「施工管理アプリを入れたいけど、月額費用がかさむ」「AIで工程管理を効率化したいが、初期投資が厳しい」。中小建設会社の経営者から、こうした声を聞く機会が増えています。2024年4月に建設業にも適用された時間外労働の上限規制(月45時間・年360時間)を受け、現場の生産性向上は待ったなしの状況です。
そんな中小建設会社にとって心強い制度が、2026年度から始まった「デジタル化・AI導入補助金」です。従来の「IT導入補助金」を引き継ぎつつ、AI活用の支援が強化された制度で、施工管理アプリや会計ソフト、勤怠管理システムの導入費用を最大450万円・最大4/5の補助率でカバーできます。
この記事では、制度の全体像から申請手順、建設業での具体的な活用パターンまでを整理しました。補助金の申請受付は2026年3月30日に開始されており、第1次締切は5月12日です。gBizIDプライムの取得に2〜3週間かかるため、申請を検討している方は早めに動き出すことをおすすめします。
デジタル化・AI導入補助金の制度概要 ― IT導入補助金からの変更点
デジタル化・AI導入補助金は、中小企業庁が所管する補助金制度です。中小企業・小規模事業者がITツールやAIを導入して生産性を向上させる取り組みに対し、費用の一部を国が補助します。正式名称は「中小企業デジタル化・AI導入支援事業費補助金」で、事務局は中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。
IT導入補助金は2017年度に創設されて以降、毎年10万件を超える申請がある人気制度でした。2026年度からの名称変更には、単なるIT化にとどまらず、AIを含むデジタル技術の積極的な活用を中小企業に促す意図があります。
2025年度までのIT導入補助金との主な違い
名称だけでなく、制度の中身にもいくつかの変更が加わっています。
- 補助対象ソフトウェアに生成AIおよびAI技術搭載ソフトウェアが明示的に追加された
- 小規模事業者向けの補助率引き上げ措置が新設され、一定の賃上げ要件を満たすと補助率が最大4/5に
- 過去の採択実績がある事業者に対して、事業計画の策定・実行と効果報告が新たな申請要件として追加された
- 複数者連携枠の名称が「複数者連携デジタル化・AI導入枠」に変更
建設業に直接関係する変更として注目したいのは、小規模事業者への補助率引き上げです。建設業では従業員20人以下が「小規模事業者」に該当するため、多くの中小建設会社がこの優遇措置の対象になります。
建設業で注目すべき理由
建設業の就業者数は1997年の685万人をピークに減少を続け、2022年時点で479万人まで落ち込んでいます。さらに60歳以上の技能者が全体の約4分の1を占めており、今後10年間で大量離職が見込まれる状況です。
出典: 建設業を巡る現状と課題 ― 国土交通省
こうした人手不足の構造を前にして、ITツールやAIを活用した省人化・省力化は「やるかやらないか」ではなく「いつやるか」の問題です。国が費用の半分以上を負担してくれるこの制度を使わない手はありません。
対象となる事業者の要件
デジタル化・AI導入補助金の対象は、中小企業・小規模事業者および一定の要件を満たす特定非営利活動法人です。建設業の場合、以下のいずれかを満たす事業者が対象になります。
| 区分 | 資本金 | 従業員数 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 3億円以下 | 300人以下 |
| 小規模事業者 | ― | 20人以下 |
資本金または従業員数のどちらか一方を満たせば対象です。年商数十億円規模の建設会社であっても、資本金3億円以下であれば申請できます。
申請に必要な事前準備
交付申請を行うには、事前に以下の2つを済ませておく必要があります。
- gBizIDプライムの取得 ― 法人の代表者名義で取得する電子認証アカウント。印鑑証明書(発行から3ヶ月以内)と法人実印が必要で、申請から発行まで2〜3週間かかる
- SECURITY ACTION宣言 ― IPA(情報処理推進機構)が推進する情報セキュリティ対策の自己宣言制度。「一つ星」または「二つ星」のいずれかを宣言する
gBizIDプライムの取得には時間がかかるため、補助金への申請を検討し始めた段階で取得手続きに着手してください。SECURITY ACTION宣言はIPAのウェブサイトから即日で手続きが完了します。
過去に採択された事業者が再申請する場合
