この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。建設業の労務管理・DX導入支援に幅広く対応。

「建設業でテレワーク?現場に出ないと話にならないのでは?」という反応は今もよく聞く。確かに型枠大工や管工事職人が自宅から現場作業することはできません。しかし建設会社の業務の全てが現場作業で完結しているわけでもありません。

国土交通省の調査(2024年度版)によると、建設業でテレワークを「一部でも導入している」と回答した企業は全体の約38%にとどまっており、製造業(57%)や情報通信業(83%)と比べて普及が遅れている。しかし2024年4月に施工された時間外労働の上限規制(建設業の2024年問題)を背景に、デスクワークのリモート化に着手する建設会社は急速に増えている。

この記事では、テレワーク導入に成功した建設会社3社の事例を業種別(土木・建築・設備)に紹介します。「導入前に何に困っていたか」「何を変えてどう改善したか」を定量データとともに示す。

出典: 国土交通省「建設業における働き方改革加速化プログラム」 — 2024年度(2026-04-27確認)

建設業のテレワーク、何ができて何ができないか

事例を見る前に、建設業でテレワーク化できる業務とできない業務を整理しておく。

テレワーク化できる業務(デスクワーク系)

  • 見積書・積算・工事台帳の作成
  • 工程表の作成・更新
  • 安全書類・施工体制台帳の作成
  • 図面の確認・修正・送付
  • 発注書・請求書の作成・確認
  • 採用関連業務(書類選考・オンライン面接)
  • 経理・勤怠データの集計
  • 社内外のメール・チャット対応
  • Web会議による打ち合わせ・工程会議

テレワーク化できない業務(現場系)

  • 実際の施工作業
  • 現場での安全パトロール・立会検査
  • 材料の搬入・荷受け確認
  • 現地調査・測量
  • 発注者・元請けとの現場確認

現場作業自体はリモート化できないが、「現場から帰った後に事務所でしかできなかった業務」を自宅でもできる環境を作ることが、建設業テレワークの本質です。ANDPAD・KANNA等の施工管理アプリや、クラウド会計・電子契約ツールを組み合わせることで、現場系業務を除いたデスクワーク全般のリモート化が現実的になっている。

事例1: 従業員45名の土木工事会社 — 残業60時間削減と採用改善

会社概要

項目内容
業種土木工事(道路・河川・造成)
従業員数45名(現場職人30名、管理・事務15名)
本社所在地福島県(東北ブロック)
年商約15億円
テレワーク開始時期2023年4月

導入前の課題

福島県で道路・河川・造成工事を手がけるA土木(仮称)では、2024年問題への対応が最大の経営課題だった。同社の月平均残業時間は管理・事務職員で42時間、現場監督で68時間に達していた。「このままでは2024年4月の上限規制(月45時間・年360時間)を守れない」という焦りが導入を後押しした。

また、若手人材の採用にも苦戦していた。ハローワークに掲載した求人への応募者は年間2〜3名と少なく、面接設定まで進むのは毎年1〜2名という状況だった。「残業が多いから若い人が来ない」という悪循環に陥っていた。

直接的なきっかけは、ある優秀な技術者の退職申し出だった。「毎日9時、10時まで事務所で報告書を書いていては体が持たない」という理由で、30代の現場監督が退職を申し出た。引き止めに「在宅で作業できる環境を作る」と約束したことが、テレワーク導入への本格的な着手になった。

導入したツールと費用

ツール用途月額費用(目安)
Microsoft 365 Businessメール・Teams・SharePoint約40,000円(15名分)
施工管理アプリ(KANNA)工程管理・写真共有・日報要問合せ
電子契約サービス(クラウドサイン)契約書・発注書の電子化約10,000円
VPNルーター社内システムへのセキュアアクセス初期費用のみ
クラウドストレージ(SharePoint)図面・書類の共有Microsoft 365に含む

月額合計コストは管理・事務部門(15名)で約5〜8万円。IT導入補助金を活用し、初年度の導入費用約150万円(施工管理アプリの初期設定費・ハード整備含む)のうち約75万円を補助金でカバーした。

