この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「施工管理アプリを入れたいが、200万円の初期投資は厳しい」「ドローンを導入したいけど、費用対効果が見えない」。中小建設会社の経営者からよく聞く声です。こうした投資のハードルを下げてくれるのが、国や自治体の補助金制度。IT導入補助金(現・デジタル化・AI導入補助金)の2025年1次公募では採択率が約50%と、2024年の約84%から大幅に低下しました。申請すれば通る時代は終わり、事業計画の質が採択を左右する局面に入っています。この記事では、建設業で実際に採択されたDX補助金の活用事例を5件取り上げ、申請書の書き方から入金までのスケジュール、補助金を組み合わせた段階的な投資計画の立て方まで、実務で使える情報を整理しました。

建設業のDX推進に活用できる補助金の全体像

建設業のDX投資に使える補助金は複数存在し、目的や投資規模によって使い分ける必要があります。2026年3月時点で活用可能な主要補助金を整理しました。

補助金名補助率補助上限額主な対象申請難易度
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)1/2〜2/3最大450万円クラウドサービス、業務ソフトの導入低〜中
ものづくり補助金(デジタル枠)1/2〜2/3750万〜1,250万円設備投資を伴うDX(IoT、ドローン等)中〜高
中小企業省力化投資補助金1/2200万〜1,500万円省力化製品(カタログ型)の導入
事業再構築補助金1/2〜2/3最大1億円新分野展開、業態転換を伴うDX
小規模事業者持続化補助金2/350万〜200万円販路開拓に伴うIT導入(小規模向け)
補助金情報の注意点

補助金の公募要件・補助率・上限額は年度や公募回によって変更されることがあります。申請前に必ず各補助金の公式サイトで最新情報を確認してください。本記事の情報は2026年3月時点のものです。

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)は、施工管理アプリやクラウド会計ソフトなどのSaaS導入に最も使いやすい補助金です。申請手続きも比較的シンプルで、初めて補助金を活用する企業に向いています。2025年からAI関連ツールの導入も対象に加わり、適用範囲が広がりました。

ものづくり補助金は、IoTセンサーの全社導入やBIMの環境構築など、ハードウェアを含む設備投資がある場合に適しています。申請書の作成は複雑ですが、補助上限額が大きいため、大規模なDX投資に向いた制度です。

中小企業省力化投資補助金は、あらかじめカタログに登録された製品から選んで導入する方式のため、申請のハードルが低い点が特徴。従業員規模に応じて上限額が変わり、5名以下で200万円、6〜20名で500万円、21名以上で1,500万円が目安になります。

各補助金の詳細な制度解説は建設業の補助金一覧でまとめています。デジタル化・AI導入補助金の最新情報もあわせて確認してください。

採択事例5選 — Before/Afterの数値で見るDX効果

ここからは、実際に補助金を活用して建設業のDXに成功した5つの事例を、導入前後の数値変化に焦点を当てて紹介します。

事例1: 施工管理アプリ導入で書類業務を月50時間削減(地場工務店・従業員15名)

紙の日報と電話連絡を中心とした業務フローが、施工管理アプリの導入で大きく改善した事例です。

項目導入前導入後改善幅
書類業務時間月80時間月30時間62.5%削減
現場監督の残業月45時間月30時間33%削減
図面の共有方法SDカード受け渡しクラウド即時共有リアルタイム化
写真整理手作業で月10時間自動分類で月2時間80%削減

導入前は、現場監督が毎日紙の日報を持ち帰って事務所でExcelに転記し、写真はSDカードで受け渡していました。デジタル化・AI導入補助金を活用してANDPADを導入し、日報・写真・図面の管理をクラウドに一本化。現場からスマートフォンで日報を入力し、写真もその場でアップロードする運用に切り替えました。

補助金の活用額は約120万円で、自己負担は約80万円。投資回収は人件費の削減分で約8か月で達成しています。書類業務の削減で生まれた時間を現場巡回に充てたことで、施工品質のクレームも減少しました。

事例2: ドローン測量でコスト50%削減・工期短縮(土木会社・従業員40名)

