建設業の採用担当者が「応募者の管理は誰がやる?」と聞かれると、多くの場合「Excelかスプレッドシートで…」という答えが返ってきます。Indeed・ハローワーク・紹介会社それぞれから応募者が来て、メールで連絡を取り合い、Excelに転記して選考進捗を管理する—この体制は、採用数が月5人以下の時代はなんとか機能していました。しかし施工管理技士の有効求人倍率が5倍を超え(厚生労働省「一般職業紹介状況」2024年)、求人数も2016年比で5.04倍に増加した今、応募窓口を広げれば広げるほど管理が追いつかない状況に陥っている会社が増えています。
国土交通省の統計では、建設業就業者のうち60歳以上が全体の約26%を占め、29歳以下はわずか12%にとどまっています(2023年時点)。毎年数万人規模で現役世代が退職していくなかで、採用の「量」だけでなく「速度」と「管理の質」が採用成功率を分ける時代になっています。
この記事では、建設業の採用課題を踏まえた採用管理システム(ATS: Applicant Tracking System)の選び方と、実際に使える7製品の機能・料金・向き不向きを解説します。求人サイトとの連携、モバイル対応、労務管理ツールとの統合といった建設業ならではの視点で評価しています。
出典: 建設業を巡る現状と課題 — 国土交通省(2026-04-27確認) 出典: 建設業界に迫る「2024年問題」「施工管理」求人、2016年比で5.04倍に増加 — 株式会社リクルート、2024年3月
建設業の採用管理の現状と特殊事情
建設業の採用は、一般的な事務職・営業職の採用と比べていくつかの点で管理が複雑になります。まずその構造的な特殊性を整理しておきます。
職種によって選考フローがまったく異なる
建設会社が採用する人材は「施工管理技士・CADオペレーター・積算担当者・職人(鉄筋・型枠・電気・配管等)・事務スタッフ・幹部候補」と幅広く、職種ごとに選考フローが異なります。
施工管理技士の採用では、書類選考から始まって現場見学・複数回の面接・資格確認・労働条件の詳細すり合わせと時間がかかるのに対し、職人の採用は即日対応・技術確認の上で採用判断というケースが多くあります。同じ「採用」でも管理すべきステップが職種ごとに違うため、一つのExcelで管理しようとすると列が増え続けて使い物にならなくなります。
応募経路が分散して追跡できない
建設業の採用担当者が悩む「情報の散在」も構造的な課題です。Indeed・ハローワーク・建職バンク・自社採用ページ・紹介会社・縁故紹介と複数の経路から同時に応募が来ると、「どこから来た誰が今どの選考ステップにいるか」の把握が難しくなります。
助太刀総研の2024年調査によれば、建設業の中途採用において最も多い獲得経路は「人伝て(縁故)」で全体の61%を占めており、複数経路の管理は多くの企業にとって現実的な課題です。
応募者が複数媒体に同時エントリーしていることも多く、「A媒体から来た応募者が、実は先月B媒体でも応募していた」という重複を見落とすと、同一人物に別の担当者から別々に連絡するという失敗も起きます。
採用から入社まで書類のやり取りが多い
建設業に限りませんが、内定から入社までの間に雇用契約書・労働条件通知書・誓約書・健康診断書・資格証明書のコピーなど多数の書類が発生します。これをPDF送受信とメールで管理していると、「送った・送っていない」の確認だけで担当者の時間が消耗します。
さらに建設業の場合、現場ごとに作業員名簿の提出が求められるため、入社後すぐに個人情報の整備が必要になります。採用管理と労務管理が連携していないと、入社直後の処理が非効率になりがちです。
ATS(採用管理システム)で解決できること
採用管理システムを導入すると、上記の課題がどのように解決されるのか整理します。
複数の応募経路を一元管理できる
Indeed・ハローワーク・自社採用ページ・紹介会社など複数の経路からの応募者を、1つのダッシュボードで管理できます。応募者ごとに「どの媒体から来たか」「現在の選考ステップ」「担当者とのやり取りの履歴」が一覧で見えるため、「あの人どうなった?」という確認作業がなくなります。
重複応募のチェックも自動で行うシステムが多く、複数媒体から同一人物の応募が来た場合に通知してくれる機能があります。
