この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

建設業の平均年収 — 全体像

建設業全体の平均年収は約509万円です。厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、全産業平均(約460万円)を約50万円上回っています。

出典: 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」

ただし、この数字はあくまで平均値であり、職種・年齢・資格・企業規模・地域によって大きく異なります。施工管理技士と現場作業員では100万円以上の差がつくことも珍しくありません。

建設業の年収は過去10年間で上昇傾向が続いています。人手不足が深刻化する中で、人材確保のために賃金を引き上げる企業が増えていることが背景にあります。国土交通省の「建設業活動実態調査」でも、建設技能労働者の賃金は2015年と比較して約15%上昇しているとの報告があります。

職種別の平均年収

建設業と一口に言っても、職種によって年収は大きく異なります。技術系の資格保有者は高い水準にある一方、資格なしの現場作業員は他業種と同程度になることもあります。

職種平均年収備考
施工管理技士(1級保有)550〜700万円資格手当+管理職手当で高水準
施工管理技士(2級保有)400〜550万円資格取得で確実にアップ
現場監督(資格なし)350〜450万円経験年数で上昇
とび職400〜550万円技能レベルで大きく変動
鉄筋工380〜500万円熟練工は高収入
型枠大工380〜500万円需要が高く人材不足
電気工事士400〜550万円資格保有で安定
配管工380〜480万円資格・経験で変動
塗装工350〜450万円一人親方は上振れ
内装仕上工350〜450万円商業施設案件で高額に
建設事務(経理・総務)300〜400万円資格(日商簿記等)で加算
測量士400〜500万円ドローン測量スキルで上振れ

注目すべきは、施工管理技士(1級保有)の年収水準です。管理職ポジションになると700万円を超えるケースも珍しくなく、大手ゼネコンのプロジェクトマネージャークラスでは800万円を超えることもあります。

一方、とび職や型枠大工といった技能職は、一人親方として独立した場合に年収が大きく上振れする傾向があります。腕のいい一人親方で年間700〜800万円を稼ぐ人もいますが、天候や景気の影響を受けやすく、安定性という面では雇用型に劣ります。

地域別の年収差

同じ職種でも、地域によって年収に差があります。東京・神奈川・大阪などの都市部は全国平均より10〜20%高く、地方は10〜15%低い傾向です。

地域平均年収(建設業全体)全国平均との差
東京都570万円+12%
神奈川県540万円+6%
大阪府530万円+4%
愛知県520万円+2%
北海道450万円-12%
沖縄県410万円-19%

都市部は案件単価が高く、交通インフラや再開発プロジェクトが集中しているため、賃金水準も高くなります。ただし、生活費(特に住居費)も高いため、実質的な手取りで見ると地域差はやや縮まります。

年齢別の平均年収

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年齢平均年収前年齢層からの上昇額
20〜24歳310万円
25〜29歳380万円+70万円
30〜34歳440万円+60万円
35〜39歳500万円+60万円
40〜44歳540万円+40万円
45〜49歳560万円+20万円
50〜54歳570万円+10万円
55〜59歳560万円-10万円

20代の上昇幅が大きいのが建設業の特徴です。資格取得と経験の蓄積で30代前半までに大きく伸びる一方、50代以降は横ばいから微減に転じます。

この年齢別カーブは「若いうちに資格を取れば早期に高収入に到達できる」ことを意味しています。20代後半で2級施工管理技士、30代前半で1級施工管理技士を取得するモデルケースでは、30代半ばで年収500万円台に到達するのが標準的なパスです。

他業種との年齢別比較

建設業は20代〜30代前半の年収上昇率が他業種より高い点が強みです。IT業界やメーカーでは20代の年収上昇が緩やかで、30代後半から伸びる傾向がありますが、建設業は20代からの伸びが顕著。資格という明確なスキル指標があることが、この違いを生んでいます。

資格別の年収アップ額

建設業は「資格を取れば確実に年収が上がる」数少ない業界です。医療業界(医師・看護師)と同様に、資格と収入が直結する構造になっています。

資格年収アップの目安資格手当の相場合格率(近年)
1級建築施工管理技士+80〜120万円月3〜5万円約40〜45%
1級土木施工管理技士+80〜120万円月3〜5万円約35〜40%
2級建築施工管理技士+30〜60万円月1〜3万円約40〜50%
2級土木施工管理技士+30〜60万円月1〜3万円約45〜55%
1級建築士+100〜150万円月5〜10万円約10%
2級建築士+40〜80万円月2〜4万円約25%
1種電気工事士+30〜50万円月1〜3万円約40%
監理技術者+50〜100万円月3〜5万円

