この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「電子契約を導入したいが、建設業でも本当に使えるのか」「協力会社がITに不慣れなので、相手側の対応が心配」という声は多くの建設会社の経営者・管理部門から聞こえます。実際、国土交通省の2024年度建設業実態調査によると、建設業の電子契約活用率は38%にとどまっており、製造業(61%)や情報サービス業(74%)と比べて遅れています。

背景には「建設業法の固有要件」「協力会社のIT習熟度の多様性」「大型案件における証拠力への要求の高さ」という3つのハードルがあります。この記事では、これらのハードルを踏まえたうえで、建設業の電子契約に対応するサービスを8つ厳選して比較します。スペック並列だけでなく、「どの規模・どの用途に向いているか」まで整理しているので、選定の参考にしてください。

建設業の電子契約が「難しい」と言われる3つの理由

電子契約の普及が他業種より遅れている理由は、建設業固有の事情にあります。3つのハードルを理解しておくと、サービス選定の軸がはっきりします。

  1. 協力会社のITリテラシーが多様

元請けが電子契約を導入しても、下請け・孫請けの協力会社が対応できなければ運用できません。建設現場には数十社の協力会社が関与することも珍しくなく、そのすべてがPCやスマートフォンを使いこなせる環境にあるわけではありません。「相手先がサービスに登録しないと署名できない」タイプの電子契約では、この問題が顕在化します。

  1. 建設業法の固有要件がある

一般的な電子署名サービスであっても、建設業の契約に使えないものがあります。建設業法施行規則第13条の2が定める「見読性」「原本性」「相手方の承諾」の3要件を満たすサービスでなければ、法的に有効な契約とみなされないリスクがあります。サービス選定時には「建設業法対応」の明示を必ず確認します。

  1. 大型案件では証拠力の要求が高い

工事請負契約は数百万〜数億円規模の取引が含まれます。後日の紛争に備えるため、誰が署名したかを確実に証明できる「当事者署名型」を求める声も多くあります。ただし、すべての契約を当事者署名型で行うのはコストと手間がかかるため、案件規模・リスクに応じた使い分けが現実的です。

2020年法改正で何が変わったか

建設業法第19条はもともと工事請負契約の書面交付を義務付けていましたが、2020年10月の改正によって一定の技術的要件を満たした電子契約でも書面に代えることが認められました。この改正は「建設業のデジタル化推進」という国交省の方針と連動しています。

電子契約を利用するための3要件(建設業法施行規則第13条の2)
  1. 見読性の確保 — 契約内容をいつでも画面表示・印刷できること

  2. 原本性の確保 — 改ざんされていないことを確認できる技術的措置(電子署名またはタイムスタンプ)が施されていること

  3. 相手方の承諾 — 事前に相手方から電子契約での締結に同意を得ていること

電子化によるメリットは複数ありますが、金銭的に最もインパクトが大きいのは印紙税の削減です。工事請負契約書に貼付する印紙税は、紙の文書には課税されますが電子文書には課税されません。1,000万円超〜5,000万円以下の工事で1通20,000円、5,000万円超〜1億円以下で60,000円の印紙税が不要になります。月間10本の工事請負契約(平均3,000万円規模)を締結する建設会社であれば、電子化だけで年間約240万円の印紙税削減が見込めます。

建設業で電子化できる書類の範囲

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電子契約と聞くと「工事請負契約書」だけをイメージしがちですが、実際には建設業の業務で交わす多くの書類が電子化の対象になります。どの書類から電子化を始めるかによって、最適なサービスも変わります。

建設業で電子化できる主な書類

書類種別対象法令電子化の難易度優先度
下請負契約書建設業法第19条低(定型書類・小口が多い)
注文書・注文請書建設業法第19条の3低(繰り返し発行される)
工事請負契約書(元請け)建設業法第19条中(金額大・法的証拠力が重要)
変更契約書・変更覚書建設業法第19条低(少額・緊急対応が多い)
工事完成検査確認書
秘密保持契約書(NDA)
保守契約書

