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用語集

DX(デジタルトランスフォーメーション)

でぃーえっくす

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

建設業の生産性は製造業の6〜7割 ── DXが避けられない理由

建設業の労働生産性は製造業と比較して約60〜70%の水準にとどまっている。経済産業省が公表した「建設業DXの推進方向性」が示すこの数字は、業界が抱える構造的な課題を端的に物語っています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用して事業の仕組みそのものを変革し、競争力を高める取り組みを指します。経済産業省は2018年に「DXレポート」を公表し、日本企業が2025年までに既存システムの刷新を進めなければ、年間最大12兆円の経済損失が生じる可能性があると警鐘を鳴らしました。

建設業においてDXは、単なるペーパーレス化や業務ソフトの導入にとどまりません。現場の業務フロー全体をデジタル技術で再設計し、生産性向上と働き方改革を同時に実現することが求められています。

IT化との違い

DXと混同されやすい概念に「IT化」があります。IT化は既存の業務プロセスをそのままデジタルツールに置き換えることを意味します。紙の日報をExcelにする、FAXをメールに変えるといった対応がこれにあたります。

一方、DXは業務そのもののやり方を見直すところから始まります。たとえば、現場の進捗管理をクラウド上のダッシュボードでリアルタイムに共有し、経営判断のスピードを上げるといった取り組みはDXの一例です。IT化が「効率化」であるのに対して、DXは「変革」を目指す点が本質的な違いといえます。

IT化で現状の業務を維持しながらコストを削減することと、DXで業務そのものの価値を高めることは、目指す方向が異なります。両者を混同してしまうと、デジタルツールを導入したのに業務の本質が変わらないという「DXもどき」が生まれてしまいます。

建設業でDXが求められる背景

建設業がDXに取り組む必要性は、いくつかの構造的な課題に起因しています。

まず、就業者の高齢化と人手不足の問題があります。国土交通省の統計によると、建設業就業者のうち55歳以上が約36%を占める一方で29歳以下は約12%にとどまっています。熟練技能者の大量退職が進む中、少ない人数で同等以上の成果を出す仕組みが不可欠です。

また、2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)により、従来のような長時間労働に依存した工程管理が困難になりました。限られた労働時間の中で生産性を確保するには、デジタル技術の活用が欠かせません。

さらに、国土交通省が推進するi-Constructionの流れの中で、公共工事におけるICT活用が標準化されつつあります。こうした発注者側の要請に対応できるかどうかが、受注機会に直結する状況が生まれています。

建設業の生産性向上は国家的な課題として位置づけられており、政府が補助金や規制緩和を通じてDXを後押しする方針が継続されています。

建設業DXの具体的な取り組み

建設業におけるDXの実践例は多岐にわたります。現場の業務に近い領域から、経営管理に至るまで幅広い分野で導入が進んでいます。

施工管理の分野では、クラウド型の施工管理アプリを活用して写真・図面・工程表をリアルタイムに共有する取り組みが広がっています。現場と事務所の移動時間を削減できるだけでなく、情報の伝達ミスによる手戻りも減らせます。

安全管理の分野では、IoTセンサーやウェアラブル端末を活用した作業員の体調モニタリング、AIカメラによる危険行動の検知といった技術が実用化されています。

バックオフィス業務では、クラウド会計ソフトやRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を使った入力作業の自動化が、事務負担の軽減に効果を発揮しています。

建設業DXの段階的な進め方

建設業のDXは一足飛びに実現するものではなく、段階を踏んで進めていくことが現実的です。

第1段階(デジタル化)は、紙・口頭・メール・Excelで行っていた業務をクラウドツールに置き換える段階です。施工写真管理のクラウド化、安全書類の電子化、クラウド会計への移行などが該当します。この段階では業務プロセス自体は変わりませんが、情報の可視化とアクセスのしやすさが大きく改善します。

第2段階(デジタル活用)は、デジタルで蓄積されたデータを分析・活用し、業務判断の質を高める段階です。過去の工事実績から工程計画の精度を上げる、施工写真の分析で品質管理を強化するといった取り組みが含まれます。

