この記事の監修 山本 貴大 / 株式会社ローカルマーケティングパートナーズ 代表取締役

建設業×DXの専門メディア「ケンテク」編集長。中小建設会社のDX導入支援・マーケティング支援に従事。

会社概要と導入前の課題

神奈川県を拠点に外壁塗装・屋根塗装・防水工事を手がけるF塗装(従業員23名)は、創業17年の地域密着型の塗装会社です。年間施工件数は約180件、売上高は2億4,000万円前後で、住宅から工場・公共施設まで幅広い施工実績を持ちます。

代表のF社長が「このままでは立ち行かない」と感じたのは、2025年の春のことでした。仕事量は増えているのに、事務作業の山が現場監督と事務員の時間を毎月食い潰している。採用しても定着しありません。見積もりから工事完了まで、書類のやり取りで何日も無駄になる。個々の問題は「昔からこうだった」で済ませてきたものの、23名規模になると歪みが経営の数字に直接出てくるようになっていました。

当時の業務実態を整理すると、問題は3つの領域に集中していました。

施工管理の紙・アナログ依存

現場の状況把握は、職人が日報用紙に手書きして事務所に持参する方式でした。施工写真はスマホで撮影するものの、案件ごとのフォルダ整理は各自に任されており、月末に施主への完了報告書を作成する段階になると「どの写真がどの現場のものか」を確認する作業だけで現場監督が半日潰れることもありました。

月間の業務工数を事務員と現場監督2名で試算したところ、施工管理関連の事務作業だけで月38時間が消えていることが判明しています。

紙の契約書が引き起こすコストと遅延

F塗装では工事請負契約書・工事下請負契約書ともに紙での締結が前提でした。収入印紙の購入(月平均約18,000円)、郵送と返送の往復(1件あたり平均5〜7日のタイムロス)、紙原本の保管スペースの確保という3重の負担が常態化していました。

電子メールで送付した契約書案に対して施主が内容修正を求めてきた場合、修正→再印刷→再郵送というループが発生し、着工開始が当初予定から10日以上ずれるケースも年に数件ありました。

勤怠管理の実態把握困難

従業員23名のうち、塗装職人は16名が複数現場を掛け持ちで回るスタイルをとっています。出退勤は事務所への電話連絡またはLINEで報告する運用でしたが、報告漏れが月に5〜8件発生しており、給与計算時に確認のやり取りが生じるのが常でした。

2024年4月から建設業にも時間外労働の上限規制が適用されましたが、リアルタイムで残業時間を把握する手段がなく、月末集計で初めて「3名が月45時間を超えていた」とわかるという状態が続いていました。

導入前の課題を数値で整理
  • 施工管理・事務作業: 月38時間(現場監督・事務員合計)
  • 収入印紙コスト: 月平均18,000円
  • 電子契約なしによる契約締結の遅延: 1件あたり平均5〜7日
  • 勤怠報告漏れ: 月5〜8件
  • 時間外労働の月中把握: 不可(月末集計のみ)

IT導入補助金の申請を決めた経緯

F社長がIT導入補助金の存在を知ったのは、地域の工務店組合が主催したセミナーでのことです。「補助率1/2でITツールを導入できる」という説明を聞き、以前から導入を検討していた施工管理アプリと電子契約を同時に申請できるかどうかを確認するため、地元の認定経営革新等支援機関(認定支援機関)に相談に行きました。

認定支援機関の担当者から「施工管理・電子契約・勤怠管理の3ツールを1回の申請にまとめることができる」と説明を受け、3ツール同時導入に切り替えることを決断します。勤怠管理は元々優先度が低かったものの、「どうせ申請するなら3本まとめたほうが効率的」という判断です。

補助金を活用する動機として、F社長は金銭的な節約だけでなく「外部の目が入ることで導入が中途半端にならない」という点も挙げています。「補助金を使うと、認定支援機関やベンダーとの約束ができる。社内で「やる気が失せたからやめよう」では済まなくなる。むしろその縛りが欲しかった」という言葉が、補助金申請を決めた本質的な理由を示しています。

申請前に確認すべき重要事項

IT導入補助金は採択通知が届く前にツールを有料契約してしまうと、その費用が補助対象外になります。3社に相談を始めた時点で「無料トライアルのまま採択まで待つ」という姿勢を各ベンダーに伝えることが最初のステップです。