従来の人力による測量作業をドローンに置き換え、ICT施工の入口を開いた事例です。

項目導入前導入後改善幅
測量人員2名1名50%削減
測量時間2日半日75%短縮
年間測量コスト約300万円約150万円50%削減
土量算出方法手計算(2〜3日)3D点群自動計算(当日)即日化

ものづくり補助金のデジタル枠を活用し、測量用ドローンと3D点群処理ソフトウェアを導入しました。3D点群データからの土量算出も自動化され、測量コストが年間約300万円から約150万円に半減。加えて、ICT施工の総合評価加点により、公共工事の受注で有利になるという副次的な効果も得られています。

補助金の活用額は約500万円で、自己負担は約250万円でした。ドローン活用の詳細は別記事で解説しています。

事例3: クラウド会計導入で月次決算を10日短縮(専門工事会社・従業員25名)

紙の伝票とExcelで管理していた経理業務を、クラウド会計ソフトに移行した事例です。

項目導入前導入後改善幅
月次決算期間20日10日10日短縮
仕訳入力手入力(月300件)自動連携(手入力は月50件)83%自動化
経理担当の残業月25時間月10時間60%削減
請求書発行Excel手作業クラウドで一括発行工数1/3

デジタル化・AI導入補助金を活用してマネーフォワード クラウド会計を導入。銀行口座やクレジットカードとの自動連携により、仕訳入力の手間が大幅に削減されました。月次決算にかかる期間が従来の20日から10日に短縮され、経営者がリアルタイムに近い資金繰り状況を把握できるようになっています。インボイス制度・電子帳簿保存法への対応もクラウド会計の機能でカバーできました。

補助金の活用額は約80万円、自己負担は約40万円です。会計ソフトの比較も参考にしてください。

事例4: IoT環境センサーで労災ゼロを達成(中堅建設会社・従業員80名)

全現場にWBGT環境センサーを導入し、熱中症対策を強化した事例です。

項目導入前導入後改善幅
熱中症発生件数年3〜5件年0件ゼロ達成
現場巡回(安全確認)1日2回・2名体制リモート常時監視人員50%削減
労災保険メリット制適用なし20%割引を適用年間約80万円削減
休憩指示職長の感覚判断WBGT値ベースの自動アラート定量基準化

中小企業省力化投資補助金を活用し、20台の環境センサーとダッシュボードシステムを導入。各現場の温湿度・WBGT値をリアルタイムで本社から監視できるようになり、危険水準に達した現場には自動で休憩指示のアラートが発信されます。導入初年度に熱中症発生件数がゼロになり、労災保険料のメリット制適用で年間約80万円のコスト削減にもつながっています。

補助金の活用額は約200万円、自己負担は約200万円でした。

事例5: BIM導入で設計変更の手戻りを80%削減(総合建設会社・従業員120名)

2D CADからBIMへの移行により、設計・施工の連携品質を向上させた事例です。

項目導入前導入後改善幅
設計変更による手戻り月8〜10件月1〜2件80%削減
施主との打ち合わせ回数平均8回平均4回50%削減
干渉チェック図面上で目視確認BIMモデルで自動検出自動化
研修期間3か月(外部講師)計画的に実施

ものづくり補助金を活用してRevitのライセンスと高性能ワークステーション、研修プログラムを一括導入しました。BIMモデルによる事前の干渉チェックにより、施工段階での設計変更に起因する手戻りが80%減少。3Dモデルでの合意形成が可能になったことで、施主との打ち合わせ回数も半減しています。

補助金の活用額は約800万円、自己負担は約400万円でした。BIM導入の詳細ガイドも参考になります。

補助金を使ったDX段階的投資計画の立て方

ここまで読んだ方へ

建設業のDX・採用・補助金活用について、無料でご相談いただけます。150プロジェクト以上の支援実績をもとに、御社に合った解決策をご提案します。

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建設業のDXは、1回の投資ですべてを変えようとすると失敗しやすくなります。補助金を組み合わせた3年間の段階的投資計画を示します。