1級施工管理技士を取得すれば、年収100万円アップは現実的です。合格率は35〜45%とそれほど低くないため、しっかり準備すれば十分に合格できる試験です。これは若手に伝えるべき最大のモチベーションでしょう。

資格取得のROI(投資対効果)

たとえば1級土木施工管理技士の場合、受験料は第一次検定・第二次検定合わせて約21,000円。テキストや問題集の費用が1〜2万円、通信講座を利用する場合は5〜15万円程度です。合計でも最大20万円程度の投資で、年収が80〜120万円上がることを考えると、投資回収期間は3ヶ月程度。これほどROIの高い自己投資はなかなかありません。

会社として資格取得支援制度を設けることも重要です。受験料の会社負担、合格祝金(5〜10万円が相場)、資格手当の月額支給を組み合わせることで、社員のモチベーションを高められます。人材開発支援助成金を活用すれば、研修費用や受講中の賃金の一部が助成されるため、中小建設会社でも負担を抑えて支援制度を運用できます。

企業規模別の平均年収

従業員数平均年収全産業比
10人未満380万円低い
10〜99名430万円やや低い
100〜999名510万円同程度
1,000名以上620万円やや高い

中小建設会社(100名未満)は大手と約200万円の差があります。ただし、この差は固定的なものではありません。資格手当や成果報酬を充実させ、評価制度を整備して等級と給与を明確に紐づけることで、社員が納得感を持てる待遇を実現できます。

中小建設会社が大手との差を埋める方法

大手ゼネコンの給与水準に基本給で対抗するのは現実的ではありません。しかし、中小には中小の強みがあります。

資格手当の充実が第一の施策です。大手では資格手当が形骸化している(基本給に含まれている)ケースがある一方、中小では月3〜5万円の資格手当を明確に支給することで「資格を取れば確実に手取りが増える」という実感を与えられます。

住宅手当や家賃補助も有効です。地方の中小建設会社が月2〜3万円の家賃補助を出す場合、大手との実質的な年収差はかなり縮まります。加えて、通勤時間の短さや、若手のうちから現場を任せてもらえる環境なども、金銭面では測れないメリットです。

成果に応じたインセンティブ制度も検討に値します。工事の利益率に連動した賞与配分、原価低減のアイデアに対する報奨金など、中小だからこそ柔軟に設計できる報酬体系があります。

このデータの活用方法

採用時の給与設定

自社の給与が相場と比べて高いか低いかを把握し、求人票に反映しましょう。

相場以上の給与を出している場合は、「業界平均より○%高い」と明記することで求人の訴求力が上がります。相場以下の場合でも、資格手当の充実度、福利厚生の内容、残業の少なさなど、金額以外の要素を具体的に示すことで補完できます。

重要なのは「幅のある金額」ではなく「モデル年収」で示すこと。「月給25万〜45万円」ではなく、「未経験入社: 年収350万円 → 2級取得3年目: 年収480万円 → 1級取得10年目: 年収630万円」のように、キャリアステップに沿った金額を提示する方が求職者に響きます。

定着支援としてのキャリアパス提示

「3年後にいくら、5年後にいくら」をデータに基づいて提示することは、若手の離職防止に直結します。

具体的なモデルケースを示しましょう。

年次目標資格想定年収備考
入社時350万円先輩社員のサポート
3年目2級施工管理技士420万円小規模現場を担当
5年目1級施工管理技士520万円中規模現場の主任
10年目監理技術者630万円大規模現場の所長候補

このようなキャリアパス表を入社時のオリエンテーションで共有し、定期的な面談で進捗を確認することが、若手の定着につながります。

経営判断としての人件費最適化

自社の給与水準が適正かどうかを定期的にチェックする仕組みが必要です。年に1回、本記事のような業界データと自社データを比較し、離職率やエンゲージメントスコアと合わせて分析しましょう。

離職率が高い場合は給与の見直しを検討すべきですが、給与を上げるだけでは根本的な解決にならないこともあります。職場環境、人間関係、キャリアの見通しなど、複合的な要因を整理した上で対策を打つことが重要です。

2024年問題と賃金の見通し

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されています。これにより「残業代込みで稼ぐ」モデルが通用しなくなり、基本給の引き上げ圧力が強まっています。

国土交通省は建設業の賃金水準の引き上げを政策目標に掲げており、公共工事設計労務単価は11年連続で引き上げられています。2024年3月適用の単価は全国全職種平均で前年比5.9%増と、大幅な引き上げが実施されました。

