この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。建設業の労務管理・DX導入支援に幅広く対応。

退職金は、技能者の長期定着を促す上で欠かせない福利厚生の一つです。しかし、建設業では現場ごとに雇用が変わる技能者も多く、会社単位で退職金制度を設けることが難しいという構造的な問題があります。

この課題を解決するために設けられた国の制度が「建設業退職金共済(建退共)」です。証紙を積み立てることで、複数の会社を渡り歩く技能者にも退職金を支給できる仕組みです。元請けから「建退共の加入証明書を出してほしい」と言われた経験のある事業者も多いはずです。

この記事では、建退共の仕組み・証紙の買い方・退職金の計算方法・加入手続き・メリットとデメリットまでを体系的に解説します。制度をきちんと理解して、採用競争力と現場入場の両方に活かしてほしい。

建設会社の事務所の机に置かれた共済手帳のような冊子と書類、ペンとヘルメット

会社を辞めたときではなく、建設業を離れるときに受け取る退職金

建設業退職金共済(建退共)とは何か

建設業退職金共済制度(建退共)は、「独立行政法人勤労者退職金共済機構」が運営する国の退職金制度です。1965年に中小企業退職金共済法に基づいて設立され、2024年3月末時点で約122万人の技能者が加入しています。

通常、退職金は雇用する会社が積み立てて支払うものだが、建設業では現場ごとに短期の雇用が発生しやすく、1社に長く勤め続けるケースが少ありません。そのため、会社ごとの退職金制度では積み立てが少額にとどまってしまう技能者が多かった。

建退共は「業界全体で技能者の退職金を積み立てる」という考え方に立っています。技能者が転職しても積み立てた日数は引き継がれ(通算される)、最終的に退職したときに退職金として支払われる。

事業者にとっては、技能者1日分の労働に対して証紙1枚(320円)を購入・貼付することで積み立てが完結します。社内に退職金積立の管理システムを持つ必要がなく、手続きの簡単さが中小建設会社に広く普及している理由です

出典: 建設業退職金共済事業本部(建退共)公式サイト — 独立行政法人勤労者退職金共済機構

建退共のお金の流れ事業主証紙を買って手帳に貼る勤労者退職金共済機構国の制度として運用技能者建設業を辞めるとき退職金を受け取る掛金退職金退職金は機構から本人へ直接支払われます。会社が用意する必要はありません一般的な退職金と違い、会社を辞めたときではなく「建設業界から離れるとき」に支払われるのが特徴です共済証紙 1日券 320円(2026年8月時点)
会社が退職金の原資を自前で積み立てる必要がなく、支払いも機構が直接行います。社内に退職金の管理制度を持たなくても運用できるのが、中小建設会社に普及している理由です。

法律上の位置づけ

建退共の根拠法は「中小企業退職金共済法」で、公共工事に関しては「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(入契法)」によって元請け事業者に加入促進が義務づけられています。国や都道府県が発注する公共工事では、発注者から「建退共の加入促進に努めること」という条件が付される場合が一般的です。

公共工事を受注している建設会社にとって、建退共への加入は事実上の必須要件に近い。入札参加資格審査で加入の有無を確認する発注機関も多く、未加入のまま公共工事を狙うのは不利になるケースがあります。

誰が加入できるか — 対象者と対象外

建退共に加入できるのは、建設業で働く技能者(「被共済者」と呼ぶ)を雇用する事業者です。事業者規模の制限はなく、一人親方でも雇用主(共済契約者)として加入できます。ただし、以下の点を確認しておく必要があります。

加入できる技能者(被共済者の要件)

被共済者として登録できるのは、建設現場で働く「技能者」です。具体的には、大工・左官・鉄筋工・配管工・電気工事士など現場作業に従事する方が対象です。

一方、以下に該当する者は被共済者になれません。

  • 事業主本人(個人事業主として共済契約者になる場合)
  • 役員(法人の取締役・監査役など)
  • 現場作業に従事しない事務職員・管理職
  • 週の所定労働時間が30時間未満のパート・アルバイト(一定条件あり)