1年目: 業務のデジタル化(投資目安100〜200万円)

最初に取り組むべきは、日常業務のペーパーレス化です。施工管理アプリやクラウド会計の導入は、現場の抵抗感が比較的少なく、効果も短期間で実感できます。

活用する補助金はデジタル化・AI導入補助金が最適です。補助率1/2〜2/3で、実質負担を50〜70万円程度に抑えられます。gBizIDの取得と申請の流れを一度経験しておくことで、2年目以降の申請もスムーズになります。

この段階での具体的なツール候補としては、施工管理アプリクラウド会計ソフト勤怠管理システムが挙げられます。ペーパーレス化の進め方を参考に、自社の優先度が高い業務から着手してください。

2年目: データ活用と現場の高度化(投資目安300〜600万円)

1年目のデジタル化で業務データが蓄積されたら、次はそのデータを経営判断に活用する段階に移ります。ドローン測量やIoTセンサーなどハードウェアを伴う投資が中心となるため、ものづくり補助金や省力化投資補助金の活用を検討します。

2年目で重要なのは、1年目の成果を数値で示せる状態にしておくこと。「施工管理アプリの導入で書類業務が月50時間削減」という実績があれば、次の補助金申請で「DXの実行力がある企業」として評価されます。

3年目: 全社統合と経営のDX(投資目安500〜1,000万円)

3年目は、個別に導入したツールを連携させ、経営全体のデジタル化を仕上げる段階です。BIMの導入や基幹システムの刷新など、大型投資が対象になります。

ものづくり補助金のデジタル枠か、投資規模によっては事業再構築補助金も選択肢に入ります。3年目の申請では、1〜2年目の実績データが事業計画の説得力を大きく高めてくれます。

年度投資内容活用補助金投資目安実質負担
1年目業務デジタル化(アプリ・クラウド)デジタル化・AI導入補助金100〜200万円50〜70万円
2年目現場高度化(ドローン・IoT)ものづくり補助金/省力化補助金300〜600万円150〜300万円
3年目全社統合(BIM・基幹システム)ものづくり補助金/事業再構築補助金500〜1,000万円250〜500万円

3年間の累計投資は900〜1,800万円ですが、補助金を活用すれば実質負担は450〜870万円に圧縮できます。年間の売上高が3億円の建設会社であれば、売上比で0.15〜0.29%の投資です。

申請から入金までのスケジュールと資金繰り

補助金は「後払い」が原則です。導入時の費用は一旦自社で立て替える必要があるため、資金繰りの計画が欠かせません。

1

gBizIDの取得(申請の1か月前まで)

補助金の電子申請にはgBizIDプライムが必要です。発行まで2〜3週間かかるため、公募開始前に取得しておきます。

2

公募開始・申請書類の準備(1〜2か月)

事業計画書の作成、見積書の取得、必要書類の収集を行います。認定支援機関を活用する場合はこの段階で依頼します。

3

申請・審査期間(1〜2か月)

電子申請を行い、審査結果を待ちます。デジタル化・AI導入補助金は約1か月、ものづくり補助金は約2か月が目安です。

4

採択通知・交付決定(約2週間)

採択通知後、交付申請を行い交付決定を受けます。交付決定前に発注・契約すると補助金の対象外になるため注意が必要です。

5

事業実施期間(3〜6か月)

交付決定後にツールの発注・導入・運用を行います。この期間中の費用が補助対象となります。

6

実績報告・確定検査(1〜2か月)

事業完了後、実績報告書と経費の証拠書類を提出します。領収書、納品書、導入効果の報告が求められます。

7

補助金入金(報告後1〜2か月)

確定検査を経て、補助金が指定口座に振り込まれます。

申請開始から入金までの総期間は、デジタル化・AI導入補助金で約6〜9か月、ものづくり補助金で約9〜12か月が目安です。事業再構築補助金はさらに長く、12〜18か月かかるケースも珍しくありません。