選考ステータスを視覚的に管理できる
「書類選考中」「面接調整中」「現場見学設定済み」「内定通知待ち」「入社手続き中」といった選考ステップをパイプライン形式(カンバンボード形式)で表示するシステムが増えています。各ステップに何人いるかが一目でわかるため、選考が止まっている候補者への対応漏れを防げます。
面接日程の自動調整で候補者対応を効率化できる
候補者に「候補日程を選んでください」というリンクを送付し、面接官のカレンダーと連動して自動で日程確定するシステムが増えています。メールで「〇日の〇時はいかがでしょうか」「その日は都合が悪くて…」というやり取りを繰り返す時間を削減できます。
内定〜入社書類のオンライン化で事務処理コストを削減できる
内定通知・雇用契約書・労働条件通知書の電子交付、入社書類のオンライン提出・回収・保管が可能になります。SmartHRのような労務管理と統合したシステムでは、採用で収集した情報が自動的に労務管理に引き継がれるため、二重入力が不要になります。
採用コスト・採用経路の効果分析ができる
どの媒体から何件応募が来て、何人が最終的に入社したか、採用単価はいくらかを媒体別に集計する機能を持つシステムが増えています。「今月Indeedに10万円使ったが1人も採用できなかった」という状況を数値で把握することで、次月の媒体予算の配分を合理的に判断できます。
建設業が採用管理システムを選ぶ際の評価軸
ATSは数十種類以上ありますが、建設業が重視すべき評価軸は以下の5点です。
モバイル対応の品質
建設業の採用担当者は、現場に出ていることが多い中で採用業務を兼任しているケースがあります。また採用する職人・施工管理技士もスマートフォンで応募・連絡を取ることが大半です。PC専用のシステムでは、現場からの操作や候補者とのコミュニケーションに支障が出ます。スマートフォンで快適に操作できるかは必ず確認してください。
求人媒体との連携数と連携品質
Indeed・ハローワーク・建職バンク・doda・工事士.com・助太刀などの求人媒体と自動連携できるかどうかで、応募者の手動入力作業量が大きく変わります。特にIndeedとの連携(Indeed apply)は応募者が離脱しにくいためエントリー数に直接影響します。
連携のための設定が複雑だったり、連携できる媒体数が少なかったりすると、結局手動で転記する作業が残ります。
既存のHRツールとの連携
ジョブカン採用管理はジョブカン労務と、SmartHR採用管理はSmartHRの労務管理機能と、それぞれ同一シリーズ内でデータが自動連携します。すでに労務管理・勤怠管理にどのツールを使っているかによって、連携コストが大きく変わるため、既存の環境を優先した選定が効率的です。
料金体系と費用対効果
無料から始められるシステム(ジョブカン採用管理の無料プラン、Engage)も存在しますが、機能制限があります。採用人数・応募者数に連動した料金体系のシステムも多く、採用が少ない時期は安く、採用が多い時期は費用が上がります。月に何名程度の候補者が入ってくるかを事前に見積もっておくことが重要です。
操作のシンプルさと導入の容易さ
採用担当者がITに詳しくない場合でも使えるかどうかも重要な評価軸です。設定に1ヶ月かかるシステムでは、採用の繁忙期に間に合いません。無料トライアルがあるシステムで実際に操作して確認することを強く推奨します。
建設業に使える採用管理システム7選 比較テーブル
| サービス名 | 料金 | 主な機能 |
|---|---|---|
| ジョブカン採用管理 | 無料〜月額8,500円〜(LITE/50名まで) |
|
| Talentio | 無料〜月額20,000円〜(STANDARD/税抜・年間契約時) |
|
| HRMOS採用 | 要問合せ(初期費用なし) |
|
| Engage(エンゲージ) | 基本無料(オプション有料) |
|
| kintone採用管理 | 月額1,000円〜/ユーザー(税抜・最低10名〜) |
|
| SmartHR採用管理 | 要問合せ |
|
| Wantedly Hire | 要問合せ(個別見積もり) |
|
料金はすべて参考値です。最新の料金・プラン詳細は各サービスの公式サイトでご確認ください。