現場で働く技能者であれば、正社員か有期雇用かを問わず対象です。日雇いで短期に雇用する技能者も、建設現場で働く実態があれば登録できます。

被共済者の登録手続き

新たに技能者を雇い入れたときは、速やかに被共済者手帳の発行を申請します。申請先は都道府県の建退共支部、または組合経由です。

手帳は本人に交付されます。事業者は働いた日数に応じた証紙を購入し、手帳に貼り付けて積み立てます。

証紙の仕組みと購入方法

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建退共の積み立ては「共済証紙」の貼り付けで行います。1日券は320円で、技能者が1日現場で働くたびに1枚を手帳に貼ります。日数で積み上がるので、現場を移っても記録が途切れません

証紙の単価と積み立て額

共済証紙は、事業所の規模によって色が分かれています。

証紙の色対象1日券10日券
赤色労働者300人以下 または 資本金3億円以下の中小事業主に雇われる労働者320円3,200円
青色労働者300人超 かつ 資本金3億円超の大手事業主に雇われる労働者320円3,200円

購入するときは、自社の「共済契約者証」と同じ色の証紙を選びます。色を間違えて購入すると使えません。契約者証は原本の提示が必要で、コピーや電子申請サイトのPDFでは購入できません。

出典: 証紙貼付方式 — 建設業退職金共済事業本部(2026-08-09 確認)

証紙の購入先を整理します。

共済証紙は、建退共と代理店契約を結んでいる金融機関の窓口で購入します。購入時には共済契約者証の原本を提示する必要があり、コピーや電子申請サイトのPDFでは購入できません。取扱金融機関は建退共の公式サイトで一覧が公表されています。

近年は電子申請への移行が進んでおり、掛金を電子ポイントで納付する方式も整備されています。紙の証紙は紛失や貼り忘れのリスクがあるため、電子化を検討する価値があります

証紙貼り付けの実務上の注意点

証紙を手帳に貼るときは、日付と枚数を正確に記録します。一度貼った証紙は剥がせません。間違えたときは自分で処理せず、支部に相談してください。

まとめ買いした証紙は会社側で管理します。在庫管理を怠ると、貼り付け漏れや重複計上が起きます。月次で証紙の使用枚数と就業日数を照合する習慣が、ミスを防ぐ一番の方法です

また、証紙が手帳に貼られていないと積み立て期間として認められません。過去に遡って証紙を貼り直すことは原則できないため、日々の記録が積み立ての正確性に直結する。

退職金の計算方法と支給額

建退共は、掛金日額320円で納付した場合の退職金額を公表しています。5年(60月)で414,087円、10年(120月)で893,559円、20年(240月)で1,933,479円、30年(360月)で3,038,919円です。現行の公表額では、5年の時点で退職金が事業者の払う掛金を上回ります。納付月数は21日分を1月として換算します。

ただし退職金額は、予定運用利回りや掛金日額の見直しによって変動します。判断に使うときは、そのつど公式の最新額を確認してください。

詳しい計算式や勤続年数別のシミュレーション(5年・10年・20年・30年)は建退共の退職金計算方法で解説しています。

出典: 退職金の額について — 建退共

退職金の請求手続き

退職した技能者が退職金を請求するときは、被共済者手帳と退職証明書等を添えて建退共事務局に申請します。申請から支給までは通常1〜2か月程度かかります

会社側の手続きは「被共済者の資格喪失」の届け出が中心です。退職時には手帳を必ず本人に返却してください。会社が持ったままだと、技能者が退職金を請求できません。

技能者が転職する場合、手帳に積み立てた日数は次の雇用先に引き継がれます(通算制度)。ただし引き継げるのは、次の勤務先も建退共に加入している場合です。手帳を2冊以上持っている技能者は、合算の手続きが別に必要になります。

