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用語集

IoT

あいおーてぃー

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

熱中症ゼロ、重機の遊休40時間→12時間 ── 現場を変えるセンサーの力

夏の建設現場で作業員が熱中症で倒れる。重機が遊んでいるのに別の現場ではレンタルを追加する。人の目と経験だけでは管理しきれない現場の課題を、IoT(Internet of Things)のセンサー技術が解決し始めています。

IoTとは、パソコンやスマートフォンだけでなく、建設機械、センサー、カメラ、作業員が身につけるデバイスなど、あらゆる「モノ」をインターネットに接続し、データをリアルタイムに収集・分析・活用する仕組みを指します。「モノのインターネット」と訳されます。

建設業においてIoTは、現場の安全管理、施工品質の向上、重機の稼働管理など幅広い領域で活用が進んでいます。

目視と経験に頼る現場管理の限界

建設現場は工場と異なり、屋外で天候や地形の影響を受けながら作業が進む環境です。日々変化する現場状況をリアルタイムに把握し、適切な判断を下すことが求められますが、従来は人間の目視確認と経験に頼る部分が大きいのが実態でした。

IoT技術を活用することで、現場の状況をデータとして「見える化」できるようになります。気温・湿度・騒音レベルといった環境データの自動計測、重機の位置や稼働時間のリアルタイム把握、作業員のバイタルデータの監視など、これまで感覚に頼っていた判断に客観的なデータの裏付けが加わります。

国土交通省が推進するi-Constructionにおいても、ICTやIoTの活用が生産性向上の重要な柱として位置づけられており、公共工事での導入事例が年々増えています。

センサー・通信・クラウド・ダッシュボード ── IoTの4つの構成要素

IoTシステムは、データを取得する「センサー」、データを送受信する「通信ネットワーク」、データを処理・分析する「クラウド基盤」、そして分析結果を表示する「ダッシュボード」の4つの要素で構成されます。

建設現場で活用されているIoTの具体例を紹介します。

安全管理の分野では、作業員が装着するウェアラブル端末で心拍数や体表温度を計測し、熱中症のリスクが高まった際に管理者にアラートを送る仕組みが実用化されています。ヘルメットに取り付けたセンサーで転倒や落下を検知し、即座に緊急通報を行うシステムも開発されています。

重機管理の分野では、GPSとセンサーを組み合わせて建設機械の現在位置、稼働時間、燃料消費量をリアルタイムに管理するサービスが普及しています。複数の現場に分散している重機の配置を最適化し、遊休時間を減らすことでコスト削減にもつながります。

施工品質の管理では、コンクリート内部に温度センサーを埋め込み、養生中の温度変化を遠隔で監視することで、品質管理の精度向上と現場の巡回負担の軽減を同時に実現している事例があります。

1台数千円から始められる ── 中小建設会社のIoT導入リアル

IoTと聞くと大規模なシステム投資を想像するかもしれませんが、近年はセンサー機器の小型化・低価格化が進み、中小建設会社でも手の届く価格帯の製品が増えています。

たとえば、熱中症対策用のウェアラブル端末は1台数千円から数万円程度で導入でき、作業員1人あたりの費用負担は決して大きくありません。クラウドカメラを現場に設置し、遠隔から進捗を確認するだけでも、移動時間の削減と管理の効率化が見込めます。

導入のポイントは、自社の現場で最も課題になっている領域から始めることです。具体的な導入手順やコスト感は建設現場のIoT活用ガイドで解説しています。熱中症対策が急務なら環境センサー、重機の管理に課題があるなら稼働管理システムというように、目的を絞って導入すれば効果を実感しやすくなります。

建設現場でのIoT活用事例とBefore/After

実際の現場でのIoT活用効果を、具体的な数値で見てみましょう。

熱中症対策でのウェアラブルセンサー導入事例では、建設会社(外構・土木工事、現場作業員50名規模)が夏季の熱中症リスク管理を目的に導入した結果、導入前は年間で作業員の熱中症による業務停止が平均3件発生していたのが、導入後は2シーズン連続でゼロを達成しています。監督者が全作業員の体調指標をダッシュボードで一括管理できるため、個別の声かけが効果的に行えるようになったことが要因です。

重機稼働管理システムの導入事例では、保有する建設機械18台を管理するレンタル業者が、GPSベースの稼働管理システムを導入した結果、重機の遊休時間が平均で月あたり40時間から12時間に削減されました。燃料消費量も15%減少し、年間換算で約180万円のコスト削減につながっています。

コンクリート養生管理のIoT事例では、トンネル工事の二次覆工コンクリートに温度センサーを埋め込んだ結果、温度管理のための現場巡回(従来は1日4回)が不要になり、品質管理担当者1名の作業時間が月80時間削減されています。データがクラウドに自動保存されるため、養生期間中の温度変化を後からも確認でき、トレーサビリティの向上にも貢献しています。