導入した3ツールとその選定理由

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F塗装が選んだ3ツールの選定基準は、「現場の職人がスマホ1台で完結できること」「補助金対象のIT導入支援事業者経由で購入できること」「連携実績のある組み合わせであること」の3点です。

ツール1 — 施工管理アプリ(写真・日報・工程管理)

項目詳細
月額費用(23名分)46,000円
補助率1/2
補助後の実質月額23,000円
主な活用用途現場写真管理・日報・施工報告書・工程表作成

施工管理アプリの選定で最も重視したのは「写真を撮るとそのまま案件フォルダに自動仕分けされる機能」でした。職人がスマホで施工中の写真を撮影すると、位置情報と日付で自動的に案件ごとに整理されます。現場監督が月末の報告書作成に費やしていた時間の大半が、この機能で解消できると判断しました。

日報はアプリ上のテンプレートに入力してワンタップで送信する運用に切り替えています。これにより、職人が日報用紙を事務所に持参する必要がなくなり、現場→事務所の移動を挟まずに当日のうちにデータが集まるようになりました。

建設業向けの施工管理アプリを比較したい方は建設業向け施工管理アプリ比較も参照してください。

ツール2 — 電子契約サービス(工事請負・下請負契約)

項目詳細
月額費用16,500円
補助率1/2
補助後の実質月額8,250円
主な活用用途工事請負契約・下請負契約・変更合意書の電子締結

電子契約サービスは、施主・下請け業者の双方がメールアドレスさえあれば利用できるサービスを選定しました。契約相手側にアカウント登録を求めないタイプが大半の施主や下請け業者に受け入れられやすいと判断したためです。

電子的に作成・締結した契約書には印紙税が課税されません。F塗装の場合、月平均18,000円の収入印紙コストが導入後にゼロになっています。電子契約の比較検討については建設業向け電子契約サービス比較をご確認ください。

ツール3 — 勤怠管理アプリ(GPS打刻・残業アラート)

項目詳細
月額費用(23名分)9,200円(1名あたり400円)
補助率1/2
補助後の実質月額4,600円
主な活用用途GPS打刻・残業時間リアルタイム把握・有給管理

勤怠管理アプリは、外壁塗装業特有の「複数現場の掛け持ち」「直行直帰」に対応したGPS打刻機能を選定条件にしました。スマホで打刻すると位置情報が記録されるため、「どの現場で何時間働いたか」が把握できます。

残業時間が月35時間を超えた社員に自動でアラートが飛ぶ設定にしたことで、月中に是正できる仕組みを構築しています。建設業向け勤怠管理アプリの比較は建設業向け勤怠管理アプリ比較をご参照ください。

3ツールのコスト合計

ツール通常月額補助後月額月の差額
施工管理アプリ46,000円23,000円23,000円
電子契約16,500円8,250円8,250円
勤怠管理9,200円4,600円4,600円
合計71,700円35,850円35,850円

申請プロセス — 認定支援機関への相談から交付申請まで

F塗装の申請プロセスを時系列で整理します。実際にかかった期間は相談開始から交付決定まで4ヶ月でした。

フェーズ1 — 認定支援機関への相談(1週目〜2週目)

地元商工会議所の認定支援機関に予約を入れ、1回90分の相談を2回実施しました。1回目は現状の業務課題と導入目的の整理、2回目は補助金のスキームと申請スケジュールの確認です。

この段階で「3ツールをまとめて申請する」方針が固まり、各ツールのベンダーがIT導入支援事業者として登録されているかどうかを並行して確認しました。確認方法はIT導入補助金事務局の公式サイト上の検索ツールで、ベンダー名または製品名で検索するだけです。

フェーズ2 — ベンダー選定と書類準備(3週目〜5週目)

3つのカテゴリそれぞれについて2〜3社に問い合わせ、見積もりを取得しました。この時点では有料契約は行わず、無料トライアルで実際の操作感を確認するにとどめています。

申請書類のうち、F塗装が自社で用意した資料は以下の4点です。

  • 直近2期分の決算書
  • 法人番号・従業員数・売上高の確認書類
  • 導入目的と期待効果を記載した申請フォームへの入力
  • gBizIDプライムのアカウント取得(電子申請に必要)

gBizIDプライムの取得に約2週間かかるため、補助金申請を検討し始めた段階で早めに申請しておくことが重要です。書類作成の大部分はベンダー側が担当し、F社長の社内作業は合計8〜10時間程度でした。

フェーズ3 — 交付申請と採択待ち(6週目〜13週目)