転職しても日数は積み上がる会社が変わっても、積み立て日数は途切れませんA社8年B社5年C社12年1冊の共済手帳に積み上がる合計 25年分建設業を離れるときに受け取る前職までの納付実績は、次の勤務先も建退共に加入していれば続きます採用時は手帳の有無を必ず確認してください
退職金は納付期間が長いほど運用分が乗るため、転職を挟んでも通算されることが技能者にとって大きな意味を持ちます。中途採用者を迎えるときは、前職で交付された手帳を持っているかを確認してください。

建退共のメリットと活用のポイント

建退共には、事業者・技能者の双方にとって実質的なメリットがあります。制度の仕組みを理解した上で積極的に活用することが、採用競争力の向上と公共工事への参入に直結する。

事業者側のメリット

第一に、公共工事の入札参加資格審査で有利になります。多くの発注機関が建退共への加入を評価項目に入れており、未加入よりも加入済みの方が入札結果に有利に働くケースがあります。

第二に、採用・定着面での効果があります。「退職金あり」という求人条件を打ち出せることで、若手技能者の応募率が上がる。国土交通省の調査では、建設業を就職・転職先に選ぶ際に「福利厚生の充実」を重視する若手の割合が増加傾向にあります。

第三に、税務上のメリットがあります。事業者が証紙購入に支出した費用は、全額「損金(費用)」として計上できます。社内に退職金引当金を積み立てる場合と異なり、資金の社外流出が確実になるため、決算対策としても有効です。

第四に、退職金の積み立てを外部機関に任せられるため、社内の管理負担が軽くなります。社内で退職金積立金を管理すると、経営悪化時に取り崩すリスクが生じるが、建退共ではそのリスクがありません。

技能者側のメリット

技能者にとっては、転職しても退職金が消えない点が大きな安心感につながります。会社単位の退職金では短期で退職するとほとんど支払われないケースも多いのに対し、建退共では積み立て日数がそのまま引き継がれます。

また、建退共の退職金は税制上「退職所得」として扱われるため、通常の給与所得と比べて税負担が軽くなります。長期勤続後に受け取る退職金が数百万円になるケースでも、退職所得控除によって所得税の負担を大きく抑えられます。

中小事業者が知っておくべき注意点

建退共の積み立て漏れは後から補填できません。現場で働いた技能者に対して証紙を貼らなかった期間は、退職金の計算に含まれません。特に繁忙期に証紙の管理が後回しになるケースがあるため、月次での照合ルーティンを確立しておくことが重要です。

元請けから証紙を支給される「証紙の支給制度」を活用している場合は、支給された証紙の枚数と実際の就業日数がずれないよう注意が必要です。支給分を超えて独自に証紙を追加購入することも可能なため、不足分は自社で補完する仕組みをつくっておきたい。

公共工事と建退共 — 元請けからの要求への対応

公共工事を下請けとして受注している建設会社は、元請けから「建退共の加入証明書」または「証紙受領書」の提出を求められることが多くあります。この要求に的確に対応するには、制度の仕組みと提出書類の種類を把握しておく必要があります。

公共工事発注者の「加入促進義務」とは

国・都道府県が発注する公共工事では、「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」の施行令に基づき、発注者(国・自治体)が元請け事業者に対して建退共への加入促進を求める義務があります。

具体的には、発注機関が建退共本部から一定数の証紙を事前に購入し、工事請負契約時に元請けへ交付する「証紙の交付」という仕組みが運用されています。元請けはこの証紙を下請けに配布し、下請けが技能者の手帳に貼り付けることで積み立てが行われる。

加入証明書の取得方法

建退共の加入証明書は、加入している建退共支部に申請すると発行されます。通常1〜2週間程度で発行されるため、元請けから要求があった際は早めに申請する。

加入証明書には、共済契約者番号・加入年月日・代表者氏名などが記載されます。この書類を元請けに提出すると、下請けとして現場入場の条件を満たした証明になります。

証紙の「横流し」は厳禁

建退共の証紙は技能者の被共済者手帳に貼るために交付されます。証紙を換金目的で売買したり、退職金積み立て以外の目的で使用することは法律違反です。発注機関から交付された証紙は必ず実際に働いた技能者の手帳に貼り付けるよう、社内で徹底してください。

