り表にあらかじめ反映させておくことが必要です。

予算申請時に経営者・会計担当者に伝えるべき論点

DX投資の予算を社内で通すためには、「IT費用」ではなく「経営投資」として説明することが重要です。会計担当者や役員に対して、以下の論点を整理して提示することで稟議が通りやすくなります。

費用対効果の説明方法

DX投資を稟議する際、「月額○万円のツールを入れたい」という提案の仕方では承認されにくいです。効果的な説明の枠組みは次の通りです。

「現在、施工管理の書類作成・写真整理に現場担当者1人あたり月20時間かかっています。施工管理アプリを導入することで、この工数を月8時間に削減できると試算しています。削減できる時間は月12時間、人件費換算で月3万円。現場担当者5名で換算すると月15万円の工数が削減できます。一方でツールの月額費用は3万円です。投資回収は3ヶ月以内に見込めます」という形で、現状コストと改善効果を数値で示すことが説得力を高めます。

損金算入・経費処理の観点

クラウドSaaSの月額費用は、一般的に「ソフトウェア使用料」として損金算入できます。一方、オンプレミスや買い切り型ソフトウェアは資産計上(無形固定資産として償却)が必要になることが多く、同じ金額でもキャッシュフローへの影響が異なります。

費用の種類会計処理節税・CF効果
クラウドSaaS月額料損金算入(費用処理)発生年度の法人税が軽減される
ソフトウェア購入費無形固定資産として5年償却初年度のキャッシュ負担が大きい
補助金収入受取補助金(益金)として計上課税対象。圧縮記帳を検討

補助金は原則として課税対象の収入として計上されますが、圧縮記帳という会計処理を使うことで、その年の課税を抑えることができます。補助金を受け取る前に、顧問税理士に圧縮記帳の適用可否を確認しておくと良いでしょう。

2024年問題・週休2日対応としての説明

建設業の2024年問題(時間外労働の上限規制)への対応として、勤怠管理のデジタル化は「コンプライアンス対応のための必須投資」と位置づけることができます。「DXをやりたいから」ではなく「法律で求められているから」という説明は、経営陣の理解を得やすい切り口です。

週休2日・残業規制への対応投資は、補助金の採択審査でも「必要性が高い」と評価されやすい傾向があります。勤怠管理ツールをデジタル化・AI導入補助金で申請する際は、「2024年問題への対応」という文脈で事業計画書を書くことが採択率向上につながります。

出典: 建設業における働き方改革の取組について — 国土交通省(2026-04-27確認)

まとめ — DX予算の立て方3つの原則

建設業のDX投資で予算を正しく立てるための原則をまとめます。

最初は1カテゴリに絞る。 施工管理か勤怠か、最も工数のかかる業務を1つ選んで始めることが、定着率と投資回収の両方を高めます。10名以下なら月3〜5万円から始められます。

次に補助金を必ずセットで考えることです。2/3の補助が受けられるデジタル化・AI導入補助金を活用すれば、初年度の実質負担を大幅に圧縮できます。ツール選定の前に、補助金対象かどうかを確認する習慣をつけてください。

そして効果測定の仕組みを最初に決めることです。「導入後3ヶ月でどの業務が何時間減ったか」を計測できる体制を作ってから導入する。効果が見えない投資を続けることは経営のリスクです。

DX投資は「コスト」ではなく「インフラへの投資」です。整備することで受注できる現場が増え、採用できる人材の幅が広がり、現場の安全も高まります。予算が読めないから手が出せない状態から抜け出すために、まず1つのツールの見積もりを取ることから始めてみてください。


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参考情報

よくある質問

建設業のDX投資はいくらから始められますか?
10名以下の小規模建設会社であれば、施工管理アプリと勤怠管理の2本柱で月額3〜5万円から始められます。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用すると、初年度の実質負担を15〜38万円程度に抑えることが可能です。
DX投資に使える補助金は何がありますか?
建設業のDXに活用できる主な補助金は、デジタル化・AI導入補助金(最大450万円・補助率最大2/3)、ものづくり補助金(製品・サービス高付加価値化枠、最大2,500万円)、中小企業省力化投資補助金(最大1,500万円)の3つです。クラウドサービスの導入にはデジタル化・AI導入補助金が最も使いやすい選択肢です。
DX投資の回収期間はどのくらいですか?
補助金を活用した場合、10〜30名規模の建設会社では1年目で投資回収が完了するケースが多いです。施工管理アプリ・会計ソフト・勤怠管理を導入した場合、工数削減効果だけで月11〜15万円相当が見込め、3年間のROIは3〜4倍になる試算があります。ただし、ツールが現場に定着しない場合はこの効果は得られません。
DX予算の稟議を通すコツはありますか?
「IT費用を導入したい」ではなく「現在○○に月△△時間かかっているが、ツール導入で◇◇時間削減でき、人件費換算で月□万円の効率化になる」という工数削減の数値で説明することが効果的です。また、2024年問題(時間外労働上限規制)への対応という切り口で説明すると、経営陣の理解を得やすくなります。