経験則上、最初から工事請負契約書(元請け)の電子化を目指すと、法的要件の確認や大手元請けとの調整に時間がかかり、導入が止まるケースがあります。「下請負契約書」「注文書・注文請書」から始めると、月に数十件発生する書類でコスト削減効果と慣れを同時に得られます。

建設業法の適用を受けない書類の扱い

覚書・機密保持契約・工事完成検査確認書など、建設業法が直接適用されない書類については、電子署名法(電子署名及び認証業務に関する法律)の要件を満たしていれば有効な電子契約として成立します。これらの書類は立会人署名型で問題なく、相手方の操作も最も簡単なため、電子化の入口として最適です。

電子契約サービスを選ぶ4つの軸

建設業で電子契約サービスを選ぶ際に確認すべき点は一般業種より多くなります。

軸1: 建設業法の要件適合性

最優先で確認すべき項目です。サービスの公式サイトに「建設業法対応」「工事請負契約対応」という記載があるか確認します。加えて、建設業向けの導入事例・サポート体制があるかも判断材料になります。要件を満たしているかどうかが不明な場合は、導入前にサービス事業者に書面で確認を取っておくことを推奨します。

軸2: 署名方式(当事者署名型 vs 立会人署名型)

署名方式仕組み法的証拠力相手方の手間
当事者署名型契約当事者本人の電子証明書で署名高い電子証明書の取得が必要(手間大)
立会人署名型サービス事業者が立会人として署名中程度メールリンクで完結(手間小)

元請けの大型案件には当事者署名型、協力会社の多い下請け案件には立会人署名型と使い分けるのが実務上の合理解です。GMOサインのように両方に対応したサービスを選べば、1アカウントで使い分けが可能です。

軸3: 協力会社側の操作負担

相手方がアカウント作成なしにメールリンクだけで署名を完了できるサービスが、現場への展開でつまずきにくいです。「相手方に課金が発生しない」設計であることも重要です。協力会社が自分でコストを負担するサービスでは、電子契約への協力を断られるケースが生じます。

軸4: 既存システムとの連携

会計ソフト(freee会計・マネーフォワード・勘定奉行など)や施工管理アプリとの連携があると、契約書データの二重入力を省けます。また電子帳簿保存法(電帳法)対応の保存機能を標準搭載しているかは必須確認項目で、後からオプション追加が必要になるサービスではコストが膨らむことがあります。

建設業向け電子契約サービス8選 — 比較一覧

サービス名料金主な機能補助金対応
クラウドサイン 月額11,000円〜
  • 立会人署名型
  • 建設業法対応
  • 相手方アカウント不要
  • テンプレート管理
対応
GMOサイン 月額8,800円〜
  • 当事者/立会人両対応
  • 建設業法対応
  • タイムスタンプ
  • 電帳法対応
対応
電子印鑑GMOサイン 月額0円〜(無料プランあり)
  • 無料5件/月
  • 建設業法対応
  • 電帳法対応
  • API連携
対応
freeeサイン 月額4,980円〜
  • 立会人署名型
  • freee会計連携
  • テンプレート
  • 電帳法対応
対応
DocuSign 月額25ドル〜
  • 当事者署名型
  • 180か国対応
  • 多言語UI
  • ワークフロー
対応
マネーフォワード クラウド契約 要問合せ
  • 立会人署名型
  • MFクラウド連携
  • 更新アラート
  • 契約管理
対応
BtoBプラットフォーム 契約書 月額10,000円〜
  • 建設業対応
  • 受発注連携
  • インボイス対応
  • 取引先管理
対応
Adobe Acrobat Sign 月額2,728円〜
  • PDF一体型
  • モバイル署名
  • 立会人署名型
  • 大量送信向け
対応

各サービスの詳細と選定ポイント

クラウドサイン — 国内シェアNo.1、建設業導入実績も豊富

弁護士ドットコムが運営する国内シェアNo.1の電子契約サービスで、月間送受信件数は150万件超(2024年実績)です。全国の建設会社・ゼネコンへの導入実績が豊富で、建設業向けの専用資料や導入事例集も公開されています。

