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特定技能(建設分野)

とくていぎのう

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

建設業の人手不足に対応する在留資格制度

繁忙期に元請からの依頼を断らざるを得ない。現場の人員が確保できず、工期に余裕がない工事は受注を見送る。中小建設会社の経営者がこうした判断を迫られる場面は増える一方です。国内の若年入職者減少に歯止めがかからない中、外国人材の活用は現実的な選択肢として注目されています。

特定技能とは、2019年4月に創設された在留資格で、人手不足が深刻な特定産業分野において、一定の技能を持つ外国人材の就労を認める制度です。建設分野は特定技能の対象12分野の一つであり、土木、建築、ライフライン・設備の3区分で外国人技能者を受け入れることができます。

即戦力の外国人材を受け入れる意義

建設業界の人手不足は年々深刻化しており、国内の労働力だけでは将来的な需要を賄いきれない状況が見込まれています。特に若年層の入職者が減少し続けている中、外国人材の活用は人材確保策の重要な柱として位置づけられています。

特定技能制度は、技能実習制度と異なり、即戦力となる人材を受け入れることを前提としている点が特徴です。技能実習が技能移転による国際貢献を目的とするのに対し、特定技能は日本国内の労働力不足への対応を正面から認めた制度となっています。

建設分野では特定技能1号と特定技能2号の両方が設けられており、2号に移行すれば在留期間の上限がなくなり、家族の帯同も認められます。長期的な視点で外国人材を戦力化できる可能性を持つ制度であり、経営者としてはその仕組みを正しく理解しておくことが重要です。

受入れの要件と建設分野独自のルール

特定技能1号の取得には、建設分野特定技能1号評価試験への合格と、日本語能力試験N4以上(またはJFT-Basic合格)が求められます。技能実習2号を良好に修了した者は、試験が免除される場合があります。

建設分野の特定技能には、他分野にはない独自の要件が設けられています。受入れ企業は建設業許可を保有していること、建設キャリアアップシステム(CCUS)に登録していること、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)の正会員または間接会員であることなどが必要です。

受入れ企業には、特定技能外国人に対して日本人と同等以上の報酬を支払う義務があります。月給制での支払いが求められ、安定した処遇を確保するための仕組みが制度上整備されています。

特定技能外国人は転職が認められているため、受入れ企業としては、適切な処遇と働きやすい職場環境の整備が人材の定着に不可欠です。在留資格の管理や生活支援など、受入れ後のサポート体制の構築も重要な実務上の課題となります。

建設分野での特定技能活用事例(Before/After)

鉄筋工事専業の会社(従業員15名)が特定技能外国人を3名受け入れた事例があります。

受け入れ前は技能者不足で月に受注できる工事件数に限界があり、繁忙期に元請からの依頼を断らざるを得ない状況でした。ベトナム出身の特定技能1号技術者を3名採用したところ、施工体制を補強でき、月間稼働日数が増加。採用後2年目には年間売上が約15%増加し、元請への安定的な供給力が評価されて取引関係が強化されたと報告されています。

支援体制については、登録支援機関に委託(月額2.5万円/人)し、生活支援・相談対応を外部化することで、社内の事務負担を最小化しました。言語の壁については、作業手順書を日本語と現地語(ベトナム語)で作成し、現場でのコミュニケーションに対応しました。

一方で課題も生じました。CCUSへの就業履歴登録の徹底が当初うまくいかず、JACへの報告手続きで確認が入った経験があります。書類管理のルールを整備し直すことで解決しましたが、事前の制度理解が不可欠と感じたとのことです。

特定技能1号と2号の違い

建設分野は特定技能2号が認められている分野であり、長期就労・家族帯同が可能な点で他分野に比べて外国人材の定着を図りやすいという特徴があります。

項目特定技能1号特定技能2号
在留期間通算5年まで上限なし(更新継続)
家族の帯同原則不可配偶者・子の帯同可
技能水準特定技能1号評価試験合格より上位の試験合格が必要
キャリアパス一定期間後2号へ移行可定住・永住への道が開ける

2号への移行に必要な試験の難易度は職種によって異なりますが、建設分野では実技試験を含む評価試験に合格することが求められます。企業として2号移行を見越した育成計画を立てることで、長期戦力となる人材の確保につながります。

技能実習制度との違いと2024年の制度見直し

特定技能と技能実習の最大の違いは「転職の可否」です。技能実習は原則として受入れ企業でしか働けず、実習内容以外の作業への従事も制限されます。特定技能は同一分野内であれば転職が可能であるため、受入れ企業としては処遇改善・定着策が経営課題となります。

2024年には技能実習制度が「育成就労制度」へ移行する法改正が成立しました。育成就労は最長3年の就労を通じて特定技能1号への移行を前提とした制度であり、従来の技能実習より受入れ企業の人材育成責任が明確化されています。この制度変更は建設業においても2027年頃の施行が見込まれており、実習生の受入れを行っている企業には対応の準備が必要です。