資金繰りの具体策

補助金入金までの立て替え資金をどう手当てするかは、中小建設会社にとって切実な問題です。

つなぎ融資を活用する方法があります。日本政策金融公庫の「企業活力強化資金」は、補助金の交付決定書があれば融資を受けやすくなります。地方銀行や信用金庫でも、補助金採択企業向けのつなぎ融資制度を設けているケースが増えています。

リース・サブスクリプション型のツールを選ぶことで、初期投資を平準化する方法も有効です。施工管理アプリのように月額課金のSaaSであれば、月々の支出を抑えながらDXを進められます。補助金の対象経費にクラウドサービス利用料(最大2年分)が含まれる制度も増えています。

建設業の資金繰りと補助金では、キャッシュフロー管理の具体策を詳しく解説しています。

補助金種別の採択率と平均補助額 — 最新データから読む傾向

補助金申請の成否を左右する要因を理解するには、各制度の採択率と平均補助額の推移を把握しておく必要があります。申請難易度と期待できる補助金額のバランスから、自社に最適な補助金を選ぶ判断材料にしてください。

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)

年度・回申請件数(概算)採択件数(概算)採択率
2023年(通年)約70,000件約60,000件約86%
2024年(通年)約80,000件約67,000件約84%
2025年 1次公募約80,000件(推定)約40,000件(推定)約50%

2025年1次公募での採択率急落は、申請数の増加と審査基準の厳格化が重なったことが要因とされています。IT導入支援事業者の「申請するだけで通る」という営業トークは2024年時点ですでに過去のものとなっており、事業計画の質が採択を左右する局面に移行しました。

一方で、建設業での平均補助額は1申請あたり60〜120万円が多く、ソフトウェア費用と2年分のクラウド利用料をカバーする規模です。

ものづくり補助金

枠・類型申請に対する採択率の目安採択件あたり平均補助額
省力化・デジタル枠40〜55%350〜600万円
グローバル展開型20〜35%500〜1,000万円
成長枠(旧通常枠)45〜60%200〜400万円

採択率が低い回では、申請件数が少ない場合でも厳格な審査が行われます。認定支援機関が関与した申請の採択率は、自社申請よりも平均10〜15ポイント高い傾向が複数の調査で確認されています。

建設業のDX投資では「省力化・デジタル枠」が最も使いやすい類型です。ドローン測量システム、IoT環境センサー、遠隔管理システムなど、ハードウェアを含む設備投資が対象になります。

中小企業省力化投資補助金

従業員規模補助上限額
5名以下200万円
6〜20名500万円
21名以上1,500万円

カタログ型(あらかじめ登録された製品から選択)のため採択率は比較的高く、70〜80%程度とされています。ただしカタログ掲載製品の中から選ぶ制約があり、建設業で活用できる製品の幅が他の補助金より限られる点は留意が必要です。

採択率は年度・公募回によって変動する

本記事記載の採択率は過去実績に基づく推定値です。補助金の制度設計・予算・申請状況によって毎回変動するため、申請前に必ず各補助金の公式サイトで最新情報を確認してください。

申請で落ちやすいポイントと対策

採択率が低下した現在、「申請すれば通る」という前提は捨てることが重要です。不採択になるパターンを事前に把握し、対策を講じてから申請する姿勢が求められます。

ポイント1: 課題の定量化が不足している

「業務が非効率で生産性が低い」という抽象的な記述では、審査員は問題の深刻さを判断できません。審査員は毎回数百〜数千件の申請書を読みますが、数値のある申請は記憶に残ります。

不採択になりやすい記述例: 「日報作成に時間がかかっており、業務効率が低下している」

採択されやすい記述例: 「現場監督3名が日報作成に1名あたり日45分、月間で合計202.5時間を費やしている。年換算2,430時間(人件費換算約486万円)が書類業務に充てられており、当社の総労働時間の約18%を占める」