2022年度から2025年度のIT導入補助金で交付決定を受けた事業者も再度申請できます。ただし2026年度からは、交付申請時点の翌事業年度以降3年間の事業計画策定・実行、および事業実施効果の報告が追加要件として課されています。過去の導入で期待した効果が出ているかを振り返ったうえで、新たなツール導入を計画する形になります。
補助額・補助率の詳細 ― 5つの申請枠を比較
2026年度のデジタル化・AI導入補助金には5つの申請枠があります。建設業で活用頻度が高いのは通常枠とインボイス枠(インボイス対応類型)の2つです。
| 申請枠 | 補助額 | 補助率 | 建設業での主な用途 |
|---|---|---|---|
| 通常枠(プロセス1〜3) | 5万〜150万円 | 1/2以内 | 施工管理アプリ、勤怠管理 |
| 通常枠(プロセス4以上) | 150万〜450万円 | 1/2以内 | 基幹業務システム一括導入 |
| インボイス枠(インボイス対応類型) | 〜350万円 | 2/3〜3/4 | 会計ソフト、受発注システム |
| インボイス枠(電子取引類型) | 〜350万円 | 中小2/3・大企業1/2 | 発注者主導の電子取引 |
| セキュリティ対策推進枠 | 5万〜150万円 | 1/2以内 | セキュリティ対策ツール |
| 複数者連携デジタル化・AI導入枠 | 〜3,000万円 | 2/3以内 | 元請け・下請け連携システム |
※小規模事業者(建設業は従業員20人以下)は、賃上げ等の要件を満たすと通常枠の補助率が最大4/5に引き上げられます。セキュリティ対策推進枠も小規模事業者は2/3以内に優遇されます。
通常枠の仕組み
通常枠は最も汎用性が高い枠です。導入するITツールが対応する「業務プロセス」の数によって補助額の上限が変わります。
業務プロセスとは、ITツールが担う業務領域のことです。たとえば施工管理アプリが「顧客対応・販売支援」と「業務固有プロセス」の2つのプロセスに対応していれば、プロセス数は2となり、補助額の上限は150万円です。4プロセス以上に対応する統合型の基幹業務システムであれば、上限は450万円まで拡大します。
建設業の場合、施工管理アプリの導入であればプロセス1〜3の範囲に収まるケースが大半で、補助額は5万〜150万円、補助率は1/2が基本です。ただし従業員20人以下の会社が賃上げ要件をクリアすれば、同じツール導入でも補助率が4/5まで上がるため、実質的な自己負担はかなり圧縮できます。
インボイス枠(インボイス対応類型)の仕組み
インボイス枠は、インボイス制度に対応した「会計」「受発注」「決済」機能を持つソフトウェアの導入を支援する枠です。補助率が通常枠より高く設定されているのが特徴で、補助額50万円以下の部分は3/4(小規模事業者は4/5)、50万円超の部分は2/3が適用されます。
会計ソフトへの乗り換えやインボイス対応の受発注システム導入を検討している建設会社には、通常枠よりもこちらが有利です。さらにインボイス枠ではPC・タブレットなどのハードウェア購入費も補助対象に含まれるため、現場用タブレットの調達費用もカバーできます。
2025年度IT導入補助金の採択率から見る難易度
2025年度のIT導入補助金では、通常枠の採択率が約37.9%、全体でも43.6%にとどまりました。2023〜2024年度には70%台で推移していた通常枠が大幅に低下した背景には、審査基準の厳格化と申請件数の増加があります。
2026年度のデジタル化・AI導入補助金でも同様の傾向が続く可能性が高いため、「申請すれば通る」という前提で動くのは危険です。後述する加点項目の確保や、申請書の書き方の工夫が採択率を左右します。
申請の流れ ― 交付申請から補助金受領までの全手順
事前準備(gBizID・SECURITY ACTION)
gBizIDプライムの取得に2〜3週間、SECURITY ACTION宣言は即日完了。補助金の申請を検討し始めた段階で並行して手続きを進める。
IT導入支援事業者・ITツールの選定
補助金の対象として登録されたITツールとIT導入支援事業者の中から、自社の課題に合うものを選ぶ。登録外のツールでは申請できません。
交付申請(IT導入支援事業者と共同)
IT導入支援事業者と連携し、申請マイページから交付申請を提出。事業計画・導入効果の見込みを記載する。
交付決定の通知を受領
申請から交付決定まで約1〜2ヶ月。交付決定の前にツールを導入・契約すると補助金の対象外になるため、必ず通知を待つ。
ITツールの導入・支払い
交付決定後にIT導入支援事業者を通じてツールを導入し、代金を支払う。導入にあたっての証憑(契約書・請求書・振込明細等)を保管する。
事業実績報告・補助金の受領