受入れコスト・費用の目安

特定技能外国人の受入れには複数のコスト項目があります。

JACの受入負担金は1人あたり月額12,500〜25,000円(技能水準等により変動)で、年額にすると15万〜30万円程度です。登録支援機関への委託費用は月額2万〜4万円程度が相場であり、1人あたり年額24万〜48万円の費用となります。

国内在住者を採用する場合は渡航費が不要ですが、海外から招聘する場合は渡航費・ビザ取得費・初期住居確保費として1人あたり30万〜50万円程度の初期コストを見込む必要があります。

これらのコストを合算すると、1人を受け入れるための初年度コストは60万〜100万円程度になるケースが多く、人件費(給与)とは別に必要な費用として経営計画に組み込む必要があります。

最新動向(2024〜2026年)

建設分野の特定技能外国人数は増加傾向にあり、2024年末時点の在留者数は建設分野で1万5,000人を超える水準になっています。ベトナム・フィリピン・インドネシアからの入国者が多数を占めますが、近年はミャンマー・ネパールからの技術者も増加しています。

受入れ環境の整備に関して、JACは受入れ企業に対する巡回指導や相談窓口の強化を進めています。外国人材の定着率向上のため、日本語教育支援プログラムや生活支援の充実も求められています。

就業差別・賃金未払いなどの問題事例が明るみに出たことで、2025年以降は受入れ企業への監査・指導が強化される方向性が示されています。法令を遵守した適正な受入れ体制の構築が、今後さらに重視されます。

受入れ後の生活支援と定着のための実務

特定技能外国人の受入れは、採用して終わりではありません。在留期間中の生活支援と職場定着のための取り組みが、制度上も義務として求められています。

義務的支援として定められている10項目には、入国前の事前ガイダンス、出入国時の送迎、住居確保の支援、生活オリエンテーション、日本語学習機会の提供、相談・苦情対応、日本人との交流促進などが含まれています。これらは登録支援機関に委託できますが、支援の実施責任は受入れ企業にあります。

現場でのコミュニケーション対策として、安全指示や作業手順に関する用語を現地語(ベトナム語、インドネシア語等)で併記したマニュアルの整備が有効です。「危険」「停止」「確認」といった安全に直結する用語だけでも多言語対応しておくと、労働災害の防止に寄与します。

住居の確保は受入れ企業の支援義務の一つですが、社宅を用意する場合と、民間賃貸を紹介・保証する場合があります。家賃は本人負担が原則ですが、保証人の確保が難しい外国人技能者のために、企業が連帯保証人になるか、保証会社の費用を企業が負担するケースが一般的です。月額3〜5万円程度の住居費を差し引いても手取りが確保できる給与設計が、人材定着の観点から重要です。

在留管理でありがちなミスと対処法

「特定技能だから何でもやらせていい」という誤解があります。特定技能の就労は、在留資格に記載された業務区分(建設分野の場合は土木・建築・ライフライン設備のいずれか)に限定されます。許可された業務区分外の作業に従事させた場合、不法就労の問題が生じます。

CCUSへの就業履歴登録は特定技能外国人の在留管理においても重要です。JACへの就業状況報告とCCUSの記録が一致していないと、在留資格更新の際に問題が生じることがあります。就業日はすべてCCUSに記録することを徹底する必要があります。

「登録支援機関に全て任せれば大丈夫」という考え方も注意が必要です。登録支援機関は支援業務を代行しますが、受入れ企業としての責任(在留資格管理・労働法令遵守・処遇の適正化)は企業側にあります。丸投げにせず、支援機関からの報告をもとに経営者自身が状況を把握することが重要です。

中小建設会社への影響

中小建設会社が特定技能外国人を受け入れるには、各種の手続きや体制整備が必要であり、事務負担は決して小さくありません。しかし、慢性的な人手不足の中で現場の稼働を維持するためには、外国人材の活用を選択肢として真剣に検討する価値があります。制度の詳細や受入れ手順は外国人材活用ガイドにまとめています。

受入れに際しては、登録支援機関に支援業務を委託することで事務負担を軽減できます。JACへの加入手続きやCCUS登録なども、段階的に準備を進めることで対応可能です。技能実習生を受け入れている企業であれば、実習修了後に特定技能へ移行させるルートも活用でき、すでに社内の仕事に慣れた人材を引き続き雇用できるメリットがあります。

参考情報

よくある質問

特定技能と技能実習は何が違いますか?
技能実習は途上国への技能移転が目的で、転職が原則認められていません。一方、特定技能は日本の人手不足解消が目的であり、同一分野内での転職が可能です。特定技能は即戦力としての一定の技能が求められる点も大きな違いです。
特定技能外国人の受入れにはどのくらい費用がかかりますか?
JACの会員費、受入負担金(1人あたり月額12,500円から25,000円程度)、登録支援機関への委託費用(月額2万円から4万円程度)などが主な費用です。渡航費や住居の初期費用を企業側で負担するケースもあります。
特定技能2号になると何が変わりますか?
特定技能2号では在留期間の上限がなくなり、更新を続ける限り日本で働き続けることが可能になります。配偶者や子どもの帯同も認められるため、長期的に日本で生活基盤を築くことができます。ただし、2号への移行には上位の技能試験に合格する必要があります。

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