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用語集

3Dスキャナー

すりーでぃーすきゃなー

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

測量3日分の作業を半日で——建設業における3Dスキャナーの実力

従来のトータルステーションやレベル測量では、計測したいポイントを1点ずつ測定するため、広い範囲のデータ取得には数日がかりの作業と複数の測量技術者が必要でした。3Dスキャナーはこの状況を一変させます。レーザー光や構造化光を照射し、対象物までの距離を1秒間に数万〜数百万ポイント計測して、高密度の点群データ(ポイントクラウド)として3次元形状を丸ごと取得できる計測機器です。

地形測量、構造物の出来形管理、既存建物の現況把握など、建設業の幅広い場面で活用が広がっており、国土交通省が推進するi-Constructionの枠組みでも3次元計測技術は中核的な位置づけを与えられています。

なぜ重要か

建設業における測量・計測業務は、工事の品質を左右する基盤となる作業です。従来のトータルステーションやレベル測量では、測定したいポイントを1点ずつ計測する必要があり、広い範囲の詳細なデータを取得するには多大な時間と人手がかかっていました。

3Dスキャナーは面的に大量のデータを一括取得できるため、測量作業の効率が飛躍的に向上します。取得したデータの精度も高く、ミリメートル単位の計測が可能な機種もあります。

国土交通省が推進するi-Constructionでは、ICT活用工事において3次元計測データの活用が求められています。出来形管理の効率化、設計との照合、維持管理データの蓄積など、3Dスキャナーで取得したデータの活用場面は今後さらに広がると見込まれています。

2024年度の国土交通省の調査では、ICT活用工事の実施件数が前年比で約15%増加しており、3次元計測を含むICT技術の導入が着実に拡大しています。

具体的な内容・仕組み

建設業で使われる3Dスキャナーは、主に地上型レーザースキャナー(TLS)とハンディ型スキャナーの2種類に大別されます。

地上型レーザースキャナーは三脚に据え付けて使用するタイプで、広範囲の計測に適しています。1秒間に数万〜数百万のポイントを計測でき、数百メートル先の対象物もスキャン可能です。土木工事の出来形管理や大型構造物の計測に広く使われています。

ハンディ型スキャナーは手で持って動かしながら計測するタイプで、屋内空間や入り組んだ場所の計測に適しています。操作が比較的簡単で、建築現場での改修工事前の現況調査などに活用されています。

取得した点群データの活用フローは以下のように進みます。

ステップ内容
計測3Dスキャナーで対象物・空間をスキャン
データ処理点群データのノイズ除去、位置合わせ(レジストレーション)
モデル化点群データから3Dモデル(メッシュ・BIMモデル)を作成
活用出来形管理、設計との照合、維持管理データとしての蓄積

BIMとの連携も進んでおり、3Dスキャナーで取得した既存建物の点群データからBIMモデルを作成する「スキャン to BIM」の手法が、改修工事やリノベーションの設計で活用されています。

建設業における具体的な活用事例

事例1:橋梁補修工事の現況把握(土木)

ある地方建設会社が橋梁補修工事に地上型レーザースキャナーを導入した事例があります。従来は測量技術者2名が3日かけて実施していた橋梁全体の現況計測が、3Dスキャナーを使うことで半日に短縮されました。計測精度は±1mm以内に収まり、補修箇所の正確な数量算出が可能になりました。

工数削減の効果として、現地調査にかかる人件費が従来比で約60%削減されたとのことです。得られた点群データは設計事務所との協議にも活用され、変更設計の手戻りがゼロになる成果につながりました。

事例2:工場建屋の改修工事(建築)

築50年の工場建屋を改修する際、既存図面が存在しなかったため、ハンディ型スキャナーで建屋内部を計測した事例です。従来であれば手作業の実測に5日程度かかる規模を、スキャナーで1日で完了させました。取得したデータからBIMモデルを自動生成し、設備の干渉チェックを設計段階で実施。施工後に判明する設備の位置ズレが従来工事と比べて70%減少したと報告されています。

事例3:トンネル断面管理(土木)

ICT活用工事の先進事例として、山岳トンネル工事での断面形状管理があります。掘削直後の断面をスキャナーで計測し、設計断面との差分をリアルタイムに確認することで、余堀りの発生を抑制しました。従来比で余掘り量が約20%削減され、コンクリート使用量の削減と工期短縮を同時に実現しています。

類似概念との違い:3Dスキャナーとドローン測量

3Dスキャナーとよく比較されるのがドローン測量(UAV測量)です。両者は異なる強みを持っています。

ドローン測量は上空から広範囲の地形データを効率よく取得することに長けています。数十ヘクタールの現場でも短時間でデータを取得でき、土木工事の起工測量や出来形管理に向いています。

一方、3Dスキャナーは地上から構造物や屋内空間を高精度に計測するのが得意です。精度の面では3Dスキャナーの方が優れており、トンネル内壁の変位計測や橋梁の詳細点検、既存建物の現況調査などでは3Dスキャナーが選ばれます。

比較項目3Dスキャナードローン測量
計測精度±1〜5mm(高精度)±3cm程度
得意な対象構造物・屋内空間広範囲の地形
主な活用場面補修点検・改修設計・トンネル起工測量・出来形管理
費用感高め(スキャナー本体が高価)比較的安価な委託も可能

実務上はドローン測量で広範囲の地形を把握し、詳細な構造物計測には3Dスキャナーを使うという組み合わせが効果的です。

導入コスト・費用の目安

3Dスキャナーの機器価格は種類と精度によって大きく異なります。

地上型レーザースキャナー(TLS)は、エントリーモデルで200〜500万円、高精度モデルでは1,000〜3,000万円程度の価格帯です。測量精度が高いほど価格も上がり、長距離計測に対応したモデルは特に高額になります。