ツール導入後に事業実績報告を提出。審査を経て補助金が交付される。その後も効果報告の義務があります。
事前準備 ― gBizIDプライムの取得
gBizIDプライムは、法人の代表者名義で取得するデジタル認証アカウントです。国の補助金申請にはほぼ必須のIDで、デジタル庁が運営しています。
取得に必要な書類は以下の2点です。
- 印鑑証明書(発行から3ヶ月以内のもの)
- 法人の実印
郵送申請の場合は2〜3週間で発行されます。オンライン申請にも対応していますが、最終的に書面での本人確認が入るため、余裕を持ったスケジュールで動いてください。すでに他の補助金申請でgBizIDプライムを持っている場合は、そのまま利用できます。
IT導入支援事業者の選び方
デジタル化・AI導入補助金では、申請者(建設会社)が単独で交付申請を行うことはできません。「IT導入支援事業者」として事務局に登録されたベンダーやSIerと連携して申請する必要があります。
IT導入支援事業者は、導入するITツールの提供元(ベンダー)が兼ねているケースがほとんどです。たとえばANDPADを導入したい場合は、ANDPADの営業担当に「デジタル化・AI導入補助金を使って導入したい」と伝えれば、申請のサポートを受けられます。
IT導入支援事業者を選ぶ際に確認しておきたいポイントは3つあります。
- 過去のIT導入補助金での採択実績がどの程度あるか
- 申請書の作成をどこまでサポートしてくれるか(丸投げか、雛形提供か、ヒアリングベースの代行か)
- 導入後の運用サポート体制はどうなっているか
採択実績が豊富なIT導入支援事業者は、審査のポイントを熟知しているため、申請書の完成度が高まりやすい傾向にあります。
交付決定前の導入は絶対NG
申請プロセスで最もよくある失敗が、交付決定の通知を受ける前にITツールの契約・導入を始めてしまうケースです。補助金の交付要件として「交付決定後に事業を開始すること」が明記されており、決定前の契約・発注・支払いはすべて補助対象外になります。
「早く使い始めたい」という気持ちはわかりますが、交付決定まで1〜2ヶ月の待ち期間があることを織り込んでスケジュールを組んでください。IT導入支援事業者との事前相談やデモ・トライアルは交付決定前でも問題ありません。
2026年度の申請スケジュール
2026年度のデジタル化・AI導入補助金は、年間を通じて複数回の締切が設定される予定です。2026年3月時点で公表されているスケジュールをまとめました。
| 項目 | 日程 |
|---|---|
| 公募要領公開 | 2026年2月27日 |
| 申請受付開始 | 2026年3月30日 10:00〜 |
| 第1次締切 | 2026年5月12日 17:00 |
| 第2次以降 | 順次公表(第4次まで公表済み) |
| 事業期間 | 〜2026年6月15日(通常枠の場合、公募回により異なる) |
上記スケジュールは2026年3月時点の情報です。最新の日程はデジタル化・AI導入補助金 事業スケジュールで確認してください。
逆算で考える準備スケジュール
第1次締切(5月12日)に間に合わせるための逆算スケジュールを整理します。
- 3月中旬〜下旬 ― gBizIDプライムの取得申請を開始(まだの場合)
- 3月下旬〜4月上旬 ― 導入したいITツールとIT導入支援事業者の選定・相談
- 4月上旬〜中旬 ― SECURITY ACTION宣言の実施
- 4月中旬〜下旬 ― 交付申請書の作成・提出
- 5月12日 ― 第1次締切
第1次に間に合わなくても、第2次以降の締切があります。ただし、IT導入補助金の過去の傾向として、後半の公募回ほど予算消化が進んで採択率が下がる傾向がありました。可能な限り早い回で申請することをおすすめします。
建設業での具体的な活用パターン
建設業でデジタル化・AI導入補助金を活用する場合、導入するITツールは大きく4つのカテゴリに分かれます。ここでは各カテゴリの代表的なツールと、補助金適用時の費用イメージを整理します。
パターン1: 施工管理アプリの導入(通常枠)
現場の写真管理、工程管理、図面共有をクラウド化するパターンです。建設業のDXで最も導入効果が大きい領域のひとつで、月間20〜30時間の業務時間削減が見込めるケースもあります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象ツール例 | ANDPAD、KANNA、ダンドリワーク、Photoruction |
| 申請枠 | 通常枠(プロセス1〜3) |
| 想定導入費用(年間) | 24万〜120万円程度 |
