この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「経審の点数は出ているけれど、自分の会社がどのランクに該当するのかよく分からない」。公共工事の入札に挑戦しようとする中小建設会社にとって、経審(経営事項審査)の総合評定値P点と入札ランク(格付け)の関係は最初のハードルです。ランクの区切りは発注機関ごとに異なり、単純に「P点が高ければ有利」とも言い切れません。この記事では、経審の点数とランクがどう結びつくのか、主要な発注機関の格付け例、そして中小建設会社がとるべき戦略を整理しました。

経審の点数(P点)とランク(格付け)はどう結びつくか

公共工事の入札に参加するには、経営事項審査(経審)を受けて総合評定値(P点)を取得し、さらに発注機関ごとの「入札参加資格審査」を経てランク(等級格付け)が決まります。流れを整理すると以下のようになります。

  1. 建設業許可を取得し、経審を受審してP点を取得する
  2. 各発注機関に入札参加資格の申請を行う
  3. 発注機関がP点をベースに独自の基準でランクを付与する
  4. 付与されたランクに応じた工事規模の入札に参加できる

ここで押さえておきたいのが、P点はあくまで「客観点」であり、発注機関によっては工事実績や社会貢献活動、地域貢献度、災害対応の実績などの「主観点」を加算してランクを決めるケースがあるということです。つまりP点だけでは最終ランクが確定しない場合も少なくありません。

経審の有効期間は審査基準日(直前の決算日)から1年7か月です。有効期間が切れると入札参加資格も失効するため、毎年の受審を欠かさないようにスケジュール管理が必要です。建設業許可の概要も合わせて確認しておきましょう。

P点の計算式 — 5つの評価項目と配分

P点は5つの評価項目をそれぞれの係数で掛け合わせた合計値です。計算式は以下のとおりです。

P = 0.25 × X1 + 0.15 × X2 + 0.20 × Y + 0.25 × Z + 0.15 × W

  • X1(完成工事高評点)— 直近2年または3年の完成工事高を数値化。ウェイト25%
  • X2(経営規模評点)— 自己資本額と利益額の評価。ウェイト15%
  • Y(経営状況分析評点)— 財務諸表をもとにした経営健全性の分析。ウェイト20%
  • Z(技術力評点)— 技術職員数と元請完成工事高の評価。ウェイト25%
  • W(その他社会性等評点)— 社会保険加入、建退共、防災協定など。ウェイト15%

P点の理論上の上限は約2,136点、下限は-18点とされています。多くの中小建設会社の実態としては600〜800点の範囲に集中しており、P点700点前後が一般的な中小規模の水準です。大手ゼネコンでも1,500点を超える企業は限られており、P点1,000点に到達すれば地方では上位層に位置付けられます。

なお、令和5年度の経審改正でW点の評価項目に「ワーク・ライフ・バランスに関する取組の状況」が追加され、W点のウェイトが実質的に拡大しています。改正内容を踏まえた対策は経審の点数アップ方法で詳しく解説しています。

X1とZの合計ウェイトが50%を占めるため、完成工事高と技術職員の充実がP点全体を大きく左右します。経審の点数アップ方法で項目別の対策を確認しておくと効率的です。

発注機関別の格付けランクと点数帯

ここまで読んだ方へ

建設業のDX・採用・補助金活用について、無料でご相談いただけます。150社以上の支援実績をもとに、御社に合った解決策をご提案します。

無料相談はこちら

ランクの区分は発注機関ごとに異なります。代表的な機関の格付け基準を紹介します。

国土交通省 関東地方整備局(一般土木工事)

国の機関では、経審のP点に独自の「客観点数」を加えた総合点数でランクが決まります。

  • Aランク — 総合点数3,040点以上(予定価格8億2,000万円以上の工事に参加可能)
  • Bランク — 2,630〜3,040点(予定価格3億4,000万〜8億2,000万円)
  • Cランク — 1,660〜2,630点(予定価格7,000万〜3億4,000万円)
  • Dランク — 1,660点未満(予定価格7,000万円未満)

国交省の場合、ランクAに到達するには非常に高い完成工事高と技術力が求められ、中小建設会社がいきなり狙えるゾーンではありません。多くの中小企業はC〜Dランクからスタートし、実績を積みながらBを目指す流れになります。

東京都(一般土木工事)

東京都はA〜Eの5段階で格付けし、「客観等級」と「主観等級」のうち低い方を最終等級として適用する仕組みです。つまり、P点が高くても工事成績や技術提案力が伴わなければ上位ランクにはなれません。