導入の3ステップ

ステップ1(1〜2ヶ月目): 書類の電子化とクラウド移行

まず手をつけたのは「押印が必要な書類」の洗い出しだった。社内の書類フローを棚卸しすると、元請け・下請けへの発注書、工事完了届、社内の稟議書に自社の印鑑が必要なものが50種類以上あることが判明した。このうち自社の裁量で電子化できるものを選別し、電子契約サービスを使った電子化に切り替えた。

ステップ2(3〜4ヶ月目): 図面・日報のクラウド共有化

施工管理アプリを現場監督(10名)と現場職人リーダー(5名)に配布し、日報・写真・工程表のクラウド共有を開始した。最初の1ヶ月は「慣れるまでは紙でも残す」という並行運用を設けたが、2ヶ月目からは紙の日報を廃止した。

ステップ3(5〜6ヶ月目): 在宅ワーク試行と定着

管理・事務職員(15名)を対象に、週2日の在宅勤務を試行した。現場監督は「現場がない日」「書類作業が多い日」に限定してリモートワークを認める運用にした。試行期間中に「家だとWi-Fiが遅くて図面が開かない」という問題が出たため、自宅環境の支援手当(月3,000円)を新設した。

導入後のBefore/After(12ヶ月後の実績)

指標導入前導入後(12ヶ月)変化
管理・事務職員の月平均残業時間42時間21時間50%削減
現場監督の月平均残業時間68時間41時間40%削減
年間採用応募者数2〜3名8名3倍増
採用決定数(年間)1名3名3倍増
交通費・残業代の年間コスト基準値約12%削減
現場監督の離職者数(年間)2名0名ゼロに

残業時間は管理部門で半減し、現場監督でも4割削減した。採用面では、求人票に「在宅勤務制度あり・週2日」と明記したことで応募者が3倍以上に増え、30代前半の現場監督を2名採用できた。

「テレワークを始める前は『建設業では無理』と思っていたが、デスクワークの部分をリモートにするだけで、現場監督の余裕が全然違う。書類仕事は夜やらなくて済むようになった」(同社現場監督・30代男性)

2024年問題対策としての効果

残業時間を月68時間から41時間に削減したことで、2024年4月施行の上限規制(月45時間)への対応が可能になった。単月で45時間を超えることはあるが、年平均では規制の範囲内に収まっている。テレワークは「残業削減の手段」として土木工事系の建設会社でも有効に機能している。

事例2: 従業員28名の住宅建築会社 — 見積もり業務の効率化と女性採用の成功

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会社概要

項目内容
業種住宅建築・リフォーム
従業員数28名(現場職人18名、設計・営業・事務10名)
本社所在地愛知県
年商約8億円
テレワーク開始時期2022年9月

導入前の課題

愛知県で住宅建築・リフォームを手がけるB建設(仮称)では、設計担当者の生産性が経営上の最大の悩みだった。設計者(3名)は毎日事務所に出勤して間取り図・見積書・施主向けプレゼン資料を作成していたが、子育て中の女性設計者2名から「時短勤務やリモートワークができないなら辞めざるを得ない」という相談が続いた。

優秀な設計者の離職は、受注能力の低下に直結する。1名の設計者が担当できる案件数は月3〜4件で、設計者が2名辞めると年間受注能力が最大8件失われる計算になる。1件あたりの住宅建築の受注金額が約2,500万円とすると、年間2億円の売上に関わる問題だった。

また、施主との打ち合わせが全て対面で行われており、遠方の顧客への対応に移動時間がかかっていた。片道1時間の移動が週3〜4回発生するケースもあり、設計者の実質的な作業時間を圧迫していた。

導入したツールと費用

ツール用途月額費用(目安)
Google Workspace Business StarterGmail・Drive・Meet・Docs約20,000円(10名分)
CADツール(クラウドベース)図面の共同編集・共有要問合せ(クラウド版)
Zoom Rooms施主・取引先とのWeb打ち合わせ約25,000円/月
積算見積ソフト(クラウド版)見積書作成・共有月額25,000円〜
Slack社内チャット・ファイル共有約25,000円(10名分)

設計・営業・事務部門10名を対象に、月額合計8〜12万円のクラウドツール費用が発生している。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用し、初年度導入費用(クラウドCAD移行・操作研修含む)の約半額を補助金でカバーした。