ハンディ型スキャナーは50〜300万円程度の製品が多く、用途に応じて選択肢があります。スマートフォンに搭載されたLiDARセンサーを活用した簡易的な3Dスキャンアプリも登場しており、精度は低いものの低コストでの活用が可能です。

機器を購入せずに計測を外注する方法もあります。3Dスキャン計測サービスの相場は、建物1棟あたり10〜50万円程度が目安です。案件ごとに外注するのか、機器を購入して内製化するのかは、年間の計測件数と費用対効果を計算したうえで判断するとよいでしょう。

IT導入補助金やものづくり補助金を活用すれば、導入コストの一部を補助してもらえます。補助金制度の詳細は補助金一覧ページを参照してください。

最新動向(2024〜2026年)

AIとの連携による自動化

2024年以降、点群処理ソフトウェアにAIが組み込まれ、ノイズ除去や構造物の自動認識精度が大きく向上しています。従来は熟練技術者が手作業で行っていた点群データの編集が自動化され、処理時間が半分以下に短縮されるケースも出てきています。

スマートフォンLiDARの実用化

iPhone ProシリーズやiPad ProシリーズにLiDARセンサーが搭載されたことで、専用機器がなくても簡易的な3Dスキャンが可能になりました。精度は専用機器には及びませんが、現場の簡易計測や施主への説明用モデル作成には十分実用的で、中小建設会社での活用が広がっています。

BIM/CIMとの統合深化

国土交通省が推進するBIM/CIM原則化の流れに伴い、3Dスキャナーで取得した点群データをそのままBIM/CIMモデルの作成に活用するワークフローが整備されています。2025年度からは一部の直轄工事で、竣工時の点群データ納品が義務化されており、今後さらに普及が加速する見込みです。

デジタルインフラ管理への応用

インフラ老朽化対策の観点から、橋梁やトンネルの定期点検に3Dスキャナーを活用する自治体が増えています。過去のスキャンデータと現在のデータを比較することで、変状の進行を定量的に把握するシステムの導入も進んでいます。

よく混同される概念・注意点

点群データとBIMモデルの違い

3Dスキャナーで取得できるのは「点群データ」であり、そのままではBIMモデルとして利用できません。点群データをBIMモデルに変換するには専用ソフトウェアと一定の技術スキルが必要です。「スキャンすればすぐBIMができる」という誤解が多いため、導入前に変換工程の理解と人材確保を計画に含めておくことが重要です。

計測範囲と精度のトレードオフ

3Dスキャナーは広い範囲を計測するほど精度が低下する傾向があります。1回のスキャンで広範囲をカバーしようとせず、複数のスキャンデータをレジストレーション(位置合わせ)することで全体の精度を保つ手法が一般的です。適切なスキャン計画なしに計測すると、後工程でデータ活用できない事態が起きるため、事前の計測計画が重要です。

屋外環境での制約

レーザー式の3Dスキャナーは、雨天時や直射日光が強い条件では計測精度が低下することがあります。特に屋外の大規模計測では、気象条件や時間帯を考慮したスケジューリングが必要です。また、動いている物体(人、車両など)はノイズとして計測されるため、計測中の立入制限も検討が必要です。

中小建設会社への影響

3Dスキャナーの機器価格は数百万円から数千万円と幅がありますが、近年はスマートフォンに搭載されたLiDARセンサーを活用した簡易的な3Dスキャン技術も登場しており、導入のハードルは下がりつつあります。

機器を購入するのではなく、計測作業を専門の測量会社に外注する方法もあります。3Dスキャンの計測サービスを提供する会社は増えており、必要な場面だけ外部に依頼するのも現実的な選択肢です。

ICT活用工事への対応を求められる場面が増えている中で、3Dスキャナーの活用は中小建設会社にとっても他人事ではなくなっています。まずはスマートフォンの3Dスキャン機能を試してみるなど、技術に触れる機会をつくることが第一歩です。

公共工事の受注を続けていくためには、i-Constructionへの対応能力が問われる場面が増えています。3Dスキャナーを使いこなせる技術者の育成と、外注先ネットワークの構築を、中長期的な経営課題として捉えることが重要です。

参考情報

よくある質問

3Dスキャナーのデータを扱うのに専門知識は必要ですか?
スキャン自体は機器の操作マニュアルに従えば比較的短期間で習得できます。一方、取得した点群データの処理(ノイズ除去、レジストレーション、モデル化)には専用ソフトウェアの操作スキルが必要です。メーカーやベンダーが提供する研修プログラムを活用して段階的にスキルを身につけるのが一般的です。
ドローン測量と3Dスキャナーはどう使い分けますか?
ドローン測量は上空から広範囲の地形データを取得するのに適しており、土木工事の起工測量や出来形管理に向いています。3Dスキャナーは地上から構造物や屋内空間を高精度に計測するのが得意です。橋梁の点検、トンネル内壁の計測、既存建物の現況調査などでは3Dスキャナーが力を発揮します。
中小建設会社が3Dスキャナーを導入する際の現実的な手順は?
まずはスマートフォンのLiDARを使った簡易計測から始め、現場での活用イメージをつかむことをおすすめします。その後、外注サービスを試してコストと効果を検証し、年間の計測件数が増えてきたタイミングで自社保有を検討するという段階的なアプローチが現実的です。IT導入補助金などの活用も検討してください。

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