1週間、業務時間を実測するだけで説得力のある数字が得られます。

ポイント2: ツール選定理由が薄い

「知人に勧められた」「営業担当者の説明が良かった」では審査を通過できません。複数の選択肢を比較検討したプロセスと、選定基準・評価結果を示す必要があります。

採択されやすい記述例: 「建設業向け施工管理アプリ5製品(ANDPAD、KANNA、ダンドリワーク、ビジョン、プロレコ)を比較した。評価軸は①GPS打刻の精度、②現場別集計機能の充実度、③月額コスト、④他社システムとのAPI連携の4項目。当社の従業員20名・稼働現場5件の規模では製品Aが最も要件に合致したため選定した」

ポイント3: 期待効果と現状課題の連動がない

「人手不足が課題」と書いておきながら、導入するツールがクラウド会計ソフト—というように、課題と解決策のロジックが接続されていないケースが多くあります。

対処法は、「現状の課題 → 課題の数値化 → 選定ツールの機能 → 改善後の数値目標」というロジックを一本の線で結ぶことです。審査員が読み進めた際に「なるほど、このツールでこの課題が解決できる」と理解できる構造にします。

ポイント4: 実施スケジュールが非現実的

「導入初月で全社展開、2ヶ月目から効果測定」というスケジュールは実行可能性への疑念を招きます。研修・習熟期間を含めた段階的なスケジュールが評価されます。

採択されやすいスケジュール記述例: 「1ヶ月目: 管理者アカウント設定、操作研修実施(全3回)。2ヶ月目: パイロット現場2件でトライアル運用、打刻データ・日報データの精度検証。3ヶ月目: トライアル結果を踏まえた運用ルール策定・マニュアル整備。4ヶ月目以降: 全5現場へ順次展開、月次で効果測定レポートを作成」

ポイント5: 書類の不備・ミス

申請フォームの記入漏れ、添付書類の不足、期限超過は内容以前の問題で不採択となります。特にデジタル化・AI導入補助金では、IT導入支援事業者との共同申請が必須要件です。IT導入支援事業者を選定していない状態で申請しようとしても受け付けてもらえません。

提出前の最終確認として、以下を必ずチェックしてください。

  • 必要書類(履歴事項全部証明書、直近の決算書等)が揃っているか
  • gBizIDプライムの取得が完了しているか
  • IT導入支援事業者との連携申請が完了しているか(デジタル化・AI導入補助金の場合)
  • 認定支援機関の確認書が添付されているか(ものづくり補助金等の場合)
  • 申請内容に誤字・脱字がないか(数値・社名・ツール名の正確性を確認)

採択後の報告義務と注意点

補助金は採択されてからが本番です。報告義務を怠ったり要件を満たさなかったりすると、補助金の返還を求められるケースがあります。採択後の主な義務を把握しておきましょう。

事業実施報告(実績報告)

採択・交付決定後に事業を実施し、完了したら実績報告書を提出します。実績報告では以下が求められます。

  • 経費の証拠書類: 発注書、請求書、納品書、振込確認書(通帳コピー等)
  • 成果の証拠: 導入したシステムの利用画面スクリーンショット、設置場所の写真
  • 効果報告: Before/Afterの業務改善数値(可能な範囲で)

デジタル化・AI導入補助金では、交付決定後の「交付決定前の発注・支払い」は補助対象外となります。必ず交付決定通知を受け取ってから発注してください。これは毎回最も多い失敗パターンです。

事業化状況報告(効果報告)

ものづくり補助金や事業再構築補助金では、補助事業完了後も3〜5年間にわたる「事業化状況報告」が義務付けられています。毎年一定時期に、売上・雇用・賃金の状況を報告する必要があります。

なお、補助事業で取得した設備・システムは、補助金の交付決定から一定期間(デジタル化・AI導入補助金は3年間、ものづくり補助金は5年間)は処分できません。廃業や業態転換を予定している場合は、制約期間を考慮した計画を立ててください。

賃金引上げ要件への対応

ものづくり補助金を含む多くの補助金では、賃上げ計画の提出が求められます(補助率や条件は申請枠による)。計画未達の場合は採択後でも補助率が引き下げられる可能性があるため、計画策定は慎重に行ってください。

