この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

国土強靭化 中期計画 建設業 影響は、公共工事を取る会社だけの話ではありません。道路、橋梁、上下水道、河川、砂防、港湾、防災拠点の整備は、元請け、下請け、専門工事、点検会社、資材会社まで波及します。2026年度から2030年度までの第1次国土強靱化実施中期計画は、中小建設会社にとって受注機会と準備不足の差が出やすいテーマです。

国土強靭化5か年加速化対策から中期計画へ

防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策は、2021年度から2025年度までを期間とし、事業規模おおむね15兆円程度で進められてきました。激甚化する豪雨災害、切迫する大規模地震、インフラ老朽化への対応を加速するため、河川、道路、港湾、下水道、学校・庁舎など幅広い分野で事業が実施されました。

2025年6月6日、政府は次の計画として「第1次国土強靱化実施中期計画」を決定しました。計画期間は2026年度から2030年度までの5年間。首相官邸の公表では、326の計画期間内に実施すべき施策のうち、推進が特に必要となる114施策を重点的・集中的に実施し、事業規模は5年間でおおむね20兆円強程度を目途としています。

つまり、5か年加速化対策で始まった防災・老朽化対策の流れは、2026年度以降も切れ目なく続きます。中小建設会社にとっては、単発の特需ではなく、5年単位で準備すべき市場と捉えるべきです。

国土強靱化は「大型ゼネコンだけの仕事」ではありません。地方自治体が管理する橋梁、道路、河川施設、上下水道、避難所、法面、舗装、補修工事は、地域の中小建設会社が担う余地が大きい領域です。

第1次実施中期計画の方向性

第1次国土強靱化実施中期計画では、能登半島地震、激甚化する水害、埼玉県八潮市の道路陥没事故などを踏まえ、ライフラインの強靱化と老朽化対策が重視されています。防災インフラの整備だけでなく、上下水道、道路、通信、エネルギー、避難所環境、デジタル技術の活用まで対象が広がっています。

報道や政府資料で示された分野別の事業規模は、以下のように整理できます。

分野事業規模の目安建設業への影響
ライフラインの強靱化約10.6兆円上下水道、道路、橋梁、通信・エネルギー関連工事
防災インフラの整備・管理約5.8兆円河川改修、堤防、砂防、海岸、治水対策
官民連携強化約1.8兆円防災拠点、民間施設活用、地域連携
地域防災力の強化約1.8兆円避難所、備蓄、公共施設改修
デジタルなど新技術活用約0.3兆円点検DX、データ連携、ICT施工

この内訳から分かるのは、維持管理・更新、耐震化、長寿命化、点検、補修の比重が高いことです。新設大型工事だけでなく、地域密着の補修・更新工事が増える可能性があります。

中小建設会社への影響

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インフラ補修・防災工事の発注増

道路橋、トンネル、上下水道、河川管理施設は、今後老朽化が急速に進みます。国土交通省のインフラメンテナンス情報では、建設後50年以上経過する道路橋は2023年3月時点で約37%、2030年3月に約54%、2040年3月に約75%へ増える見込みです。水道管路や下水道管渠も、2030年、2040年にかけて老朽化率が上がります。

これにより、点検、診断、補修、更新、耐震化、長寿命化計画に関連する工事が増えます。地域の道路維持、舗装修繕、法面対策、排水施設補修、橋梁補修の経験がある会社は、受注機会を広げやすくなります。

自治体案件への対応力が問われる

国の計画であっても、実際の発注者は国、都道府県、市町村、上下水道事業者、外郭団体などに分かれます。特に市町村管理のインフラは数が多く、発注単位も中小企業が取りやすい規模になることがあります。

一方で、自治体案件は入札参加資格、地域要件、施工実績、技術者配置、経審点数、電子入札対応が必要です。準備していない会社は、案件が出てから動いても間に合いません。入札情報を定期的に確認し、自社地域でどの発注者がどの分野を出しているかを把握してください。

技術者確保の競争が強まる

維持管理・補修の案件が増えるほど、土木施工管理技士、舗装施工管理技術者、管工事施工管理技士、電気工事施工管理技士、点検資格を持つ人材の確保が重要になります。受注したくても主任技術者・監理技術者を配置できなければ参加できません。