立会人署名型を採用しており、相手方はアカウント作成なしにメールリンクから契約書を確認・署名するだけで完了します。ITに不慣れな一人親方や小規模の協力会社でも「メールが読めれば使える」設計は、建設現場への展開において最大の強みです。送信料は1件あたり220円(税込)の従量課金で、月額基本料(11,000円〜)と合わせての費用計算が必要です。

テンプレート機能では工事請負契約書・下請負契約書・覚書などの雛型を事前登録でき、工事名・金額・工期を入力するだけで契約書が作成できます。承認フローのカスタマイズも可能なため、部長決裁が必要な大型案件と現場主任決裁で足りる小口案件を自動で振り分ける運用もできます。

デジタル化・AI導入補助金の対象ツールとして登録されており、要件を満たせば導入費用の一部補助が受けられます。無料トライアル期間があるため、まず試してから本格導入の判断ができる点も安心です。

  • 向いている会社 — 協力会社の数が多い元請け建設会社、電子契約の初導入で「一番使われているもの」から始めたい中小建設会社

GMOサイン — 当事者型と立会人型を1アカウントで使い分け

GMOグローバルサインが提供する電子契約サービスで、当事者署名型と立会人署名型の両方を1つのアカウントで使い分けられるのが最大の特徴です。元請けの大型案件には法的証拠力の高い当事者署名型を、協力会社が多い小口の下請け案件には手軽な立会人署名型を割り当てるという運用を、同じプランで実現できます。

認定タイムスタンプが全契約に付与されるため、電子帳簿保存法の真実性確保要件を標準で充たし、後からオプション追加が不要です。SMS認証によって署名者の本人確認強度も上げられます。月額8,800円〜という料金帯は建設業の電子契約サービスとして比較的手ごろで、送信件数の少ない中小建設会社でも費用対効果が出やすいです。

建設業法への対応についても公式ページで明示されており、工事請負契約に必要な要件を満たしています。大手ゼネコンから中小建設会社まで幅広い導入実績があります。

  • 向いている会社 — 元請けと下請けが混在しており、案件規模に応じて署名方式を使い分けたい建設会社

電子印鑑GMOサイン(無料プランあり)— まず試したい会社向け

GMOグローバルサインが提供する別ライン製品で、フリープランでは月5件まで無料で電子署名を送信できます。電子契約に初めて取り組む建設会社が「コストゼロでリアルな業務フローを試せる」入口として機能します。

機能面では有料プランに比べて制限がありますが(テンプレート数・ファイルサイズなど)、建設業法の3要件への対応は有料プランと変わりません。年間の工事件数が少ない小規模建設会社・工務店や、まず「社内の受け入れ体制を確認してから本格導入を決めたい」という会社に向いています。月間5件を超えた段階で有料プランへ移行するステップアップ型の活用が可能です。

  • 向いている会社 — 電子契約に興味はあるが初期費用をかけたくない小規模建設会社・工務店

freeeサイン — freeeユーザーの業務連携効率が高い

freee会計を利用している建設会社であれば、電子署名した契約書データが会計ソフトに自動連携されます。契約から請求・入金管理までの一連の業務フローを1つのエコシステムで管理できることが最大のメリットです。月額4,980円〜という料金帯は、小規模建設会社・工務店でも導入しやすい水準です。

テンプレート機能・承認ワークフローも標準搭載されており、定型契約の作成効率化にも貢献します。立会人署名型のみの対応のため、法的証拠力を最重視する大型元請け案件には向きません。また、相手方(協力会社)はfreeeへの登録が不要で、メールリンクから署名を完了できます。

freee会計以外のツールをメインで使っている場合は、連携の恩恵が薄くなるため、他サービスとの比較をおすすめします。

  • 向いている会社 — freee会計を導入済みの中小建設会社、バックオフィス業務の連携コストを最小化したい会社

DocuSign — グローバル取引がある建設会社・大手ゼネコン向け

世界180か国以上で利用される電子署名サービスで、グローバルデファクトスタンダードの地位を確立しています。当事者署名型に対応しており、法的証拠力の高い電子契約が可能です。