出典: 国土交通省「公共工事設計労務単価について」

この流れを受けて、民間工事でも技能労働者の賃金引き上げが進むと見込まれています。人手不足が続く限り、建設業の賃金は中長期的に上昇トレンドが継続するでしょう。

建設業の福利厚生相場 — 給与以外の待遇比較

年収だけで待遇を比較するのは不十分です。建設業の採用では、福利厚生の内容も求職者の判断材料になります。業界標準の福利厚生を把握しておきましょう。

建設業で一般的な福利厚生

福利厚生大手ゼネコン中堅(100〜999名)中小(100名未満)
退職金制度ほぼ全社あり7〜8割の企業5〜6割の企業
住宅手当・家賃補助月2〜5万円月1〜3万円設定なしが多い
資格取得支援受験料負担が一般的受験料+合格祝金企業により差
作業服・安全靴支給ほぼ全社ほぼ全社ほぼ全社
社用車貸与役職者に多い現場担当者に一般的小規模では必需品
健康診断(法定以上)人間ドック等年1〜2回法定1回が標準
育児休暇の取得実績改善傾向業種により差取得率が低い傾向

中小建設会社が待遇で差別化しやすい福利厚生は「資格取得支援」です。大手では制度があっても手続きが煩雑で活用しにくいケースがある一方、中小では社長判断でスピーディーに支援できます。「受験料全額負担+合格祝金10万円+資格手当月5万円」を明確に打ち出すことで、大手との差別化が可能です。

建退共(建設業退職金共済)の重要性

建設業には「建設業退職金共済制度(建退共)」という業界独自の退職金制度があります。企業が証紙を購入して技能者の手帳に貼付することで積み立てる仕組みです。

従業員が転職した場合でも、貼付された証紙の金額分は持ち運びが可能(他社に転職しても退職金に加算)なため、業界全体でのキャリアを通じた退職金として機能しています。

積立金額日額月20日就労の場合
証紙1日あたり330円(2024年4月時点)6,600円/月
年間積立(240日就労)79,200円
20年積立約158万円

建退共への加入は採用訴求にもなります。「建退共に加入しており、長く働くほど退職金が確実に積み上がります」という説明は、長期就労へのインセンティブになります。

給与以外の「見えないコスト」と「見えない収入」

年収の比較をするとき、表面上の金額だけでは判断を誤ることがあります。建設業の求職者が見落としやすい要素を整理します。

「見えないコスト」

通勤にかかる費用は、現場が毎回変わる建設業では特に考慮が必要です。会社の拠点から離れた現場への移動が社用車でなく自家用車の場合、ガソリン代の支給ルールを確認しておく必要があります。

道具・工具の持ち込みが暗黙の了解になっている企業では、消耗品の自己負担が発生します。作業服の洗濯代も細かいですが年間で積み上がります。

一方、現場作業では「作業服・安全靴の支給」「社用車の貸与」がある企業は実質的に年数万円のコスト負担がゼロになります。求人票の福利厚生欄にある「作業服支給、安全靴支給、社用車貸与」は金銭的なメリットとして換算してください。

「見えない収入」

建設業では「現場手当」「危険作業手当」「遠隔地手当」といった各種手当が、基本給に上乗せされるケースがあります。

手当の種類金額目安付与条件
現場手当月1〜3万円現場勤務のたびに支給
危険作業手当日5,000〜10,000円高所・地下等の作業時
遠隔地手当月2〜5万円自宅から遠い現場への配属時
皆勤手当月1〜2万円無遅刻・無欠勤の場合
資格手当月1〜5万円保有資格に応じて支給

これらの手当は求人票に記載がないこともありますが、入社前の確認事項として確認しておくことをおすすめします。

給与設定を誤ると採用と定着の両方に悪影響が出る

中小建設会社が給与設定で犯しやすいミスと、その影響を整理します。

ミス1: 求人票の給与幅が広すぎる

「月給20〜50万円」という給与設定は、経験豊富な人材から未経験者まで幅広く募集しているように見せるためのものですが、求職者からは「実際のところいくらもらえるのかわからない」という不信感を生みます。

改善策として、職種・経験・資格別に分けたモデル給与を明示します。例えば「未経験入社: 月給22万円」「2級施工管理技士保有: 月給28万円」「1級施工管理技士保有: 月給33万円以上」のように段階を分けて表示すると、求職者のミスマッチが減り、選考の質も上がります。

ミス2: 業界相場を下回ったまま気づかない

同業他社の採用状況を定期的に確認していない場合、自社の給与がいつの間にか相場を下回っている可能性があります。業界全体の賃金は近年上昇傾向にあり(公共工事設計労務単価は11年連続引き上げ)、数年前に設定した給与テーブルが古くなっているケースは珍しくありません。

年に1回、厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」の最新版と、同じ地域の求人媒体(Indeed・ハローワーク)での他社の給与設定を確認する習慣をつけてください。

