この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「2024年問題」が経営課題になった土木会社

群馬県で道路工事・河川工事を中心に手がけるC土木(従業員32名)は、2024年4月の建設業における時間外労働の上限規制適用を前に、深刻な経営課題に直面していました。

それまでの勤怠管理は、各現場に置いた紙の出勤簿に職人が手書きで記入する方式。月末に事務員が全現場から出勤簿を回収し、Excelに手入力して集計するという流れです。この運用で30年以上やってきたものの、時間外労働の上限規制に対応するためには「リアルタイムで誰が何時間働いているか」を把握する仕組みが必要でした。

取締役のS氏は次のように当時を振り返ります。「月末に集計して初めて残業時間がわかる状態では、規制をオーバーしてからでは手遅れ。途中経過を見ながらコントロールできる仕組みがなければ法令違反は避けられないと思った」。

導入前の課題を整理する

C土木が抱えていた勤怠管理の課題は、法令対応だけではありませんでした。

課題具体的な問題経営への影響
リアルタイム把握の欠如月末集計まで残業実態が不明上限規制違反のリスク
手書き出勤簿の曖昧さ記入漏れ、時刻の丸め(例: 17:50→18:00)実態と乖離した残業代支払い
集計作業の膨大な手間事務員1名が月末3日間つきっきりで集計月末の業務集中、ミスの発生
現場ごとの労働時間のばらつき特定の現場に残業が集中人員配置の最適化ができない
有給取得率の低さ取得状況を誰も把握していない年5日の取得義務違反リスク

月末の集計作業だけで事務員の稼働が24時間(3日分)。それに加えて、集計ミスによる給与計算のやり直しが年に2〜3回発生しており、社員との信頼関係にも影響していました。

ツール選定のプロセス

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S取締役は、建設業向けの勤怠管理アプリを3つに絞って比較検討しました。選定で重視したのは以下の4点です。

1つ目はGPS打刻に対応していること。土木会社は現場が毎日変わることもあるため、「どの現場で打刻したか」がわかるGPS連動は必須でした。

2つ目は残業時間のアラート機能。月45時間の上限に近づいた社員を自動で通知する機能がなければ、導入する意味が半減します。

3つ目は給与計算ソフトとの連携。勤怠データを手作業で給与計算ソフトに入力する手間をなくすため、CSV出力またはAPI連携に対応しているかを確認しました。

4つ目は操作のシンプルさ。現場の職人が毎日使うものなので、出退勤の打刻が2タップ以内で完了することを条件にしています。

2週間の無料トライアルを経て、GPS打刻の精度とアラート機能の充実度で最も評価の高かったサービスを選定。月額は1ユーザーあたり300円、全社32名で月額9,600円という低コストでの導入が決まりました。

導入スケジュールと定着プロセス

準備期間(導入1ヶ月前)

導入前に、まず「自社の勤務ルール」をシステムに反映するための整理を行いました。始業時刻、終業時刻、休憩時間、現場間の移動時間の扱い、直行直帰の取り扱いなど、これまで慣習で運用してきたルールを明文化する作業です。

この作業は社労士に相談しながら進め、就業規則の改定もあわせて実施。ここに約2週間かかりましたが、このステップを飛ばすとシステム設定が実態に合わず、後から修正が発生するため重要な工程です。

第1フェーズ(1〜2週目)事務所での試行

事務所勤務の5名から運用を開始。朝と夕方にスマホで打刻する習慣をつけ、管理画面の操作に経営陣と事務員が慣れる期間としました。

この段階で、打刻忘れへの対応ルールを決めています。「打刻を忘れた場合は当日中に上長に申告し、管理者が手動で修正する」というシンプルなルールです。

第2フェーズ(3〜4週目)全現場への展開

3週目から全現場の職人に展開。各現場の朝礼で操作方法を説明し、QRコード付きのA4シートを現場の事務所に掲示しました。QRコードからアプリのダウンロードページに飛べるようにしたことで、スマホの操作に不慣れな職人でもスムーズに導入できたといいます。

