この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

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建設業の外国人材 — 現状と制度の基本

建設業で働く外国人労働者は年々増加しています。厚生労働省の「外国人雇用状況の届出状況」によると、建設業に従事する外国人労働者数は約14万人(2023年10月時点)で、5年前と比較して約1.5倍に増加しました。人手不足の解消策として外国人材の活用は避けて通れないテーマになっています。

国土交通省の推計では、2030年までに建設業で約22万人の労働力が不足するとされており、外国人材の受入れ拡大は国策として推進されています。ただし、受入れには法的な制度理解と適切な体制整備が不可欠です。

建設業で外国人を雇用する3つの在留資格

在留資格対象最長期間家族帯同特徴
技能実習(2027年度より「育成就労制度」に移行予定)開発途上国の実習生5年不可監理団体を通じて受入れ。育成が目的
特定技能1号一定の技能を持つ外国人5年不可即戦力として就労。試験合格or技能実習修了が条件
特定技能2号高度な技能を持つ外国人無期限長期的な戦力。熟練した技能が必要

育成就労制度への移行について

2024年6月に「出入国管理及び難民認定法」の改正法が成立し、現行の技能実習制度は2027年度をめどに「育成就労制度」に移行する予定です。新制度では、外国人材の「育成」と「人材確保」の二つの目的が明確化され、転籍(職場変更)の要件が緩和されるなどの変更が予定されています。

現時点(2026年3月)では経過措置の詳細が段階的に公表されている段階です。出入国在留管理庁の最新情報を随時確認してください。

どの制度を選ぶべきか

未経験の外国人を受け入れて育てたい場合は技能実習(育成就労制度移行後も基本的な枠組みは継続)が適しています。母国の送り出し機関から日本の監理団体を経由して受け入れ、入国後に研修期間を設けます。3年目の試験に合格すれば最長5年まで延長可能です。

すぐに現場で働ける人材がほしい場合は特定技能1号が向いています。技能試験と日本語試験に合格した外国人が対象で、技能実習2号を修了した人は試験免除で移行可能です。受入れ企業が直接雇用する形態です。

長期的に自社の戦力にしたい場合は特定技能2号を検討してください。特定技能1号からのステップアップで、在留期間の上限なし、家族帯同も可能です。日本人と同等の待遇が求められます。2023年6月に建設業を含む11分野で特定技能2号の受入れが開始され、長期的な外国人材の活用が現実的な選択肢になりました。

受入れの流れ — ステップ別解説

技能実習の場合

ステップ内容期間目安
1. 監理団体を選ぶ建設業の受入れ実績がある団体を探す1ヶ月
2. 送り出し機関との連携現地での面接・選考2〜3ヶ月
3. 技能実習計画の認定申請外国人技能実習機構に申請1〜2ヶ月
4. 在留資格認定証明書の申請入国管理局に申請1〜2ヶ月
5. 入国・研修日本語研修+安全教育1ヶ月
6. 実習開始現場での実習スタート-

合計で入国まで約6〜10ヶ月かかります。人手がほしい時期の半年以上前から準備を始める必要があります。

監理団体の選定は最も重要なステップです。建設業の受入れ実績が豊富な団体を選ぶと、手続きがスムーズに進みます。監理団体の一覧は外国人技能実習機構のサイトで公開されていますが、実績や評判は業界の知人やJAC(建設技能人材機構)に問い合わせるのが確実です。

特定技能の場合

ステップ内容期間目安
1. 建設特定技能受入計画の認定国土交通大臣に申請1〜2ヶ月
2. 人材の確保海外での試験合格者を採用 or 技能実習からの移行1〜3ヶ月
3. 雇用契約の締結日本人と同等以上の待遇で契約2週間
4. 在留資格の申請入国管理局に申請1〜2ヶ月
5. 入国・就労開始--

建設業特有のルールとして、建設分野の特定技能は、他の分野と異なり「建設特定技能受入計画」の認定が国土交通大臣から必要です。また、建設技能人材機構(JAC)への加入が求められます。これは建設分野の特定技能制度の適正な運用を確保するための仕組みです。

費用の目安

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技能実習の場合(1人あたり)

費用項目金額目安備考
送り出し機関への手数料15〜25万円国・機関により変動
監理団体への管理費3〜5万円/月実習期間中ずっと発生
渡航費10〜15万円渡航費は企業負担が一般的
入国後研修費10〜20万円日本語・安全教育
給与(月額)18〜25万円地域・職種による
住居費(会社負担の場合)3〜5万円/月アパート契約費含む
生活備品(初期)5〜10万円家具・家電・寝具等

