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用語集

建設業許可

けんせつぎょうきょか

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

建設業を営むための法的基盤

年商5,000万円の内装工事会社が、取引先から「許可番号を教えてほしい」と聞かれて初めて許可の重要性に気づいた――実際にあった話です。建設業許可は、建設業法に基づき、一定規模以上の建設工事を請け負う事業者に取得が義務付けられている制度です。

1件の請負代金が500万円以上の工事(建築一式工事の場合は1,500万円以上)を受注するには、都道府県知事または国土交通大臣から建設業許可を受ける必要があります。

許可が事業成長の分岐点になる理由

建設業許可は、建設会社が事業を営むうえでの基盤となる制度です。許可を持たない事業者は、軽微な工事しか請け負うことができず、事業の成長に大きな制約がかかります。

許可を取得していることは、発注者や元請会社に対する信用力の証明にもなります。公共工事の入札参加には建設業許可が必須条件(加えて経営事項審査も必要)であり、民間工事においても元請会社が下請先に許可の取得を求めるケースは珍しくありません。

また、建設業許可の維持には5年ごとの更新手続きが必要で、その間に経営状況や技術者の配置要件を満たし続ける必要があります。許可の失効は事業の継続に直結するため、経営者は更新スケジュールと要件の充足状況を常に把握しておく必要があります。

知事許可・大臣許可と一般・特定の区分

建設業許可は、営業所の所在地によって「知事許可」と「大臣許可」に分かれます。1つの都道府県内にのみ営業所を置く場合は都道府県知事許可、2つ以上の都道府県に営業所を置く場合は国土交通大臣許可が必要です。

さらに、下請契約の金額によって「一般建設業許可」と「特定建設業許可」に区分されます。元請として受注した工事で、下請に出す金額の合計が4,500万円以上(建築一式では7,000万円以上)になる場合は、特定建設業許可が求められます。

許可の取得には、経営業務の管理責任者の設置、専任技術者の配置、財産的基礎の確保、欠格要件に該当しないことなど、複数の要件を満たす必要があります。専任技術者には、施工管理技士などの国家資格の保有者または一定の実務経験を持つ者を配置しなければなりません。

許可業種は29業種に分類されており、自社が請け負う工事の内容に応じて必要な業種の許可を取得します。複数の業種を同時に取得することも可能です。

許可取得が難しいケースと対処法

建設業許可の取得で最もハードルが高い要件は、多くの場合「専任技術者の確保」です。特に創業間もない会社や一人親方が法人化した直後は、要件を満たす有資格者が社内にいないケースが少なくありません。

専任技術者を確保できない場合の対処法として、国家資格の取得が最も確実な方法です。2級施工管理技士であれば実務経験の要件が比較的短く、指定学科卒であれば3年の実務経験で受験資格を得られます。資格取得に時間がかかる場合は、10年以上の実務経験による要件充足を検討します。経歴証明書の準備に手間がかかりますが、資格がなくても許可取得が可能です。

経営業務の管理責任者(経管)の要件も壁になりやすいポイントです。2020年の法改正で「組織体制要件」に変更されたものの、建設業での経営経験(5年以上)が必要な点は変わっていません。他業種から建設業に参入する場合や、若い経営者の場合はこの要件の充足に苦労するケースがあります。建設業に精通した行政書士に相談し、要件充足の方法を確認するのが現実的な一歩です。

事業承継と許可の引継ぎ

中小建設会社にとって、建設業許可の取得と維持は事業運営の根幹をなす重要事項です。特に、専任技術者の確保は多くの中小企業が直面する課題であり、有資格者の退職や高齢化によって許可要件を満たせなくなるリスクへの備えが必要です。

事業承継の場面でも建設業許可は重要な論点になります。個人事業主から法人への組織変更や、代表者の交代に伴い、許可の取り直しが必要になるケースがあるためです。2020年の法改正で事業承継に伴う許可の承継制度が創設されましたが、事前の認可申請が必要であり、計画的な準備が欠かせません。

