この記事の監修 山本 貴大 / 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ 代表取締役

建設業×DXの専門メディア「ケンテク」編集長。中小建設会社のDX導入支援・マーケティング支援に従事。

建設現場の休憩スペース。ホワイトボードに絵記号を使った作業指示が貼られ、ベンチにヘルメットが並んでいる

技能実習から育成就労へ。転籍が認められる前提で受け入れを設計する

2027年4月、建設業界で長年活用されてきた技能実習制度が終わりを迎えます。代わって始まるのが「育成就労制度」です。厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況によれば、建設業で働く外国人労働者は177,902人(2024年10月末時点)で、そのうち技能実習が107,229人と6割を占めます。これだけ技能実習に依存している建設業にとって、制度の切り替わりは経営の根幹に関わる問題です。

「名前が変わっただけでしょ」と考えている経営者がいるとすれば、それは危険な認識かもしれません。転籍(職場変更)の容認、日本語能力の義務化、監理団体の再編など、実務に直結する変更が数多く含まれています。この記事では、技能実習と育成就労の違いを整理したうえで、建設会社が2026年中に着手すべき準備を具体的に解説します。

育成就労制度とは何か — 制度創設の背景

育成就労制度は、2024年6月に成立した改正出入国管理法に基づく新しい在留資格制度です。施行日は2027年4月1日と正式に決定されました。

現行の技能実習制度は1993年に創設され、建設業の人手不足を補う手段として広く利用されてきました。しかし制度上の目的はあくまで「技能移転を通じた国際貢献」であり、実態としての「労働力確保」とのあいだに大きなズレが指摘されてきた経緯があります。

低賃金、長時間労働、失踪、暴力的なハラスメントといった問題が繰り返し報道され、米国国務省の人身売買報告書でも言及されるなど、国際的な批判も受けていました。有識者会議での議論を経て政府が出した結論は、技能実習制度の廃止と新制度の創設です。

育成就労制度の目的は明確に二つあります。一つは「外国人材の育成」、もう一つは「人手不足分野での人材確保」です。国際貢献という建前を取り払い、日本が外国人労働者を必要としている現実を制度として正面から認めた格好です。

建設分野は育成就労制度の対象分野です。国土交通省の資料によれば、建設分野の受入れ見込数は2027年4月から2029年3月までの2年間について設定され、2024年3月に特定技能1号の受入れ見込数を再設定した際に算出した2028年度の就業者数のうち、技能実習生数の2年分を用いることとされています。

ここで押さえておきたいのは、受入れ見込数が単なる予測値ではなく受入れの上限として運用される点です。分野全体で上限を超えることが見込まれる場合、在留資格認定証明書の交付が停止されます。「枠が埋まれば新規の受入れが止まる」制度設計になっているため、受入れを考えている企業ほど早い段階で準備を進める意味があります。

技能実習制度との違い — 主要な変更点

育成就労制度が技能実習制度と異なる点は多岐にわたりますが、建設会社の経営に直結する変更点を7つに絞って整理します。

1. 制度の目的が変わる

技能実習制度の法的な目的は「開発途上地域への技能移転による国際貢献」でした。育成就労制度では「人材の育成」と「人材の確保」が正面から掲げられます。目的の変更によって、建前と実態の乖離が解消されることになります。

2. 在留期間と構造が変わる

技能実習は1号(1年)、2号(2年)、3号(2年)の3段階で最長5年でした。育成就労は原則3年間で、この期間を「特定技能1号の水準まで育てる育成期間」と位置づけています。段階の区分がなくなり、シンプルな構造に変わります。

項目技能実習(現行)育成就労(2027年4月〜)
目的技能移転による国際貢献人材育成と人材確保
在留期間最長5年(1号1年+2号2年+3号2年)原則3年
段階構成3段階(1号・2号・3号)段階なし(一括3年)
転籍原則不可同一業務区分内で条件付きで可能
日本語要件なし就労開始前にA1相当(N5等)の試験合格または相当講習の受講。特定技能1号への移行時にA2相当(N4等)の試験合格(当分の間は相当講習の受講も可)
監督機関外国人技能実習機構(OTIT)外国人育成就労機構(技能実習機構を改組)
受入れ窓口監理団体監理支援機関(許可制で再編)