ミス3: 残業代の扱いが不透明

「みなし残業(固定残業代)」が給与に含まれているケースで、その金額と時間数を明記しないと、「残業代が出ない会社」という誤解を生みます。

「月給28万円(固定残業代40時間分・月3.2万円含む。超過分は全額別途支給)」のように、固定残業代の内訳を明記することで、不信感を払拭できます。

建設業の給与 — 今後の見通し

建設業の賃金は中長期的に上昇するトレンドが続くと予測されます。

国土交通省は2024年度に建設業の技能労働者の賃金が他産業を上回る水準を達成するという政策目標を設定しており、公共工事設計労務単価の引き上げが民間工事の賃金にも波及しています。

2024年4月からの時間外労働上限規制の適用により、残業代を稼いで実収入を補う従来のモデルが難しくなりました。この結果、基本給の引き上げ圧力がさらに強まると予想されます。

人手不足が深刻化する中で、採用競争に勝つためには「業界平均を上回る待遇」が求められる時代になっています。中小建設会社が今から着手すべきことは、業界データを定期的にウォッチし、給与テーブルの見直しサイクルを年1回以上に設定することです。

給与水準の自社点検チェックリスト

以下のチェックリストを使って、自社の給与水準を年1回点検してください。

チェック項目確認方法
同地域の同職種と比較して相場の範囲内かIndeed・ハローワーク求人で他社の給与を確認
新入社員の初任給が業界平均(約310万円/年)を下回っていないか本記事の年齢別データと比較
1級施工管理技士保有者の年収が550万円以上か本記事の資格別データと比較
資格手当の金額が一般的な相場の範囲内か(1級で月3〜5万円)求人媒体の他社情報を参考に
過去3年間で一度も給与テーブルを見直していないか年1回の見直しを推奨
固定残業代(みなし残業)の内容を社員全員が理解しているか就業規則・雇用契約書を確認

このチェックで「NO」が複数出る場合は、給与制度の見直しを検討する時期です。離職率や採用応募数と合わせて判断することをおすすめします。

よくある質問

よくある質問

建設業は給与が高いイメージがありますが、実態は?
全産業平均(約460万円)と比べると建設業全体の平均は約509万円と高めですが、これは経験豊富な技術者の存在が平均を押し上げているためです。未経験の現場作業員は300〜350万円からスタートすることが多く、高い水準に到達するには資格取得と経験の積み重ねが必要です。
施工管理の仕事に転職すると年収は上がりますか?
他業種から建設業(施工管理職)に転職した場合、初年度は現状維持か微減になることが多いです。ただし2〜3年で2級施工管理技士を取得し、5年で1級を取得するルートを歩めば、転職前の年収を上回るケースは多くあります。建設業は「資格取得への意欲と行動力がある人が報われやすい」業界です。
地方の建設会社でも高い年収を狙えますか?
地方は都市部と比べて年収が10〜15%程度低い傾向がありますが、生活費(特に住居費)も低いため、実質的な購買力の差はデータほど大きくありません。また、地方の中小建設会社でも1級施工管理技士を保有していれば年収550〜600万円台は十分に狙えます。地方での採用難から、優秀な人材には競合より高い給与を提示する企業も増えています。

参考情報

よくある質問

建設業の平均年収はいくらですか?
建設業全体の平均年収は約509万円で、全産業平均(約460万円)を上回っています。ただし、職種・年齢・資格・企業規模によって大きく異なります。
施工管理技士の年収はどれくらいですか?
1級施工管理技士保有者で550〜700万円、2級施工管理技士保有者で400〜550万円が目安です。資格手当として月3〜5万円が加算されるケースが多いです。
建設業で年収を上げるにはどうすればよいですか?
資格取得が最も確実な方法です。1級施工管理技士を取得すれば年収100万円アップは現実的です。資格手当として月3〜5万円が加算される企業が多く、経験年数に加えて資格がキャリアアップの鍵となります。
建設業の20代の平均年収はいくらですか?
20〜24歳で約310万円、25〜29歳で約380万円です。20代は年収の上昇幅が大きく、資格取得と経験の蓄積で30代前半までに大きく伸びる傾向があります。
中小建設会社と大手で年収にどれくらいの差がありますか?
従業員10〜99名の企業で平均430万円、1,000名以上の企業で平均620万円と、約200万円の差があります。ただし、中小企業でも資格手当や成果報酬を充実させることで差を埋めることは可能です。
建設業の資格手当の相場はどれくらいですか?
1級施工管理技士で月3〜5万円、2級施工管理技士で月1〜3万円、1級建築士で月5〜10万円が相場です。資格を取ることで確実に年収が上がる業界です。

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