加入手続きの具体的な流れ

建退共への加入手続きは、次のステップで進める。書類の準備から最初の証紙購入まで、おおむね2〜4週間を見込んでおくとよい。

ステップ1: 事業者(共済契約者)の加入申込

最寄りの建退共事務所(都道府県ごとに設置)に「共済契約申込書」を提出する。申込書は建退共の公式サイトからダウンロードできます。

提出時の必要書類:

  • 共済契約申込書(事業主の記名・捺印)
  • 建設業許可証のコピー(許可業者の場合)
  • 法人登記簿謄本または個人事業の開業届のコピー

申込が受理されると「共済契約者番号」が付与され、以降の手続きで使います。

ステップ2: 被共済者手帳の申請

技能者ごとに「被共済者手帳交付申請書」を提出する。技能者の氏名・生年月日・住所などの基本情報が必要です。

すでに他社で手帳を持っている技能者は、その手帳を継続して使います。新規取得は不要で、手帳番号を申し出れば同じ積み立てに引き継がれます。

ステップ3: 証紙の購入と貼り付け

手帳が交付されたら、技能者の就業日数に応じた証紙を購入し、手帳に貼り付けます。証紙は、建退共と代理店契約を結んでいる金融機関の窓口で購入します。共済契約者証の原本の提示が必要です。

月末にまとめて購入し、その月の就業日数分を一括で貼り付ける運用が実務上は多くみられます。ただし日付ごとに貼るほうが就業実態との照合が容易なので、日次で記録する習慣をつけるほうが安全です。

出典: 加入手続きについて — 建退共

加入後に注意すべき定期業務

  • 新規採用技能者が入ったときの手帳申請(速やかに)
  • 退職者の資格喪失届(退職日から30日以内が目安)
  • 年度ごとの「共済証紙受払簿」の整理・保管(5年間の保存が推奨)

建退共と他の退職金制度の比較

建退共と混同されやすい退職金制度として「中小企業退職金共済(中退共)」があります。どちらも国が関与する退職金制度だが、対象業種・加入方法・積み立て方法に違いがあります。

建退共 vs 中退共

比較項目建退共中退共
対象業種建設業のみ全業種(中小企業)
積み立て方法証紙の貼り付け月次の掛金振替
技能者の転職時の扱い日数通算(継続)一般的には退職金受給
加入対象者現場技能者事務職員を含む全従業員
掛金の使途技能者の退職金のみ全従業員の退職金
公共工事の要件多くの発注機関で加入促進加入が評価される場合あり

建設業では現場で働く技能者と事務・管理部門の両方の従業員がいる場合、「現場技能者は建退共、事務職員は中退共」と使い分けるケースが多くみられます。

中退共は月払いの掛金(月5,000円〜30,000円)で運用するため、毎月の定額積み立てをしたい場合に向いています。新規加入後1〜2年は国から掛金補助がある点も、中退共の特徴です。

建設業向け補助金・助成金一覧

電子化の動向 — デジタル手帳への移行

建退共は長年、紙の手帳と証紙で運用されてきました。近年はデジタル化が進み、「建退共電子申請システム」の整備が進んでいます。

電子申請システムの概要

2023年度から本格稼働している建退共の電子申請システムでは、被共済者の登録・証紙の購入・就業日数の管理・退職金の請求までをオンラインで処理できます。

電子化のメリットを整理します。

  • 証紙の紛失リスクがゼロになる
  • 就業日数の記録がシステム上で自動管理される
  • 手帳の記帳・整理作業が不要になる
  • 退職金請求時の書類準備が簡素化される