| 補助率 | 1/2(小規模事業者は最大4/5) |
| 自己負担イメージ | 12万〜60万円(通常)/ 4.8万〜24万円(小規模4/5の場合) |
施工管理アプリの比較検討については、建設業向け施工管理アプリ比較で各ツールの機能・料金を詳しく紹介しています。
パターン2: 会計ソフト・受発注システムの導入(インボイス枠)
インボイス制度への対応と業務効率化を同時に進めるパターンです。インボイス枠は補助率が高いため、費用対効果に優れています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象ツール例 | freee会計、マネーフォワード クラウド、弥生会計オンライン |
| 申請枠 | インボイス枠(インボイス対応類型) |
| 想定導入費用(年間) | 3万〜50万円程度 |
| 補助率 | 3/4(50万円以下の部分、小規模事業者は4/5) |
| 自己負担イメージ | 0.75万〜12.5万円 |
インボイス枠ではPC・タブレットの購入費も補助対象になります。現場用のタブレットを同時に調達すれば、施工管理アプリの導入環境も整えられます。
パターン3: 勤怠管理・労務管理システムの導入(通常枠)
2024年4月からの時間外労働上限規制に対応するため、勤怠管理のデジタル化を進めるパターンです。紙の日報や手書きの出勤簿からクラウド型勤怠管理への移行により、集計業務の工数削減と法令遵守の両立が可能になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象ツール例 | KING OF TIME、ジョブカン、Touch On Time |
| 申請枠 | 通常枠(プロセス1〜3) |
| 想定導入費用(年間) | 3.6万〜18万円(従業員10〜50人) |
| 補助率 | 1/2(小規模事業者は最大4/5) |
| 自己負担イメージ | 1.8万〜9万円(通常)/ 0.72万〜3.6万円(小規模4/5の場合) |
GPS打刻機能を持つ勤怠管理ツールであれば、現場ごとの労働時間を自動で記録できます。直行直帰が多い建設業の現場監督や技能者にとって、打刻のために事務所に立ち寄る手間がなくなるメリットは大きいでしょう。
パターン4: AI搭載ツールの導入(通常枠)
2026年度から明確に補助対象となったAI搭載ツールの導入パターンです。建設業では、AIによる工程最適化、安全管理の画像解析、見積書の自動生成といった分野で活用が広がっています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象ツール例 | AI搭載の施工管理ツール、画像解析による安全管理、AI見積もりシステム |
| 申請枠 | 通常枠 |
| 想定導入費用 | ツールにより大きく異なる |
| 補助率 | 1/2(小規模事業者は最大4/5) |
AI搭載ツールは従来のITツールより単価が高い傾向にありますが、プロセス数が4以上に該当すれば補助額の上限は450万円まで拡大します。導入を検討する際は、IT導入支援事業者に対象ツールとして登録されているかを必ず確認してください。
採択率を高めるための申請書作成のポイント
2025年度のIT導入補助金で通常枠の採択率が約38%まで低下したことを踏まえると、申請書の質が採否を分ける重要な要素になります。ここでは審査で評価されるポイントと、建設業ならではの書き方のコツを紹介します。
加点項目を確実に押さえる
デジタル化・AI導入補助金には、採択の優先度を上げる「加点項目」が設定されています。建設業で取得しやすい加点項目を挙げます。
- 賃上げ計画の策定 ― 事業計画期間中に従業員の給与を引き上げる計画を策定・宣言する。建設業では人材確保のための賃上げが経営課題になっているケースが多く、自然な形で盛り込める
- SECURITY ACTION二つ星の宣言 ― 一つ星でも申請要件は満たせるが、二つ星まで取得すると加点になる。IPAのウェブサイトで情報セキュリティ基本方針を策定・公開するだけで宣言可能
- インボイス制度対応のツール導入 ― インボイス枠で申請する場合に自動的に加点される
加点項目をひとつも取らずに申請すると、採択率は大幅に下がります。最低でも賃上げ計画とSECURITY ACTION二つ星の2つは押さえてください。
経営課題を定量的に記述する
申請書の「経営課題」欄には、「業務効率化を図りたい」のような抽象的な記述ではなく、具体的な数字を入れてください。
建設業の経営者が書きやすい記述パターンをいくつか挙げます。