第3段階(DX)は、デジタル技術を前提とした新しい業務の仕組みを構築し、競争上の優位を確立する段階です。リアルタイムデータに基づく経営管理、顧客への新しい価値提供(例:竣工後の維持管理サービスとBIMの組み合わせ)などが該当します。

多くの建設会社は現在、第1〜2段階の間にいます。まず第1段階を確実に進めることが、DXの出発点として重要です。

建設業DXの具体的な活用事例

事例1:施工管理アプリ導入による残業削減

年商3億円規模の内装工事会社が施工管理アプリを導入した事例です。現場代理人が毎日行っていた施工写真の整理・日報作成・図面印刷にかかる時間が、従来の1日2〜3時間から30分に削減されました。

月間の残業時間が社員1人あたり平均20時間削減され、2024年問題への対応として評価されています。アプリの費用は月額2万円程度であり、投資対効果は明確でした。

事例2:クラウド会計導入による月次決算の早期化

年商8億円の中堅建設会社がクラウド会計と工事管理システムを連携させた事例です。従来は20日以上かかっていた月次決算が8日以内に完了するようになり、経営者が財務状況をリアルタイムで把握できる体制が整いました。

赤字工事の早期発見が可能になり、追加発注による損失拡大を防ぐ経営判断が的確にできるようになりました。

事例3:ドローン測量の標準化による測量コスト削減

年商15億円の土木工事会社が起工測量にドローンを標準導入した事例です。従来の測量チームによる計測と比較して、1件あたりの測量費用が約40%削減されました。取得した3次元データはCIMモデルの作成にも活用され、工事設計の精度向上にも貢献しています。

中小建設会社が使えるDX支援制度

DXを推進するうえで、国や自治体の支援制度を活用することで費用負担を大幅に抑えられます。

IT導入補助金は、ソフトウェア・SaaSの導入費用の一部を補助する制度です。補助率は最大75%(補助額の上限あり)で、建設業向けのクラウドサービスも多数対象に登録されています。

ものづくり補助金は、設備投資や生産プロセスの改善を支援する制度で、ICT建機の導入や専用システムの開発などが対象になることがあります。

小規模事業者持続化補助金は、年商5,000万円以下の小規模事業者が対象で、ITツール導入費を含む販路開拓や業務効率化の取り組みを補助します。

各制度の最新の公募要件は年度ごとに変わるため、応募前に公式サイトや商工会議所で確認することが必要です。詳細は補助金一覧ページでも確認できます。

最新動向(2024〜2026年)

2024年問題対応としてのDX加速

2024年4月の時間外労働上限規制適用を契機に、建設業の働き方改革とDXへの関心が急激に高まりました。施工管理アプリの導入件数が前年比で大幅増加しており、業界全体のデジタル化が底上げされています。

生成AIの建設業への浸透

ChatGPTに代表される生成AIが建設業務への応用段階に入っています。仕様書や施工計画書の下書き生成、図面の自動読み取り、品質チェックリストの自動生成など、実務で活用し始めた建設会社が増えています。

電子契約・電子受発注の普及

インボイス制度の開始(2023年10月)と電子帳簿保存法の本格施行(2024年1月)を受け、電子契約・電子請求書への移行が急加速しています。取引先の電子化対応を求める発注者も増えており、紙の契約書・請求書だけの会社は取引から外れるリスクが生まれています。

ICT施工の標準化と下請への波及

国土交通省直轄工事でのICT活用が本格化し、元請のゼネコンが下請会社にもICT対応を求めるケースが増えています。ドローン測量・3Dスキャナー・ICT建機を活用できる専門工事業者の需要が高まっています。

DXに関連する法制度と規制の動き

建設業のDXは、企業の自主的な取り組みだけでなく、法制度の変化にも後押しされています。DXを進めるうえで知っておくべき法制度を整理します。

2024年4月施行の改正労働基準法による時間外労働の上限規制(建設業の2024年問題)は、DX推進の最も大きな契機となりました。従来のように人海戦術で工期を乗り切る方法が法的に困難になり、デジタル技術による生産性向上が経営上の必須事項になっています。

電子帳簿保存法(2024年1月本格施行)は、電子取引データの電子保存を義務化しました。FAXやメールで受け取った請求書・発注書をすべて紙で保管していた建設会社は、電子データとしての保存体制を整える必要があります。クラウド会計や電子契約サービスの導入が、この法対応の現実的な手段です。