導入のプロセスと工夫

最初にぶつかった壁は「設計データのセキュリティ」だった。施主の個人情報や間取り図が社外に持ち出されることへの不安が、テレワーク導入の最大の抵抗になった。

この問題は「Google Driveを会社管理アカウントに限定し、個人アカウントへの共有を禁止するポリシーを設定する」「社用PCにのみデータをダウンロード可能にするMDM(モバイルデバイス管理)を導入する」という2つの対策で解決した。セキュリティポリシーの整備に2週間かけ、全従業員への説明会を実施した後、在宅勤務の試行に進んです。

施主との打ち合わせをWeb会議に切り替えることへの抵抗もあった。「お客様に失礼では」という意見が営業部門から出たが、試行的にWeb打ち合わせを提案してみると施主の約7割が「便利」「移動が不要でよい」と好評だった。現在では初回打ち合わせはWeb、最終確認は対面という使い分けが定着している。

導入後のBefore/After(18ヶ月後の実績)

指標導入前導入後(18ヶ月)変化
設計者1名あたりの月間担当件数3.2件4.5件41%増加
設計者の月平均残業時間38時間18時間53%削減
施主との打ち合わせ移動時間(月計)設計者1名あたり月24時間月6時間75%削減
女性社員の在籍数3名7名4名増加
採用した設計者・CADオペ0名/年2名/年
顧客満足度(打ち合わせ体験)Web打ち合わせ満足率86%

設計者の担当件数が4割増えたことで、年間受注キャパが1.4倍に拡大した。「テレワーク・フレックス勤務あり」という求人条件が功を奏し、子育て中の女性設計者2名・CADオペレーター1名を新規採用できた。

「図面をクラウドで管理するようになってから、修正のたびにファイルを添付してメールで送るという無駄な作業がなくなった。今どのバージョンが最新かで悩むこともなくなったのが一番の変化」(同社設計担当・30代女性)

住宅建築・リフォームでのテレワーク活用ポイント

住宅建築・リフォームは施主との打ち合わせが多く、設計業務のクラウド化とWeb会議の組み合わせが効果的です。現場職人はリモートワークの対象外だが、設計・営業・事務部門(全従業員の35〜40%程度)の生産性向上で、会社全体の受注能力に直接影響する。

事例3: 従業員62名の機械設備工事会社 — 書類作成の集中化と県外拠点との情報共有改善

会社概要

項目内容
業種機械設備工事(空調・衛生設備)
従業員数62名(現場職人40名、技術・管理・事務22名)
本社所在地大阪府(2拠点:大阪・兵庫)
年商約22億円
テレワーク開始時期2023年1月

導入前の課題

空調・衛生設備工事を手がけるC設備工業(仮称)では、大阪本社と兵庫営業所(15名在籍)の情報共有が最大の課題だった。2拠点間で図面・施工記録・見積書を共有するたびにメール添付でのやり取りが発生し、最新版のファイルがどこにあるかが常に不明瞭な状態だった。

また、設備工事特有の「施工記録書類の多さ」が現場監督の残業時間を押し上げていた。空調設備工事では試運転記録・機器台帳・保証書管理など、竣工前後に作成する書類が他業種より多い。現場監督が工事完了後に事務所で深夜まで書類作成をするケースが常態化しており、月残業時間が65〜80時間に達していた。

設備工事は公共施設・病院・学校など建築竣工前に入る工事が多く、現場の繁閑差が大きい。繁忙期(3月・9月)の集中した書類作業を分散させる仕組みが求められていた。

導入したツールと費用

ツール用途月額費用(目安)
Microsoft 365 Business PremiumTeams・SharePoint・OneDrive・Intune約140,000円(22名分)
ANDPAD施工管理・写真管理・日報要問合せ
電子署名サービス(DocuSign)発注書・工事完了届の電子化約30,000円
VPN + MDMセキュリティ対策初期費用中心
チームビューア社内システムへのリモートアクセス約20,000円

技術・管理・事務部門22名を対象に、月額15〜20万円程度のランニングコストが発生している。導入時にはデジタル化・AI導入補助金を申請し、Microsoft 365の初年度費用(22名分)の補助を受けた。