3. 転籍(職場変更)が認められる

技能実習制度で最も批判を受けてきたのが、実習先の変更が原則として認められない点でした。企業の倒産や深刻なハラスメントなど「やむを得ない事情」がある場合に限り認められていたものの、実態としては実習生が劣悪な環境から逃げられない構造を生んでいました。

育成就労制度では、やむを得ない事情による転籍に加えて、本人の意向に基づく転籍も同一業務区分内で認められます。要件は、一定の就労期間を経ていること、技能検定試験基礎級等への合格、一定水準以上の日本語能力に係る試験への合格、そして転籍先が適切と認められる要件を満たすことです。

この「一定の就労期間」が何年になるかは、企業にとって最も影響の大きい論点です。政府の基本方針は転籍制限期間を1年とすることを目指しつつ、当分の間は分野ごとに1年から2年までの範囲で設定するとしています。つまり建設分野で1年になるか2年になるかは、分野別運用方針で決まります。

さらに重要な条件があります。1年を超える転籍制限期間が設定された分野で、その期間を選択した企業は、就労開始から1年を経過した後に、転籍を制限していることを理由とした昇給などの待遇向上を図らなければならないとされています。2年の制限を選べば人材を長く引き留められる、という単純な話ではなく、引き留める分の待遇を用意する義務がセットになります。

建設会社にとっては「せっかく育てた人材が他社に移ってしまう」というリスクが生じます。一方で、働きやすい職場環境を整備している企業にとっては、他社からの転籍受け入れによって経験者を確保できる機会にもなります。

転籍にあたっては、転籍前の企業が負担した初期費用を転籍先の企業が在籍期間に応じて補填する仕組みが検討されています。一方的に人材を引き抜かれて損をする事態を防ぐためのルールで、金額の考え方は後述します。

4. 日本語能力要件が新設される

技能実習制度では、入国時の日本語能力に関する法的な要件はありませんでした。育成就労制度では段階的な日本語能力が求められます。

就労を開始するまでに、日本語能力A1相当以上(日本語能力試験N5等)の試験合格、または相当講習の受講が必要です。3年間の育成就労を終えて特定技能1号へ移行する段階では、A2相当以上(N4等)の試験合格が求められます。

A2のほうは試験合格が原則ですが、政府方針では当分の間は相当講習の受講でも可とされています。また、試験に不合格となった人には再受験のために最長1年の在留継続を認めるとされており、一度の不合格で即帰国という運用にはなりません。

現場での安全確保という観点からも、日本語要件の導入は建設業にとってプラスに働くはずです。ただし、受け入れ企業側にも日本語教育の機会を提供する責務が課されるため、教育体制の整備が必要になります。

5. 監理団体が「監理支援機関」に再編される

現行の監理団体は、育成就労制度のもとで「監理支援機関」として再編されます。単なる名称変更ではなく、許可基準が厳格化されます。

受入れ企業と密接な関係を有する役職員の監理への関与が制限されるほか、外部監視の強化が行われます。形式的な監理にとどまっていた団体は淘汰される可能性があり、建設会社としても付き合いのある監理団体が新制度の許可を取得できるかどうか、早めに確認しておく必要があります。

監理支援機関の許可申請は2026年4月15日から受付が始まっています。

6. 送出し費用の負担構造が変わる

技能実習制度では、外国人本人が母国の送出し機関に高額な手数料を支払うケースが常態化しており、借金を背負って来日する実習生が後を絶ちませんでした。

育成就労制度では、送出し機関の手数料のうち「適正な送出し手数料」の一部を日本側の受入れ企業が負担する仕組みに改められます。外国人本人の負担が軽減される反面、受入れ企業のコスト増要因となる点には留意が必要です。

7. 特定技能への接続がスムーズになる

技能実習修了後に特定技能1号へ移行するルートは現行制度にも存在しますが、制度間の接続は必ずしもスムーズではありませんでした。育成就労制度は特定技能1号水準までの育成を前提として設計されているため、3年間の育成就労を修了し技能試験と日本語試験に合格すれば、そのまま特定技能1号へ移行できる一貫した設計になっています。