CCUSで技能者情報を整備し、協力会社も含めた施工体制を見える化しておくことは、今後の公共工事対応で有利に働きます。

受注機会を掴むための準備

経審対策

公共工事を狙うなら、経営事項審査のP点を確認します。国土強靱化関連の案件は、土木一式、とび・土工、舗装、管、電気、鋼構造物、しゅんせつ、防水など複数の業種にまたがります。自社がどの業種で点数を持ち、どの発注等級に入れるかを把握してください。

点数を上げるには、完成工事高、技術職員数、自己資本、利益、社会性の改善が必要です。経審点数アップでは、短期で見直せる項目と中長期で効く項目を分けて整理しています。国土強靱化案件を狙うなら、決算直前ではなく年間計画として点数管理を行う必要があります。

入札参加資格と電子入札

入札参加資格は、発注者ごとに申請期間や必要書類が異なります。国、都道府県、市町村、上下水道局で別々に申請が必要になることもあります。資格審査の更新時期を逃すと、1〜2年参加できない場合があります。

電子入札に必要なICカード、利用者登録、公告確認、設計図書のダウンロード、質疑、入札書提出の流れも整えてください。公共工事に慣れていない会社は、まず自社地域の小規模修繕・維持工事から経験を積む方法が現実的です。

技術者・協力会社の確保

維持管理案件では、夜間施工、交通規制、狭い現場、既設物との取り合いが多くなります。新設工事とは違う段取り力が必要です。協力会社の確保、交通誘導員、試験会社、調査会社、材料会社とのネットワークを事前に作っておくと、見積りと施工計画の精度が上がります。

関連するDX投資

国土強靱化関連の受注では、DX対応も競争力になります。ICT施工、3次元測量、ドローン点検、AIひび割れ検出、電子小黒板、遠隔臨場、BIM/CIMなど、発注者が効率化や品質向上を求める領域が増えています。

i-Constructionに対応できる会社は、土工、舗装、河川、砂防などで技術提案の幅が広がります。小規模会社でも、ドローン測量を外注活用する、電子納品に対応する、施工写真・出来形管理をクラウド化するところから始められます。

インフラ点検分野では、AIひび割れ検出ドローンの活用が進んでいます。自社で全ての機材を持つ必要はありません。点検会社、測量会社、システム会社と組み、発注者に「点検から補修提案まで」出せる体制を作ることが重要です。

DX投資は、補助金や流行で始めると失敗します。狙う発注分野を決め、必要な技術だけを選んでください。道路維持なら写真・出来形・電子納品、橋梁補修なら点検記録・ひび割れ検出、土工ならICT施工が優先候補になります。

中小向け受注戦略チェックリスト

項目確認内容
発注者把握国、県、市町村、上下水道局の公告を定期確認しているか
対象分野道路、橋梁、河川、上下水道、舗装など得意分野を決めたか
経審対象業種のP点と等級を確認したか
入札資格参加したい発注者の資格申請時期を押さえたか
技術者必要な施工管理技士・点検資格者を配置できるか
実績小規模修繕や下請け実績を元請け実績へ育てる計画があるか
協力会社交通規制、調査、試験、点検、舗装などの協力体制があるか
DX電子入札、電子納品、写真管理、遠隔臨場に対応できるか

このチェックリストで弱い項目を埋めていくと、国土強靱化案件への準備が具体化します。特に経審、入札資格、技術者は短期間で整えにくいため、早めの着手が必要です。

今後の発注見通しと経営判断

国土強靱化の中期計画は、2026年度から2030年度までの5年間を対象にしています。予算は毎年度の編成で具体化されるため、すべての案件が一度に出るわけではありません。地域や発注者によって、河川、上下水道、橋梁、舗装、砂防、避難所改修など重点分野が変わります。