- 「現場写真の管理・整理に月あたり約25時間を費やしている。施工管理アプリの導入により月5時間程度に短縮し、月20時間分の工数を設計・見積もり業務に振り向けたい」
- 「勤怠集計業務に毎月3営業日を要しており、時間外労働の上限規制への対応が後手に回っている。クラウド勤怠管理の導入でリアルタイムの労働時間把握と即日集計を実現する」
- 「下請け業者との工程調整をFAXと電話で行っており、情報伝達のタイムラグによる手戻りが月に平均3件発生している。施工管理プラットフォームの導入で情報共有のリードタイムをゼロにする」
ポイントは「現状の数字」と「導入後の目標数字」をセットで書くことです。審査員は数値の妥当性を見ているため、過度に楽観的な効果予測は避けつつ、具体性のある記述を心がけてください。
導入効果の根拠を示す
「なぜこのツールを選んだのか」「なぜこの効果が見込めるのか」の根拠も重要です。ツールの導入実績(たとえば「ANDPADは建設業で14万社以上が利用」など)や、類似事例での効果データがあれば記載しましょう。
IT導入支援事業者が過去の採択事例のテンプレートや記載例を持っている場合もあるので、積極的に情報提供を依頼してください。
他の補助金制度との比較・併用
建設業で使えるDX関連の補助金は、デジタル化・AI導入補助金だけではありません。目的や規模に応じて使い分けることで、DX投資の自己負担をさらに抑えられます。
| 補助金名 | 補助額 | 補助率 | 対象 | 併用 |
|---|---|---|---|---|
| デジタル化・AI導入補助金 | 最大450万円 | 1/2〜4/5 | ITツール・AI導入 | ― |
| ものづくり補助金 | 最大1,250万円 | 1/2〜2/3 | 設備投資・システム開発 | 不可(同一経費) |
| 事業再構築補助金 | 最大1億円 | 1/2〜2/3 | 事業転換・新分野進出 | 不可(同一経費) |
| 小規模事業者持続化補助金 | 最大250万円 | 2/3 | 販路開拓 | 異なる経費なら可 |
原則として、同一の経費に対して複数の補助金を重複して受けることはできません。ただし、異なる経費(たとえばデジタル化・AI導入補助金でソフトウェアを、ものづくり補助金でハードウェア設備を導入する)であれば、それぞれの補助金を活用することは可能です。
建設業で使える補助金の全体像は建設業で使える補助金・助成金一覧で整理しています。自社の投資計画に最も合う制度を見つけてください。
デジタル化・AI導入補助金を選ぶべきケース
ITツール(ソフトウェア・クラウドサービス)の導入が主目的であれば、デジタル化・AI導入補助金が最も使いやすい制度です。申請手続きがものづくり補助金や事業再構築補助金と比べてシンプルで、IT導入支援事業者のサポートを受けられるため、補助金申請が初めての建設会社にも取り組みやすい設計になっています。
一方、ICT建機の導入やドローン測量機材の購入など、ハードウェア設備の投資が中心であれば、ものづくり補助金のほうが補助額の上限が高く有利です。
建設業のDXをさらに進めるために
ここまでデジタル化・AI導入補助金の制度詳細を見てきましたが、補助金はあくまでDXの「きっかけ」です。ツールを導入して終わりではなく、現場に定着させ、業務プロセスそのものを変えていくことが生産性向上の鍵になります。
国土交通省が推進する「i-Construction 2.0」では、2040年度までに建設現場の省人化率30%以上(生産性1.5倍)を目標に掲げています。2024年度の国交省直轄工事におけるICT活用率は約89%に達しており、公共工事の世界ではICT施工がすでに標準になりつつあります。
出典: インフラ分野のDX ― 国土交通省
民間工事を主戦場とする中小建設会社にとっても、こうした流れは他人事ではありません。元請けからICT対応を求められる場面が今後増えていくことが予想されるなかで、補助金を活用して早めにデジタル基盤を整えておくことは、受注競争力の維持にもつながります。
建設業のDXの全体像と「何から手をつけるべきか」については、建設業のDX、何から始める?で経営者向けに解説しています。補助金の活用と合わせて参考にしてください。
よくある質問
よくある質問
- 一人親方(個人事業主)でも申請できますか?
- 申請可能です。個人事業主も小規模事業者に該当するため、賃上げ要件を満たせば補助率4/5の優遇措置も受けられます。gBizIDプライムは個人事業主名義で取得してください。
- 交付決定前にIT導入支援事業者と相談・デモを行っても問題ありませんか?