建設IoTの主要カテゴリーと製品例

建設現場で活用されているIoTシステムを、用途別に整理します。

安全管理系では、作業員の位置情報を把握する入退場管理システム、心拍・体温を監視するウェアラブル端末、墜落・転倒を検知するセンサーデバイス、危険エリアへの接近を警告するジオフェンシングシステムなどがあります。国内主要メーカーとして、清水建設・大林組などが開発した独自システムのほか、中小企業向けの汎用製品も多数流通しています。

環境計測系では、WBGT(暑さ指数)を自動計測するIoT温湿度センサー、騒音・振動計(近隣への影響測定)、土砂崩れや法面変状を早期検知する傾斜センサー、粉じん濃度計などがあります。価格帯は1台5,000円〜5万円程度と手が届きやすく、環境計測系はIoT導入の入門として適しています。

重機・車両管理系では、建設機械のGPS位置追跡、エンジン稼働時間の自動記録、燃料消費量モニタリング、点検記録のデジタル化などの機能を持つサービスが複数あります。月額1,000〜5,000円/台程度のSaaS型サービスが普及しており、まず数台から試せる体制が整っています。

施工管理支援系では、現場にカメラを設置して遠隔から工事進捗を確認するシステムが普及しています。AIカメラによる作業員の安全帽着用確認や、不審者侵入の自動検知に発展したサービスも登場しています。

IoT × AI による次世代の建設現場

近年、IoTで収集したデータをAI(人工知能)で分析する「IoT+AI」の活用が建設業でも加速しています。

AIによる工程遅延予測では、現場のカメラ映像・天候データ・重機の稼働状況などのIoTデータをAIが分析し、「このまま進めると○日間の遅延が発生する可能性が高い」という予測を出す仕組みが実用化されています。大手ゼネコンが自社現場での実証実験を進めており、2025年以降は中小建設会社向けのクラウドサービスとして提供される見込みです。

AIカメラによる安全管理では、現場カメラの映像をAIがリアルタイム解析し、安全帽・安全ベストの未着用を検知したり、重機と作業員が危険な距離に接近した際に警告を発したりする機能が製品化されています。目視による安全パトロールの補完として、24時間365日の自動監視が可能です。

品質検査のAI化では、コンクリートのひび割れや鉄筋の配置ずれを、カメラで撮影した画像からAIが自動検出する技術の開発が進んでいます。熟練検査員の知識・経験を学習させたAIモデルを活用することで、経験年数の浅い担当者でも高精度な検査が行えるようになります。

導入コスト・費用の目安

用途別の導入コストを整理します。

熱中症対策(ウェアラブル+クラウド)は初期費用として機器代が1台5,000〜30,000円、月額クラウド利用料が2,000〜10,000円が目安です。作業員20名規模なら初期費用10〜60万円、月額4,000〜20万円程度で導入できます。

重機稼働管理は初期費用として機器(GPSユニット)が1台3〜5万円、月額利用料が1,000〜5,000円/台が目安です。建機10台で月間1〜5万円のランニングコストです。

現場カメラ(遠隔監視)は機器代1台3〜15万円、クラウド保存・閲覧の月額が1,000〜5,000円/台が目安です。電源と通信環境(LTE回線)が必要で、現場によって通信環境の整備費用が追加になります。

これらのIoT機器・サービスの多くは、IT導入補助金の対象になります。補助率最大1/2〜4/5を活用すれば、実質的な投資負担を抑えながらデジタル化を推進できます。

通信環境と導入の注意点

建設現場でIoTを使いこなすうえで最大の課題は「通信環境」です。IoTデバイスがデータを送受信するには安定した通信環境が必要ですが、山間部や地下・トンネル内など通信が不安定な現場では別途対策が必要です。

LTE(4G/5G)回線を利用するデバイスは、モバイル回線の電波が届く範囲なら追加の通信インフラなしで利用できます。現在の4G LTE回線は国土の99%をカバーしており、よほどの僻地でなければ問題ありません。

LPWA(LoRa, SigFox等)は低消費電力で広範囲に通信できる技術で、電池交換が難しいセンサーデバイスに向いています。ただし、通信速度が遅く大容量データの転送には不向きなため、温度・位置情報などシンプルなデータに限られます。

地下・トンネル内などでは、現場内に中継機(アクセスポイント)を設置してWi-Fiや独自無線ネットワークを構築する方法が用いられます。初期費用が発生しますが、大規模な現場では安定した通信環境の整備が安全管理や品質管理への投資として十分に正当化されます。