最初の1週間は打刻忘れが全体の15%ほど発生しましたが、毎朝の朝礼で「昨日の打刻忘れ一覧」を共有することで、2週目には3%以下に減少。4週目にはほぼゼロになりました。

第3フェーズ(2ヶ月目〜)給与計算連携

勤怠打刻の定着を確認してから、給与計算ソフトとの連携を開始。月末に勤怠データをCSVでエクスポートし、給与計算ソフトにインポートする運用に切り替えました。

それまで月末3日間かかっていた集計作業が、CSV出力→インポート→確認で半日に短縮。事務員の月末の負担が劇的に軽くなっています。

導入後の数値変化

導入から6ヶ月が経過した時点の効果測定結果です。

指標導入前導入後(6ヶ月)変化
全社平均の月間残業時間42時間29時間30%削減
月45時間超の残業者数月平均8名月平均1名87%減少
給与計算の所要時間月24時間(3日間)月5時間(半日)79%短縮
給与計算ミスによるやり直し年2〜3回0回解消
有給取得率38%62%24ポイント向上
打刻忘れ率-(紙のため不明)1%以下-

特に注目すべきは残業時間の削減です。アプリの導入自体が直接的に残業を減らしたのではなく、リアルタイムで各社員の残業時間が「見える化」されたことが行動変容を促しました。

S取締役は「見えるようになっただけで、みんな意識が変わった」と語ります。残業時間が月35時間を超えた社員には自動でアラートが飛ぶ設定にしたことで、現場監督レベルで労働時間をコントロールする文化が根付いたのが大きな変化です。

有給取得率の改善が生んだ採用効果

導入前の有給取得率は38%で、法定の年5日取得義務をギリギリで満たしている状態でした。勤怠管理システムの導入後、有給の残日数がアプリ上で可視化されたことで、取得への心理的ハードルが下がり、半年で62%まで改善しています。

この変化が思わぬ効果を生みました。ハローワークに求人を出す際、「有給取得率62%」と記載したところ、応募数が前年比で1.4倍に増加。建設業の平均的な有給取得率が低いなかで、数字で示せる取り組みが求職者に響いたのです。

2024年問題への対応状況

2024年4月以降、建設業にも時間外労働の上限規制(原則月45時間・年360時間)が適用されています。C土木ではシステム導入により、以下の対応が実現しました。

規制内容対応状況
月45時間の上限アラート機能で35時間超の社員を自動通知
年360時間の上限累計残業時間をダッシュボードで常時表示
特別条項の管理繁忙期の上限(月100時間未満、2〜6ヶ月平均80時間以内)を自動チェック
年5日の有給取得義務取得日数が不足している社員に自動リマインド

手作業での管理ではこれらの規制を漏れなく運用するのは困難です。システムに任せることで、管理コストを最小限に抑えながら法令遵守を実現しています。

苦労したポイント

直行直帰の扱い

土木工事では自宅から現場に直行し、現場から直接帰宅する「直行直帰」が頻繁に発生します。この場合の労働時間の起算をどうするかが論点になりました。

最終的に「現場到着時に打刻、現場出発時に打刻」を基本とし、移動時間は労働時間に含めないルールに統一。このルールは労基署への確認もとったうえで運用しています。

悪天候による待機時間

土木工事では雨天で作業が中止になることがあります。中止判断までの待機時間をどう扱うかも議論になりました。

C土木では「現場に到着して待機した時間は労働時間」として打刻し、中止が決まった時点で退勤打刻するルールにしています。この対応は法令上も適切であり、システムの打刻データがそのまま証拠になるメリットがあります。

高齢の職人への対応

62歳のベテラン職人が「スマホの画面が小さくて見えない」と訴えた事例がありました。この社員にはスマホの文字サイズを大きく設定し、打刻ボタンをホーム画面のショートカットとして配置することで対応しています。個別の配慮が必要な社員への丁寧なサポートが、全社での定着を左右する場面でした。

S取締役インタビュー — 現場の変化と経営への影響

導入から8ヶ月が経過した時点で、S取締役にあらためて話を聞きました。

「一番驚いたのは、現場監督が自分から”今月は残業が増えすぎたから段取りを変える”と言い出すようになったことです。システムを入れるまでは、残業時間を意識するのは総務と私だけでした。でも、自分のスマホで自分の残業時間がわかるようになったら、現場監督が自分ごとで考えるようになった」

「月末の給与計算がラクになったことも大きい。以前は毎月末に3日間、事務の○○さんが出勤簿の集計で消耗していた。今は半日で終わるから、その時間を別の業務に使えています。間接的なコスト削減として考えると、月9,600円の投資は計算が合いません。もっと早くやればよかったというのが正直な感想です」

有給取得率の改善については、採用の文脈でも効果が出ているとのことです。「建設業は有給が取りにくいというイメージがあります。だから採用で数字を出せると、求職者の反応が違う。62%という数字が信頼性を持って伝えられるのは、システムが記録してくれているからです」

同規模の建設会社への横展開ポイント

C土木の事例で実証されたアプローチは、従業員10〜50名規模の土木・建設会社にそのまま応用できます。経験から抽出したポイントを共有します。

導入前に「勤務ルールの棚卸し」を必ず行う

クラウド勤怠システムの導入が難航するケースの多くは、「自社の勤務ルールがシステムに設定できない」という問題に起因します。直行直帰の扱い、現場間移動の労働時間算入、天候による待機時間、深夜割増の計算方法など、建設業特有のルールが慣習として残っている会社は多く存在します。

これらを導入前に明文化し、必要であれば社労士に相談して就業規則と整合させることが、後戻りを防ぐ最重要ステップです。この作業を2〜3週間かけてきちんと行ったC土木は、システム設定が実態と乖離するトラブルを回避できています。

GPS打刻の「目的」を全員に説明する

GPS打刻を導入する際、社員に「監視されるのではないか」という不信感が生まれることがあります。C土木では導入前の全体朝礼で「打刻時だけ位置情報を取得すること」「目的は現場ごとの労働時間管理と2024年問題への対応であること」を明確に説明しました。

目的を正直に伝えることが、現場の協力を得る近道です。監視目的ではなく、社員を法令違反から守るための仕組みだという説明が定着に効きました。

打刻定着には「見える化」と「朝礼での確認」が効く

打刻率100%を達成するまでの最大の課題は、打刻忘れをゼロに近づけることです。C土木が効果的だったと語るのは「昨日の打刻忘れリストを朝礼で共有する」というシンプルな運用です。名指しで責めるのではなく、「昨日3名が打刻なしでした。確認できていない方は申告してください」と事実を共有するだけで、自然と打刻意識が高まりました。

2週間以内に忘れ率が3%以下になったのも、この運用の効果です。

残業削減は「見える化」の自然な帰結

「残業を減らす」ために勤怠DXを入れる会社が多いですが、C土木のS取締役の言葉が本質をついています。「ツールが残業を減らすのではありません。残業時間が見えるようになると、人が自然と意識を変える」。

業務プロセスや人員配置に大きな手を加えずとも、データが見えることで行動が変わる。この「見える化の力」は、建設業の2024年問題対応において、最もコストパフォーマンスの高いアプローチの一つです。

建設業の勤怠DXに使える補助金・助成金

勤怠管理システムの導入コストを抑えるために活用できる補助金・助成金を紹介します。

IT導入補助金

中小企業・小規模事業者がITツールを導入する際に活用できる補助金です。クラウド勤怠管理サービスは補助対象のITツールに登録されているケースが多く、補助率は条件によって最大75%まで適用されます。ソフトウェアの月額利用料が対象になるケースもあるため、導入予定のサービスが補助金対象かどうかを事前に確認してください。

業務改善助成金

生産性向上のための設備投資と、それに伴う最低賃金の引き上げをセットで支援する厚生労働省の助成金です。クラウド勤怠システムの導入を「生産性向上のための設備投資」として申請できるケースがあります。勤怠管理の改善による業務効率化と、賃上げの組み合わせで申請を検討する価値があります。

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)

直接的に勤怠システム費用への助成ではありませんが、勤怠管理の整備によって正確な労働時間の把握と社会保険適用拡大が進んだ場合、キャリアアップ助成金との相性が良くなります。勤怠DXを人事制度整備の起点として位置づけると、複合的な助成金活用が視野に入ります。

出典: 中小企業庁 IT導入補助金 / 厚生労働省 業務改善助成金

建設業特有の勤怠管理の難しさ

建設業の勤怠管理が他業種より複雑になりやすい理由として、以下の要因が挙げられます。

現場が毎日変わる

製造業のように毎日同じ場所に出勤するわけではなく、現場ごとに勤務場所が変わります。「どの現場で何時間働いたか」を把握する必要があるため、GPS打刻との組み合わせが特に効果を発揮します。

天候と繁忙期の影響が大きい

雨天による作業中止、季節的な繁忙期(年度末の発注集中)など、予測が難しい要因で残業時間が変動します。月45時間の上限を守るには、週単位で残業の見通しを立てるマネジメントスタイルへの転換が必要です。クラウド勤怠のアラート機能は、この週次管理を支援します。

複数現場を掛け持ちする職人の管理

1日に複数の現場を渡り歩く職人の場合、現場ごとの労働時間の内訳を記録することが難しいです。C土木では「現場移動の際にも打刻を行う」ルールは設けず、始業・終業の打刻のみとしています。現場別の詳細な内訳が必要な場合は、施工管理アプリとの連携が有効です。

技能実習生・外国人労働者の管理

建設業では技能実習生・特定技能外国人の就労も増えています。彼らの労働時間は国内労働者と同様に法令管理が必要であり、加えて在留資格の就労可能時間の確認も必要です。クラウド勤怠で就労時間を可視化することは、こうした観点からも重要です。

この事例のポイント

C土木の事例で注目すべきは、「見える化」だけで行動が変わった点です。残業削減のために業務改善プロジェクトを立ち上げたわけではなく、勤怠データがリアルタイムで見えるようになったこと自体が、社員一人ひとりの時間管理意識を高める結果になりました。

月額9,600円という低コストでこの効果が得られた点も、中小建設会社にとって参考になります。大規模なシステム投資は不要で、クラウドサービスを活用すれば小さな投資から始められます。

同社のケースが示す最も重要なメッセージは「早く始めるほど早く効果が出る」という点です。2024年問題の上限規制は既に適用されており、対応が遅れるほど法令違反リスクと採用競争力の低下が積み重なります。まず無料トライアルで試すことから始めることをお勧めします。

勤怠DXを次のステップへ — C土木の2年目の計画

勤怠管理のクラウド化から1年が経過したC土木は、次の段階として施工管理アプリとのデータ連携を検討しています。

現状の課題は、勤怠データと現場の工程管理が別々のシステムで管理されている点です。「この人が今日の何時間を、どの現場に使ったか」をより細かく把握するためには、施工管理アプリ側の工程データとの連携が必要です。勤怠データと施工進捗を紐づけることで、「工程が遅れている現場ほど残業が多い」という相関を可視化し、人員配置の最適化に活かす構想があります。

S取締役は「勤怠DXは入り口に過ぎない」と話します。「残業が見えるようになったら、次は”なぜ残業が起きているのか”が見たくなる。そのためには施工管理のデータも必要で、ツールを繋いでいくと経営の判断材料が増えていく感覚がある」という言葉は、DXが単なるツール導入でなく経営の変革プロセスであることを示しています。

業界全体の2024年問題の進捗状況

建設業の2024年問題は、2024年4月の上限規制適用から1年が経過した時点で、業界内でどのような変化が起きているか整理します。

国土交通省が実施した「建設業の働き方改革の進捗状況」調査(2025年度版)によると、建設業の年間総労働時間は規制適用前と比べて平均2〜4%の削減が確認されています。ただし、中小建設会社(従業員30名未満)では進捗が遅れており、上限規制への対応が十分でない企業が依然として一定数存在します。

違反した場合の罰則は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金です。経営者個人が刑事罰の対象になる可能性があるため、「なんとなく対応している」という状態では不十分です。C土木のように、アラート機能と可視化の仕組みを整えて「データで証明できる状態」を目指すことが、法令遵守の実効性を高める最も確実なアプローチです。

出典: 国土交通省 建設業における働き方改革

勤怠管理DXの効果を最大化するための周辺整備

クラウド勤怠システムの導入効果を最大化するには、単にアプリを入れるだけでなく、周辺の仕組みを整えることが重要です。

就業規則の現代化

勤怠データを法的証拠として活用するには、就業規則に「電子的方法による出退勤管理を行う」という旨の記載が必要です。C土木が社労士と連携して就業規則を改定したように、システム導入と就業規則の整備はセットで行うべきです。これをしておかないと、「システムの記録と就業規則の定めが異なる」という矛盾が生じ、労使トラブルの際にリスクになります。

現場代理人・職長への権限移譲

勤怠管理のDXが定着した後は、残業管理の権限を現場代理人や職長に移譲する運用も検討に値します。自分のチームの残業アラートが自分のスマホに届き、自分で対処する仕組みにすることで、管理職のマネジメント力が養われます。C土木では導入6ヶ月後から、現場監督が自分のチームのアラートを受け取る設定に変更し、自律的な時間管理が進んでいます。

給与計算フローの見直し

C土木の事務員が経験したように、給与計算ソフトとの連携は勤怠DXの最大の恩恵の一つです。ただし、連携を最大限に活かすには、給与計算ソフト側の設定(時間区分、割増率、控除項目)が勤怠システムの出力と一致している必要があります。導入時に両方のシステムを同時に見直すことで、連携後の修正作業を減らせます。

電子帳簿保存法への対応

2024年1月から本格施行された電子帳簿保存法では、電子的に授受した書類の電子保存が義務化されています。クラウド勤怠で管理された出退勤記録は、一定の要件を満たせばそのまま電子帳簿として保存できます。別途紙の出勤簿に転記・押印するプロセスを廃止することで、さらに事務作業の削減が図れます。

まとめ

勤怠管理のDXは、建設業の2024年問題対応と業務効率化を同時に実現できる施策です。C土木の事例では、月額約1万円の投資で残業時間30%削減、給与計算時間79%短縮、有給取得率24ポイント向上という成果が出ています。

重要なのは、クラウド勤怠システム自体が残業を減らすのではなく、データの「見える化」が人の行動を変えるという点です。月額1万円以下の投資でこれだけの効果が出るのは、見える化という仕組みの力があってこそです。

2024年問題への対応が完了していない会社は、まず無料トライアルで試してみることから始めることをお勧めします。準備に2週間、全社定着に1ヶ月で、C土木と同等の変化を経験できます。

建設業向けの勤怠管理アプリの比較は、建設業向け勤怠管理アプリ比較をご覧ください。

勤怠DXが会社文化を変える

C土木の事例で最も印象的だったのは、ツールが組織文化を変えていったプロセスです。

月末にしか見えなかった残業時間がリアルタイムで見えるようになると、それまで「経営の問題」だった残業管理が「現場の自分たちの問題」に変わりました。現場監督が自分のチームの状況を自分のスマホで確認し、段取りを調整する。この小さな行動変容が、全社的な残業時間削減という大きな数字につながっています。

勤怠管理のDXはシステムの話であると同時に、働き方の文化を変えるきっかけです。「長時間働くことが当たり前」という建設業の旧来の文化を変えるために、データという客観的な事実を使うことが、C土木が示した方法です。有給取得率が38%から62%に改善したことも、単なる数字の変化ではなく、「休んでいい」という心理的な許可が職場に広がった結果といえます。建設業の採用難が続くなか、こうした文化の変化を数字で証明できることは、求人票の一行より強力な採用ブランディングになります。実際にC土木が経験したように、有給取得率62%という数字を開示するだけで応募数が1.4倍になるという効果は、クラウド勤怠という投資の副産物として見逃せません。

導入ロードマップ — 建設業のクラウド勤怠移行チェックリスト

C土木の経験をベースに、紙の出勤簿からクラウド勤怠に移行する際の標準手順を整理しました。

ステップ1 — 現状把握(導入前2〜3週間)

  • 現在の勤怠管理方法(紙・Excel・既存システム)と担当者を確認する
  • 月末の集計にかかっている時間を計測する(S取締役のように「月24時間」という数字を把握する)
  • 自社の勤務形態の種類を洗い出す(直行直帰・現場掛け持ち・深夜工事など)
  • 社労士に相談する必要がある論点(残業計算・移動時間の扱い)を事前に整理する

ステップ2 — ルールの明文化と就業規則整備(導入前2〜3週間)

  • 始業・終業・休憩時間の定義を就業規則に明記する
  • 直行直帰・待機時間の労働時間算入ルールを決める
  • 打刻忘れ時の申告・修正ルールを決める
  • 必要に応じて社労士と連携して就業規則を改定する

ステップ3 — ツール選定(2週間)

  • 建設業向けのGPS打刻対応サービスを2〜3本に絞る
  • 無料トライアルで「打刻のしやすさ」「管理画面のわかりやすさ」を確認する
  • 給与計算ソフトとのCSV連携またはAPI連携ができるかを確認する
  • 月額コスト(1ユーザーあたりの費用×人数)を計算する

ステップ4 — 試験導入と展開(1〜2ヶ月)

  • 事務所スタッフ5〜10名でまず2週間試用する
  • 問題がなければ全現場の職人に展開し、朝礼でQRコードを使ってアプリを配布する
  • 打刻忘れ率を毎週確認し、朝礼でフィードバックする
  • 1ヶ月後に打刻率99%以上を達成できたら、給与計算ソフトとの連携に移行する

参考情報

クラウド勤怠システムの導入について相談したい場合は、各サービスが提供している無料トライアルを活用するのが最も手軽な第一歩です。2週間前後のトライアル期間中に「本当に使えるか」を自社環境で確認してから契約を決めることができます。IT導入補助金を活用する場合は、補助金事務局に登録されたITベンダー経由での申請が必要になるため、早めに対応するベンダーへの相談を始めることをお勧めします。補助金の公募期間は年に複数回設定されており、次の公募タイミングを逃すと数ヶ月待つことになります。2024年問題への対応が急がれる現状では、時間のロスが法令リスクに直結するため、行動を早めることが得策です。まず無料トライアルから始めて、自社の勤怠管理の実態と照らし合わせながら検討を進めてください。

よくある質問

建設業の勤怠管理DXにはどれくらいのコストがかかりますか?
本事例(従業員32名)ではクラウド勤怠管理サービスの月額が約9,600円(1ユーザーあたり300円)です。大規模なシステム投資は不要で、スマホがあればすぐに始められます。
紙の出勤簿からクラウド勤怠に切り替えるのにどれくらいかかりますか?
準備期間(就業規則の整理)に約2週間、事務所での試行に2週間、全現場展開に2週間、計約1.5ヶ月が目安です。打刻忘れは2週間ほどでほぼゼロになります。
GPS打刻で社員のプライバシーは問題になりませんか?
打刻時のみ位置情報を取得する設定にすれば、常時監視にはなりません。導入前に社員に目的(現場ごとの労働時間管理)を説明し、同意を得ることが重要です。
2024年問題にクラウド勤怠で対応できますか?
月45時間・年360時間の上限管理、特別条項の管理、有給取得義務の管理をシステムが自動チェックしてくれるため、手作業での管理よりも確実に法令遵守できます。
勤怠管理DXでなぜ残業が減るのですか?
勤怠データがリアルタイムで見えるようになることで、社員自身が労働時間を意識するようになります。本事例ではツール導入だけで月平均42時間→29時間に削減されました。見える化が行動変容を促した典型例です。

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