- 事前相談やデモ、トライアルは問題ありません。禁止されているのは「交付決定前の契約・発注・支払い」です。ツールの選定や比較検討は交付申請前に十分に行ってください。
- 複数のITツールを同時に申請できますか?
- 同一の申請枠内であれば、複数のITツールをまとめて1件の申請に含めることが可能です。たとえば施工管理アプリと勤怠管理ツールを通常枠で同時に申請するケースが該当します。ただし、異なる枠をまたいでの同時申請はできないため、通常枠とインボイス枠はそれぞれ別の申請として提出する必要があります。
- リースやレンタルで導入する場合も補助対象ですか?
- クラウドサービス(SaaS)の月額・年額利用料は補助対象です。ただし、最大2年分のクラウド利用料が上限とされています。ハードウェアのリース・レンタルについては、インボイス枠のPC・タブレット購入は対象ですが、リース契約は原則として補助対象外です。
- 申請を代行してくれるサービスはありますか?
- IT導入支援事業者が申請のサポートを行いますが、申請書への記載や最終的な提出は事業者本人の責任で行う必要があります。補助金申請に特化したコンサルティングサービスを利用する方法もありますが、費用(10〜30万円程度が相場)がかかるため、まずはIT導入支援事業者のサポートで十分かどうかを確認するのがよいでしょう。
あわせて読みたい:
- IT導入補助金活用事例 — 補助金を使ったDX成功事例 — 実際の申請・採択・導入の流れ
- 建設業のIT導入補助金活用ガイド — 制度の基本と建設業向け申請ステップ
- ものづくり補助金 建設業の申請ガイド — 設備投資との使い分け
- 建設業の業務改善助成金 — 最低賃金引き上げと設備投資の併用
- 建設業の省力化補助金 2026年度版 — 自動化機器導入の補助制度
- 建設業で使える補助金・助成金一覧 — 41制度の早見表
- 建設業のDX、何から始める? — 補助金活用前のDX全体像
参考情報
- デジタル化・AI導入補助金2026 公式サイト ― 中小企業基盤整備機構(IT導入補助金事務局)
- デジタル化・AI導入補助金2026 事業スケジュール ― 中小企業基盤整備機構
- デジタル化・AI導入補助金2026 公募要領 ― 中小企業庁、2026年3月公開
- gBizID ― デジタル庁
- SECURITY ACTION ― 情報処理推進機構(IPA)
- 建設業を巡る現状と課題 ― 国土交通省
- インフラ分野のDX ― 国土交通省
- 中小企業施策利用ガイドブック ― 中小企業庁
よくある質問
- デジタル化・AI導入補助金の補助額はいくらですか?
- 通常枠で5万〜450万円、インボイス枠で最大350万円、セキュリティ対策推進枠で5万〜150万円です。補助率は基本1/2ですが、小規模事業者(建設業は従業員20人以下)は賃上げ要件を満たすと最大4/5まで引き上げられます。
- IT導入補助金とデジタル化・AI導入補助金の違いは何ですか?
- 2026年度からIT導入補助金が「デジタル化・AI導入補助金」に名称変更されました。AI搭載ソフトウェアが明確に補助対象に追加され、小規模事業者向けの補助率引き上げ措置(最大4/5)が新設されたことが主な変更点です。
- 建設業の一人親方でも申請できますか?
- はい、個人事業主も申請可能です。従業員20人以下の小規模事業者に該当するため、賃上げ要件を満たせば補助率4/5の優遇措置も受けられます。
- 施工管理アプリはデジタル化・AI導入補助金の対象ですか?
- はい、ANDPAD、KANNA、ダンドリワーク、PhotoructionなどIT導入支援事業者に登録された施工管理アプリは補助対象です。通常枠で導入費用の1/2(小規模事業者は最大4/5)が補助されます。
- デジタル化・AI導入補助金の申請スケジュールはいつですか?
- 2026年度は3月30日から申請受付が開始され、第1次締切は5月12日です。年間を通じて複数回の締切が設定される予定で、第4次まで公表されています。
- 交付決定前にITツールを導入してしまうとどうなりますか?
- 交付決定前の契約・発注・支払いはすべて補助対象外になります。必ず交付決定の通知を受けてからツールの導入を開始してください。事前の相談やデモは問題ありません。
- デジタル化・AI導入補助金の採択率はどのくらいですか?
- 2026年度の採択率はまだ公表されていませんが、2025年度のIT導入補助金では通常枠の採択率が約37.9%、全体で43.6%でした。加点項目の確保と具体的な申請書の記述が採択率向上の鍵です。