導入の最大の障壁 — 「情報漏洩が怖い」

最も時間をかけた課題はセキュリティ対策だった。設備工事では病院・学校・官公庁からの受注が多く、施設の図面・機器仕様書には機密性が高いものが含まれる。「クラウドに上げて情報が漏れたら」という懸念は根強く、経営者・現場監督・事務担当の全員から同じ質問が繰り返された。

対策として実施したのは、Microsoft Intuneによるデバイス管理(社用PCのみデータアクセスを許可)、SharePoint上のフォルダに工事別アクセス権を設定(担当者以外は閲覧不可)、データの外部持ち出し禁止ポリシーの全社周知の3点です。IT支援会社に設定を委託し、約2ヶ月かけてセキュリティポリシーを整備した。

この準備期間を経て、全従業員への説明会を開いた上でテレワーク試行を開始した。

導入後のBefore/After(12ヶ月後の実績)

指標導入前導入後(12ヶ月)変化
現場監督の月平均残業時間72時間43時間40%削減
2拠点間のファイル共有リードタイム平均2.3時間(メール往復)即時99%削減
月次書類完成までの日数完工後平均14日完工後平均5日64%短縮
現場監督の年間離職者数4名1名75%減少
採用応募者数(技術職)年間5名年間12名2.4倍
書類作成コスト(残業代換算)基準値約25%削減

2拠点間の情報共有はSharePointとTeamsの導入によってほぼ解消された。「この図面の最新版はどこにあるか」という確認作業がなくなり、現場監督の心理的な負担も軽減されたという声があります。

月次書類の完成が14日から5日に短縮されたことで、発注者への引き渡し後の書類提出が早まり、顧客評価が向上した。複数の元請けから「書類のレスポンスが早くなった」という評価を受け、2024年度の受注単価が前年比で平均8%向上したという。

「以前は竣工の翌週まで残業して書類を書いていた。今は現場にいる間にタブレットから入力できるから、事務所に戻ったらほぼ書類仕事がありません。家に早く帰れるようになった」(同社現場監督・40代男性)

設備工事でのテレワーク活用ポイント

設備工事は書類種別が多く、現場での入力・クラウド管理の恩恵が大きい工種です。施工管理アプリと電子契約ツールの組み合わせで、現場での書類作業を完結させることが可能になる。ANDPAD等の施工管理アプリがタブレット対応している点を活かして、竣工書類を現場でリアルタイム作成する運用が、設備工事での残業削減に最も効果的です。

3社の事例から見えた共通パターン

3社の事例を振り返ると、成功した建設会社に共通するパターンが見えてくる。

パターン1: 「できる業務」から着手してスモールスタート

3社とも最初から全員・全業務のリモート化を試みていありません。「まず書類の電子化から」「設計者の在宅勤務だけ試行する」「管理部門に限定して始める」という段階的なアプローチが共通している。いきなり大規模に変えようとすると、現場の混乱と経営者の不安が重なって失敗しやすい。

パターン2: セキュリティポリシーを先に整備する

3社いずれも、実際のリモートワーク開始前にセキュリティポリシーの整備を行っている。「後でセキュリティを考えればいい」という進め方は、トラブル発生後の対応コストが大きくなる。特に施主の個人情報・施設の機密図面を扱う建設会社では、セキュリティ整備への投資は必須です。

パターン3: 採用戦略とセットで進める

3社全て、テレワーク導入後に採用応募者数が増加している(3倍・増加・2.4倍)。テレワーク・フレックス勤務の実施は求人票への明記によって採用競争力に直結する。「テレワーク導入 → 求人票に明記 → 応募者増加 → 採用改善」という連鎖を意識して進めることで、投資対効果が高まる。

パターン4: 現場職人へのメリットも波及させる

現場職人はリモートワークの直接対象にはならないが、現場監督の業務効率化による間接的なメリットが波及している。「現場監督に余裕が生まれ、現場への指示が丁寧になった」「残業が減って現場全体の雰囲気が良くなった」という声が3社に共通して聞かれた。