各システムの詳細解説
1. ジョブカン採用管理 — コストを抑えて始めるならまずこれ
ジョブカン採用管理は、ITトレンド2025年採用管理システムランキング1位を獲得したシステムです。無料プラン(候補者登録30名/月まで)から始められ、採用規模に合わせてLITE・STANDARDの有料プランに移行できます。シリーズ累計の有料ID数は300万を突破しています。
料金体系は登録した候補者数に連動しており、初期費用やサポート費用は一切かかりません。LITE プランは月50名までの登録で8,500円/月(税抜)から。月151〜300名では70,000円/月となります。採用が少ない時期は費用が抑えられる構造で、建設業の採用繁忙期(3〜4月、9〜10月)に合わせたコスト管理がしやすいです。
最大の強みはジョブカンシリーズとの連携です。ジョブカン労務HR・勤怠管理・給与計算をすでに使っている会社であれば、採用で収集した個人情報をシームレスに労務管理に引き継げます。建設業で導入が進んでいる「ジョブカン」の文脈で採用管理を一元化したい場合、最も自然な選択肢です。
近年追加されたAI面接機能(1回3,000円)やリファレンスチェック機能(1回1,500円〜)も特徴的で、建設業の職人採用に多い「人物の信頼性確認」ニーズにも対応しつつあります。
向いている企業は、従業員10〜50名規模でジョブカンシリーズを既に使っている中小建設会社、初めてATSを導入する企業(無料から試せる)、コストを抑えながら基本的な応募者管理を始めたい企業です。
2. Talentio(タレンティオ)— 採用のデータ蓄積と将来の採用に強い
Talentioは「戦略人事のパートナー」を標榜する採用管理システムです。選考フローの可視化と、タレントプール(今回は採用に至らなかった候補者を将来に向けてデータベース化する機能)が特徴です。
料金は無料のFREEプランから、月額20,000円のSTANDARD(税抜)、月額60,000円のPLUS(税抜)、エンタープライズの4段階です。STANDARD以上で媒体連携・CSVインポート・APIが利用可能になります。初期費用はすべてのプランで無料です。
SlackとのGoogle連携が充実しており、面接調整や候補者へのアクション通知をSlackで受け取りながら採用活動を進めるスタイルに対応しています。建設会社の採用担当者がSlackで業務連絡をしているケースには使い勝手が良いでしょう。
リファラル採用(社員紹介)のサポート機能があり、社員が候補者を紹介する際の専用フォームを作成・共有できます。建設業では「縁故採用」の比率が高い(助太刀総研調査: 61%)ため、既存社員の紹介をシステム化したい会社に向いています。
向いている企業は、採用担当者がSlack中心で業務を行っている会社、今後の採用のためにタレントプールを育てたい成長企業、社員紹介採用の仕組みを整えたい会社です。
3. HRMOS採用(ハーモス採用)— 採用データの分析まで踏み込みたいなら
HRMOS採用は、ビズリーチが運営する採用管理システムです。「採用業務の効率化」だけでなく「採用データの分析と戦略化」まで踏み込む設計が特徴で、導入企業の96%が採用業務の効率化を実感しているとされます。
料金は個別見積もりですが、初期費用はかかりません。ライト・スタンダード・エンタープライズの3プランがあり、違いは登録できる応募者数の上限です。具体的な費用は問い合わせが必要ですが、30〜100名規模の採用でも対応可能な設計です。
ビズリーチとの直接連携が他サービスにない強みで、ビズリーチのハイクラス転職者のデータをHRMOS上でそのまま活用できます。施工管理技士の経験者や建設業の管理職クラスの採用を強化したい会社には、ビズリーチとの連携が採用力の差になります。
採用媒体別の費用対効果分析(どの媒体から何人採用して採用単価はいくらか)が標準機能で備わっており、複数媒体を使い分けながらROIを管理したい会社に向いています。
向いている企業は、年間採用人数が20名以上の中堅建設会社、媒体別の採用コスト分析を重視する会社、ビズリーチで施工管理や管理職を探している会社です。
4. Engage(エンゲージ)— 無料でまず始めるなら
