この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

建設業許可の更新 — 基本を押さえる

建設業許可の有効期間は5年間。更新手続きを怠ると許可が失効し、500万円以上の工事を請け負えなくなります。

国土交通省の統計によると、建設業の許可業者数は約47万社(2024年3月末時点)。このうち毎年約9万社が更新手続きを行っています。更新を忘れて許可が失効してしまうケースは年間数千件発生しており、「うっかり失効」は決して珍しくありません。

項目内容
有効期間許可日から5年間
更新申請の期限有効期間満了日の30日前まで
申請先都道府県知事(知事許可)または国土交通大臣(大臣許可)
費用知事許可: 5万円、大臣許可: 5万円
行政書士に依頼する場合報酬5〜15万円(別途)

期限を過ぎると「新規申請」扱いになる点に注意してください。更新と新規では審査の厳しさが全く異なります。新規申請の場合は、経営業務管理責任者や専任技術者の要件を最初から証明し直す必要があり、書類の準備だけで数ヶ月かかることもあります。必ず期限内に申請しましょう。

建設業許可が必要な工事の基準

建設業許可は、1件の請負金額が500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上)の工事を請け負う場合に必要です。この金額は税込で判断され、元請け・下請けを問いません。

近年は資材価格の高騰で工事金額が上がりやすく、以前は500万円未満で収まっていた工事が許可が必要な金額帯に入るケースも増えています。許可を持っていないと受注できる工事の範囲が大幅に制限されるため、更新を確実に行うことが経営上の必須事項です。

更新に必要な書類一覧

全ての建設会社に共通する書類

書類備考
建設業許可申請書(様式第一号)更新の場合は「更新」にチェック
工事経歴書(様式第二号)直近の事業年度の工事実績
直前3年の各事業年度における工事施工金額様式第三号
使用人数(様式第四号)技術者・事務員の人数
誓約書(様式第六号)欠格要件に該当しない旨
経営業務の管理責任者証明書常勤性・経験年数の証明
専任技術者証明書資格・実務経験の証明
財務諸表直近の決算書
定款変更がある場合のみ
登記事項証明書法務局で取得(3ヶ月以内)
納税証明書税務署で取得(事業税の納税証明)
健康保険・厚生年金の加入状況確認書類社会保険の加入証明

変更届(決算変更届)の提出が前提

更新申請の前提条件は、毎年の決算変更届(事業年度終了届)が全て提出されていることです。

決算変更届を出し忘れている場合、更新申請ができません。過去5年分の決算変更届を遡って提出する必要があり、これが更新手続きで最もトラブルになるポイントです。5年分の財務諸表を遡って作成する場合、行政書士への依頼費用だけで10〜30万円追加でかかるケースもあります。

決算変更届の提出忘れに注意

決算変更届は決算日から4ヶ月以内に提出する義務があります。提出を忘れていると、更新時に遡って提出する必要があり、時間もコストも大幅に増加します。税理士に「決算業務と一緒に」と依頼しておくのが最も確実な方法です。

2020年改正のポイント — 経営業務管理体制の変更

ここまで読んだ方へ

建設業のDX・採用・補助金活用について、無料でご相談いただけます。150社以上の支援実績をもとに、御社に合った解決策をご提案します。

無料相談はこちら

2020年10月の建設業法改正で、経営業務管理責任者(経管)の要件が一部緩和されました。従来は建設業の経営経験5年以上(一定の場合は6年以上)が必要でしたが、改正後は「経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有する者」という、より柔軟な基準に変更されています。

具体的には、建設業の経営経験者に加えて、建設業以外の経営経験者でも「常勤役員を直接に補佐する者」を配置することで要件を満たせるようになりました。この変更は、後継者不足に悩む中小建設会社にとって選択肢を広げるものです。