年間コストの目安は1人あたり約350〜500万円(給与+管理費+住居費+社会保険料)です。日本人を新卒採用した場合の年間コスト(給与+社会保険+福利厚生で350〜450万円程度)と大きく変わりませんが、管理費や住居費といった追加コストがかかる点は考慮が必要です。

特定技能の場合(1人あたり)

費用項目金額目安備考
JAC年会費24万円/年建設業は必須
受入負担金1.25〜2万円/月/人JACへの支払い
人材紹介手数料30〜50万円紹介会社経由の場合
給与(月額)22〜30万円日本人と同等以上
支援業務(登録支援機関委託の場合)2〜3万円/月義務的支援の実施費用

特定技能は日本人と同等以上の報酬が法的に義務付けられているため、給与面でのコスト削減は期待できません。メリットは「即戦力として現場に配置できる」点にあります。

建設業特有の注意点

1. 安全教育は母国語で

建設現場は危険を伴う場所です。厚生労働省の統計によると、外国人労働者の労働災害は増加傾向にあり、建設業は全産業の中でも特に発生件数が多い業種です。安全教育を日本語だけで行うと、理解不足による事故のリスクがあります。

対策として、母国語(ベトナム語、インドネシア語、ミャンマー語等)に翻訳した安全教育資料を用意してください。厚生労働省のサイトでは、多言語(14言語)に対応した安全衛生教育マニュアルが無料でダウンロードできます。通訳を交えた安全教育の実施、現場の危険箇所にピクトグラム(図)で注意喚起すること、KY活動(危険予知活動)は母国語で参加できる仕組みを作ることも重要です。

2. 建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録

特定技能外国人は建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録が義務です。受入れ企業も事業者登録が必要です。CCUSは技能者の就業履歴や保有資格をデータベースで管理するシステムで、2023年度末時点で約130万人が登録しています。

外国人技能者のCCUS登録は、在留カードの情報と紐づけて管理されます。入国後速やかに登録手続きを行い、現場入場時にカードリーダーでの読み取りができるようにしてください。

3. 月給制が原則

建設分野の特定技能外国人は「月給制」が求められます。日給月給は認められません。天候不良で現場が休みの日も給与が発生します。この点は日本人技能者と異なるルールであるため、受入れ企業は人件費の計算に注意が必要です。

天候不良で現場が休みになった日は、社内研修や座学教育に充てることで、人件費を有効に活用できます。安全教育の補講や日本語学習の時間に充てている企業もあります。

4. 同等報酬の確保

外国人だからといって日本人より低い給与を設定することは認められません。同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬が必要です。国土交通省は建設分野の特定技能外国人の報酬について、経験年数3年以上の技能者に相当する水準を求めています。

報酬の適正性は、受入計画の審査時に厳しくチェックされます。地域別の賃金データ(賃金構造基本統計調査)を参考に、同業種・同地域の日本人技能者と同等以上の水準に設定してください。

5. 建退共への加入

建設業退職金共済制度(建退共)への加入も外国人技能者に対して必要です。外国人であっても日本人と同様に退職金共済の証紙を貼付する義務があります。帰国時に退職金を受け取ることができるため、外国人技能者にとってもメリットがある制度です。

成功する受入れのポイント

住居・生活支援

会社でアパートを契約し、家具・家電付きで入居できるようにすることが基本です。布団、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器は初期費用として用意してください。近隣のスーパー、病院、銀行、郵便局、100円ショップの場所を案内する地図を母国語で作成すると好評です。

ゴミの出し方、騒音ルールなど生活マナーの説明は、入国初日に行ってください。自治体が発行する多言語のゴミ分別ガイドを活用すると効率的です。同じ国籍のコミュニティを紹介すると、生活面の不安が軽減されます。

日本語学習の支援

週1回の日本語教室(オンラインでも可)を設けることを推奨します。オンライン日本語学習サービスは月額5,000〜15,000円程度で利用でき、技能実習生・特定技能者向けのカリキュラムを持つサービスも増えています。

現場で使う日本語フレーズ集の配布も効果的です。「危険」「注意」「止まれ」「上に行く」「下に行く」など、安全に関わる基本フレーズは入国直後に教育します。日本語能力試験(JLPT)の受験費用を会社が負担する制度を設けると、学習のモチベーションが上がります。