取得要件の詳細解説

建設業許可を取得するには、建設業法が定める5つの要件を全て満たす必要があります。

経営業務の管理責任者(経管)は、建設業の経営に関して一定の経験を持つ者を配置する要件です。具体的には、5年以上の建設業の経営業務の管理責任者としての経験や、6年以上の建設業の経営業務管理責任者に準ずる地位にあった経験などが求められます。2020年の法改正で個人要件から組織体制要件へと変更されており、「適切な経営管理体制」として審査されるようになりました。

専任技術者は、営業所ごとに1名以上の配置が必要です。一般建設業許可では、国家資格(施工管理技士、建築士等)の保有者、または10年以上の実務経験者(学歴によって5〜8年に短縮可)が要件です。特定建設業許可では、より上位の資格(1級施工管理技士、1級建築士等)か、実務経験に加えて指導監督的経験が求められます。

財産的基礎は、一般建設業許可では自己資本500万円以上または500万円以上の資金調達能力の証明が必要です。特定建設業許可ではさらに厳しい財産要件(純資産4,000万円以上など)が課されます。

誠実性として、請負契約の内容を誠実に履行することが求められます。不正・不誠実な行為を行うおそれがないことが条件です。

欠格要件に該当しないこととして、暴力団員、破産者、禁固刑以上の有罪判決を受けた者(受刑後5年を経過しない者)などが該当します。役員や支配人も対象です。

29業種の一覧と選び方

建設業許可の業種は29種類あります。自社がどの業種の許可を取得すべきかを判断するには、請け負う工事の内容を確認することが基本です。

業種区分主な業種(抜粋)
建築系建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事
設備系電気工事、管工事、消防施設工事、電気通信工事
土木系土木一式工事、舗装工事、しゅんせつ工事、水道施設工事
仕上げ系内装仕上工事、塗装工事、防水工事、ガラス工事
専門系鉄筋工事、板金工事、さく井工事、解体工事

注意点として、「建築一式工事」や「土木一式工事」は「元請として建物全体や土木構造物全体を統括して請け負う工事」を指します。電気工事・管工事など専門工事の許可は、一式工事許可があっても別途必要になります。

複数業種での許可取得を検討する場合、管理技術者・専任技術者の要件を同一人物が兼務できるかどうかの確認が必要です。同一の資格・経験で複数業種の専任技術者を兼務できるケースもありますが、業種の組み合わせによっては別の有資格者が必要になります。

許可取得の費用と期間

建設業許可の取得にかかるコストは、申請手数料と専門家報酬(行政書士費用)が主なものです。

申請手数料は、知事許可で9万円(新規申請)、大臣許可で15万円(国土交通省への収入印紙)です。5年ごとの更新は半額(知事許可5万円)になります。

行政書士に申請代行を依頼する場合、費用は10〜20万円程度が相場です(業種数や許可区分、会社の状況による)。書類収集から申請まで全て依頼する場合、トータルの初期費用は20〜35万円程度となります。

申請から許可取得までの期間は、知事許可で1〜2か月、大臣許可で3か月程度が目安です。書類の不備があると審査が止まり、さらに時間がかかります。

許可の更新・維持管理

建設業許可は取得すれば終わりではなく、5年ごとの更新と継続的な維持管理が必要です。

更新申請は有効期間満了の30日前までに行う必要があります。更新を失念して許可が失効すると、再度新規申請からやり直しになるため、スケジュール管理が重要です。許可行政庁から事前通知が来ないケースもあるため、自社で更新時期を管理するカレンダーを作っておくことをすすめます。

毎年の決算変更届(決算終了後4か月以内)も義務です。届出を怠ると許可の更新ができなくなったり、許可の取り消し事由になったりするため、決算後の申請業務を年次スケジュールに組み込んでおく必要があります。

専任技術者の変更が生じた場合(退職・死亡・異動等)は30日以内に変更届を提出し、後任者を確保する必要があります。特に中小建設会社では専任技術者が1名しかいないケースが多く、この人材が退職すると許可の維持が危うくなります。後継者の育成(施工管理技士の資格取得支援)は早期から取り組むべき経営課題です。