外国籍企業や海外JVとの取引がある建設会社、海外に事業展開する大手ゼネコンでは選択肢の筆頭になります。ワークフロー機能が充実しており、多段階の承認プロセスを柔軟に設計できます。月額25ドル〜という料金は円安の影響を受けますが、グローバル標準のサポート体制は他サービスにない強みです。

UIが英語ベースのため、国内の中小建設会社には操作のハードルがやや高く、日本語サポートも限定的です。国内取引のみであれば、クラウドサインやGMOサインのほうが使いやすさと費用対効果で上回ります。

  • 向いている会社 — グローバル展開のある大手ゼネコン、海外JVや外国籍企業との取引が多い建設会社

マネーフォワード クラウド契約 — MFエコシステムを最大化する選択

マネーフォワードの会計・給与・経費・請求書各サービスと連携する電子契約サービスです。契約書の更新期限アラート機能が充実しており、保守契約・機器リース・長期の外注契約などを多数保有する建設会社での更新漏れ防止に強みを発揮します。

すでにマネーフォワードのシリーズを複数導入している場合、操作画面の統一感と連携のスムーズさが生産性向上につながります。料金は要問合せ形式で、複数サービスを組み合わせた統合プランでの見積もりが必要です。電子帳簿保存法対応の保存機能も標準で備えています。

クラウドサインやGMOサインと比較すると、建設業固有の機能(建設業法向けのガイド等)が充実しているとは言えません。マネーフォワードシリーズを使っていない場合は、他サービスを選ぶ合理性のほうが高いです。

  • 向いている会社 — マネーフォワードの他サービスを複数利用中で、統合管理を重視する建設会社

BtoBプラットフォーム 契約書 — 請求書・受発注と一体化したい場合

インフォマートが提供するBtoBプラットフォームシリーズの契約書モジュールです。同プラットフォームの請求書・受発注ツールとの一体管理が可能で、取引先との書類やり取りをまとめてデジタル化できます。

建設業の発注・請求は協力会社との受発注書・注文書・請求書が多く発生します。これらを同一プラットフォームで管理することで、取引先ごとの書類散逸を防ぎ、検索・参照効率が上がります。インボイス制度・電帳法への対応も標準搭載されており、制度対応のための追加コストが発生しません。

月額10,000円〜の料金は電子契約単体としてはやや高めですが、受発注・請求書の電子化も合わせて導入する場合は、複数ツールを別々に契約するより費用が抑えられるケースがあります。

  • 向いている会社 — 受発注・請求書・契約書をまとめてデジタル化したい中堅建設会社

Adobe Acrobat Sign — PDF業務フローをそのまま電子化

AdobeのAcrobat Signは、PDF編集(Adobe Acrobat)と電子署名が一体になっているのが特徴です。図面・仕様書・契約書がすべてPDF形式で管理されている建設会社では、既存の業務フローを大きく変えずに電子署名を組み込めます。

月額2,728円〜という料金は本記事で紹介する8サービスの中で最も低価格帯で、現場担当者がスマートフォンで署名する用途にも対応しています。大量の書類に電子署名を付与するバッチ処理にも強みがあります。

一方で、建設業法対応について公式サイトでの明示が他社より弱い面があります。導入前にサービス事業者に「建設業法施行規則第13条の2の要件を満たすか」の確認を取ることを推奨します。

  • 向いている会社 — Adobe Acrobatをすでに利用しており、PDF中心の業務フローを変えたくない建設会社

企業規模別おすすめ

規模や用途によって最適なサービスは変わります。以下の早見表を参考に絞り込んでください。

規模・状況優先する軸おすすめ
10人未満の工務店・専門業者低コスト・簡単操作電子印鑑GMOサイン(無料プランで試す)、freeeサイン
20〜50人の中小建設会社(初導入)協力会社への展開しやすさクラウドサイン
50〜200人の中堅建設会社署名方式の使い分け・電帳法対応GMOサイン
200人以上の建設会社システム連携・受発注一体管理BtoBプラットフォーム、マネーフォワード
大手・ゼネコン(グローバル取引あり)当事者署名型・グローバル対応DocuSign、クラウドサイン(エンタープライズ)
freee会計を使っている会社連携効率freeeサイン