建設現場のIoT導入 ── 5つのステップで始める現実的なアプローチ

IoT導入を成功させるためには、段階を踏んで進めることが重要です。中小建設会社が実践しやすい5つのステップを示します。

ステップ1は「課題の特定」です。自社の現場で最もコストや時間を消費している課題を洗い出します。熱中症対策が急務なのか、重機の遊休管理が課題なのか、遠隔での進捗確認が必要なのか。目的を絞ることで、導入すべきIoT機器が明確になります。

ステップ2は「小規模な実証」です。1現場・数台のセンサーで試験導入し、効果を数値で確認します。ウェアラブルセンサーであれば5名程度の作業員に装着してもらい、1〜2ヶ月間のデータを蓄積してから効果を評価します。

ステップ3は「通信環境の確認」です。導入予定の現場でLTE回線が十分に届くかを確認し、必要であればWi-Fiアクセスポイントの設置を検討します。通信環境の整備にかかる費用も予算に織り込んでおきます。

ステップ4は「運用ルールの策定」です。誰がダッシュボードを確認するか、アラートが鳴った際にどう対応するか、データの保存期間はどうするかを事前に決めておきます。「データを取っているが誰も見ていない」状態を避けるための仕組みづくりが重要です。

ステップ5は「効果測定と横展開」です。導入前後のデータを比較し、費用対効果を定量的に評価します。効果が確認できた施策を他の現場に横展開していくことで、全社的なIoT活用レベルを引き上げます。

建設IoTに関連する安全衛生法規

IoT導入は労働安全衛生法の遵守にも直結する取り組みです。関連する法規制を理解しておくことで、IoT投資の正当性を社内で説明しやすくなります。

労働安全衛生法では事業者に安全配慮義務が課されており、熱中症対策はその一環です。厚生労働省は「WBGT(暑さ指数)が基準値を超える環境では適切な対策を講じること」を求めており、IoTセンサーによるWBGTの自動計測は、この法的要件を満たすための効率的な手段です。

建設業労働災害防止規程では、作業員の安全管理に関する具体的な措置が定められています。IoTカメラによる安全帽着用の自動チェックや、危険エリアへの接近警告システムは、これらの規程への準拠を技術的に支援するものです。

騒音規制法や振動規制法に基づく計測義務がある現場では、IoTセンサーによる自動計測・記録が、手動計測と比較して正確かつ省力化できます。計測データがクラウドに自動保存されるため、行政への報告資料の作成も効率化できます。

IoTとAI、IoTとM2M ── 混同しやすい概念の整理

IoTと「AI」は別物ですが、現在の製品は両者を組み合わせているケースがほとんどです。IoTがデータを「集める仕組み」であるのに対し、AIはそのデータを「分析・予測する仕組み」です。現場カメラに安全帽未着用検知機能がついている場合、「カメラとクラウド連携」がIoT部分で、「映像から安全帽を識別する機能」がAI部分になります。

IoTと「M2M(Machine to Machine)」も混同されることがあります。M2Mは機械間の通信(例:自動検針メーターが検針値をサーバーに送信する)を指し、IoTの先行技術です。IoTはM2Mをより広義に捉え、人間が使うデバイスやより多様なセンサーを含む概念として使われます。

導入に際して見落とされがちなのが「データの活用体制」の整備です。センサーやカメラを設置してもデータを見る人・活用する仕組みがなければ効果はゼロです。誰がどのデータを確認し、何をトリガーにどう行動するかという「アラート対応フロー」を先に設計してから機器を選定することが、IoT投資を無駄にしないための鉄則です。

参考情報

よくある質問

IoTの導入に通信環境の整備は必要ですか?
IoTデバイスのデータ送受信にはインターネット接続が必要ですが、Wi-Fi環境が整っていなくてもLTE回線やLPWA(省電力広域通信)に対応したデバイスを選べば対応可能です。山間部など通信環境が厳しい現場向けに、衛星通信を利用するサービスも登場しています。
IoTのデータはどのように管理するのですか?
多くのIoTサービスでは、センサーが取得したデータをクラウド上に自動保存し、Webブラウザやアプリのダッシュボードで確認できる仕組みになっています。自社でサーバーを用意する必要はなく、サービス利用料にデータ保管費用が含まれているケースが一般的です。
IT導入補助金はIoT機器にも使えますか?
ソフトウェア(クラウドサービス)が主な補助対象ですが、一部の枠ではIoT機器のハードウェアも補助対象になります。IT導入補助金の公式サイトで登録されているIoT系製品・サービスを確認し、対象かどうかを事前にベンダーに確認してから申請を進めてください。
IoT導入で最初に取り組むべき領域はどこですか?
投資対効果が見えやすい「安全管理」と「重機稼働管理」が入口として適しています。安全管理は現場の事故リスク低減という明確な目的があり、熱中症対策用のウェアラブルセンサーは低コストで始められます。重機稼働管理は遊休時間の削減・燃料費節約として費用対効果を数値化しやすい領域です。

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