Engageは、エン・ジャパンが提供する採用支援ツールです。基本機能は完全無料で使えます。初期費用・月額費用・成功報酬のいずれも発生しない基本プランで、採用ページ作成・求人掲載・応募者管理が可能です。
国内で60万社以上が導入しており、求職者側からも「求人を探す場所」として認知されています。Indeed・LINEキャリア・Googleジョブなどへの自動配信機能により、一度掲載すれば複数媒体に同時展開されます。エン転職の1,200万人超の会員へのアプローチも可能です。
無料なのに機能が充実している反面、導入社数が多いため求人が埋もれやすい面もあります。有料オプション(オンライン適性検査・動画面接機能・掲載順位の引き上げ)を組み合わせることで差別化が図れます。
向いている企業は、ATSにコストをかけられない従業員10名未満の小規模建設会社、まず試してから有料移行を判断したい企業、Indeedへの自動連携を活用したい企業です。
5. kintone採用管理 — 自社の採用フローに合わせてカスタマイズしたい場合
kintoneはサイボウズが提供する業務アプリ構築プラットフォームです。採用管理に限らず、現場日報・安全書類・施工管理情報など建設業の多様な業務をアプリ化できる汎用性が特徴です。
採用管理向けにはテンプレートアプリが用意されており、応募者氏名・連絡先・応募経路・選考ステータス・面接記録などの項目を自社の採用フローに合わせて自由に設定できます。工種別(施工管理・職人・事務)で選考ステップが異なる建設業のニーズに、カスタマイズで対応できる柔軟性があります。
料金はライトコースが1ユーザー月額1,000円(税抜)、スタンダードコースが1,800円(税抜)です。最低10ユーザーから契約のため最低月額10,000円〜となります。単純なコスト比較では専用ATSより割高に見えますが、採用管理以外の業務(安全書類管理・協力会社管理など)にも同じkintoneを使えるため、トータルコストでは合理的な選択になることがあります。
注意点として、kintoneはノーコードのプラットフォームですが、最初のアプリ設計には一定の工数がかかります。ベンダーやパートナー企業に初期設定を依頼する費用(数万〜数十万円)が別途発生することが多いです。
向いている企業は、すでにkintoneを他業務で使っている建設会社、採用フローが独特で既製品のATSが合わない企業、採用管理以外の業務もkintoneで統合したい企業です。
6. SmartHR採用管理 — 採用から入社手続きを切れ目なくつなぐなら
SmartHRは、労務管理・勤怠・給与計算・人事評価など人事領域のすべてをカバーするプラットフォームです。採用管理(ATS)はタレントマネジメント機能の一部として提供されており、採用で集めた情報が入社後の労務管理にそのまま引き継がれます。
建設業で課題になりやすい「採用担当と労務担当が別の人で、情報の引き継ぎに時間がかかる」「入社書類の回収漏れが起きる」という問題を、採用〜労務を一元化することで解消できます。
料金は個別見積もりです。SmartHRは機能をモジュール別に選択できるため、採用管理単体での契約も可能ですが、労務管理との統合プランで採用するほうがコストパフォーマンスは上がります。
すでにSmartHRで労務管理をしている会社が採用管理を追加する場合は、データ連携のための初期設定コストがほぼ不要で移行できます。反対に、SmartHRをまだ使っておらず採用管理だけを目的に導入する場合は、ジョブカン採用管理やTalentioと費用対効果を比較する価値があります。
向いている企業は、SmartHRを既に労務管理に使っている会社、入社手続きのオンライン化と採用管理を同時に整備したい会社、採用から育成・評価まで人事データを一元管理したい中堅企業です。
7. Wantedly Hire — 採用ブランディングと組み合わせるなら
Wantedly Hireは、Wantedlyの採用ブランディング機能と統合した採用管理システムです。「想いで採用する」コンセプトのもと、会社のストーリー・価値観を発信するコンテンツと採用管理を一体化しています。
料金は個別見積もりとなっています。ジョブカンやTalentioの無料〜低価格プランと比べると費用は高くなる傾向がありますが、採用ブランディングに継続的に投資していく企業にとっては「採用ページ+スカウト+ATS」が一体化したパッケージとして費用対効果があります。
建設業でWantedlyが活きる場面は、若手・第二新卒向けの採用ブランディングを強化したい会社、「建設業=きつい」というイメージを払拭するコンテンツ発信を採用活動に組み込みたい会社です。職人採用よりも、将来の会社を担う若手施工管理や事務スタッフの採用に向いています。
向いている企業は、採用ブランディングに予算を投入できる従業員50名以上の企業、若手・未経験者の採用を強化したい会社、会社の魅力を継続的に発信してエンゲージメント採用をしたい会社です。
規模別・用途別おすすめの選び方
すべての会社にとって最適なATSは存在しません。会社の規模・採用数・既存のHRツール環境によって推奨が変わります。
5〜15名(小規模建設会社) — Engage(無料)でまず始める。採用が増えてきたらジョブカン採用管理の無料〜LITEプランへ移行する
15〜50名(中小建設会社) — ジョブカン採用管理(ジョブカン労務を既に使っているなら最優先)またはTalentio STANDARD。月間候補者数20〜50名の規模に対応しやすい
50〜150名(中堅建設会社) — SmartHR採用管理(SmartHR使用中の場合)またはHRMOS採用。採用コスト分析と媒体別ROI管理が必要な規模になってくる
150名以上(大手・中堅ゼネコン) — HRMOS採用またはカスタマイズ型。複数部門・複数職種を横断した採用管理、採用ブランディングも含めた戦略的な運用が求められる
採用課題別のおすすめ
| 優先課題 | 推奨システム | 理由 |
|---|---|---|
| コストを抑えてまず試したい | Engage → ジョブカン(無料プラン) | 無料から始められる |
| 媒体管理を一元化したい | ジョブカン採用管理 / HRMOS採用 | 求人媒体連携が豊富 |
| 労務管理と統合したい | ジョブカン採用管理 / SmartHR採用管理 | 同一シリーズで連携 |
| 採用コスト分析をしたい | HRMOS採用 / Talentio | 媒体別ROI可視化機能 |
| カスタマイズしたい | kintone採用管理 | 柔軟な設計が可能 |
| 若手採用ブランディング | Wantedly Hire | コンテンツ採用に強い |
| 入社書類を電子化したい | SmartHR採用管理 | 採用〜労務一気通貫 |
キャリアアップ助成金との連携 — 採用管理システムで助成金活用も効率化する
建設業で採用したパートや有期契約社員を正社員に転換する際、キャリアアップ助成金(正社員化コース)が活用できます。2025年度の制度では、有期雇用労働者の正社員転換で1人あたり40万円が支給されます(重点対象者は12ヶ月後にさらに40万円、合計80万円)。
採用管理システムを使うと、この助成金申請に関わる書類整備も効率化できます。入社時の雇用区分(有期・無期)・雇用開始日・労働条件の記録が採用管理システムに残るため、「6ヶ月以上雇用されている有期雇用労働者」の抽出が容易になります。特にSmartHRのように採用〜労務を一気通貫で管理するシステムでは、助成金申請に必要な情報の取り出しが容易です。
2025年度から申請手続きが簡素化され、キャリアアップ計画書を労働局に届出するだけで申請できるようになりました(従来は認定が必要でした)。申請の基本的な流れは「計画書届出 → 正社員転換 → 申請 → 受給」となります。
採用時点から「3〜6ヶ月後の正社員転換を見据えた採用管理」という視点を持つと、助成金の活用漏れを防げます。キャリアアップ助成金の詳細な要件・申請手順はキャリアアップ助成金 建設業活用ガイドで解説しています。
出典: キャリアアップ助成金 正社員化コース — 厚生労働省、2025年度版(2026-04-27確認)
採用管理システム導入前に確認すべきチェックリスト
ATSを導入する前に、以下の項目を確認しておくことで、「入れてみたけど使いこなせなかった」という失敗を避けられます。
現状の把握
- 月に何件程度の応募があるか(少なすぎる場合は無料ツールで十分な場合がある)
- 採用担当者は専任か兼任か(兼任の場合は操作が簡単なシステムを優先)
- どの求人媒体を使っているか(連携できるかどうかを確認)
- 既存の労務管理ツールは何か(ジョブカン/SmartHR等との連携優先)
選定前に確認すること
- 無料トライアル期間があるか(実際に使って操作性を確認する)
- スマートフォンで使いやすいか(現場からの操作を想定して確認)
- 想定する候補者数でのコストを試算したか
- 導入時のサポート体制(オンボーディング・設定支援)があるか
- データエクスポートできるか(将来的な乗り換えに備える)
導入後に設定すること
- 自社の採用フローに合わせた選考ステップの設定
- 使用する求人媒体との連携設定
- 面接官・採用担当者のアカウント作成と権限設定
- 候補者への自動返信メールのテンプレート作成
- 既存のExcel管理データの移行(応募者データのインポート)
採用管理システムを導入しても、求人票の質・面接の質・労働条件そのものが改善しなければ採用成功率は上がりません。ATSはあくまで「管理の効率化ツール」であり、「採用力そのものを高めるツール」ではないことを前提に導入を検討してください。
よくある導入の疑問 — Q&A
Excelでの管理とどう違うのか
Excelは「情報を書き込む場所」ですが、ATSは「採用プロセスを動かす仕組み」です。Excelでは候補者にメールを送った後に別途Excelを更新する必要があり、選考ステータスの更新忘れが起きます。ATSではメール送信・ステータス更新・面接調整が連動して動くため、管理の手間が減ります。
月の応募者が10名以下の小規模採用であれば、Excelでも十分かもしれません。応募者が月20〜30名を超えてきた段階で、ATSの導入効果が出始めます。
導入にどれくらい時間がかかるのか
ジョブカン採用管理やEngageのようなシンプルなシステムであれば、アカウント登録から基本設定完了まで数時間〜半日程度で使い始められます。kintoneのように自由設計が必要なシステムや、既存データの移行・媒体連携の設定が多い場合は、1〜2週間の準備期間を見ておくと安心です。
採用担当者がITに詳しくなくても使えるか
ジョブカン採用管理・Engage・Talentioはインターフェースがシンプルで、ITリテラシーが高くない担当者でも使いやすい設計になっています。無料トライアル期間に実際に触れてみて、自社の担当者が使いこなせるかを確認してから有料プランへ移行することを推奨します。
候補者(応募者)のデータはどこに保管されるか
いずれのクラウドサービスも、国内のデータセンターにデータを保管しています。個人情報保護法に基づいた運用が必要なため、選定時にはプライバシーポリシーと個人情報の取り扱い方針を確認してください。ジョブカン・SmartHR・TalentioはISMSや個人情報保護の認証を取得しています。
採用管理システム導入で期待できる効果と注意点
ATSを導入することで期待できる効果と、導入後によく起きる失敗を整理しておきます。
期待できる効果
採用管理システムを導入した企業の共通した効果として、「応募から内定までのリードタイム短縮」があります。HRMOS採用の公式サイトでは、利用企業の96%が採用業務の負担軽減を実感したと報告されています。建設業では施工管理技士の採用で複数社が同時に選考を進めていることが多く、内定通知が1週間遅れるだけで候補者が他社に決まるケースがあります。選考フローの可視化と自動リマインダー機能で、この「時間ロス」を減らすことが採用成功率の向上に直結します。
採用コスト分析の精度向上も重要な効果です。「今年どの媒体に何万円使ったか、そこから何人採用できたか」をExcel管理で正確に追跡している建設会社は少ないのが実態です。ATSに媒体連携を設定すれば、応募経路・採用可否・採用単価が自動集計されます。これにより、翌年の採用予算を「感覚」ではなく「データ」で配分できます。
入社手続きにかかる担当者の工数削減も見逃せません。特にSmartHRやジョブカンのような労務管理統合型システムでは、雇用契約書の作成・電子署名・保管・従業員台帳への登録が採用管理の延長で完結します。紙の書類をPDFに変換して送付する作業と比較して、担当者の工数が月数時間単位で削減されます。
よくある失敗パターン
最も多い失敗は「過剰スペックのシステムを導入してしまい、使いこなせない」ことです。中小建設会社で年間採用が5〜10名程度の場合、高機能なシステムの多くの機能は不要で、設定・維持に工数がかかるだけです。採用数と必要な機能を現実的に見積もって、最小限から始めることが成功の条件です。
「導入したが求人媒体の連携設定が面倒で結局手動入力している」という声もよく聞きます。ATSを選ぶ段階で「自社が使っている求人媒体との連携ができるか」を確認することが重要で、連携設定のサポートを提供しているベンダーを選ぶと初期の混乱を防げます。
採用担当者への教育不足も失敗の原因になります。ATSを「使わせる」のではなく「なぜ導入するか、どの業務が楽になるか」を担当者に説明してから導入することで、定着率が大きく変わります。
建設業でのATS活用事例 — 採用時間を半減させた内装工事会社の取り組み
従業員35名の内装工事会社でのATSの活用事例を紹介します(実際の状況を参考にした例示です)。
この会社では採用担当を兼任している総務担当者1名がExcelで応募者管理をしていましたが、月間応募者が増えた時期に管理が追いつかなくなり、「連絡が来ていたのに見落としていた」という失敗が重なり始めました。
ジョブカン採用管理(LITEプラン・月8,500円)を導入した後、変化が起きた点は次の3つです。1つ目は媒体連携の設定により、Indeed・ハローワーク・建設jobsサーチの3媒体からの応募が自動的に一つのダッシュボードに集約されたこと。2つ目は選考ステップをカンバン形式で管理することで「書類選考中に誰がいるか」が視覚的にわかるようになったこと。3つ目は面接調整の自動化で、候補者への日程確認メールを手動で送る作業がなくなったことです。
導入から3ヶ月後の総務担当者の実感は「採用関連の作業時間が週8時間から4時間に減った」でした。浮いた時間を入社後の研修計画の整備に使ったことで、入社後の早期退職率も下がり始めています。月額8,500円の投資で週4時間のコスト削減が生まれた計算になります(1時間あたりの人件費を2,000円とすると月約3.2万円分の業務削減)。
この事例から得られる教訓は「ATSは大企業のためのツールではなく、採用担当を兼任している中小建設会社にこそ効果が出る」という点です。
まとめ — 建設業の採用管理システム選びのポイント
建設業の採用管理システム選びは「今の採用課題に合わせて最低限のツールから始める」ことが成功の鍵です。過剰な機能を持つシステムを導入しても使いこなせなければ意味がなく、小規模なうちは無料のEngageやジョブカンの無料プランで実際の運用感をつかんでから有料プランへの移行を判断することをお勧めします。
建設業特有の視点として、ジョブカン・SmartHRとの労務管理連携は入社手続きの効率化に直結するため、既存のHRツールとの連携可否を最初に確認してください。モバイル対応の品質も、現場で働くことが多い建設業にとっては重要な評価軸です。
採用管理システムを導入した後は、「どの媒体から採用できているか」の効果測定を継続することが採用投資の最適化につながります。建設業の採用難が続くなか、採用の「量」を増やすと同時に「管理の質」を上げることが、採用成功率の改善に直結します。
あわせて読みたい:
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- 建設業の求人サイト比較 — 媒体選びの前に読む
- 建設業の人手不足対策 — 採用・定着・育成の全体戦略
- キャリアアップ助成金 建設業活用ガイド — 採用後の助成金活用
- 建設業の採用サイト作り方 — 自社HPからの採用強化
- 建設業の勤怠管理アプリ比較 — 採用した人材の労働時間管理
よくある質問
- 建設業に向いた採用管理システムの選び方を教えてください
- まず既存の労務管理ツール(ジョブカンかSmartHRか)との連携を確認してください。次に月間の応募者数で規模感を確認し、20名未満なら無料プランから試せるジョブカン採用管理かEngageが合理的です。モバイル対応の品質と求人媒体連携数も必ず確認してください。
- 採用管理システムの導入費用はどれくらいかかりますか?