インボイス制度(2023年10月開始)への対応も、多くの建設会社にとってDXのきっかけとなっています。適格請求書の発行・管理・保存をデジタル化することで、制度対応と業務効率化を同時に実現できます。

改正建設業法(2025年施行)では、ICT活用による施工管理の合理化や、技術者の遠隔配置に関する規制緩和が盛り込まれており、DXに取り組む建設会社にとって有利な制度環境が整いつつあります。

DX推進に活用できる認定・認証制度

経済産業省が推進する「DX認定制度」は、DXに取り組む企業を認定する制度です。認定を受けると、IT導入補助金やものづくり補助金の審査で加点されるケースがあるほか、金融機関からの融資条件が優遇される場合もあります。

認定の要件は「DX推進のビジョンと戦略を経営者が示していること」「デジタル技術を活用した事業変革の計画があること」などであり、中小建設会社でも取得を目指せる内容です。経産省の「DX推進指標」に沿って自社の現状を自己診断し、認定申請を行う流れになります。

「DXしたつもり」に要注意 ── 落とし穴と誤解

DXとデジタル化の違い

「デジタル化(digitalization)」は業務プロセスをデジタルに置き換えることを指し、DXはデジタルを前提に業務そのものを再設計することを意味します。「ペーパーレスにした=DXした」というのは、より正確には「デジタル化をした」という状態であり、DXはその先にある変革を指します。

この区別が重要なのは、デジタル化止まりで「DXをやった」という認識を持ってしまうと、競争力向上や業務変革という本来の目標に到達できないからです。

DXは経営者主導で進める

DXは現場担当者だけが頑張っても組織全体の変革には至りません。経営者自身がデジタルツールの意義を理解し、変革のビジョンを示すことが不可欠です。DXが現場担当者への「押し付け」になっているケースは失敗しやすく、経営者のコミットメントが成否を左右します。

大手の標準がやがて下請の要件になる ── 中小建設会社が動くべきタイミング

DXというと大企業の話に聞こえるかもしれませんが、中小建設会社にとってもDXは避けて通れないテーマになっています。

大手ゼネコンが現場でBIMやICT施工を標準化する流れの中で、下請会社にも相応のデジタル対応力が求められるようになっています。デジタルツールを使いこなせる協力会社が選ばれ、対応できない会社は声がかかりにくくなるという選別が、すでに始まっています。

中小企業がDXを進める際は、一度に大規模な投資をするのではなく、効果が見えやすい業務から段階的に着手するのが現実的です。IT導入補助金をはじめとする国の支援制度も活用しながら、費用負担を抑えて進めることができます。具体的な進め方は建設業のDX、何から始める?が参考になります。

経営者自身がデジタルツールに触れ、その効果を実感することが、社内にDXを浸透させるうえで最も重要な一歩となります。

参考情報

よくある質問

建設業のDXは何から始めればいいですか?
まずは日常業務の中で最も手間がかかっている作業を洗い出すところから始めましょう。写真整理や日報作成に時間がかかっているなら施工管理アプリ、請求書処理が負担ならクラウド会計ソフトなど、課題に合ったツールから導入するのが効果的です。
DXの導入に使える補助金はありますか?
IT導入補助金が代表的な制度で、ソフトウェアやクラウドサービスの導入費用の一部を補助してもらえます。ものづくり補助金やデジタル化基盤導入類型など、DX関連の投資に活用できる制度は複数あり、年度ごとに公募要件を確認することをおすすめします。
DXとIT化は同じ意味ですか?
IT化は既存の業務をデジタルツールに置き換えることを指し、DXは業務プロセスや事業モデルそのものをデジタル技術で変革することを意味します。紙の図面をPDFにするのがIT化、BIMを使って設計・施工・維持管理を一気通貫で変えるのがDXにあたります。
中小建設会社がDXを推進する際の注意点を教えてください
最も多い失敗パターンは「ツールを導入したのに使われない」という状況です。ツール導入と同時に、既存の業務フローの見直しと社員への教育を行うことが重要です。また、経営者自身がツールを使ってみて業務変革のビジョンを示すことが、組織内への浸透を加速させます。

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