コミュニケーション

簡単な日本語でゆっくり話すこと、翻訳アプリ(Google翻訳等)を活用すること、定期的な面談(月1回)で困りごとを聞くこと、文化の違いを理解すること(宗教上の食事制限、祝日の配慮等)が日常的なコミュニケーションの基本です。

ベトナム人はテト(旧正月)、インドネシア人はラマダン(断食月)やレバラン(断食明け大祭)など、宗教・文化的な祝日への配慮は定着率に直結します。「有給休暇を使って帰国してよい」と明確に伝えるだけで、外国人技能者の安心感は大きく変わります。

評価制度とキャリアパスの提示

外国人技能者にも「この会社で長く働けば何が得られるか」を明示してください。特定技能1号→2号のステップアップ、2号になれば家族帯同が可能になること、給与の昇給テーブル。これらを入社時に母国語で説明すると、定着率が向上します。

CCUSのレベル評価(レベル1〜4)と連動した給与テーブルを設計すると、外国人技能者にとってもキャリアアップの見通しが立ちやすくなります。

外国人材の出身国の特徴

建設業で働く外国人技能者の出身国はベトナムが最も多く、全体の約50%を占めます。

出身国割合(概算)特徴
ベトナム約50%勤勉で体力がある人が多い。コミュニティが大きく、情報交換が活発
インドネシア約15%イスラム教徒が多く、食事・礼拝への配慮が必要
フィリピン約10%英語力が高い。コミュニケーション能力に優れる
ミャンマー約10%近年増加中。仏教国で穏やかな気質の人が多い
中国約8%技能実習の歴史が長く、経験者が多い

※出典:厚生労働省「外国人雇用状況の届出状況」を基にした概算

出身国ごとの文化的背景を理解しておくと、コミュニケーションや生活支援がスムーズになります。

外国人材の受入れに成功した建設会社の事例

実際に外国人材を受け入れている中小建設会社の事例を3社紹介します。いずれも従業員20〜60名規模の企業です。

事例1: 型枠大工会社(従業員38名・埼玉県)

技能実習生(ベトナム人)4名を5年かけて受け入れてきたケース。1期生は技能実習修了後に特定技能1号に切り替え、現在も在籍している。

成功の要因として挙げられるのは3点です。入国前の日本語研修を充実させた(入国時にN4相当のレベルを要求)こと、会社から徒歩5分のアパートを借り上げて提供したこと、朝礼を日越バイリンガルで実施(日本人が日本語で話した後に、先輩実習生がベトナム語で補足説明)したことです。

失敗談として、1期生は送り出し機関の選定を誤り、来日後に「聞いていた話と違う」という不満が出たことがあります。2期生からは建設業の実績が豊富な監理団体に変更し、問題が解消されたとのことです。

事例2: 鉄筋工事会社(従業員24名・愛知県)

特定技能1号を活用して即戦力を確保したケース。ベトナム人2名を技能実習2号修了者から特定技能1号に移行させて採用した。

日本語レベルがN3〜N2と高く、現場でのコミュニケーションに問題がない。同等待遇(日本人と同じ月給・賞与・昇給テーブル)を適用しているため、日本人社員との軋轢もない。特定技能外国人が「長く働くために日本語をもっと上達させたい」と自ら勉強しており、CCUS登録も済んでいる。

課題として、JACへの年会費や受入負担金(月約2万円/人)のコスト負担があるが、日本人を人材紹介経由で採用する場合(手数料100万円以上)と比べれば十分に合理的と判断しているとのこと。

事例3: 内装工事会社(従業員31名・大阪府)

受入れ初期に失敗した経験を活かし、体制を立て直したケース。最初の受入れでは住居トラブル(近隣住民とのゴミ出しトラブル)と安全事故(日本語が理解できず危険な作業をしてしまった)が発生した。

立て直しのポイントは、生活オリエンテーションの徹底(ゴミの出し方、電車の乗り方、コンビニの使い方まで入国1週間で詳細説明)と、母国語(ベトナム語)の安全教育マニュアル作成(厚生労働省の多言語版を活用)でした。現在は2名体制で安定運用しており、来年3期生の受入れを計画中です。

外国人材を受け入れる前に確認すべき社内体制

外国人材の受入れは、制度を理解するだけでなく、受入れ前に自社の体制を整えておくことが成功の前提条件です。

受入れ前チェックリスト

以下の項目を受入れ前に確認してください。

チェック項目確認内容
住居の確保通勤可能なエリアに提供可能な住居があるか
担当者の指定生活・職場の相談窓口になる担当者がいるか
安全教育の母国語対応母国語の安全教育資料を用意できるか
生活オリエンテーションゴミ出し・交通機関・銀行口座開設等の案内ができるか
日本語支援の仕組み日本語教室または学習支援ツールを提供できるか
CCUS登録体制事業者登録が完了しているか
JAC加入(特定技能の場合)加入手続きを済ませているか