ただし、各都道府県によって運用に若干の差があるため、具体的な要件は申請先の窓口に事前確認しておくことをおすすめします。

更新手続きのスケジュール

1

期限の6ヶ月前: 準備開始

更新の準備を開始し、過去5年分の決算変更届が全て提出済みか確認。未提出があれば遡って作成・提出が必要。この段階で漏れに気づけば余裕を持って対応できる。

2

期限の3ヶ月前: 書類収集

登記事項証明書(法務局)、納税証明書(税務署)、身分証明書など必要書類を取得。経営業務管理責任者・専任技術者の要件も再確認。取得に1〜2週間かかる書類もある。

3

期限の2ヶ月前: 申請書類の作成

建設業許可申請書、工事経歴書、財務諸表など申請書類一式を作成。行政書士に依頼する場合はこの時期にコンタクト。書類不備を防ぐため専門家のチェックが有効。

4

期限の30日以上前: 申請書類を提出

管轄の都道府県知事(知事許可)または国土交通大臣(大臣許可)に申請書類を提出。JCIPで電子申請に対応している自治体もある。

5

審査・許可通知

審査期間は通常1〜2ヶ月。不備がある場合は補正指示を受ける。新しい許可通知書が届いたら、5年後の次回更新期限を即座にスケジュール登録しておく。

時期やること
期限の6ヶ月前更新の準備を開始。決算変更届の提出漏れを確認
期限の3ヶ月前必要書類の収集を開始。登記事項証明書・納税証明書の取得
期限の2ヶ月前申請書類の作成。行政書士に依頼する場合はこの時期に
期限の30日以上前申請書類を提出
提出後審査(通常1〜2ヶ月)。不備がある場合は補正指示
許可通知新しい許可通知書が届く

期限の6ヶ月前に動き始めるのがベストですが、少なくとも3ヶ月前には準備を開始してください。書類の収集には時間がかかることがあり、特に登記事項証明書は法務局の混雑状況によっては取得に1〜2週間を要する場合があります。

よくある失敗と注意点

失敗1: 決算変更届の提出漏れ

最も多い失敗。毎年の決算後に決算変更届を提出する義務がありますが、出し忘れている建設会社が多い。

対策として、毎年の決算後4ヶ月以内に必ず提出する。税理士に「決算変更届も一緒に」とお願いしておく。行政書士と年間の顧問契約を結んでいれば、提出時期が来たらリマインドしてもらえるため確実です。

失敗2: 経営業務管理責任者の要件を満たさなくなる

代表者が交代した、経管の経験年数が足りなくなった、等の理由で要件を満たせなくなるケース。

対策として、更新前に経管の要件を再確認。不足がある場合は早めに対策(後任の経管を確保する等)。事業承継を見据えている場合は、承継予定者が経管の要件を満たすかどうかを計画的に確認しておく必要があります。

失敗3: 専任技術者の退職

許可取得時の専任技術者が退職してしまい、技術者要件を満たせなくなるケース。

対策として、複数名の有資格者を確保しておく。資格手当を含む評価制度を整備し、社員の資格取得意欲を高めることが有効です。専任技術者が退職する場合は14日以内に変更届を提出する必要があり、後任者がいないまま放置すると許可取消の対象になります。

失敗4: 期限ギリギリの申請

「まだ大丈夫」と後回しにして、期限の30日前を過ぎてしまうケース。

対策として、期限の6ヶ月前にカレンダーにリマインドを設定する。許可通知書が届いたタイミングで、5年後の更新期限を即座にスケジュール登録しておく習慣をつけましょう。

失敗5: 社会保険の未加入

2020年の建設業法改正で、社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が建設業許可の要件になりました。未加入のまま更新申請をすると許可が下りません。

対策として、健康保険・厚生年金の加入状況を更新前に確認し、未加入の場合は早急に加入手続きを行う必要があります。

更新にかかる費用

項目費用
登録免許税(知事許可)50,000円
登記事項証明書600円/通
納税証明書400円/通
身分証明書300円/通
登記されていないことの証明書300円/通
行政書士報酬(依頼する場合)50,000〜150,000円
合計(自社で申請)約52,000円
合計(行政書士に依頼)約100,000〜200,000円

自社で申請する? 行政書士に依頼する?

自社申請行政書士に依頼
費用約5万円約10〜20万円
手間書類作成に数日かかるほぼお任せ
リスク書類不備で差し戻しの可能性専門家がチェックするため安心
おすすめ過去に自社で申請した経験がある初めての更新、または決算変更届の未提出がある

行政書士に依頼するメリットは、書類作成の手間が省けるだけでなく、許可要件を満たしているかどうかの事前チェックが受けられる点です。要件を満たしていない状態で申請すると、差し戻しの間に期限を過ぎてしまうリスクがあります。費用は5〜15万円程度追加でかかりますが、許可失効のリスクを考えると保険として十分に合理的な投資です。

電子申請の動向

建設業許可の申請手続きは、従来は紙の書類を窓口に持参する方法が一般的でしたが、電子申請の環境整備が進んでいます。国土交通省は「建設業許可・経営事項審査電子申請システム(JCIP)」の運用を開始しており、対応している都道府県では窓口に行かずに申請を完結できるようになりつつあります。