2024年度以降、国土交通省は公共工事を中心に電子申請システムへの移行を促進する方針を示しており、今後数年で紙の手帳から電子システムへの全面移行が進む見通しです。

出典: 建退共電子申請システムについて — 建退共

電子申請への移行を早めに検討する

紙の証紙による運用からデジタルへの移行は、準備期間が必要です。まずは建退共の電子申請システムに事業者登録を行い、新規採用の技能者から電子手帳で管理を始めるという段階的な移行が現実的です。移行後は事務工数の大幅な削減が見込めます。

よくある質問

証紙を貼り忘れた場合はどうなるか
証紙の貼り忘れは後から補填できません。遡って証紙を貼り直す「追完」は建退共の制度上認められていないため、貼り漏れた分は積み立て日数に含まれません。月次での照合で漏れを早期に発見する体制が不可欠です。
技能者が手帳を紛失した場合はどうなるか
手帳を紛失した場合、技能者は建退共事務所に「被共済者手帳再交付申請書」を提出して再交付を受けることができます。これまでの積み立て日数は建退共の記録に残っているため、手帳の紛失によって積み立てが消えることはありません。
事業主(役員)も建退共で退職金を積み立てられるか
法人の代表者は「共済契約者」として加入しますが、自分自身(役員)は被共済者になれません。自分の退職金を建退共で積み立てることはできないため、経営者自身の老後資金は別の手段(iDeCo・小規模企業共済など)で準備する必要があります。
建退共の証紙1枚はいくらですか?
共済証紙の1日券は320円、10日券は3,200円です(2026年8月時点)。技能者が1日現場で働くたびに1日券1枚を手帳に貼ることで積み立てが行われます。証紙は取扱金融機関の窓口で、共済契約者証の原本を提示して購入します。契約者証と同じ色の証紙しか購入できない点に注意してください。
建退共に加入しなくても公共工事は受注できますか?
建退共の未加入でも公共工事の入札を行うこと自体は制度上可能ですが、多くの発注機関が加入促進を入札参加要件や評価項目に組み込んでいます。未加入の場合は入札で不利になったり、元請けから現場入場を拒否されるリスクがあります。公共工事を継続的に受注するためには加入を強く推奨します。
転職した技能者の積み立て日数は引き継がれますか?
引き継がれます。ただし条件があり、次の勤務先も建退共に加入している必要があります。加入していれば同じ手帳を使い続けることで積み立てが継続します。なお手帳を2冊以上持っている場合は、合算の手続きが別に必要です。退職金は、技能者が建設業界で働かなくなったときに支給されます。
建退共の退職金はいつ受け取れますか?
建設業を完全に離職(退職)した時点で受け取れます。在職中の中途解約は原則できません。ただし、65歳以上で一定の条件を満たす場合には「還付」制度が使えます。また、技能者が死亡した場合は遺族が請求できます。退職後、手帳と必要書類を建退共事務所に提出してから通常1〜2か月で支給されます。
一人親方(事業主本人)は建退共で退職金を積み立てられますか?
一人親方が自分自身の退職金を建退共で積み立てることはできません。建退共の被共済者は「技能者(雇用されている者)」であるため、事業主本人は対象外です。一人親方の老後資金の積み立ては、小規模企業共済やiDeCoを活用することを検討してください。
建退共の証紙を貼り忘れた場合、後から遡って補填できますか?
原則として遡った補填はできません。就業実態があっても証紙が貼られていない期間は積み立て日数に算入されません。月次で就業日数と証紙枚数を照合する体制を整えることが、積み立て漏れを防ぐ唯一の方法です。なお、証紙を紛失した場合は手帳の再交付制度があり、積み立て記録は建退共側のシステムに保管されています。
建退共の証紙購入費は経費として計上できますか?
はい、証紙の購入費は全額損金(費用)として計上できます。社内に退職金引当金を積み立てる場合と異なり、支出のタイミングで費用処理が確定するため、決算の見通しが立てやすいというメリットもあります。