建設業への具体的な影響 — 何が変わるのか

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人材の流動性が高まる

転籍が認められることで、外国人材の流動性は確実に高まります。建設業はもともと国内人材の確保が難しく、外国人材への依存度が高い分野です。そこに転籍という選択肢が加わるため、これまで「受け入れたら3年間は動かない」という前提で組んでいた現場の人員計画は、前提から組み直す必要があります。

給与水準、安全衛生体制、住居環境、日本語教育の充実度などが、外国人材に「選ばれる企業」かどうかの判断基準になります。賃金が地域の最低水準に近い企業や、安全教育が不十分な企業からは人材が流出するリスクが高まるでしょう。

逆に、福利厚生や教育体制を充実させている中小企業にとっては、大手から転籍してくる人材を受け入れられる可能性も開けます。企業規模よりも職場環境の質が問われる時代に入ります。

教育コストの考え方が変わる

技能実習制度では3号まで含めて最長5年間の在籍が可能でしたが、育成就労は原則3年間です。在籍期間が短くなる分、3年間で特定技能1号の水準まで育成するという明確なゴール設定が求められます。

育成就労計画の認定を受ける際には、技能と日本語の育成計画を提出する必要があり、計画的な教育プログラムの策定が不可欠です。「現場で見て覚えろ」式のOJTだけでは要件を満たせません。

もっとも、育成就労を修了した人材が特定技能1号に移行し、さらに特定技能2号へステップアップすれば、在留期間の制限なく長期的に働き続けることが可能になります。3年間の育成コストを「将来の戦力への投資」と捉えられるかどうかが、企業の外国人材戦略の分かれ目です。

受入れコストの増加が見込まれる

送出し費用の企業負担分が増えることに加え、日本語教育の機会提供義務、監理支援機関への管理費など、受入れコストは現行制度と比べて増加が見込まれます。

給与や社会保険料まで含めた受入れ1人あたりの年間コストは、現行の技能実習制度でも300万円台から400万円台に及びます(後述の編集部試算では326万〜442万円)。育成就労制度では、送出し手数料の企業負担分や日本語教育費用が上乗せされるため、さらに数十万円単位の増加を見込んでおく必要があるでしょう。内訳と試算は後述します。

ただし、補助金や助成金の活用によってコストを一部カバーできる可能性があります。人材開発支援助成金や建設業向けの助成制度については、関連記事で詳しく解説しています。

関連記事: 建設業で活用できる補助金・助成金の一覧

建設業の業務区分は3つしかない — 転籍リスクが構造的に高い理由

転籍が同一業務区分内に限られると聞くと、「うちの職種は限られているから、そう簡単には移れないだろう」と考えるかもしれません。建設業に関しては、その見立ては危険です。

建設分野で外国人材が従事する業務は、2022年8月30日の閣議決定によって土木・建築・ライフライン設備の3区分に整理・統合されています。建設業に係るすべての作業が、この3つに集約されているわけです。

業務区分含まれる作業の例
土木コンクリート圧送、とび、建設機械施工、塗装 など
建築建築大工、鉄筋施工、とび、屋根ふき、左官、内装仕上げ、塗装、防水施工 など
ライフライン・設備電気通信、ガス、水道、電気などの整備・設置・変更・修理 など

区分がこれだけ広いということは、転籍先の選択肢もそれだけ広いということです。たとえば「土木」で受け入れた人材は、とびの会社にも建設機械施工の会社にも、同じ区分の中で移ることができます。職種が細かく分かれている分野と比べ、建設業は転籍が成立しやすい構造にあります。

裏を返せば、他社から転籍者を受け入れる側に回ったときの間口も同じだけ広いということです。待遇と教育体制を整えている会社にとっては、経験を積んだ人材を獲得する機会になります。

作業手袋をはめた手が鉄筋を組む作業をしている様子。背景に足場と組まれた鉄筋がぼやけて写っている
転籍は同一業務区分内に限られますが、建設分野の区分は土木・建築・ライフライン設備の3つだけです。同じ区分の中であれば、異なる作業の会社へも移れます。

転籍されたら、育てた費用はどうなるのか

「3年育てるつもりで受け入れたのに、1年で他社に移られたら初期費用が丸損になる」。受入れを検討する建設会社から最もよく出る懸念です。制度側もこの問題を認識しており、転籍先が転籍元に初期費用を補填する仕組みが検討されています。

有識者懇談会で示されている検討の方向性は、次のような考え方です。

まず、補填の対象となる初期費用を有形コスト(職業紹介費、入国前後の講習費、来日渡航費など)と無形コスト(金銭負担ではない初期の育成コスト)に分けます。無形コストは客観的に把握するのが難しいため、一律で有形コストの標準額と同額がかかっているものとして評価する案が出ています。

そのうえで、在籍した期間に応じて按分します。外国人材の生産性は年を追って上がるという考え方から、按分割合は1年目:2年目:3年目=1:2:3と傾斜をつける案が示されています。この計算だと、1年で転籍した場合は転籍先が初期費用の6分の5を、2年で転籍した場合は2分の1を補填することになります。

初期費用の評価額 100万円(例)83万円5/650万円1/2補填なし1年で転籍2年で転籍3年(修了)転籍先が転籍元に補填する額(検討段階)
国土交通省「外国人建設技能者の現状と育成就労制度について」で示された計算例をもとに作成。有形コストの標準額40万円に上乗せ20万円、無形コスト40万円を加えた100万円を評価額とした場合の試算です。金額はあくまで一例で、確定した基準ではありません。

この仕組みが実現すれば、早期に転籍されたときの損失は一定程度回収できます。ただし補填されるのは初期費用であって、育成にかけた時間そのものが戻るわけではありません。

転籍を受け入れる側にも制限が検討されています。受入れ機関に在籍する育成就労外国人のうち、本人意向による転籍者の割合を3分の1以下に抑える案、さらに都市部の企業が都市部以外の企業から受け入れられる転籍者数を、その上限のさらに2分の1以下とする案です。地方から都市部への人材集中を防ぐ狙いで、地方の建設会社にとっては流出を抑える方向に働きます。

あわせて、転籍に民間の職業紹介事業者が関与できないようにする方向も示されています。監理支援機関、外国人育成就労機構、ハローワーク、地方運輸局以外からの職業紹介を認めない案です。「紹介会社に引き抜かれる」形での流出は、制度上抑えられる見通しです。

ここで挙げた内容はいずれも有識者懇談会での検討段階のもので、確定した基準ではありません。最終的な運用は分野別運用方針と主務省令で定まります。受入れを計画している企業は、建設分野の方針が公表された時点で自社の条件を確認してください。

移行スケジュール — 施行までに何が起きるか

制度移行は一日で切り替わるのではなく、段階的に進行します。建設会社として押さえておくべきマイルストーンを時系列で整理しました。

時期内容
2024年6月改正出入国管理法が成立
2026年4月15日監理支援機関の許可申請受付が開始
2026年9月1日育成就労計画の認定申請受付が開始
2027年3月31日技能実習計画の認定申請の期限(この日までの申請が経過措置の対象)
2027年4月1日育成就労制度が施行。新規受入れは育成就労に切り替わる
2027年6月30日認定申請済みの技能実習を開始できる原則の期限

注目すべきは、2026年中にすでに重要な手続きが始まっている点です。監理支援機関の許可申請は2026年4月に開始済みで、育成就労計画の認定申請は2026年9月1日から受付が始まりました。「2027年4月に始まるからまだ先」と構えていると、施行日に間に合わない可能性があります。

技能実習の経過措置についても、正確に把握しておく必要があります。施行後も技能実習を継続できるのは、2027年4月1日時点ですでに来日している技能実習生か、2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請がなされ、原則として2027年6月30日までに技能実習を開始する技能実習生です。

つまり、施行日までに入国が間に合わなくても、3月31日までに認定申請を出して6月30日までに開始できれば、現行制度での受入れが可能です。ここに当てはまらない場合、技能実習生として再度入国することはできません。現行制度での受入れを考えている企業は、この2つの期限から逆算して手続きを進めてください。

企業が2026年中に準備すべきこと

制度移行を円滑に進めるために、建設会社が2026年中に着手すべき準備を5つにまとめました。

現場事務所の打合せテーブル。丸めた図面と広げた図面、電卓、ノート、白いヘルメットが置かれ、窓から朝の光が差している
育成就労計画には技能の育成計画と日本語の教育計画が必要です。監理支援機関と作成しますが、受入れ人数や現場体制は自社で整理しておくと進めやすくなります。

自社の外国人材戦略を見直す

育成就労制度では転籍が認められるため、「安い労働力を確保する」という発想での受入れは成り立たなくなります。外国人材を3年間で特定技能1号の水準まで育成し、その後も自社に定着してもらうためのキャリアパスを設計する必要があります。

具体的には、以下の点を検討してください。

  • 自社で受け入れる人数と職種の計画策定
  • 育成期間3年間の技能習得ロードマップ
  • 特定技能1号への移行後の処遇(給与テーブル、キャリアパス)
  • 特定技能2号を目指す人材の長期的な育成方針

建設業の人手不足対策全般については、以下の記事も参考にしてください。

関連記事: 建設業の人手不足を解消する7つの対策

監理団体(監理支援機関)の動向を確認する

現在付き合いのある監理団体が、監理支援機関としての許可を取得できるかどうかを確認してください。許可申請は2026年4月15日から開始されていますが、すべての団体が許可を取得できるとは限りません。

許可基準の厳格化によって淘汰される団体が出る場合、受入れのパイプラインに空白期間が生じるおそれがあります。複数の監理団体と接点を持っておくことも有効な対策です。

日本語教育体制を整備する

育成就労外国人には、就労開始前にA1相当(N5等)の試験合格または相当講習の受講が、特定技能1号へ移行する段階でA2相当(N4等)の試験合格(当分の間は相当講習の受講も可)が求められます。受入れ企業にも日本語教育の機会を提供する責務が課されるため、社内の教育体制を今から整えておくことが重要です。

検討すべき施策には、次のようなものがあります。

  • 地域の日本語教室、オンライン日本語学習サービスとの連携
  • 現場で使う専門用語(足場、養生、墨出しなど)の多言語マニュアル作成
  • 日本語学習の時間を業務時間内に確保する仕組みづくり
  • 日本語能力試験の受験費用補助

転籍に備えた職場環境の改善

転籍が認められるということは、外国人材が「働きたい」と思える職場でなければ人材が流出するということです。以下の観点で自社の環境を点検してください。

  • 賃金水準が同業他社と比べて適正か(日本人従業員と同等以上が前提)
  • 安全衛生教育を母国語または「やさしい日本語」で実施できているか
  • 住居の確保と生活支援(ゴミ出しルール、病院への同行など)が機能しているか
  • 相談窓口が設置されており、通訳やバイリンガルのスタッフがいるか
  • キャリアアップの道筋が外国人材にも示されているか

育成就労計画の認定申請に向けた準備

育成就労計画の認定申請は2026年9月1日から受付が始まっています。申請にあたっては、技能の育成計画と日本語の教育計画を含む育成就労計画の作成が必要です。

計画書の作成は監理支援機関と連携して行うことになりますが、自社側でも以下の情報を整理しておくとスムーズです。

  • 受入れ予定人数と配属先の現場体制
  • 育成担当者(メンター)の選定
  • 3年間の技能習得目標と評価基準
  • 日本語教育のカリキュラムと教育機関の選定
  • 住居の手配計画

特定技能との関係 — 一貫したキャリアパスの設計

育成就労制度は、特定技能制度と一体的に運用されることを前提として設計されています。外国人材のキャリアパスを整理すると、次のような階段構造になります。

ステージ在留資格期間求められる水準
育成期間育成就労原則3年就労開始前にA1相当(N5等)の試験合格または相当講習の受講。技能は基礎レベルからスタート
即戦力期間特定技能1号最長5年移行時にA2相当(N4等)の試験合格(当分の間は相当講習の受講も可)
熟練期間特定技能2号無期限(更新制)高度な技能、班長・職長レベル

この3段階を通じて、育成就労で入国した外国人材が最終的に在留期間の制限なく、家族帯同で日本に定着できるルートが開かれています。

建設会社としては、育成就労の3年間だけを見るのではなく、特定技能1号(5年)、特定技能2号(無期限)を含めた長期的な視点で人材戦略を立てることが重要です。仮に育成就労の3年間+特定技能1号の5年間で合計8年間、さらに特定技能2号に移行すれば10年、20年と自社の戦力として活躍してもらえる可能性があります。

国土交通省が2023年6月に建設業を含む11分野で特定技能2号の受入れを開始したことで、このキャリアパスは現実的な選択肢として定着しつつあります。

外国人材の受入れ全般について体系的に知りたい方は、以下の記事も参考になります。

関連記事: 建設業の外国人材活用ガイド

受入れコストの試算 — 何にいくらかかるのか

育成就労制度での受入れコストの全容はまだ確定していません。以下は現行の技能実習制度で一般に見られるコスト構造をもとに、制度変更で増える費目を加味したケンテク編集部の試算です。公的に示された基準ではないため、実際の金額は監理支援機関や地域、職種によって変わります。自社の条件で見積もりを取る際の目安として使ってください。

現行制度(技能実習)の年間コスト目安

費目年間概算(1人あたり)
給与(月額18〜22万円×12ヶ月)216万〜264万円
社会保険料(企業負担分)30万〜40万円
監理費(月額3〜5万円×12ヶ月)36万〜60万円
住居費補助24万〜48万円
入国・受入れ費用(初年度按分)20万〜30万円
合計326万〜442万円

育成就労制度で追加が見込まれるコスト

費目概算
送出し手数料の企業負担分10万〜30万円(初年度)
日本語教育費用(教材、講師、受験料)10万〜20万円/年
監理支援機関への管理費(基準厳格化により上昇の可能性)現行比+5万〜15万円/年
転籍対策としての福利厚生強化企業により異なる

上の2つの表を積み上げると、初年度は1人あたり約350万〜510万円になります。2年目以降は入国・受入れ費用と送出し手数料が落ちる一方、日本語教育費と管理費は毎年かかるため、約320万〜450万円が目安です。なお、他社から転籍者を受け入れる場合は、前の受入れ企業への初期費用の補填が加わる可能性があります。この仕組みは検討段階で、金額の基準は確定していません。

コストだけを見ると負担増に感じるかもしれません。ただし、日本人の若手人材を新規採用する場合のコスト(求人広告費、面接コスト、教育期間中の給与、早期離職リスク)と比較すると、外国人材の受入れが必ずしも割高とは言い切れません。とくに地方の建設会社で若手の応募がほとんどないケースでは、外国人材が唯一の選択肢になることもあります。

活用できる支援制度・補助金

育成就労制度への移行に伴い、企業の負担を軽減するための支援制度も整備が進んでいます。2026年3月時点で活用可能な主な制度を紹介します。

人材開発支援助成金(厚生労働省)

外国人材を含む従業員のスキルアップ研修に活用できます。OJT研修やOff-JT研修にかかる経費、研修期間中の賃金の一部が助成されます。中小建設会社の場合、経費助成率が高く設定されているケースが多いため、活用のメリットが大きい制度です。

建設キャリアアップシステム(CCUS)関連助成

外国人建設技能者のCCUS登録は義務化されています。登録に伴う費用や、能力評価に関する助成措置が設けられています。CCUS上で技能レベルが可視化されることは、外国人材本人のモチベーション向上にもつながります。

外国人材受入れに関する自治体独自の支援

地方自治体によっては、外国人材の受入れ企業に対して住居費補助や日本語教育費の助成を行っているケースがあります。自社の所在地の自治体窓口に問い合わせてみてください。

建設業向けIT導入補助金

外国人材の教育や安全管理にITツールを活用する場合、IT導入補助金の対象になる可能性があります。多言語対応の安全教育アプリや、勤怠管理システムの導入などが該当するケースがあります。

建設業で活用できる補助金の全体像については、以下の記事でまとめています。

関連記事: 建設業の補助金・助成金一覧

制度移行を「機会」に変えるために

育成就労制度への移行は、建設業にとって大きな制度変更です。転籍の容認によって人材流出のリスクが生じる一方で、外国人材の「育成から定着まで」を一貫してサポートする制度設計になっている点は、長期的な人材確保を目指す企業にとって追い風とも言えます。

2026年はまさに準備の年です。監理支援機関の許可申請は4月15日に、育成就労計画の認定申請は9月1日に、いずれも受付が始まっています。自社の外国人材戦略の見直し、監理団体の動向確認、日本語教育体制の整備、職場環境の改善、そして育成就労計画の準備。やるべきことは明確です。