2020年法改正による主な変更点

2020年10月の建設業法改正で、建設業許可制度に複数の重要な変更が行われました。

経営業務管理責任者(経管)の要件が緩和されました。従来は「代表者等が建設業経営に5年以上従事した個人」が要件でしたが、改正後は「適切な経営管理体制を有する」という組織体制としての要件に変更されました。経管の要件を満たす個人を外部から探す必要がなくなり、社内体制として経営管理の体制を整えることが要件の中心になっています。

事業承継・M&Aに伴う許可の承継制度が創設されました。改正前は事業承継の際に許可の引継ぎができず、新規申請が必要でした。改正後は事前に認可を受けることで、譲渡先・合併後の会社が許可を引き継げるようになっています。後継者への事業承継を検討する際に活用できる重要な制度変更です。

技術者制度の見直しとして、監理技術者の「専任義務の緩和」と「監理技術者補佐」制度の新設が行われました。これにより、1人の監理技術者が監理技術者補佐を置くことで2つの工事現場を担当できるようになっています。

許可取得後の経営効果

建設業許可を取得することで得られる経営上のメリットは、工事受注機会の拡大だけではありません。

金融機関からの融資審査では、建設業許可取得が経営の安定性を示す材料として評価されます。無許可事業者と比べて融資審査が通りやすくなるという現場の声もあり、事業拡大のための設備投資資金の調達が容易になります。

人材採用面でも効果があります。若い世代の建設業への入職促進という視点から、許可業者であることが「まともな会社」の証明として機能します。求人を出す際に許可番号を明記することで、応募者の安心感につながります。

取引先の拡大という観点では、大手ゼネコンや優良な元請会社が下請選定基準として許可の有無を設けているケースが多く、許可取得が取引の門戸を広げる効果があります。

よく混同される概念・注意点

建設業許可と「建設業登録」を混同する方がいますが、建設業に「登録」制度はありません。建設業は「許可」制度です。電気工事士や消防設備士など、特定の作業に従事するための資格・免許(電気工事業者登録など)とは別物です。

「一式工事の許可があれば全ての工事ができる」という誤解も多く見られます。建築一式工事や土木一式工事の許可は、元請として工事全体を一括して請け負う場合に必要なものです。電気工事・管工事など専門工事の許可は、一式工事許可とは別に取得が必要なケースがあります。

「小規模の会社は許可がなくても大丈夫」という認識は危険です。軽微な工事(500万円未満)しか行わない会社であっても、元請や発注者から許可の取得を求められるケースは増えています。また、事業成長とともに受注規模が拡大すると許可が必要になるため、早期の取得準備が事業継続の安心につながります。

参考情報

よくある質問

建設業許可がなくても工事はできますか?
1件の請負代金が500万円未満の工事(建築一式工事は1,500万円未満または延べ面積150平方メートル未満の木造住宅工事)であれば、許可がなくても請け負うことができます。ただし、事業の拡大を見据えるなら早期の取得が望ましいです。
建設業許可の取得にはどのくらい時間がかかりますか?
申請から許可取得まで、知事許可で約1か月から2か月、大臣許可で約3か月程度が一般的です。ただし、書類の準備期間を含めるとさらに時間がかかるため、余裕を持った計画が必要です。
個人事業主でも建設業許可は取得できますか?
取得できます。個人事業主であっても、経営業務の管理責任者や専任技術者の要件を満たしていれば、法人と同様に建設業許可を受けることが可能です。ただし、法人成りする際には改めて許可の手続きが必要になる点に注意してください。
専任技術者が退職した場合、許可はどうなりますか?
後任の専任技術者を確保して変更届を提出しなければ、許可を維持できません。後任が見つからない場合、業種の許可を廃業届で返上するか、最悪の場合は許可の取り消しになります。後継となる有資格者の育成を常日頃から進めておくことが大切です。

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