ベンダーと認定支援機関が作成した申請書一式を確認し、電子申請を実施。申請完了からおよそ7週間後に採択通知が届きました。

採択通知を受け取った翌日に3ツール全ての有料プランへの切り替えを完了しています。採択前の段階では引き続き無料トライアルを継続しており、この期間中に操作マニュアルを社内向けに作成するという時間の有効活用もできました。

フェーズ4 — 実績報告と交付決定(14週目〜17週目)

ツール導入から1ヶ月後に実績報告書を提出しました。実績報告には「導入したことの証拠(請求書・ログイン履歴など)」と「効果の簡単な記録」が必要です。ここもベンダーがフォーマットを用意してくれたため、F塗装の作業は確認と署名のみです。

実績報告から3週間後に交付決定通知が届き、補助金160万円が口座に振り込まれました。

申請〜交付決定のタイムライン(全体)

フェーズ期間F塗装の作業時間
認定支援機関への相談2週間約3時間
ベンダー選定・書類準備3週間約5時間
交付申請〜採択通知7週間待機のみ
ツール導入・実績報告4週間約2時間
交付決定・入金3週間待機のみ
合計約4ヶ月社内作業 計10時間
申請のポイント: gBizIDは早めに取る

gBizIDプライムの取得は郵送手続きが入るため、申請開始から取得まで2〜3週間かかります。「補助金を使いたい」と決めた段階で、ベンダー選定と並行してgBizIDの申請を始めることが、スケジュールを前倒しにする最大のポイントです。

補助額160万円の内訳と自己負担額

F塗装が受け取った補助金の総額は1,601,400円(端数処理後の概算)です。各ツールの補助対象費用と補助額の内訳を整理します。

補助対象費用の内訳

ツール補助対象費用(1年分)補助率補助額
施工管理アプリ552,000円1/2276,000円
電子契約198,000円1/299,000円
勤怠管理110,400円1/255,200円
初期費用・設定費用(3ツール合計)2,340,000円相当2/31,171,200円
合計約160万円

IT導入補助金では、ソフトウェアの月額利用料(サブスク費用)に加え、導入・設定費用も補助対象になります。F塗装のケースでは初期費用・設定費の補助率が2/3に設定されており、この部分が補助総額を押し上げた要因です。

自己負担額の実態

補助対象費用のうち自社負担になった部分を整理します。

  • ソフトウェア月額(補助後): 月35,850円(年間430,200円)
  • 初期費用・設定費の自己負担分: 780,000円(補助金受領前に立替払い)
  • 自己負担合計(初年度): 1,210,200円

補助金の振り込みは実績報告後のため、導入初年度は一時的な立替が発生します。F塗装では運転資金の中から支出し、補助金振り込み後に補填する形で対応しました。資金繰りに不安がある場合は、金融機関に事前相談するか、補助金入金後に費用が発生するよう導入スケジュールをベンダーと調整する方法もあります。

出典: IT導入補助金(デジタル化・AI導入補助金)公式サイト

導入後の変化 — Before/After

3ツール導入から8ヶ月が経過した時点で、F塗装の業務実態を再測定しました。

業務時間のBefore/After

業務カテゴリ導入前(月)導入後(月)削減率
施工写真管理・報告書作成18時間4時間78%削減
日報・工程管理12時間2時間83%削減
契約書の作成・押印・郵送対応8時間1.5時間81%削減
勤怠集計・確認6時間1時間83%削減
書類保管・過去案件の照会4時間0.5時間88%削減
合計48時間9時間81%削減

月48時間が月9時間になり、39時間の削減を達成しました。これは1ヶ月の営業日数換算で約5日分に相当します。現場監督1名が毎月まるまる5日間、現場に集中できるようになった計算です。

コストのBefore/After

コスト項目導入前(年間)導入後(年間)変化
収入印紙約216,000円0円216,000円削減
郵送費(契約書・書類)約72,000円約12,000円60,000円削減
印刷・消耗品費約36,000円約6,000円30,000円削減
削減コスト合計年間306,000円削減

年間30万6,000円のコスト削減が実現しました。ツール費用の自己負担(年間430,200円)と比較すると差し引き約12万円の持ち出しになりますが、業務時間39時間削減の生産性効果(時間単価2,500円換算で年間117万円)を合算すると、初年度から大幅なプラスになります。

ペーパーレス化の実績

8ヶ月間で電子契約で締結した件数は94件、廃止した収入印紙の枚数は126枚です。従来の契約プロセスでかかっていた「依頼→印刷→押印→郵送→相手の確認→返送→受領確認」という7ステップが「送付→相手が確認→電子署名」の3ステップに短縮されました。

F社長が特に効果を感じたのは「契約締結のスピードが上がったことで着工前倒しができるようになった」点です。以前は郵送返送の往復で5〜7日かかっていた契約締結が、早いケースでは当日中に完了します。繁忙期(3月・9月)に受注が集中するF塗装にとって、着工開始の前倒しは1シーズンあたり数件の追加受注につながる経営効果があると試算しています。

2024年問題への対応状況

規制内容導入前導入後
月45時間超の残業者月平均3名(月末集計で判明)月平均0.3名(月中にアラート → 是正)
有給取得率41%64%
残業時間の月中把握不可リアルタイムで管理画面から確認可能
打刻漏れ率20〜30%(LINE報告の漏れ)2%以下(スマホアプリ打刻)

月45時間を超える残業者が月平均3名から0.3名に減少した要因は、アプリ導入そのものよりも「見える化」にあります。現場監督が自分のチームの残業時間をスマホで確認できるようになり、35時間を超えると自動でアラートが届くため、月中に段取りを変える判断ができるようになりました。

失敗しそうだったポイントと対処

順調に見えるF塗装の導入プロセスでも、いくつか想定外の壁がありました。後から申請を検討する建設会社のために、詰まったポイントと実際の対処を共有します。

職人のスマホがAndroid・iOSで混在していた

職人16名のスマホ機種がAndroid・iOSに混在しており、一部の古い機種では施工管理アプリの動作が不安定になる問題が発生しました。iOSは全機種で正常動作しましたが、Androidの2機種でGPS精度が低下する不具合が確認されました。

対処としては、該当の2名に会社からの貸与スマホ(中古Android端末、1台2万円程度)を用意することで解決しています。端末代は補助金の対象外ですが、合計4万円の出費で全員の動作環境が統一できました。

下請け業者への電子契約の説明に手間がかかった

施主への電子契約への切り替えはほぼスムーズに進みましたが、一部の下請け業者(塗装職人の個人事業主)から「PDFをメールで受け取る方法がわからない」という反応が複数出ました。年配の職人がスマートフォン操作に慣れていないケースです。

F塗装が取った対応は2つです。1つは電子契約サービスのサポートに問い合わせ、操作方法をスクリーンショット付きで解説した1枚のPDFを作成してもらい、下請け業者に渡しました。もう1つは電子化に強く抵抗する業者については紙の契約書を継続しつつ、徐々に移行するという段階的な対応です。導入後8ヶ月の時点で、下請け業者の電子契約切り替え率は全体の約74%です。

直行直帰のルール設定に社労士への相談が必要だった

外壁塗装業では職人が現場へ直行し、終業後に直帰するケースが頻繁にあります。勤怠管理アプリの設定を始めた段階で「現場への移動時間を労働時間に含めるかどうか」という論点が浮上しました。

F塗装では就業規則に「直行直帰の場合は現場到着時に打刻し、現場出発時に退勤打刻する」と明記するため、取引のある社労士に就業規則の改定を依頼しました。この手続きに2週間と費用約15,000円がかかっています。就業規則と勤怠アプリの運用を整合させるステップを後回しにすると、労使トラブル時に問題になるため、最初にやっておくべき作業です。

就業規則の整備は後回しにしない

直行直帰・待機時間・複数現場の掛け持ちなど、建設業特有の勤務形態は就業規則の中で明文化されていないことが多くあります。勤怠管理アプリの設定前に社労士と相談し、就業規則と実運用を一致させることが、後々のトラブルを防ぐ最重要ステップです。

これから申請する建設会社へのアドバイス

F社長と認定支援機関の担当者、それぞれの視点から整理した申請上のポイントを紹介します。

ベンダー選びより「IT導入支援事業者かどうか」の確認が先

IT導入補助金では、補助対象になるのは「IT導入支援事業者として登録されたベンダーが提供するツール」に限られます。いくら使いやすいアプリでも、未登録ベンダーのツールは補助対象になりません。

確認方法はIT導入補助金事務局の公式サイト(it-shien.smrj.go.jp)でベンダー名・製品名を検索するだけです。複数ツールを同時導入する場合、それぞれのベンダーが登録済みかどうかを個別に確認してください。

認定支援機関への相談は早い段階で

認定支援機関(商工会・商工会議所・金融機関など)への相談は、IT導入補助金の申請自体に必須ではないケースもありますが、F塗装のように3ツールを同時申請する場合は補助金設計の相談相手として大きな役割を果たします。相談は無料であることが多く、申請スケジュールの把握やgBizID取得のリマインドなど、申請漏れ防止のサポートも受けられます。

建設業のIT導入補助金活用ガイドでは申請手順を詳しく解説していますので、あわせて参照してください。

公募期間を逃すと次まで数ヶ月待つ

IT導入補助金は年に複数回の公募スケジュールが設定されており、1回の公募期間は2〜4週間程度です。「次の公募で申請しよう」と後回しにすると、次の公募まで3〜4ヶ月待つことになります。

F塗装は公募スケジュールを確認したうえで「次の締め切りまでに準備を完了する」という逆算で動いたため、想定どおりのスケジュールで申請できました。まず事務局サイトで次の公募スケジュールを確認することが、すべての出発点です。

複数ツールの同時申請で補助額を最大化する

3ツールを1回の申請にまとめたことで、F塗装の補助額は合計160万円になりました。「1本ずつ試してから次を入れよう」という発想で個別に申請した場合、申請の手間が3倍になるうえ、まとめて申請した場合より補助額が少なくなる可能性があります。

導入を検討しているツールが複数ある場合は、できるだけ同時申請を検討することをおすすめします。

実績報告の期限をカレンダーに入れる

採択後の実績報告には提出期限があり、これを過ぎると補助金が受け取れなくなります。ベンダーがリマインドしてくれることが多いですが、最終的な責任は申請者にあります。採択通知を受け取った時点でカレンダーに期限を登録し、自社でもスケジュール管理することを習慣にしてください。

まとめ

F塗装の事例が示すのは、従業員23名規模の外壁塗装会社でも、IT導入補助金を適切に活用すれば160万円の補助を受けながら3ツールを同時導入できるという実証データです。

月48時間の事務作業が月9時間に短縮され、年間30万円超のコスト削減と、収入印紙コストの完全ゼロ化を達成しました。2024年問題への対応として月45時間超の残業者を月平均3名から0.3名に削減したことも、法令リスクの観点から大きな成果です。

申請プロセスで社内が担った実質的な作業時間は合計10時間程度でした。「申請が難しそう」というイメージが補助金活用を妨げているなら、それは実態と大きくかけ離れています。書類作成の大部分はIT導入支援事業者と認定支援機関が担い、経営者が行うのは情報提供と意思決定だけです。

F社長は「最初の一歩が一番難しかった」と話します。補助金という外部の締め切りと、認定支援機関というパートナーの存在が、「やらなければならない」という心理的な後押しになりました。費用の不安よりも「いつ始めるか」の決断が、建設業DXの最初の関門です。

参考情報

よくある質問

IT導入補助金で建設業向けのツールは補助対象になりますか?
なります。施工管理アプリ・電子契約サービス・勤怠管理アプリなど、IT導入支援事業者として登録されたベンダーのツールが対象です。まずベンダーが登録済みかどうかを事務局の公式サイトで確認してください。補助率はソフトウェア費用に対して1/2、初期費用・設定費は2/3が基本です。
申請から補助金の入金まで何ヶ月かかりますか?
F塗装の事例では認定支援機関への相談から交付決定まで4ヶ月かかりました。申請から採択まで約7週間、採択後の導入・実績報告から入金まで約6〜7週間が目安です。初期費用は一時的に立替が必要なため、資金繰りも含めて計画を立てることが重要です。
複数ツールをまとめて申請できますか?
できます。F塗装のように施工管理・電子契約・勤怠管理の3ツールを1回の申請にまとめることが可能です。まとめて申請するほうが補助額も大きく、申請手続きも1回で完了するため効率的です。
IT導入補助金の申請で自社がやる作業はどれくらいですか?
F塗装の場合、社内担当者の合計作業時間は約10時間でした。主な作業は会社情報の提供・gBizIDの取得・申請書への電子署名・実績報告書の確認です。書類作成の大部分はIT導入支援事業者(ベンダー)と認定支援機関が担います。
勤怠管理アプリを入れると2024年問題に対応できますか?
GPS打刻と残業アラート機能を持つ勤怠管理アプリを導入すると、月中に残業時間を把握して是正できます。F塗装では月45時間超の残業者が月平均3名から0.3名に減少しました。勤怠データのリアルタイム把握が行動変容を促す仕組みです。ただし、直行直帰のルール設定など就業規則の整備も同時に行う必要があります。

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