電子申請に対応している都道府県は段階的に増えており、今後は全国で利用可能になる見込みです。自社の申請先が電子申請に対応しているかどうか、事前に確認しておくと手続きがスムーズになります。

次の更新を楽にするために

更新手続きの負荷を減らすための日常的な対策:

  1. 毎年の決算変更届を確実に提出する — 税理士と連携して決算後4ヶ月以内に
  2. 書類をデジタル管理する — クラウドストレージに許可証・決算書類を保管
  3. 有資格者を複数確保する — 専任技術者の退職リスクに備える
  4. 更新スケジュールを管理する — 5年後の期限をカレンダーに登録
  5. 許可関連の変更が生じたら14日以内に届出する — 経管・専技の変更、商号変更等

建設業許可の業種区分と許可の組み合わせ

建設業許可には29の業種区分があります。取得する業種の選択は、受注できる工事の範囲に直結するため、自社の施工内容を踏まえた選択が必要です。

区分主な業種
建築工事建築一式工事、大工工事、左官工事、とび・土工・コンクリート工事
土木工事土木一式工事、舗装工事、しゅんせつ工事、水道施設工事
設備工事電気工事、管工事、電気通信工事、消防施設工事
内装・仕上げ内装仕上工事、塗装工事、板金工事、ガラス工事
その他造園工事、機械器具設置工事、解体工事

「建築一式工事」の許可を持っていれば全ての建築工事ができると誤解されることがありますが、実際には付帯工事でない限り、個別の専門工事(電気・管・内装等)を施工するには各業種の許可も必要です。

たとえばリフォーム工事を請け負う場合、工事全体の元請けとして「建築一式工事」の許可を取得するだけでなく、自社で電気工事や給排水工事も施工するなら「電気工事業」「管工事業」の許可もそれぞれ必要になります。許可業種の選択を誤ると、後から追加申請が必要になるため、当初から受注見込みの工事をすべて洗い出した上で業種を選定することが重要です。

知事許可と大臣許可の違い

知事許可大臣許可
営業所の所在地1つの都道府県のみ2つ以上の都道府県
申請先都道府県知事国土交通大臣
費用50,000円50,000円
工事の規模制限なし(他県での施工も可能)なし

知事許可でも他県での工事は施工できます。営業所の所在地で判断が分かれるため、支店や出張所を他県に設ける場合は大臣許可が必要になります。

許可取得後に必要な届出と維持管理

建設業許可を取得した後も、一定の事項について届出義務があります。これを怠ると許可の取り消し事由になる場合があります。

変更届の提出が必要なケース

変更内容によって提出期限が異なります。

変更内容届出期限
経営業務管理責任者の変更変更後2週間以内
専任技術者の変更変更後2週間以内
商号・名称の変更変更後30日以内
代表者の変更変更後30日以内
営業所の新設・廃止変更後30日以内
資本金の変更変更後30日以内

14日以内の届出が必要な変更(経管・専技の変更)については、後任者の確保と同時に届出の準備を進める必要があります。後任者がいないまま放置すると、許可の基準を満たさない状態が続き、最悪の場合は許可取消の対象になります。

廃業届の提出

会社を清算する、建設業から撤退するといった場合は廃業届の提出が必要です。届出をしないまま許可が有効な状態で放置すると、許可業者としての責任を負い続けることになります。廃業時は速やかに都道府県窓口に相談してください。

建設業許可を取得するメリット

許可取得は義務を満たすだけでなく、経営上のメリットがあります。

受注可能な工事の規模が拡大します。500万円(建築一式は1,500万円)以上の工事を請け負えるようになるため、1件あたりの売上が大きくなります。

信頼性の証明になります。建設業許可番号は「国土交通大臣許可(般-○○)第○○○○○号」のように公示されるため、元請けや発注者が信頼性の判断材料として参照します。「許可業者」であることは、未許可業者との差別化ポイントです。

公共工事への参加資格の前提になります。公共工事の入札には、建設業許可の取得が前提となります。経営事項審査(経審)も許可業者であることが条件です。許可取得後は全国の入札公告を無料で検索し、自社の業種・エリアで発注されている案件の相場感を早めに把握しておくと、経審の受審・入札参加資格申請の計画も立てやすくなります。