建設業テレワークの費用対効果 — 導入コスト vs 削減効果の試算

3社の事例を踏まえ、標準的な中小建設会社(従業員30名、管理・事務10名)でのテレワーク導入費用対効果を試算する。

初期導入コスト(概算)

費用項目費用目安
クラウドツール初年度費用(10名分)50〜100万円
施工管理アプリ導入費用20〜50万円
セキュリティ整備(MDM・VPN等)20〜40万円
社員研修・オペレーション整備10〜20万円
合計100〜210万円

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用した場合、ソフトウェア費用の1/2〜4/5が補助される。100〜210万円の初期費用のうち、補助金適用部分の自己負担を50〜100万円程度に抑えられるケースが多い。

年間削減効果(概算)

削減項目削減額目安
残業代削減(管理・事務10名、月10時間削減)年間約180万円(時給3,000円換算)
採用コスト削減(離職者減少)年間50〜150万円(1名離職・採用コスト100万円換算)
交通費・出張費削減年間20〜50万円
印刷・郵送コスト削減年間10〜30万円
年間削減効果合計260〜410万円

初期コスト100〜210万円に対して年間削減効果260〜410万円が見込める場合、投資回収期間は6ヶ月〜1年程度になる計算です。採用競争力の向上による売上増加効果を加えると、さらに高い費用対効果になる。

補助金活用で初期投資を最小化する

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、クラウドツール・施工管理アプリ・電子契約ツールなど、テレワーク導入に使うツールの多くが対象になっている。2026年度の公募スケジュールと申請要件は公式サイトで確認してほしい(※最新の登録状況は公式サイトでご確認ください)。補助金の詳細は「建設業のIT導入補助金活用ガイド」を参照してほしい。

テレワーク導入で失敗する3つのパターン

成功事例を紹介してきたが、テレワーク導入で失敗するパターンも把握しておきたい。

失敗パターン1: ツールだけ入れて運用ルールを決めない

TeamsやSlackを導入したが、「どのツールで何を連絡するか」「いつまでに返信するか」を決めないまま使い始めるケースです。チャット・メール・電話が混在して情報が散在し、「どこを見ればいいかわからない」という混乱が生じる。

ツール導入前に「コミュニケーション設計」を行い、用途別に使うツールを決めることが先決です。

失敗パターン2: 現場監督を在宅勤務の対象外にして不満が生じる

「現場があるから現場監督は在宅不可」とする運用では、事務・管理部門だけが恩恵を受け、現場監督から「自分たちはいつも損だ」という不満が生じるケースがあります。

現場監督にも「現場がない日は在宅可」「月2〜3日の在宅日を設ける」という制度設計をするだけで、制度への納得感が大きく変わる。書類作業が多い業種(設備・電気工事)では、現場日以外の在宅率が高くなりやすく、現場監督にとってのメリットも大きい。

失敗パターン3: 経営者だけが推進して現場の当事者意識がない

経営者がトップダウンでテレワーク導入を決め、現場担当者が「やらされ感」で進める場合、定着率が低くなる。

成功企業では、テレワーク推進のリーダーを現場監督や事務担当の中から選び、「自分たちがどう使えるか」を当事者として考えてもらう仕組みを取り入れていた。「導入する側」ではなく「使う側」が設計に参加することで、現場に合ったルールができる。

建設業テレワーク導入の始め方 — 6つのステップ

3社の事例と成功パターンを踏まえ、中小建設会社がテレワークを導入する際の標準的なステップを整理します。

ステップ内容目安期間
1. 業務の棚卸しデスクワークと現場作業を分類し、リモート化できる業務を特定する1〜2週間
2. ツールの選定業務に合ったクラウドツールを2〜3製品に絞り、無料トライアルで確認する2〜4週間
3. セキュリティ整備デバイス管理・アクセス権設定・情報持ち出しポリシーを策定する2〜4週間
4. 運用ルール設計コミュニケーション設計・在宅ルール・承認フローを決める1〜2週間
5. 試行運用対象者・対象業務を限定して2〜3ヶ月試行し、課題を洗い出す2〜3ヶ月
6. 本格運用・改善試行の結果をもとにルールを改善し、対象を拡大する継続的に

