この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「3年間、20代が一人も来なかった」

東京都郊外でクロス貼り・床張りを中心とした内装工事を手がけるC内装(仮称、従業員22名)の社長・Cさんが採用危機を感じ始めたのは、3年前のことです。

「ハローワークに求人を出しても、来るのは40代・50代の転職者ばかり。若い子が欲しいのに、全くコンタクトがない状態が3年続きました」

内装工事の技術は、若い時期から積み上げることで熟練度が高まります。30代半ばで職人としてのピークを迎える人が多いなかで、20代の採用が止まると10年後の技術継承が危うくなります。Cさんが最も恐れていたのは、5年後に「仕事はあるが職人がいない」という状況に陥ることでした。

採用が止まっていた本当の理由

Cさんが採用コンサルタントに相談したとき、最初に言われたのは「求人を見ていない人たちに求人を出し続けても意味がない」でした。

C内装が採用に使っていたのは2つのチャネルです。ハローワークへの常時掲載と、地域の折り込み求人誌への月1回の掲載でした。

ハローワーク依存の構造的な問題

ハローワークの建設・内装工事の求人に応募する人の多くは「転職活動中の社会人」か「Uターン就職の候補者」です。20代の若者が「内装工事の仕事をやってみたい」と感じた場合、ハローワークに行くよりもスマホでGoogle検索やIndeedを見る確率のほうがはるかに高いといえます。

折り込み求人誌も同様です。紙の折り込み広告を手に取り、求人情報を探す行動をとる20代は2024年時点でほとんどいません。

C内装の採用が止まっていた根本原因は、20代が求人を見る場所に情報を置いていなかったことでした。

求人原稿にも問題があった

チャネルの問題だけではありませんでした。Cさんが当時使っていた求人原稿を振り返ると、次のような内容でした。

  • 職種: 内装工事作業員
  • 給与: 月給22万円〜
  • 勤務地: ○○区内および近郊
  • 仕事内容: クロス・床張り等の内装工事全般
  • 応募条件: 要普通免許(未経験可)

この原稿には、20代の求職者が「応募したい」と感じるための情報が不足していました。年収の上限が見えない、手取りがいくらかわからない、先輩がどんな働き方をしているかのイメージができない——見る人の立場に立った情報が提供されていませんでした。

6ヶ月の採用改革 — 3つのステップ

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Cさんが取り組んだ採用改革は、3つのステップで構成されています。準備から成果確認までの6ヶ月間の流れを追います。

ステップ1 — 求人媒体の見直し(1ヶ月目)

最初に着手したのは、求人を掲載するチャネルの変更です。ハローワーク掲載は継続しながら(無料なので維持)、Indeedへの有料掲載を追加しました。

Indeedを選んだ理由は3点です。求職者が多く、特に20〜30代のスマホユーザーが多くあります。掲載費用がクリック課金制のため、無効なアクセスに費用がかかりません。求人原稿の修正や追記をリアルタイムで行えるため、反応を見ながら改善できる。

C内装が設定した月間予算はIndeedへの掲載費として2万円(クリック課金上限)。従来の地域折り込み求人誌の月4万円を廃止し、差額分をIndeedに振り向けました。媒体費の総額は下がりながら、リーチする人材の属性が変わりました。

ステップ2 — SNS発信の開始(2〜3ヶ月目)

採用コンサルタントから「現場のリアルを見せること」を勧められ、Instagramアカウントを開設しました。

アカウント名は「C内装の現場日記」(仮称)。投稿内容は以下の3パターンを週3〜4本のペースで続けました。

  • 施工中の現場写真(クロス貼り・床張りの工程)
  • 完成した現場のbefore→after
  • 社員が昼休みに食べているランチ・社内の雰囲気

Instagramを担当したのは、C内装で最年少の25歳の職人・Dさんです。Cさんが「スマホで毎日現場の写真を撮ってアップしてほしい」と頼んだところ、快諾してくれました。Dさん自身のフォロワーからシェアされることもあり、投稿開始から1ヶ月半でフォロワーが200人を超えました。

「内装工事ってこんな仕事なんだ、思ってたよりきれいな仕事だな」という感想のコメントが届き始めたのもこの頃です。

ステップ3 — 求人原稿の書き直し(3〜4ヶ月目)

Indeedへの掲載原稿を3ヶ月目に全面的に書き直しました。変更した内容は主に5点です。

変更1 — 給与の上限・年収を明示

「月給22万円〜」から「月給22万円〜36万円(経験・技術による)、年収例: 1年目350万円、3年目480万円、5年目580万円」に変更。数字で将来の収入イメージを示しました。

変更2 — 手取りに関する補足を追加

「社会保険完備・各種手当あり」という抽象的な表現を、「通勤手当全額支給、資格取得支援手当あり(技能検定合格時5万円)、皆勤手当1万円/月」という具体的な内容に変えました。

変更3 — 1日のスケジュールを掲載

職人の1日の流れを時系列で記載しました。「7:30集合→現場移動→作業→12:00昼休み→16:30作業終了→事務所戻り→17:00終業(残業はほぼなし)」という形で、生活リズムのイメージを提供しています。

変更4 — 先輩のインタビューコメントを追加

在籍するDさん(25歳)のコメントとして「未経験から入社2年でクロス貼りの技術を習得できた。最初は不安だったけど、先輩が丁寧に教えてくれる」という内容を掲載。20代の求職者に「自分でもできそう」というイメージを与えることを意識しました。

変更5 — InstagramのURLを求人原稿に掲載

求人原稿の末尾に「会社の雰囲気はInstagramで確認できます」と記載してアカウントURLを添付。実際に応募者の半数以上がInstagramを確認してから応募していることが後の面接で判明しています。

導入後の効果 — Before / After

6ヶ月の取り組み結果を計測しました。

指標改革前6ヶ月後変化
月間応募数1〜2件6〜8件3〜4倍
20代の応募割合ほぼ0%約40%大幅改善
20代採用数(初年度)0名(3年連続)2名3年ぶり達成
採用単価(1名あたり)約55万円約18万円67%削減
入社1年後の定着率100%(2名とも在籍)
求人媒体費(月額)40,000円20,000円50%削減

採用単価が55万円から18万円に削減できた理由は、折り込み求人誌(月4万円×採用まで平均14ヶ月=56万円)からIndeed(採用まで平均4ヶ月×月2万円=8万円+採用コンサル費用10万円)に切り替えたことによります。採用にかかる期間が大幅に短縮されたことで、媒体費の総額が劇的に下がりました。

定着率100%を支えた採用プロセスの工夫

応募数を増やすことと、入社後に定着することは別の問題です。C内装が定着率に自信を持てた理由は、採用プロセスの設計にあります。

Cさんが見直した採用プロセスは3段階です。

1段階目は、書類選考後の電話面談(20〜30分)です。書類を通過した応募者と電話で話し、仕事への動機・現在の状況・条件面の確認を行います。この段階で「内装工事が体力的にしんどいことは大丈夫か」「土曜日出勤が月2〜3回あることは問題ないか」という正直な条件確認を行っています。

2段階目は、現場見学(半日)です。採用を決める前に、実際の作業現場に1日同行してもらいます。「体験」ではなく「見学」として、プレッシャーをかけずに現場の雰囲気を感じてもらうことを目的にしています。「入社してみたら思ってたのと違う」というミスマッチを事前に防ぐためです。

3段階目は、社長面接(1時間程度)です。この段階で残った候補者に対して、Cさん本人が将来のビジョンや会社の方向性を話します。「うちは独立志向の職人を応援している。将来独立したい人には仕事を回す」というCさんの方針を伝えることで、キャリアビジョンが合う人材かどうかを確認しています。

入社した2名は、どちらも現場見学の段階で「この会社で働きたい」と確信して面接に臨んでいたといいます。

採用改革で苦労したポイント

Cさんが振り返るうえで正直に語ってくれた苦労点があります。

最初の壁は、InstagramをCさん自身が続けられなかったことです。最初の2週間はCさん本人が投稿を試みましたが、スマホ操作に不慣れで写真加工に時間がかかり、2週間で止まってしまいました。担当をDさん(25歳の職人)に切り替えたことが転換点で、「発信する人が自分に合った媒体を担当する」という当たり前の原則を再確認しています。

2つ目の壁は、応募が増えた後の選考対応の工数です。月6〜8件の応募は、以前の1〜2件と比べると処理量が大きく増えます。電話面談・現場見学の調整・書類確認をCさん一人でやっていた時期は、現場業務と重なって対応が遅れるケースがありました。4ヶ月目からは事務員1名に一次応募受付と日程調整を任せる体制に変えています。

3つ目は、求人原稿の改訂を継続することの手間です。Indeedはリアルタイムで修正できるメリットがある反面、「何が効いているか」を追跡するには定期的な分析が必要です。Cさんは月1回、Indeedの管理画面でクリック数・応募率を確認し、表現を微修正する作業を習慣化しています。

建設業の採用難の現状と統計データ

C内装の課題は、業界全体の課題でもあります。

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、建設業に従事する労働者の平均年齢は全産業平均より約3歳高く、特に型枠工・鉄筋工・内装工等の技能工は高齢化が顕著です。建設業就業者のうち55歳以上が占める割合は約36%で、全産業平均の約31%を上回っています。

一方、29歳以下の若年就業者の割合は建設業全体で約11%にとどまり、全産業平均(約16%)を下回っています。この数字は「若者が来ない」という中小建設会社経営者の実感と一致しています。

出典: 厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」

採用チャネルについても、求職者の行動変化が顕著です。求人情報媒体協議会の調査では、2023年度の求職者の情報収集手段として「Indeed等のインターネット求人サービス」が75%(複数回答)で最多となり、「ハローワーク」(45%)を大きく上回っています。20代では「インターネット求人サービス」が88%に達し、ハローワークは27%まで下がります。

出典: 全国求人情報協会「2023年求職者の求人情報利用に関する調査」

建設業の採用で効果的なSNS活用の実態

Instagram活用の効果はC内装だけの話ではありません。建設業でのSNS採用活用が広がる背景には、20代求職者の行動変容があります。

「会社の雰囲気を事前に知りたい」というニーズは、求人票の文字情報だけでは満たせません。現場の写真や動画は、「この仕事をする自分」をイメージさせる最も直接的なコンテンツです。内装工事は完成した仕事が目に見えやすく(before→after)、視覚的なコンテンツとの相性が良い職種といえます。

建設業のSNS採用で実績を上げている会社に共通する特徴として、以下の3点が挙げられます。

  • 社長や経営層ではなく、20代・30代の現場社員が発信している
  • 完成写真だけでなく「仕事の過程」を見せている(職人の技術・段取りが伝わる)
  • ランチや社内イベントなど「人間らしい場面」も混ぜて発信している

C内装のアカウントが6ヶ月でフォロワー500人を超えられた理由も、この3点を自然に実践していた点にあります。

採用単価67%削減の内訳

採用単価が55万円から18万円に削減されたプロセスを詳しく分解します。

改革前の採用コスト(1名採用あたり)

費用項目金額
地域折り込み求人誌(月4万円×14ヶ月)560,000円
ハローワーク書類作成・対応工数約20時間相当
採用決定まで期間平均14ヶ月
採用単価(媒体費のみ)約550,000円

改革後の採用コスト(1名採用あたり)

費用項目金額
Indeed掲載費(月2万円×4ヶ月)80,000円
採用コンサル費用(スポット)100,000円
Instagram運用工数(Dさんの時間)月約5時間
採用決定まで期間平均4ヶ月
採用単価(媒体費+コンサル費)約180,000円

採用にかかる期間が14ヶ月から4ヶ月に短縮されたことが最大のコスト削減要因です。媒体費そのものの削減(月4万円→2万円)も貢献していますが、それ以上に「採用が決まるまでの時間」が短くなったことが採用コスト全体の構造を変えています。

採用改革と同時に取り組むべき「離職防止」の施策

応募数を増やすことができても、入社後に早期離職が続くと意味がありません。Cさんが採用改革と同時に取り組んだ離職防止策を紹介します。

1年後定着率100%の背景には、採用プロセスの設計だけでなく、入社後のフォローアップがあります。具体的に行ったことは2点です。

1点目は、入社後3ヶ月間の「担当先輩制度」の導入です。新入社員1名につき、年齢が近い先輩1名を担当者として割り当て、毎週30分の1on1ミーティングを実施しました。困りごとや不安を話せる場を作ることで、入社初期の孤立感を防いでいます。

2点目は、技術習得の「見える化」です。内装工事の技術習得ロードマップを文書化し、入社時に「3ヶ月でここまで、1年でここまで」という到達目標を明示しました。「自分が成長できているか」が見えることで、継続のモチベーションを維持しやすくなっています。

「採用は入社して終わりじゃありません。入社後のケアをしなかったら、採用コストがまた発生するだけ」というCさんの言葉は、採用改革の本質を示しています。

同規模の内装工事会社が参考にすべきポイント

C内装の事例から、同様の課題を持つ内装工事会社が参考にできることを整理します。

ハローワーク+折り込み求人誌だけでは20代の採用は困難です。求職者が実際に情報を探す場所(Indeed、SNS)に存在することが採用の出発点です。

求人原稿の「年収の透明性」は、20代には特に重要です。「月給22万円〜」という表記は、求職者が「手取りどのくらいだろう」「将来の収入はどうなるんだろう」という疑問を解消できません。年収例と手当の具体的な内容を示すことで、応募のハードルが下がります。

Instagramは「会社の雰囲気を伝える採用広報」として機能します。専門的な制作費をかけなくても、20代の社員がスマホで撮影した現場写真で十分です。継続して投稿することの難しさが最大の課題ですが、担当者を1名決めて運用を任せることで解決できます。

現場見学を選考プロセスに組み込むことは、採用後の早期離職防止に効果的です。「思ってたのと違う」という入社後のギャップが離職の最大の原因であり、事前に現場を見てもらうことで双方のミスマッチを防げます。

まとめ

C内装の事例は、ハローワーク依存の採用から脱却し、6ヶ月で月間応募数を3〜4倍に増やした記録です。20代採用3年ぶりの達成、採用単価67%削減、入社1年後定着率100%という数字が出ています。

改革の骨格はシンプルです。「20代が求人を見る場所に情報を置く(Indeed)」「仕事の現実を映像で伝える(Instagram)」「応募したくなる原稿を書く(透明性の高い給与・1日の流れ・先輩の声)」——この3点です。

建設業の採用難は構造的な問題ですが、発信の仕方を変えることで改善できる余地は残っています。採用チャネルを見直すことから始めてみてください。

採用媒体の詳しい比較と求人原稿の書き方は建設業の求人・採用媒体活用ガイド建設業の人手不足対策で詳しく解説しています。

参考情報

よくある質問

ハローワークだけで建設業の採用を続けていても若手は来ませんか?
20代の求職者がハローワークを利用する割合は27%程度(求人情報媒体協議会調査)で、インターネット求人サービスの88%と比べて大きく低いです。20代の採用には、Indeedなどのインターネット求人サービスへの掲載が不可欠です。
建設業の採用でInstagramは本当に効果がありますか?
本事例では採用に応募した人の半数以上がInstagramを確認してから応募していました。現場写真やbefore→afterの施工写真は仕事のイメージを伝えるのに効果的です。継続投稿が課題ですが、20代の社員に任せることで解決できます。
建設業の採用改善に費用はどれくらいかかりますか?
本事例では月2万円のIndeed掲載費と採用コンサル費10万円(スポット)が主な費用でした。従来の折り込み求人誌(月4万円)よりも媒体費が安く、採用決定まで期間が14ヶ月から4ヶ月に短縮されたため、採用単価が55万円から18万円に削減されています。
採用した若手社員に早期離職されないためにはどうすればいいですか?
本事例では入社後3ヶ月間の担当先輩制度(週1回の1on1)と技術習得ロードマップの提示を実施し、入社1年後の定着率100%を達成しました。採用前の現場見学でミスマッチを防ぎ、入社後のフォローアップで孤立感を防ぐことが鍵です。
求人原稿で特に効果があった変更はどこですか?
年収例の明示(1年目350万円、3年目480万円)と1日のスケジュール掲載(7:30集合〜17:00終業)が特に効果的でした。20代求職者は将来の収入イメージと働き方のリズムを重視するため、抽象的な表現を具体的な数字と情報に変えることが応募率改善につながります。
建設業の若手採用を改善するための最初の一歩は何ですか?
現在の求人原稿を「20代が見たときにどう感じるか」の視点で見直すことです。年収の上限と年収例を明示し、1日のスケジュールを記載し、Indeedに掲載する——この3点から始めるのが最も効果が出やすいステップです。

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