補助金・助成金の申請要件を満たすケースが増えます。IT導入補助金や事業再構築補助金など、建設業者を対象とした補助金の申請要件として、建設業許可の保有が求められるケースがあります。詳しくは建設業で使える補助金一覧をご確認ください。

事業承継と建設業許可

建設業の事業承継は「許可の引き継ぎ」という点で特有の注意が必要です。従来は、会社を引き継ぐ(法人成り・吸収合併・相続等)場合でも建設業許可は引き継げず、新規申請が必要でした。

しかし、2020年10月施行の建設業法改正で、一定の要件を満たした「事業承継等の認可」制度が創設されました。これにより、事前に認可を受けることで、承継先が許可を引き継ぐことが可能になりました。

事業承継を検討している場合は、この制度を活用することで許可を途切れさせずに引き継げます。ただし手続きが複雑なため、早めに行政書士に相談することをおすすめします。後継者が経管要件を満たすかどうかの確認と合わせて、計画的に準備を進めることが必要です。

建設業許可と社会保険 — 2020年改正で加入が必須に

2020年10月の建設業法改正で、社会保険(健康保険・厚生年金・雇用保険)への加入が建設業許可の要件になりました。許可の新規取得・更新のどちらでも、社会保険の加入証明が必要書類として求められます。

未加入のまま許可を申請すると受理されないため、社会保険の加入状況を早めに確認してください。法人の場合は健康保険・厚生年金への加入が原則義務です。個人事業主の場合は、常時5人以上の従業員を使用する場合は強制加入となります。

この改正の背景には、建設現場で働く技能者の社会保障を確保するという目的があります。下請けの一人親方についても、実態として雇用関係にある場合は社会保険への加入が求められる場合があります。一人親方の社会保険については、処遇改善とインボイス制度対応と合わせて整理しておくことが重要です。

建設業許可の数字で見る現状

国土交通省の「建設業許可業者数調査」によると、2024年3月末時点の建設業許可業者数は約47万社で、近年は横ばいが続いています。

種別許可業者数(目安)
知事許可(一般)約36万社
知事許可(特定)約2万社
大臣許可(一般)約7万社
大臣許可(特定)約2万社

特定建設業許可(4,500万円以上の下請契約が可能)の業者は全体の約4万社にとどまります。特定建設業許可を取得することで、より規模の大きな元請け工事に対応できるようになるため、成長段階の建設会社にとって取得を目指す価値があります。

特定建設業許可を取得するには、一般建設業許可の要件に加えて財産的基礎(資本金2,000万円以上かつ自己資本4,000万円以上等)が求められます。専任技術者の要件も一般より厳しく、1級資格の保有者が必要です。

出典: 国土交通省「令和6年度末の建設業許可業者数調査の結果」(2026-04-27確認)

参考情報

よくある質問

建設業許可の更新はいつまでに申請する必要がありますか?
有効期間満了日の30日前までに申請が必要です。期限を過ぎると新規申請扱いになり、審査が厳しくなります。期限の6ヶ月前から準備を始めることをおすすめします。
建設業許可の更新にかかる費用はいくらですか?
自社で申請する場合は登録免許税5万円+各種証明書で約52,000円です。行政書士に依頼する場合は報酬5〜15万円が別途かかり、合計約10〜20万円になります。
建設業許可の更新で最も多い失敗は何ですか?
決算変更届の提出漏れが最も多い失敗です。毎年の決算後に提出する義務がありますが、出し忘れている会社が多く、更新申請ができなくなります。過去5年分の遡り提出が必要になり、追加費用もかかります。
建設業許可の更新を自分で申請すべきですか?行政書士に依頼すべきですか?
過去に自社で申請した経験があれば自社申請(約5万円)で問題ありません。初めての更新や決算変更届の未提出がある場合は、行政書士への依頼(約10〜20万円)が安心です。
専任技術者が退職したら建設業許可はどうなりますか?
技術者要件を満たせなくなると許可の更新ができません。専任技術者の退職時は14日以内に変更届を提出する必要があり、後任者がいないまま放置すると許可取消の対象になります。
建設業許可の有効期間はどれくらいですか?
建設業許可の有効期間は許可日から5年間です。更新手続きを怠ると許可が失効し、500万円以上の工事を請け負えなくなります。
建設業許可の電子申請は可能ですか?
国土交通省のJCIP(建設業許可・経営事項審査電子申請システム)が運用を開始しており、対応している都道府県では電子申請が可能です。対応自治体は段階的に増えています。

あわせて読みたい: