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用語集

経営事項審査(経審)

けいえいじこうしんさ

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

公共工事の入札を左右する「経審」の全体像

「P点をあと30点上げれば、市のAランクに入れる」。公共工事の受注を目指す建設会社の経営者にとって、経審の評点向上は具体的な経営目標の一つです。

経営事項審査(略称:経審)は、公共工事を直接請け負おうとする建設業者が受けなければならない、経営規模や技術力などに関する客観的な審査制度です。建設業法に基づき、審査結果の「総合評定値(P点)」は公共工事の入札参加資格の格付けに直結します。

評点が経営に与えるインパクト

公共工事の受注を目指す建設会社にとって、経審の評点は入札参加のランクを左右する決定的な指標です。評点アップの具体策は経審対策ガイドで詳しく解説しています。評点が高ければ上位のランクに格付けされ、より大規模な工事の入札に参加できる機会が広がります。

経審の評点は、完成工事高や技術者数、財務状況といった企業の実力を多角的に評価した結果であるため、発注者だけでなく民間の取引先に対しても企業の信頼性を示す材料になります。

評点は毎年の審査で変動するため、経営者は中期的な視点で評点向上の戦略を立てる必要があります。技術者の資格取得支援やCCUS活用、財務体質の改善など、日常の経営判断が評点に反映されるという認識が重要です。

P点の算出方法と5つの審査項目

経審の総合評定値(P点)は、X1(経営規模)、X2(経営規模)、Y(経営状況)、Z(技術力)、W(社会性等)の5つの審査項目を所定の計算式で算出します。

X1は完成工事高の規模を、X2は自己資本額と利払前税引前償却前利益を評価します。Yは経営状況分析機関による財務諸表の分析結果で、負債抵抗力や収益性、活動性など8つの指標で判定されます。

Zは技術力の評価で、業種ごとの技術職員数と元請完成工事高が対象です。1級施工管理技士などの上位資格保有者ほど高い点数が付与されます。Wは社会性等の評価で、労働福祉の状況、建設業の営業継続年数、防災活動への貢献、CCUS活用状況などが加点・減点の対象になります。

経審の有効期間は審査基準日(直前の事業年度の終了日)から1年7か月です。公共工事の受注を継続するには、毎年切れ目なく経審を受けて有効な結果通知書を保持する必要があります。

中小建設会社が取るべき評点向上戦略

中小建設会社では、完成工事高や技術者数の規模で大手に比肩することは難しいため、W評点(社会性等)やY評点(経営状況)での加点戦略が特に重要になります。CCUS活用やISO認証の取得、建設機械の保有、防災協定の締結など、自社でコントロールしやすい項目で着実に加点を積み上げることが有効です。

経審対策は一朝一夕にはできないため、決算期の数か月前から計画的に取り組む姿勢が求められます。施工管理技士などの資格取得計画を経審のスケジュールに合わせて設定したり、完成工事高の業種振り分けを適切に行ったりすることで、自社の実力を正確に評点に反映させることが可能です。建設業に精通した行政書士や経営コンサルタントのサポートを受けることも、評点向上の近道になるでしょう。

各評価項目の詳細解説

P点の計算式は「P = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.20Y + 0.25Z + 0.15W」です。各項目の配点比率から、X1(25%)とZ(25%)が特に影響が大きいことがわかります。

X1(経営規模:完成工事高)は、直前2年間の平均完成工事高と直前3年間の平均完成工事高のいずれか高い方を採用して算出します。受注実績を積み上げることが直接評点向上につながるため、売上規模を拡大する戦略が最も大きな効果を持ちます。ただし、完成工事高は業種ごとに振り分けるため、主力業種の完成工事高を適切に計上することが重要です。

Z(技術力)は、技術職員数と元請完成工事高で評価されます。技術職員の点数は資格ランクによって異なり、1級施工管理技士・1級建築士などが最高点(6点)、2級施工管理技士・2級建築士が次いで4点、監理技術者資格者証を持つ者に追加点(1点)が付与されます。したがって、1級施工管理技士の人材を増やすことがZ点向上の最も効果的な手段です。

W(社会性等)は加点・減点項目が多岐にわたり、中小建設会社でも取り組みやすい項目が多い評価軸です。

W評点(社会性等)で加点できる主な項目

W評点は合計15の項目で構成されており、自社の状況に応じて複数の加点を積み上げることができます。中小建設会社でコントロールしやすい主な加点項目を紹介します。

労働福祉の状況(W1)は雇用保険・健康保険・厚生年金への加入が基本です。全て適切に加入していると最高評価になります。未加入の場合は大幅な減点になるため、社会保険の完備は最優先事項です。

建設機械の保有(W5)は、ショベル系・トラクター系・不整地運搬車などの特定建設機械の保有状況が評価されます。1台あたり2点が加算されるため、主力業種に関係する建設機械を1〜2台保有しているだけで相応の加点になります。

CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用(W2)は、2022年度改正で新たに加点項目として追加されました。CCUSのレベル別技能者数に応じて最大で15点の加点が可能です。中小建設会社でも取り組みやすく、かつ効果が大きい新設項目として注目されています。

ISO認証(W7)は、ISO9001(品質管理)やISO14001(環境管理)の取得で加点されます。各5点の加点があり、両方取得すれば10点の積み上げになります。取得・維持のコストはかかりますが、経審での加点に加えて対外的な信頼性向上にも効果があります。

防災活動への貢献(W8)は、防災協定の締結(自治体との協定)や、防災に係る業務の実施で加点されます。建設業者が地域防災に貢献することへの社会的期待と、経審での加点が一致する取り組みです。

評点アップのBefore/After事例

従業員35名、売上4億円規模の土木工事会社が2年間で経審評点を向上させた事例を紹介します。

改善前の状況として、主要工種(土木一式)のP点が820点台にとどまり、地元市の上位ランク格付けに必要な860点に届いていませんでした。特にZ点とW点が業界平均を下回っていることが分析で判明しています。

取り組んだ対策として3点を実施しました。1点目は施工管理技士の資格取得支援で、2名の社員が2級土木施工管理技士を取得し、翌年度1名が1級を取得しました。2点目はCCUSの全社導入で、現場技能者20名全員をCCUSに登録し、2024年度のW評点加点を獲得しました。3点目は防災協定の締結で、地元市の建設業防災協定に加盟しW点の加点を得ました。

結果として、取り組み開始から2年後の経審でP点が852点となり、目標の860点まで残り8点に迫る水準に到達しました。3年目での目標達成が視野に入っています。

この事例が示すように、1級技術者の増員とCCUS活用は比較的短期間で効果が出やすい対策です。

経審とCCUS(建設キャリアアップシステム)の関係

2022年の経審改正でCCUS活用が評点項目に加わったことで、CCUSの導入が経審戦略の重要な柱となりました。

CCUSのレベル判定(レベル1〜4)を受けた技能者がいる場合、レベルに応じた点数がW評点に加算されます。技能者数と平均レベルの組み合わせで加点が決まる仕組みで、最大15点の加点が可能です。従業員技能者を多く抱える会社ほど、CCUSへの投資対効果が高くなります。

CCUSの事業者登録・技能者登録にかかるコストは、事業者登録料が3万円(一時)、技能者登録料が技能者1人あたり4,900円(2024年時点)です。20人の技能者を登録すると初期費用は合計約13万円になります。W評点加点による受注機会の拡大や、グリーンファイル作成の効率化といったメリットを考えると、投資に見合う効果が期待できます。

2024〜2026年の最新動向

2022年10月の建設業法改正に伴う経審改正が2023年度審査から適用されており、変更点の主なポイントとして以下が挙げられます。

技術職員の評価対象として、監理技術者補佐(特例監理技術者を補佐する者)の加点が新設されました。元請の大型工事体制の強化に向けた人材確保の動きと連動しています。

継続教育(CPD)ポイントの取得が加点対象として追加されました。継続学習を行っている技術者が多い会社ほど評点が高くなる仕組みで、研修や講習受講の促進につながっています。

2025年度以降、デジタル関連の取り組みを経審評点に反映する方向での制度検討が進んでいます。BIM/CIM活用工事の実績や、施工管理のデジタル化への取り組みが評価軸に加わる可能性があり、ICT施工の実績を積むことの戦略的意義がさらに高まりそうです。

経審の申請手続きと費用の目安

経審の申請は、許可行政庁(都道府県知事許可業者は都道府県、大臣許可業者は地方整備局)に対して行います。申請に先立ち、登録経営状況分析機関(民間の審査機関)に経営状況分析を依頼し、Y評点の算出を受ける必要があります。

経営状況分析の手数料は1業種あたり13,000円程度(分析機関によって異なる)、経審の審査手数料は1業種あたり11,000円です。5業種の審査を受ける場合、分析手数料と審査手数料を合わせて12万円程度の費用がかかります。行政書士に申請代行を依頼する場合は、さらに10〜20万円程度の報酬が加算されるのが一般的な相場です。

審査結果の通知までの期間は、都道府県によって異なりますが、申請から2〜4週間程度が目安です。繁忙期(3月〜5月の決算期集中時期)は処理が遅延するケースもあるため、余裕を持ったスケジュールで申請することが実務上のポイントです。

経営状況分析の結果(Y評点)に不満がある場合は、別の分析機関に再分析を依頼することも可能です。分析機関によって点数が数点異なるケースがあるため、複数の機関を比較検討する企業もあります。ただし、再分析のコストと得られる点数差を天秤にかけたうえで判断する必要があります。

よく混同される概念・注意点

経審と「入札参加資格申請」は別の手続きです。経審は国が定めた統一的な評価制度で、許可行政庁(都道府県・国)に申請します。一方、入札参加資格申請は発注者(各省庁、都道府県、市区町村)ごとに行う登録手続きで、経審の結果通知書を添付して申請します。経審を受けただけでは入札に参加できず、各発注機関への資格申請が別途必要なことを覚えておく必要があります。

「経審の点数を上げれば必ず上位ランクになれる」わけではありません。発注者ごとのランク設定(例えば都市部の市ではA〜Dの4ランク、地方の市ではA〜Cの3ランクなど)が異なるため、同じP点でもどの発注者の入札に参加できるかは発注者ごとに確認が必要です。

完成工事高の業種振り分けも慎重に行う必要があります。工事内容によって複数の業種にまたがるケースは多く、振り分けを誤ると評点を正確に反映できなかったり、許可を受けていない業種に振り分けることで不正計上となったりするリスクがあります。行政書士や経審に詳しい専門家のチェックを受けることを強くおすすめします。

参考情報

よくある質問

経審を受けないと公共工事はできませんか?
元請として公共工事を直接請け負う場合は、有効な経審の結果通知書が必要です。ただし、下請として公共工事に参加する場合は経審を受ける必要はありません。
経審の評点を上げるにはどうすればよいですか?
技術者の資格取得推進、CCUS活用、社会保険の完備、財務状況の改善、防災活動への参加など、複数の項目で加点を積み重ねることが効果的です。自社の現状の評点内訳を分析し、改善余地の大きい項目から優先的に取り組むのがおすすめです。
経審はどこに申請すればよいですか?
知事許可業者は主たる営業所の所在地を管轄する都道府県に、大臣許可業者は地方整備局に申請します。申請に先立ち、登録経営状況分析機関による経営状況分析(Y評点の算出)を受ける必要があります。
CCUSに登録すると経審評点は具体的にどのくらい上がりますか?
技能者数と平均レベルによって異なりますが、CCUSのW評点加点は最大15点です。例えばレベル2以上の技能者が10名以上いる場合、W2項目で10〜15点程度の加点が期待できます。P点に換算するとW項目の配点は15%のため、W点15点アップがP点2〜3点程度の向上に相当します。

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