この中でもとくに重要なのは「担当者の指定」です。外国人技能者からの相談窓口が曖昧だと、困ったときに誰に聞けばよいかわからず、不満が蓄積します。現場所長とは別に、生活・職場の困りごとを受け付ける担当者(管理部門か人事担当者)を指定しておきましょう。

外国人材の受入れに使える補助金・支援制度

外国人材の受入れ体制整備に活用できる支援制度があります。コストを抑えながら受入れ準備を進めるために把握しておきましょう。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

外国人労働者の就労環境整備(母国語による相談体制の整備、翻訳機材の導入等)を行った事業主に対し、最大72万円が助成される制度です。

項目内容
対象費用翻訳費用、通訳費用、多言語対応ソフト導入費等
助成率対象経費の4分の3(中小企業)
助成上限72万円
申請条件就労環境整備計画を事前に提出すること

出典: 厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」(2026-04-27確認)

JAC(建設技能人材機構)の支援

JAC は建設分野の特定技能外国人に特化した支援機関で、受入れ企業への支援として以下を提供しています。

  • 求人情報の登録・人材のマッチング支援
  • 特定技能外国人への日本語学習支援
  • 技能試験情報の提供
  • 受入れに関する相談対応

JAC への年会費(24万円)を支払う義務がある一方、これらの支援を活用することで、登録支援機関への委託費用(月2〜3万円/人)を抑えることも可能です。

参考: JAC(建設技能人材機構)公式サイト

育成就労制度(2027年度移行予定)への準備

2024年6月に成立した改正法により、技能実習制度は2027年度をめどに「育成就労制度」へ移行します。中小建設会社として知っておくべき変更点を整理します。

技能実習との主な違い

項目技能実習(現行)育成就労(新制度)
目的技術移転・国際貢献人材育成と人材確保
転籍原則不可(例外あり)一定要件のもと認められる
在留期間最長5年(技能実習3号まで)最長3年(特定技能1号への移行が前提)
監理団体監理団体経由が必須監理支援機関に名称変更。機能は類似

転籍が一定要件のもとで認められる点が最大の変更点です。「受け入れた外国人が転籍してしまう」リスクが高まる一方、良い職場環境・待遇を提供している企業には定着しやすくなるとも言えます。

新制度への対応として今から準備できることは、外国人技能者にとって「転籍したくない理由」を作ることです。給与の昇給テーブルを設計すること、特定技能2号へのステップアップを支援する体制を整えること、居住環境を改善すること。こうした取り組みが、新制度への対応とそのまま重なります。

参考情報

よくある質問

建設業で外国人を雇用するにはどの在留資格が適していますか?
未経験者を育てたい場合は技能実習、即戦力がほしい場合は特定技能1号、長期的な戦力にしたい場合は特定技能2号が適しています。自社の目的に合わせて選択しましょう。
外国人材の受入れにはどれくらいの費用がかかりますか?
技能実習の場合、年間1人あたり約350〜500万円(給与+管理費+住居費+社会保険料)が目安です。特定技能の場合はJAC年会費24万円に加え、給与は日本人と同等以上が必要です。
外国人材の受入れまでにどれくらいの期間がかかりますか?
技能実習の場合、監理団体の選定から入国まで約6〜10ヶ月かかります。特定技能の場合も受入計画の認定から入国まで数ヶ月を要するため、早めの準備が必要です。
建設業で外国人を雇用する際の注意点は何ですか?
安全教育を母国語で行うこと、CCUSへの登録が義務であること、月給制が原則であること、日本人と同等以上の報酬が必要であることが主な注意点です。
技能実習と特定技能の違いは何ですか?
技能実習は育成目的で監理団体を通じて受入れ、最長5年。特定技能1号は即戦力として直接雇用、最長5年。特定技能2号は在留期間上限なし、家族帯同も可能です。
外国人材の定着率を上げるにはどうすればよいですか?
住居・生活支援の充実、週1回の日本語教室、月1回の定期面談、文化の違いへの配慮(宗教上の食事制限、祝日の配慮等)が重要です。特定技能1号から2号へのステップアップや給与の昇給テーブルなど、キャリアパスを明示することも定着率向上に効果的です。

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