制度が変わっても、外国人材に「この会社で長く働きたい」と思ってもらえる職場をつくるという本質は変わりません。制度移行を受け身で待つのではなく、能動的に準備を進めることで、人材確保の面で競合に先んじることができるはずです。

もっとも、育成就労計画の準備と並行して日本人の採用も進めなければ、現場の体制は埋まりません。両方を同時に回すのは負担が大きい部分です。手が回らない場合は、建設業の採用支援サービスもご覧ください。ケンテクを運営するローカルマーケティングパートナーズが、採用計画の設計から求人の運用、定着の仕組みづくりまで、提案だけで終わらせず実行まで伴走する形で支援しています。

参考情報

本記事の転籍要件・転籍制限期間・初期費用の補填・受入れ人数枠・建設分野の業務区分・受入れ見込数の設定方法は国土交通省「外国人建設技能者の現状と育成就労制度について」、施行日と技能実習の経過措置は出入国在留管理庁「育成就労制度・特定技能制度Q&A」、日本語要件と制度の基本設計は厚生労働省「育成就労制度の概要」、冒頭の外国人労働者数は厚生労働省「外国人雇用状況」の届出状況(令和6年10月末時点)別表6に拠ります(いずれも2026年9月16日確認)。

よくある質問

育成就労制度と技能実習制度の一番大きな違いは何ですか?
制度の目的が根本的に異なります。技能実習は「技能移転による国際貢献」が目的でしたが、育成就労は「人材の育成と確保」を正面から掲げています。また、転籍(職場変更)が条件付きで認められる点も大きな変更です。
育成就労制度はいつから始まりますか?
2027年4月1日に施行されます。ただし、監理支援機関の許可申請は2026年4月15日から、育成就労計画の認定申請は2026年9月1日から開始されているため、企業側の準備は2026年中に必要です。
現在の技能実習生は育成就労制度に強制的に切り替わりますか?
いいえ。施行後も技能実習を継続できるのは、2027年4月1日時点ですでに来日している技能実習生か、2027年3月31日までに技能実習計画の認定申請がなされ、原則として2027年6月30日までに技能実習を開始する技能実習生です。これに該当しない場合、技能実習生として再度入国することはできません。
育成就労で転籍が認められると人材が流出しませんか?
本人の意向による転籍は同一業務区分内に限られ、一定の就労期間、技能検定試験基礎級等への合格、日本語能力の試験合格、転籍先が要件を満たすことが条件です。転籍制限期間は1年を目指しつつ、当分の間は分野ごとに1年から2年の範囲で設定されます。また転籍先が転籍元に初期費用を補填する仕組みも検討されています。働きやすい職場環境の整備が最も効果的な流出防止策です。
建設業の育成就労で求められる日本語能力は?
就労を開始するまでにA1相当以上(日本語能力試験N5等)の試験合格、または相当講習の受講が必要です。育成就労を終えて特定技能1号へ移行する段階ではA2相当以上(N4等)の試験合格が求められ、こちらは当分の間は相当講習の受講でも可とされています。受入れ企業にも日本語教育の機会提供が求められます。
小規模な建設会社でも育成就労制度を利用できますか?
企業規模そのものを理由に受入れができないという制度設計にはなっていません。監理支援機関を通じて育成就労計画の認定を受けることが前提です。ただし受入れ機関ごとの人数枠は、技能実習制度の基本人数枠を参考にしたうえで、受入れ機関と監理支援機関が優良な場合に枠を拡大する方向で検討されている段階です。確定した枠は分野別運用方針と省令で示されます。
育成就労制度で受入れ可能な建設業の職種は?
建設分野で特定技能外国人が従事する業務は、2022年8月30日の閣議決定により土木・建築・ライフライン設備の3区分に整理・統合されています。土木にはコンクリート圧送やとび、建設機械施工など、建築には建築大工や鉄筋施工、左官、内装仕上げなどが含まれます。育成就労の業務区分もこれと整合するよう設定されます。
日本語教育は企業が全額負担しなければならないのですか?
制度上、受入れ企業には日本語教育の機会を提供する責務が課されます。費用の負担範囲をどこまで企業が持つかは、分野別運用方針と省令の内容を確認してください。実務としては、地域の日本語教室や自治体の支援制度、オンライン学習サービスを組み合わせることでコストを抑えられます。人材開発支援助成金の活用も検討してください。

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