規模別・より詳しいアドバイス

10人未満の工務店・一人親方

最優先は「コストをかけずに試せること」です。電子印鑑GMOサインの無料プランで月5件まで無料送信し、「電子契約が自分の業務フローに合うかどうか」を確認してから有料プランや他サービスへの移行を判断します。freeeサインはfreee会計との連携が強みですが、freeeを使っていない場合はメリットが薄いため、まず電子印鑑GMOサインから始めることをおすすめします。

20〜100人の中小建設会社

この規模では「協力会社への展開しやすさ」が最重要です。協力会社数は10〜50社が多く、全社が電子契約に対応できるかが運用成否を左右します。クラウドサインが第一選択肢で、相手方アカウント不要・メールリンク完結の設計が協力会社への説明コストを最小化します。月間の送信件数が30〜50件を超えてくる段階でGMOサインへの乗り換えも選択肢に入ります。

100〜500人の中堅建設会社

元請け・下請けが混在し、案件規模も多様なため「署名方式の使い分け」が求められます。GMOサインは当事者型と立会人型を1アカウントで使い分けられるため、この規模に最適です。既存の会計・受発注システムとの連携要件が出てくる場合は、BtoBプラットフォームやマネーフォワードとの比較も行います。

500人以上の大手建設会社・ゼネコン

この規模になると「複数拠点での統一運用」「大量送信への対応」「既存ERPとのAPI連携」が選定軸になります。クラウドサインのエンタープライズプランやDocuSignが候補で、IT部門とのシステム統合要件を整理したうえで選定します。海外JVや外国籍企業との取引がある場合はDocuSignが最有力です。

電子契約で削減できるコスト試算

コスト項目紙の契約電子契約備考
印紙税200円〜60万円(契約金額による)不要電子文書は課税文書に非該当
郵送費1通500〜1,000円不要往復郵送が不要
印刷・製本費1通50〜200円不要割印・製本作業なし
保管費用書庫・倉庫スペースクラウド保存検索効率も向上
契約締結日数郵送往復で5〜10日最短即日〜数時間工期スケジュールに余裕が生まれる
年間240万円の印紙税削減試算

月10本の工事請負契約(平均契約金額3,000万円)を締結する建設会社の場合、1通あたりの印紙税は20,000円。年間では200,000円×12か月=240万円の印紙税が電子化により不要になります。電子契約サービスの年間費用(13万〜20万円程度)を差し引いても、初年度から利益が出る計算になります。

主要サービスの料金モデル比較

電子契約サービスの料金は「月額固定+送信従量課金」と「月額固定のみ」の2パターンに大別されます。

サービス月額基本料送信従量課金月30件試算(年間)
クラウドサイン11,000円〜220円/件18,920円 → 年22.7万円
GMOサイン8,800円〜110円/件〜12,100円 → 年14.5万円
freeeサイン4,980円〜プランによる要見積もり
電子印鑑GMOサイン0円〜(5件/月まで無料)超過分課金5件超過分のみ課金

月間送信件数が多い会社ほど従量課金の比重が大きくなるため、年間の総コスト計算が重要です。クラウドサインは大量送信向けの法人プランもあるため、月間50件を超える場合は法人向けの見積もりを取ることをおすすめします。

電子契約導入の4ステップ

1

対象書類と優先順位を決める

最初から全契約書を電子化しようとすると現場が混乱します。「下請負契約書」「注文書・注文請書」など定型・小口の書類から始め、工事請負契約本体は慣れてから適用するのが失敗の少ないアプローチです。

2

サービスを選定・トライアルする

無料トライアルを活用し、実際の業務フローで操作確認を行います。必ず協力会社1〜2社に協力してもらい、相手方の署名操作が問題なく完了するかを確認してください。ここで躓くサービスは本番でも同じ問題が起きます。