補助金効果報告期間賃上げ要件設備処分制限
デジタル化・AI導入補助金1〜2年要件による3年
ものづくり補助金3〜5年要件による5年
事業再構築補助金5年要件による5年
省力化投資補助金3年要件による3年

採択後の報告漏れや虚偽報告は補助金の返還命令の対象になります。顧問の税理士や認定支援機関と定期的に情報共有する体制を整えておくと安心です。

申請書(事業計画書)の書き方 — 採択率を高める4つの要素

IT導入補助金の採択率は、2024年の約84%から2025年1次公募で約50%に低下しました(石田データサービス調べ)。申請数が倍増した影響もありますが、事業計画の質がこれまで以上に問われる状況です。審査員に「この会社にこそ補助金を出すべきだ」と判断してもらうための4つの要素を整理します。

現状の課題を数値で示す

「業務が非効率」という抽象的な記述ではなく、数値で課題の大きさを伝えます。

悪い例: 「日報作成に時間がかかり、業務効率が低い」

良い例: 「日報作成に1名あたり1日45分、現場監督3名で月間67.5時間を費やしている。年間換算で810時間(人件費約162万円相当)が書類業務に消えている」

数値の根拠は社内データから算出してください。1週間だけ業務時間を記録するだけでも、説得力のある数値が得られます。

製品・サービスの選定理由を論理的に記述する

「知人に勧められた」「営業担当の説明が良かった」では審査を通過できません。比較検討のプロセスを示すことで、投資判断の合理性を審査員に伝えます。

記述例: 「建設業向け施工管理アプリ3製品を比較検討した。当社は年間施工件数20件、現場監督3名体制のため、(1)モバイル操作の簡便さ、(2)写真台帳の自動生成機能、(3)月額費用の3軸で評価し、最も総合点が高い製品Aを選定した」

期待される効果をBefore/Afterで示す

課題で提示した数値と対応させて、導入後の具体的な改善を記述します。削減率だけでなく、「削減した時間で何ができるようになるか」まで書くと説得力が増します。

記述例: 「日報業務を月67.5時間から月15時間に削減(78%減)。削減した52.5時間を現場品質チェックに充て、手戻り工事の発生率を年5件から2件以下に低減する」

実施スケジュールは段階的に

「導入初月で全社展開」のような非現実的なスケジュールは、実行可能性の面でマイナス評価になります。

現実的なスケジュール例: 「1か月目: 管理者アカウント設定・操作研修、2か月目: パイロット現場2件でトライアル、3か月目: トライアル結果を踏まえた運用ルール策定、4か月目以降: 全現場に展開」

加点項目の活用

「賃金引上げ計画」「デジタル化への取り組み」「事業継続計画(BCP)の策定」は多くの補助金で加点対象です。該当する場合は必ず事業計画に盛り込んでください。経営力向上計画の認定を受けている企業も加点される制度があります。

不採択になる典型パターンとその対策

補助金の申請で不採択になる理由は、いくつかの典型パターンに集約されます。不採択通知には具体的な理由が記載されないことが多いため、事前に回避策を知っておくことが重要です。

課題と導入効果の因果関係が弱い

人手不足が課題」と書きながら、導入するのがクラウド会計ソフトという場合、課題と解決策のつながりが弱く、審査員を納得させられません。人手不足が課題なら、省力化につながるツール(施工管理アプリ、自動積算ソフト等)を対象にするか、「人手不足→既存社員の業務効率化が急務→経理業務の自動化で現場対応時間を確保」というロジックを明確にする必要があります。

数値根拠がない

「効率化が期待できる」「生産性が向上する見込み」という記述だけでは、投資に見合う効果があるのか判断できません。具体的なBefore/Afterの数値を示してください。同業他社の導入事例やツールベンダーが公表している導入効果データも参考になります。

事業計画の実現可能性が低い

ITリテラシーが低い組織なのに高度なシステムを導入する計画では、「本当に使いこなせるのか」という疑問が生じます。研修計画や段階的導入のスケジュールを盛り込むことで、実現可能性を示しましょう。外部の導入支援サービスを活用する計画を記載するのも有効です。