テレワーク導入は「ゴール」ではなく「始まり」です。導入後も定期的に振り返り、使われていないツールの整理・運用ルールの改善を繰り返すことで、少しずつ組織全体の生産性が向上していく。

建設業テレワーク導入の際に使える補助金・助成金

テレワーク導入に関連して活用できる補助金・助成金は複数ある。制度によって申請タイミングや要件が異なるため、導入計画と並行して確認しておきたい。

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)

施工管理アプリ・クラウドグループウェア・電子契約ツールなど、テレワーク関連ツールの多くが対象になっている。補助率1/2〜4/5で、ソフトウェア費用・導入支援費用が補助される。IT導入支援事業者を通じた申請が必要です。

2026年度の公募スケジュールと詳細は公式サイトで確認してほしい(※最新の登録状況は公式サイトでご確認ください)。

働き方改革推進支援助成金

「働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)」は、テレワーク環境整備に要した費用の一部を助成する厚生労働省の制度です。機器・器具の購入費、クラウドサービスの利用料、コンサルタントへの委託費などが対象になる。

助成率は1/2、助成上限は1企業あたり100万円が目安だ(年度により変動)。

出典: 厚生労働省 働き方改革推進支援助成金(2026-04-27確認)

人材確保等支援助成金(テレワークコース)

テレワーク導入によって離職率の低下または人材確保に成功した企業に対して、一定額が助成される制度です。事業期間内に離職率が改善された実績が条件になるため、導入前から離職率の記録を残しておくことが申請の準備になる。

複数の補助金・助成金を組み合わせることで、テレワーク導入の自己負担を大幅に抑えられる可能性があります。各制度の申請要件・公募期間は変動するため、地域の商工会議所や認定支援機関に相談しながら進めることを推奨する。IT導入補助金の申請については「建設業のIT導入補助金活用ガイド」も参考にしてほしい。

参考情報

よくある質問

建設業でテレワークはできますか?
現場作業そのものはリモート化できませんが、見積書作成・工程管理・安全書類・発注業務・経理・採用対応などのデスクワークはリモート化できます。建設会社によっては従業員の30〜40%がデスクワーク系の業務に従事しており、この層がテレワークの主な対象になります。
建設業のテレワーク普及率はどのくらいですか?
国土交通省の2024年度調査によると、テレワークを一部でも導入している建設業者は全体の約38%です。製造業(57%)や情報通信業(83%)と比較すると普及が遅れていますが、2024年4月の時間外労働規制を背景に導入が急速に進んでいます。
テレワーク導入にはどのくらい費用がかかりますか?
管理・事務部門10名規模の中小建設会社では、初期費用100〜210万円が目安です。デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)を活用すれば、ソフトウェア費用の1/2〜4/5を補助できます。月次のランニングコストは5〜15万円程度が一般的です。
テレワーク導入で採用にどんな効果がありますか?
本記事の3社事例では、テレワーク制度導入後に採用応募者数が2.4〜3倍に増加しました。求人票に「在宅勤務制度あり」と明記することで、特に30代・育児中の人材からの応募が増える傾向があります。建設業の若手採用難を解消する有効な手段の一つです。
建設業のテレワークでセキュリティリスクをどう管理しますか?
社用PCにのみデータアクセスを許可するMDM(モバイルデバイス管理)の導入、クラウドストレージのアクセス権を工事別・担当者別に設定、VPNによる社内システムへのセキュアアクセス、情報持ち出し禁止ポリシーの全社周知、の4点が基本的な対策です。
現場監督もテレワークできますか?
現場がある日の現場作業はリモート化できませんが、現場がない日や書類作成が中心の日は在宅勤務が可能です。施工管理アプリを導入すれば日報・写真・工程管理をタブレットで完結できるため、事務所への出社が必要な作業を大幅に減らせます。月2〜5日程度の在宅勤務を認める企業も増えています。
テレワーク導入で2024年問題(残業規制)に対応できますか?
完全に対応するには業務量の調整も必要ですが、テレワーク化によるデスクワークの効率化で残業時間を20〜40%削減できた事例が複数あります。本記事の土木工事会社の事例では、テレワーク導入後に現場監督の月残業時間が68時間から41時間に削減され、上限規制の範囲内に収まりました。

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