中小建設会社は、広く薄く狙うより、自社が勝てる分野を決めたほうがよいでしょう。道路維持に強い会社は、舗装・排水・区画線・法面を組み合わせる。管工事に強い会社は、上下水道更新と耐震化を追う。土木会社は、河川・砂防・橋梁補修に関連する協力体制を作る。点検会社は、診断・補修提案・施工会社との連携を深める。

公共工事は単年度の営業ではなく、資格、実績、技術者、地域信用の積み上げです。20兆円強という数字だけに反応するのではなく、自社がどの発注者のどの工種で戦うかを決めることが、受注機会を現実の売上に変える最初の一歩になります。

受注後に赤字化しないための注意点

国土強靱化関連の案件は需要が見込める一方で、受注すれば必ず利益が出るわけではありません。維持修繕、防災、老朽化対策の工事は、既設構造物を相手にするため、現場条件の不確実性が高くなります。古い図面と現況が違う、地下埋設物がある、交通規制が想定より厳しい、夜間施工しかできない。こうした条件を見落とすと、公共工事でも粗利が削られます。

入札前には、設計図書だけでなく現地確認を行います。搬入経路、仮置き場所、交通量、近隣施設、既設構造物の劣化状況、排水、電源、通信、重機配置を確認し、見積りに反映します。特に橋梁補修や上下水道更新では、現場で初めて分かる条件が出やすいため、協議記録を残せる体制が必要です。

施工中は、変更協議のスピードが利益を左右します。発注者からの指示、現場条件の変更、追加調査、数量変更を口頭で済ませると、後で精算できないことがあります。写真、日報、打合せ記録、指示書を残し、変更が発生した時点で協議する習慣を作ってください。

また、国土強靱化案件は災害対応や緊急性を伴うことがあります。短工期で人員を集めるほど、外注費や交通誘導費が上がります。応援会社を急に探すと単価が高くなるため、平時から協力会社リストを整え、緊急時の単価や対応範囲を確認しておくと、受注後の混乱を抑えられます。

公共工事の受注拡大は、資金繰りにも影響します。前払金があっても、外注費、材料費、労務費の支払が先行する月があります。案件を増やす前に、月別資金繰りと借入枠を確認し、成長で資金ショートしない体制を作ることが重要です。

発注情報の追い方も仕組みにします。担当者の気分で公告を見るのではなく、毎週決まった曜日に国、県、市町村、上下水道局の公告を確認し、案件名、工種、予定価格、参加資格、技術者要件、現場説明、入札日を一覧化します。入札しなかった案件も記録しておくと、次年度の傾向分析に使えます。

落札できなかった案件も学習材料です。入札価格、最低制限価格、落札者、参加者数、工種、地域条件を蓄積すると、自社が勝ちやすい案件と勝ちにくい案件が見えます。国土強靱化関連は予算規模が大きい分、競争も強まります。価格だけで追うのではなく、技術者、実績、地域性、協力会社体制で勝てる領域を絞ってください。

災害対応の実績も将来の信用になります。応急復旧、道路啓開、排水対応、土砂撤去、仮設工事の記録を残し、写真、作業時間、投入人員、機械、協力会社を整理してください。地域防災に貢献できる会社として発注者に認識されることは、中長期の受注戦略で大きな意味を持ちます。

よくある質問

中小建設会社でも国土強靭化案件を受注できますか?
できます。国土強靭化関連は大型工事だけでなく、道路維持、舗装修繕、橋梁補修、河川・排水施設、上下水道更新、避難所改修など地域密着の案件も多くあります。入札参加資格、経審点数、技術者配置、施工実績を整えることが前提です。
国土強靭化案件に必要な資格は何ですか?
工種によって異なります。土木施工管理技士、管工事施工管理技士、電気工事施工管理技士、舗装施工管理技術者、橋梁点検関連資格などが関係します。加えて、発注者ごとの入札参加資格と経営事項審査が必要です。
今後の発注見通しはどう見ればよいですか?
第1次国土強靱化実施中期計画は2026〜2030年度を対象とし、事業規模は5年間でおおむね20兆円強程度です。具体的な発注は毎年度の予算と発注者ごとの計画で決まるため、国・県・市町村・上下水道局の公告と長寿命化計画を定期的に確認してください。

参考情報