市区町村の例

市区町村はさらに独自色が強く、A〜Cの3段階にしているところもあれば、A〜Dの4段階で分けている自治体もあります。点数帯も自治体によってまったく異なるため、入札したい自治体の「入札参加資格審査要領」を個別に確認する必要があります。

たとえば、ある地方自治体では土木一式工事のランクが以下のようになっているケースがあります。

  • Aランク — P点900点以上
  • Bランク — P点700〜899点
  • Cランク — P点700点未満

国交省と比べると求められるP点が格段に低いことが分かります。中小建設会社が公共工事を受注しやすいのは市区町村の案件であり、地元自治体のランク基準を把握しておくことが受注戦略の第一歩です。

「無格付け」の扱い

経審を受けていない、または入札参加資格の申請をしていない業種については「無格付け」となり、その業種の入札には参加できません。ただし、発注機関によっては無格付け業者でも最下位ランクの工事に参加を認める「随意契約」や「少額工事」の制度を設けている場合があります。地元自治体の少額工事登録制度を活用すれば、経審なしでも小規模な公共工事からスタートできる可能性があり、実績づくりの入り口として検討する価値があります。

ランクは高いほど良い?中小建設会社が狙うべきポジション

「ランクが高ければ大きな工事を受注できる」という理解は正しいものの、中小建設会社にとってはランクの高さがそのまま経営の安定に直結するわけではありません。

上位ランクの工事は規模が大きい分、施工体制の充実度や資金力が求められます。Aランクの工事を受注できたとしても、自社の施工能力を超えた案件を抱えれば品質面・資金繰りの両方でリスクになります。

逆に、自社の実力に合ったランクで確実に受注を重ねたほうが、完成工事高の積み上げと利益確保の両面で健全です。結果としてP点も自然に上がっていきます。実際に「ランクを上げたら競合が大手ばかりで落札できなくなった」というケースもあり、闇雲なランクアップが正解とは限りません。

地方の中小建設会社であれば、地元自治体のC〜Bランクで安定的に受注を確保しつつ、得意な工種に絞って上位ランクを狙うのが現実的な戦略です。入札情報の検索を活用して、自社のランクでどんな案件が出ているかを日常的にウォッチしておくと、ランク変更の判断材料になります。

狙うべきポジションを決めるときのチェックポイントは3つあります。

  1. 入札したい自治体のランク基準と自社のP点を照合し、現在のランクと1つ上のランクの差分を把握する
  2. 1つ上のランクの工事規模を、自社の施工体制・協力会社ネットワークで対応できるか検証する
  3. ランクアップに必要なP点の上積みが現実的な期間(1〜2決算期)で達成可能か試算する

この3点をクリアできるなら、戦略的にランクアップを目指す価値があります。到達が厳しい場合は現ランクでの受注率向上に注力するのが合理的な判断です。

自社のランクを1つ上げるための実務ステップ

ランクアップを具体的に進めるには、P点の構成要素を分解して「どの項目で何点上積みできるか」をシミュレーションすることから始めます。

現状のP点を項目別に可視化する

まず経審の結果通知書を手元に用意し、X1・X2・Y・Z・Wの各評点を書き出します。次に、目標ランクに必要なP点との差分を計算します。たとえば現在のP点が680点で、狙う自治体のBランク基準が700点なら、あと20点の上積みが必要です。

W点は即効性が高い

5項目のなかでW点(その他社会性等)は、加入・登録系の施策で比較的短期間に加点できます。

  • 建設業退職金共済(建退共)への加入 — 未加入なら加入するだけで加点
  • 法定外労災保険の加入 — 同様に加入で加点
  • 退職一時金制度または企業年金制度の導入 — 就業規則への規定でOK
  • CCUS(建設キャリアアップシステム)の活用 — 登録・運用で加点対象

これらはコストが比較的低く、決算期をまたがずに反映できるため、ランクアップの「あと10〜20点」を埋めるのに向いています。

Z点は資格取得で上がる

技術力評点(Z点)は技術職員の人数と保有資格で決まります。社内で1級施工管理技士や技術士の資格取得を推進すれば、1人あたりの加点効果が大きいのが特徴です。施工管理技士の資格情報も参考にしてください。

監理技術者講習の受講も忘れずに確認しておきたいポイントです。講習を受けている技術者のほうがZ点への寄与が高くなります。

X1点は完成工事高の業種間振替を検討する

X1点(完成工事高評点)を上げるには工事の受注量を増やすのが王道ですが、すぐに受注量をコントロールできるわけではありません。ここで使えるのが「業種間の振替」制度です。関連する業種間で完成工事高を振り替えることで、入札に使う業種のP点を集中的に高められる場合があります。行政書士に相談しながら最適な振替パターンを検討するのが確実です。