申請書類の不備・期限超過

添付書類の不足、記載ミス、提出期限の超過は、内容以前の問題で不採択となります。デジタル化・AI導入補助金では、IT導入支援事業者との連携が申請要件になっている点を見落とすケースが多いため、早めにIT導入支援事業者を選定しておくことが大切です。提出前には第三者(認定支援機関や行政書士)にチェックしてもらうことを強くおすすめします。

再申請のポイント

不採択になった場合でも、次回の公募で再申請が可能です。不採択時の事業計画書を見直し、上記の典型パターンに該当する箇所を改善したうえで再度申請してください。1回目の不採択が次回のマイナス評価になることはありません。

認定支援機関の選び方と費用相場

ものづくり補助金や事業再構築補助金では、認定支援機関(認定経営革新等支援機関)の確認書が申請に必要です。認定支援機関は、中小企業庁に登録された税理士、中小企業診断士、金融機関などで、全国に約3万8,000機関(2025年時点)が登録されています。

費用相場

料金体系相場特徴
着手金のみ10〜30万円採択の成否に関係なく発生
成功報酬のみ補助金額の10〜15%採択時のみ費用発生
着手金+成功報酬着手金5〜10万円+補助金額の10〜15%最も一般的な料金体系

補助金額が500万円で、着手金5万円+成功報酬12%の場合、トータルの支援費用は約65万円になります。高額に感じるかもしれませんが、自社で申請して不採択になるリスクと比較すると、投資対効果は十分に見合うケースが多いでしょう。

選定のポイント

建設業のDX支援実績がある機関を選ぶことが最も重要です。業界の事情を理解している支援機関のほうが、審査員に響く事業計画書を作成できます。

確認すべき項目は3つ。過去の建設業案件の採択実績(件数と採択率)、事業計画書のドラフト作成まで対応してくれるか、申請後のフォローアップ(実績報告の支援)も含まれるか、です。

認定支援機関の検索は中小企業庁の「認定経営革新等支援機関検索システム」から行えます。都道府県・業種で絞り込めるため、地域の建設業に詳しい機関を見つけやすくなっています。

参考情報

よくある質問

よくある質問

補助金は複数を同時に申請できますか?
原則として、同一の経費に対して複数の補助金を重複して受給することはできません。ただし、対象経費が異なる場合は複数の補助金を併用できるケースがあります。たとえば、施工管理アプリの導入にデジタル化・AI導入補助金を、ドローンの購入にものづくり補助金を、それぞれ申請するといった使い分けは可能です。
補助金の申請から入金までどのくらいかかりますか?
デジタル化・AI導入補助金で約6〜9か月、ものづくり補助金で約9〜12か月が一般的です。申請→審査→採択通知→事業実施→実績報告→確定検査→入金という流れで、特に事業実施後の実績報告と確定検査に時間がかかります。補助金は後払いが原則のため、導入時の資金は一旦自社で立て替える必要があります。
申請書は自社で書けますか?それとも専門家に依頼すべきですか?
デジタル化・AI導入補助金は比較的申請が簡易なため、自社での申請も十分可能です。一方、ものづくり補助金や事業再構築補助金は事業計画書の内容が採択を左右するため、認定支援機関のサポートを受けることで採択率が高まります。初めて補助金を申請する場合は、専門家のサポートを活用することをおすすめします。
採択率はどのくらいですか?
IT導入補助金(現・デジタル化・AI導入補助金)の採択率は、2024年の約84%から2025年1次公募で約50%に低下しました。ものづくり補助金は例年40〜60%程度で推移しています。申請数の増加に伴い全体的に採択率は下降傾向にあるため、事業計画書の質がこれまで以上に重要になっています。
交付決定前にツールを購入してしまった場合はどうなりますか?
交付決定前に発注・契約・支払いを行った経費は、補助金の対象外となります。これは最も多い失敗パターンのひとつです。公募への申請後、採択通知を受け、交付申請を行い、交付決定通知を受け取ってから発注するという手順を必ず守ってください。

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