建設業向け補助金・助成金の完全一覧

建退共を採用・定着戦略に活かす

建退共への加入を「義務だから仕方なくやっている」と捉えるか、「人材採用・定着の武器として使う」と捉えるかで、経営への効果はまったく変わります。

求人票に明記することで応募率が変わる

「退職金あり(建退共加入)」という記載は、建設業の求人において若手技能者への訴求力を持っています。特に20〜30代の求職者は、長期的な雇用安定性を重視する傾向があり、退職金制度の有無を会社選びの判断材料にするケースが増えています。

国土交通省の「建設業における人材確保・育成の現状」(2024年度版)によれば、建設業の若手入職者(29歳以下)の就職先選択理由として「福利厚生の充実」を挙げた割合は33%で、5年前と比べて8ポイント増えました。建退共を含む福利厚生の整備は、採用市場での差別化に直結します。

出典: 建設業における人材確保・育成 — 国土交通省(2026-04-27確認)

技能者の長期定着に与える効果

建退共は、勤続期間が長くなるほど有利な支給額になります。このため、技能者にとっては「同じ会社に長く勤めるほど受け取れる退職金が有利になる」という合理的なインセンティブが働く。

転職を繰り返す技能者の場合、積み立て日数は引き継がれるものの、勤続年数別の単価優遇は通算日数で計算されるため、長期勤続の方が有利という構造は変わりません。「うちに長くいればいるほど退職金が増えますよ」という訴求は、職人の定着促進に使えるメッセージです。

建退共×キャリアアップ助成金の組み合わせ

社会保険未加入の技能者を社会保険に加入させたうえで正社員に転換した場合、キャリアアップ助成金の対象になります。建退共の加入と社会保険の整備を同時に進めることで、助成金を活用しながら福利厚生を充実させる一石二鳥のアプローチが可能です。

具体的には、有期雇用の現場作業員を無期雇用の正社員に転換し、社会保険加入・建退共登録を同時に行うことで、キャリアアップ助成金の「正社員化コース」(1人あたり最大80万円)を申請できるケースがあります。

キャリアアップ助成金 建設業活用ガイド

建退共の管理業務を効率化する実務のヒント

建退共の運用は単純な仕組みだが、技能者の人数が増えると証紙の管理・手帳の発行・被共済者の登録・退職者の資格喪失届など、定期的に発生する事務量が積み重なる。効率化の工夫を取り入れると、担当者の負担を軽くできます。

月次の証紙管理ルーティンを作る

証紙の管理で最も重要なのは「月末に必ず照合する」習慣です。その月の技能者別就業日数と証紙の使用枚数を対比し、過不足がないかを確認します。月次照合の具体的な確認項目と手順は建退共の退職金計算方法にまとめています。

勤怠管理ソフトとの連携

GPS対応の勤怠管理アプリを導入している会社では、現場ごとの就業日数が自動で記録されるため、証紙貼り付けの根拠データが勤怠データから直接引き出せる。手作業で日数を集計する必要がなくなり、人的ミスも減る。

建設業向け勤怠管理アプリ比較

建退共の費用対効果を経営視点で整理する

事業者にとってのコストは証紙の購入費です。技能者5名が年間250日働いた場合、年間の証紙購入額は40万円で、損金算入の節税効果(税率25%で計算)を差し引いた実質コストは30万円になります。技能者1名あたり月5,000円です

一方で、公共工事の入札参加資格の確保、求人での訴求力向上、技能者の長期定着によるリクルートコスト削減、損金算入による税負担軽減といった便益があります。厚生労働省の試算では、技能者1名が離職・採用し直す際のコストは平均50〜100万円とされており、定着率の改善効果だけでも投資を回収できる可能性が高い水準です。

証紙購入コストと退職金支給額の損益分岐点など、詳しい数値シミュレーションは建退共の退職金計算方法を参照してほしい。

出典: 人材確保等支援助成金について — 厚生労働省(2026-04-27確認)

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