この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

経審とは — なぜ必要なのか

経営事項審査(経審・けいしん)は、公共工事を直接受注するために必要な審査です。建設会社の「経営力・技術力・実績」を点数化し、入札参加資格の判断材料として使われます。

公共工事の市場規模は年間約15兆円(2024年度予算ベース)にのぼり、建設業の売上全体の約3割を占めています。特に地方の中小建設会社にとって、公共工事は経営の柱となる重要な受注先です。経審のP点(総合評定値)が高いほど、参加できる入札案件のランクが上がり、受注機会が広がります。どのような案件が発注されているかを把握するには建設業の入札情報を検索することから始めるとイメージがつかみやすくなります。

経審が必要な会社

公共工事(国・都道府県・市区町村の発注工事)を元請けとして直接受注したい建設会社は、経審が必須です。下請けのみの場合は不要です。

経審の評点(P点)の構成

総合評定値(P点)は以下の5項目で計算されます。

項目記号配点ウエイト内容
完成工事高X125%直近の工事実績額
自己資本額・利払前税引前償却前利益X215%財務基盤の強さ
経営状況分析Y20%財務諸表に基づく経営状態
技術職員数・元請完工高Z25%有資格者の数と元請実績
社会性等W15%社会保険加入、退職金制度、防災協定等

P = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.20Y + 0.25Z + 0.15W

P点の目安と入札参加可能な工事規模

P点がどの程度あれば、どのランクの入札に参加できるのか。自治体によって基準は異なりますが、一般的な傾向は以下のとおりです。

P点の目安入札ランク(一般的)参加可能な工事規模
400〜550点D〜Cランク500万円〜2,000万円程度
550〜700点C〜Bランク2,000万円〜5,000万円程度
700〜850点B〜Aランク5,000万円〜1億円程度
850点以上A〜特Aランク1億円以上の大型案件

中小建設会社の場合、P点600〜750点の範囲を目指すケースが多く、ここを上げるための具体策が経営上のポイントになります。

中小建設会社が評点を上げやすい項目

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W点(社会性等)— 最も即効性がある

W点は「制度を整えるだけ」で加点されるため、中小建設会社でも短期間で改善しやすい項目です。

項目加点条件点数
建設業退職金共済(建退共)加入加入するだけ+15点
退職一時金制度 or 企業年金制度制度を導入+15点
法定外労働災害補償制度上乗せ労災保険に加入+15点
営業年数長いほど有利(最大+60点)+2〜60点
防災協定の締結自治体と防災協定+20点
CCUS活用建設キャリアアップシステムの活用+15点
エコアクション21等環境認証の取得+5〜30点
CPD(継続教育)単位取得技術者のCPD実績加点あり
知識及び技術又は技能の向上に関する取組技能者のレベルアップ実績加点あり
すぐにできるW点アップ策
  1. 建退共に加入する(+15点)
  2. 上乗せ労災保険に加入する(+15点)
  3. CCUSを活用する(+15点)

この3つだけで+45点。手続きは数日で完了し、次回の経審から反映されます。

W点アップの費用対効果

W点は比較的少ない投資で大きな加点が得られる項目です。

対策加点年間コスト目安費用対効果
建退共加入+15点労働者1人あたり月額310円(証紙代)非常に高い
上乗せ労災+15点年間5〜15万円高い
CCUS活用+15点事業者登録料+技能者登録料(数万円〜)高い
防災協定+20点0円(自治体と協定を結ぶだけ)非常に高い
エコアクション21+5〜30点審査費用10〜30万円/年中程度

防災協定は費用ゼロで+20点の加点が得られるため、地元の市区町村に相談してみる価値があります。近年は自然災害の増加に伴い、自治体側も民間建設会社との防災協定を積極的に締結する傾向にあります。

Z点(技術力)— 資格取得で確実にアップ

1級施工管理技士1人あたりの加点が大きい。社員の資格取得を推進することで確実にZ点が上がります。評価制度に資格手当を組み込むことで、社員の資格取得モチベーションを高められます。

資格1人あたりの加点
1級施工管理技士5点
2級施工管理技士2点
1級建築士5点
監理技術者5点
RCCM5点
技術士5点
登録基幹技能者3点

Z点で重要なのは、技術者が「常勤」であることが条件という点です。非常勤や派遣の技術者はカウントされません。また、同一人物が複数の資格を保有していても、加点されるのは最も点数が高い資格1つのみです。

Z点の向上は一朝一夕では難しいですが、中長期的に最も大きなリターンがある投資です。1級施工管理技士を1名増やすだけでP点が1〜2点上がることもあり、入札ランクが1つ上がれば受注できる案件の規模が変わります。

Y点(経営状況)— 財務改善で底上げ

Y点は財務諸表に基づく8指標で算出。以下の改善で点数が上がります。

指標改善策改善の難易度
純支払利息比率借入金の圧縮、金利の見直し
負債回転期間不良債権の処理、回収サイトの短縮
総資本売上総利益率粗利率の改善(原価管理の徹底)。会計ソフトの導入で精度向上中〜高
売上高経常利益率販管費の見直し
自己資本対固定資産比率不要な固定資産の処分低〜中
自己資本比率利益の内部留保中〜高
営業キャッシュフロー回収サイトの短縮
利益剰余金毎期の利益蓄積

Y点の改善は財務体質の強化を意味するため、経審対策と経営改善を同時に進められるメリットがあります。経審に強い税理士は、決算前の段階で「P点シミュレーション」を行い、減価償却の方法や固定資産の処分タイミングをアドバイスしてくれます。中小建設会社が認定支援機関と連携して取り組む計画書の作り方は経営改善計画書の作り方ガイドで整理しています。

X1点(完成工事高)の注意点

X1点は直近2年または3年の完成工事高の平均で算出されます。2年平均と3年平均のどちらかを選択でき、より有利なほうを選ぶことが可能です。大型工事が完了した翌期は2年平均のほうが有利になる傾向があり、逆に売上が下がった期は3年平均で平準化する選択が取れます。

また、業種ごとに別々にX1点が算出されるため、自社の主力業種の完成工事高を意識した受注戦略も重要です。

経審のスケジュール

1

決算日後4ヶ月以内: 決算変更届の提出

経審の前提として、決算変更届(事業年度終了届)を都道府県に提出。

2

決算変更届提出後: 経営状況分析を申請

登録経営状況分析機関に財務諸表を提出し、Y点の算出を依頼。費用は約13,000円。

3

分析結果受領後: 経審の申請

都道府県に経審の申請書類を提出。手数料は1業種8,100円+2業種目以降2,500円。

4

申請後1〜2ヶ月: 結果通知

経審の結果通知書が届く。P点が確定。

5

結果通知後: 入札参加資格申請

各発注機関(国・都道府県・市区町村)に入札参加資格の申請。

結果通知書の有効期間

経審の結果通知書の有効期間は、審査基準日(決算日)から1年7ヶ月です。有効期間が切れると公共工事の入札に参加できなくなるため、毎年の受審が基本となります。

決算月から逆算すると、遅くとも決算後6ヶ月以内には経審の申請を完了しておくのが安全なスケジュールです。

経審に強い税理士・行政書士の選び方

経審は「決算書の作り方」で点数が変わります。建設業の経審に詳しい専門家に相談することで、合法的にP点を最大化できます。

選ぶ基準は、

  • 建設業の経審実績が年間10件以上
  • 「経審対策」を明示的にサービスメニューに掲げている
  • 決算前に「P点シミュレーション」を提供してくれる
  • 建設業許可の更新もセットで対応してくれる
  • 経審の結果を踏まえた改善提案を出してくれる

費用の相場は、行政書士への経審申請代行で10〜20万円/年、税理士の顧問料に含まれている場合もあります。P点が10点上がるだけで受注チャンスが広がることを考えると、専門家への投資は十分にリターンが見込めます。

2024年改正のポイント

経審の審査基準は定期的に見直されています。近年の改正で中小建設会社に影響が大きいのは以下の点です。

CCUSの活用に関する加点が拡充され、技能者の能力評価(レベル判定)に応じた加点が導入されました。レベル3以上の技能者が多い会社ほどW点で有利になる仕組みです。

また、ワーク・ライフ・バランスに関する取組(えるぼし認定、くるみん認定等)への加点も追加されており、働き方改革への取組が経審の点数に反映される方向に進んでいます。

入札案件を地域で探す

全国の官公庁が発注する建設工事の入札公告を、都道府県やキーワードで検索できます。

入札参加資格申請と経審の関係

経審のP点は「取得して終わり」ではなく、その後の入札参加資格申請につなげて初めて意味を持ちます。国や都道府県・市区町村ごとに入札参加資格を申請する必要があり、それぞれに有効期間と更新サイクルがあります。

国の機関(国土交通省地方整備局等)への入札参加資格は、競争参加資格審査申請と呼ばれ、通常2年ごとに定期申請が行われます。直近の経審の結果通知書が有効期間内であることが条件です。

都道府県の入札参加資格は、各都道府県で定める等級(A・B・C・D等)に区分され、P点の水準によって申請できる等級が決まります。等級が高いほど発注金額が大きい工事の入札に参加できます。申請受付は都道府県によって時期が異なり、電子申請対応の都道府県も増えています。

市区町村の入札参加資格は、都道府県とは別に各市区町村に申請する必要があります。市区町村の工事を受注したい場合は、それぞれの自治体に登録することになります。多くの市区町村が共同で入札参加資格申請を受け付ける「市町村共同申請」(令和XX年から一部地域で実施)の仕組みも整備が進んでいます。

受注エリアを広げたい場合は、複数の自治体への入札参加資格申請が必要です。経審の結果通知書1枚で申請できるため、有効期間内に主要な発注機関へまとめて申請するのが効率的です。

経審対策の「よくある誤解」

誤解1: 完成工事高を増やせば点数が上がる

X1点は完成工事高が増えれば上がります。しかし、工事を無理に増やして収益が悪化すると、Y点(経営状況分析)が下がり、トータルのP点が上がらないケースがあります。量より質、つまり利益率の高い工事を受注することが経審対策と経営改善の両立につながります。

誤解2: 資格者を増やせばZ点が上がる

Z点は常勤の技術者の資格を加点の対象とします。しかし、同一人物の資格は最高評価の1資格しかカウントされません。また、複数の資格を持っていても、Z点の計算上は業種ごとに評価されるため、「業種を絞って技術者を集中させる」戦略が有効な場合があります。

誤解3: 経審は税理士に任せれば大丈夫

経審で高い点数を出すには、決算書の数字だけでなく「W点の制度整備」「Z点のための資格取得促進」「入札参加資格申請のタイミング管理」など、経営全体を俯瞰した対策が必要です。税理士は財務面のサポートが得意ですが、W点やZ点の対策は建設業に精通した行政書士や経審コンサルタントと連携することで、より高い点数が実現します。

入札ランクを上げると何が変わるか

P点が上昇して入札ランクが上がると、受注できる工事の規模が拡大します。たとえば、C・Dランクのみで参加していた会社がB・Cランクに昇格すると、発注金額が2〜5倍規模の工事に参加できるようになります。

売上規模が拡大するだけでなく、受注構造が変化します。1件あたりの工事規模が大きくなると、単価の高い工事が増え、利益率が改善しやすい傾向があります。また、大型工事を元請けとして受注することで、地域内での知名度と信頼性が高まり、民間工事の受注にも好影響が生じるケースがあります。

P点を10〜20点改善するだけでランクが変わるケースもあります。W点の即効性ある対策(建退共・上乗せ労災・CCUSの三点セットで+45点)は、多くの会社で実現可能な目標です。

建設業の2024年問題と経審の関係

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されました(月45時間・年360時間が原則、特別条項でも年720時間が上限)。この「2024年問題」は、経審にも間接的な影響を与えています。

技術者1人が担当できる現場数が減少する可能性があるため、Z点維持のためにはより多くの有資格者が必要になります。また、ワーク・ライフ・バランスへの取組(えるぼし認定・くるみん認定)が経審W点への加点項目になっているため、働き方改革の推進と経審対策が連動する方向性が強まっています。

具体的には、「くるみん認定」(子育て支援の取組が一定基準を満たした企業に認定)を取得することで、経審のW点に加点されます。従業員規模が小さい会社でも取得できる基準が設けられており、採用力の向上と経審対策を同時に実現する取組として注目されています。

経審のX2点(自己資本額・EBITDA額)について

X2点は2項目で構成されています。自己資本額(会社の純資産)とEBITDA額(利払前・税引前・償却前利益)で、それぞれ独立して評価されます。

自己資本額は毎期の利益を内部留保として積み上げることで改善します。短期間での大幅な改善は難しいため、中期的な経営計画の中で「内部留保率を高める」方針を持つことが重要です。配当を多く出している会社は、自己資本額が高まりにくい点に注意してください。

EBITDA額(税引前当期純利益+減価償却実施額+支払利息)は、固定資産を多く保有している建設会社では有利に働く指標です。老朽化した機械・車両の更新時に減価償却費が増加するため、設備投資のタイミングとX2点への影響を税理士と事前にシミュレーションしておくことで、計画的な評点管理が可能になります。

経審のデジタル化 — CCUSと経審の連携

建設キャリアアップシステム(CCUS)は、技能者の就業履歴・資格情報を一元管理するプラットフォームで、経審のW点加点と直接連動しています。2023年以降、W点における「CCUSの活用に関する加点」が拡充され、技能者のレベル(ゴールド・シルバー・ブルーカード保有者の割合)が高い企業ほど加点が大きくなる仕組みになっています。

CCUSへの登録手順は大きく2段階です。まず事業者(建設会社)として事業者登録(登録料:無料または数万円/年)を行い、次に所属する技能者ごとに技能者登録(初回2,500〜4,900円)を行います。現場ではカードリーダーやスマートフォンで就業履歴を記録します。

CCUSの加点が反映されるためには、一定の基準(登録技能者数・就業履歴の記録率)を満たす必要があります。導入初年度から完璧に運用するのは難しいため、半年程度の試験運用期間を経てから経審に反映させるスケジュールが現実的です。

出典: 建設キャリアアップシステム公式サイト

経審のよくある質問

経審に関して中小建設会社からよく寄せられる質問をまとめます。

下請け専門の会社も経審を受けるメリットはあるか

公共工事の元請けを狙わない限り、経審の義務はありません。ただし、大手ゼネコンや地元の元請け建設会社が下請けを選定する際に、経審のP点を参考にするケースが出てきています。取引先の信頼性証明として経審を受けている中小建設会社も存在します。

赤字決算が続いているとY点はどうなるか

Y点(経営状況分析)は赤字が続くと大きく下がります。ただし、財務体質の改善が進んでいる過程(赤字幅が縮小している等)は、一部の指標でプラスに働くことがあります。連続赤字の場合でも、W点の対策(建退共・上乗せ労災・CCUSの三点セット)でカバーできる部分もあるため、まずはW点の整備を優先することをおすすめします。

経審は何業種で受けるべきか

申請する業種が多いほど手数料はかかりますが、入札参加できる工事の種類が広がります。主力業種(売上の大半を占める業種)は必ず申請し、実績が少ない業種は追加申請のコスト対効果を検討してください。業種を追加する場合は許可業種の変更届も必要なため、行政書士と合わせて相談することが効率的です。

経審を受けたら、次はお住まいの地域の入札案件を確認しましょう。都道府県別の入札情報では、各県の最新入札公告を閲覧できます。入札参加資格の取り方電子入札の使い方もあわせて確認してください。

参考情報

よくある質問

経営事項審査(経審)とは何ですか?
経審は公共工事を直接受注するために必要な審査で、建設会社の経営力・技術力・実績を点数化します。入札参加資格の判断材料として使われ、公共工事の元請けには必須の審査です。
経審のP点はどのように計算されますか?
P点は完成工事高(X1:25%)、自己資本額等(X2:15%)、経営状況分析(Y:20%)、技術職員数等(Z:25%)、社会性等(W:15%)の5項目で計算されます。
中小建設会社が最も短期間で経審の点数を上げるにはどうすればよいですか?
W点(社会性等)が最も即効性があります。建退共加入(+15点)、上乗せ労災保険加入(+15点)、CCUS活用(+15点)の3つだけで+45点が可能で、手続きは数日で完了します。
経審に強い専門家をどう選べばよいですか?
建設業の経審実績が年間10件以上あること、経審対策を明示的にサービスメニューに掲げていること、決算前にP点シミュレーションを提供してくれることが選ぶ基準です。
経審の申請にかかる費用はいくらですか?
経営状況分析の申請が約13,000円、経審の手数料が1業種8,100円+2業種目以降2,500円です。行政書士に依頼する場合は報酬10〜20万円が別途かかります。
経審は毎年受ける必要がありますか?
公共工事の入札に参加し続けるには、経審の結果通知書の有効期間内に更新する必要があります。結果通知書の有効期間は審査基準日から1年7ヶ月なので、毎年受審するのが一般的です。
防災協定で経審のW点は上がりますか?
はい、自治体との防災協定締結で+20点の加点があります。費用はかからないため、地元の市区町村に相談する価値があります。近年は自然災害の増加に伴い、自治体側も積極的に協定を締結する傾向にあります。

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