Y点は財務改善で底上げする

Y点(経営状況分析評点)は財務諸表から算出されるため、借入金の圧縮や固定資産の見直しが直接反映されます。財務改善の考え方も合わせて確認しておくと、経営全体の改善とP点向上を同時に進められます。決算月の3〜6か月前から準備を始めるのが理想的なタイミングです。

具体的には、不要な遊休資産の売却、リースの活用による固定資産圧縮、借入金の返済スケジュール見直しなどが有効です。キャッシュフロー改善の手法を組み合わせると、Y点の改善とともに手元資金の確保も実現できます。

シミュレーション例

たとえば従業員15名の土木工事業者で、現在のP点が680点のケースを考えてみます。Bランク基準が700点の自治体を狙うなら、あと20点の上積みが必要です。

  • 建退共未加入 → 加入でW点に加点(約+10〜15点相当のP点寄与)
  • 1級土木施工管理技士を1名追加取得 → Z点に加点(約+10〜20点相当のP点寄与)

この2つだけで目標に到達できる可能性があります。行政書士に現在の評点明細をもとにしたシミュレーションを依頼すると、どの施策が最も費用対効果が高いかを数値で示してもらえます。経審に強い行政書士は業種別のP点分布データを持っていることが多く、自社の立ち位置を客観的に把握できる点でも相談する価値があります。

ランクアップに使える補助金・加点制度

P点を上げる施策のなかには、補助金や助成金の対象になるものがあります。

IT導入補助金

IT導入補助金を活用して原価管理ソフトや工程管理ツールを導入すれば、業務効率化と同時にW点への間接的な寄与(建設業経理士の配置余力確保など)が期待できます。直接のP点加点ではないものの、生産性向上が完成工事高の増加やコスト削減を通じてX1やY点に好循環を生みます。

人材開発支援助成金

社員の資格取得費用に充てられる人材開発支援助成金は、Z点の底上げに直結します。1級施工管理技士の受験対策講座の受講費用や、技術士の二次試験対策費用が助成対象になるケースがあり、会社の持ち出しを抑えながら技術力評点を高められます。助成率は中小企業で経費の45〜75%(コースにより異なる)と手厚く、複数名を同時に受験させる場合にはまとまった金額が戻ってきます。

CCUS活用モデル事業

CCUSの普及促進を目的とした助成や加点制度も各自治体で広がっています。CCUSの現場運用実績がW点の加点対象になるだけでなく、経審の点数アップ方法で解説している社会性等の総合的な底上げにもつながります。2023年度以降、CCUS活用を入札参加資格の主観点に加算する自治体が増えており、P点とは別ルートでランクアップに寄与する可能性もあります。CCUS導入のメリットを確認し、段階的に運用を始めておくことをお勧めします。

補助金情報は年度ごとに内容が変わります。最新の募集要項は各制度の公式サイトで確認してください。

参考情報


よくある質問

経審のAランクはどのくらいの点数が必要ですか?
発注機関によって異なります。国土交通省関東地方整備局の一般土木工事では総合点数3,040点以上がAランクの基準です。一方、市区町村ではP点900点以上でAランクとしている自治体もあり、一概には言えません。入札したい機関の審査要領で確認する必要があります。
経審の平均点はどのくらいですか?
建設業者全体のP点平均は700点前後とされています。中小建設会社の多くは600〜800点の範囲に集中しています。業種や地域によっても分布は異なります。
P点が同じでも発注機関によってランクが変わることはありますか?
あります。ランク(格付け)の基準は発注機関ごとに独自に定められています。さらに、P点(客観点)に加えて工事成績や地域貢献などの主観点を加算する機関もあるため、同じP点でも最終ランクが異なるケースは珍しくありません。
ランクを上げると不利になることはありますか?
上位ランクの入札に参加できるようになる反面、競合が大手企業中心になり落札難易度が上がる可能性があります。また、上位ランクの工事規模に自社の施工体制が追いつかないリスクもあるため、自社の実力に見合ったランクを見極めることが大切です。
経審の点数アップにかかる期間はどのくらいですか?
W点の加点施策(建退共加入・法定外労災保険など)は比較的短期間で反映できます。一方、X1(完成工事高)やY(財務状況)の改善には1〜2決算期が必要です。ランクアップの目標から逆算して、決算月の3〜6か月前から準備を始めるのが現実的です。