- Engageは基本無料です。ジョブカン採用管理はLITEプランで月50名まで8,500円/月(税抜)。TalentioはSTANDARDで月20,000円〜(税抜・年間契約時)。HRMOS採用・SmartHR採用管理は個別見積もりで初期費用不要。kintoneは1ユーザー月額1,000円〜(税抜・最低10名〜)です。いずれも最新の料金は公式サイトでご確認ください。
- スプレッドシートからATSに移行する必要はありますか?
- 月間応募者数が20〜30名を超えてきた段階でATSの導入効果が出始めます。それ以下の規模ではExcelやスプレッドシートでも十分なことがあります。ただし、複数の求人媒体を使い始めた段階で管理が散在し始めるため、その前に導入するほうがスムーズな移行が可能です。
- 採用管理システムとジョブカン労務はどう連携しますか?
- ジョブカン採用管理で採用した候補者の情報(氏名・連絡先・入社日・雇用形態等)を、ジョブカン労務HRにワンクリックで引き継ぎできます。二重入力や情報転記が不要になるため、入社書類の準備や労務管理のスタートが早くなります。
- キャリアアップ助成金の申請に採用管理システムは役立ちますか?
- 役立ちます。有期雇用で採用した人材を正社員転換する際、採用管理システムに雇用開始日・雇用区分・労働条件の記録が残るため、「6ヶ月以上雇用の有期労働者」の抽出が容易になります。SmartHRのように採用〜労務を統合したシステムでは、申請書類に必要な情報をまとめて確認できます。
- 職人採用に採用管理システムは使えますか?
- 使えます。職人採用は選考スピードが速い(即日〜数日で採用判断)ケースが多いため、スマートフォンから操作できるかどうかが重要です。ジョブカン採用管理・kintoneはモバイル対応しており、現場からでも選考ステータスの更新や候補者へのメッセージ送信が可能です。
- 建設業でEngageは使えますか?
- 使えます。Engageは基本無料で採用ページを作成でき、Indeed等に自動配信されるため、採用担当者の工数を最小化しながら一定の応募数を確保できます。建設業の採用実績を持つ中小企業にも広く使われており、まず試す最初の選択肢として適しています。
- 建設業の採用管理で最もよく使われているシステムはどれですか?
- 中小建設会社での採用管理では、コスト面からExcel・スプレッドシート管理が依然として多いのが現状です(ATSの導入は大企業を中心に広がりつつある一方、中小企業ではExcel管理が依然多い)。専用ATSとしてはジョブカン採用管理(シリーズ300万ユーザー)・Engage(60万社導入)が普及しています。
参考情報
- 建設業における就業者の状況(就業者数・年齢構成の推移) — 国土交通省(2026-04-27確認)
- 建設業を巡る現状と課題 — 国土交通省(2026-04-27確認)
- 建設業界に迫る「2024年問題」「施工管理」求人、2016年比で5.04倍に増加 — 株式会社リクルート、2024年3月
- 建設業の中途採用状況調査(2024年) — 助太刀総研、2024年
- キャリアアップ助成金 正社員化コース — 厚生労働省、2025年度版(2026-04-27確認)
- ジョブカン採用管理 公式サイト — DONUTS
- HRMOS採用 公式サイト — 株式会社ビズリーチ