3

社内規程・雛形を整備する

電子契約の利用ポリシー(対象書類の範囲、承認フロー、保存期間など)を社内文書として整備します。電子帳簿保存法の保存要件(真実性・可視性の確保)も合わせて整理し、担当者が迷わない運用マニュアルを作成します。

4

協力会社へ案内・段階的に展開する

操作手順を1ページにまとめた案内書を協力会社に事前配布します。最初は数社に限定してパイロット運用を行い、問題がなければ順次対象を広げます。承諾書(電子契約での締結に同意する旨の確認)を事前に取得しておくと法的要件も充たせます。

協力会社への展開を成功させる3つのポイント

電子契約の導入失敗の多くは「相手方が操作に戸惑って署名が完了しない」という問題から始まります。以下の準備で展開成功率が大きく変わります。

相手方アカウント不要のサービスを選ぶことが第一です。クラウドサイン・GMOサイン・電子印鑑GMOサインは相手方がアカウントを持っていなくても、メールで届いたリンクを開いて確認・署名するだけで完了します。「登録が必要なのか」という問い合わせが発生せず、協力会社への展開説明がシンプルになります。

次に、1ページの操作案内書を事前に送ることです。実際に協力会社が受け取るメールのスクリーンショットと、「このボタンを押して署名してください」という1ステップだけを示したシンプルな案内書で、大半の疑問は事前に解消されます。電話や現場での説明コストが大幅に減ります。

最後に、本番前に1件だけ試験的な締結を行うことです。費用ゼロの覚書や変更確認書など、金額が発生しない書類で1件だけ試してみると、双方が操作感を体験できて本番の不安がなくなります。この1件が「電子契約で問題なく使える」という実績になり、以降の展開がスムーズになります。

失敗事例と注意点

相手方の承諾を得ずにトラブルになったケース

電子契約の利用には相手方の事前承諾が建設業法上の要件です。承諾を得ていない協力会社に突然電子契約の署名依頼を送ると、トラブルの原因になります。「弊社は電子契約に移行しています。対応可能でしょうか」という事前確認と、できれば同意書(書面または電子)を取得する手順を社内フローに組み込みます。

電帳法の保存要件を後から確認して追加コストが発生したケース

電子契約で締結した契約書は電子帳簿保存法の「電子取引データ」として保存義務があります。選定したサービスが電帳法対応の保存機能(改ざん防止・検索機能)を標準搭載しているかを導入前に確認していなかった結果、後から別途文書管理システムの導入が必要になった事例があります。本記事で紹介するサービスはいずれも電帳法対応ですが、無料プランでは機能が制限されることがあるため確認が必要です。

無料プランの件数上限に引っかかったケース

無料プランは月5〜10件程度の送信件数に制限されているサービスが多く、繁忙期に件数超過して署名送信ができなくなった事例があります。月間の契約件数を正確に見積もり、余裕を持ったプランを選ぶか、繁忙期前に有料プランへ移行しておくことが重要です。

電子契約導入後に起きがちな課題と対処法

電子契約を運用し始めてから直面しやすい問題と、その対処法を整理します。導入前に知っておくと、立ち上げ後のトラブルを減らせます。

送信先が署名を「後回し」にして契約締結が遅れる問題

紙の契約書に比べて「受け取った感覚」が薄いため、署名を後回しにされやすいのが電子契約の弱点です。サービス側のリマインド機能(未署名者へ自動メール送信)を活用するのが有効です。クラウドサインやGMOサインはリマインド設定が標準搭載されており、未署名者へ3日後・7日後に自動フォローを入れる設定ができます。

工事完了後の追加変更書類に対応する手順が決まっていない問題

工事途中で設計変更・追加工事が発生した場合、変更契約書・変更覚書を迅速に締結する必要があります。紙の契約より電子契約のほうが素早く締結できる利点がある一方、「誰がいつ変更書類を送信するか」の社内フローが未整備だと混乱が生じます。電子契約の導入と同時に、変更契約書の送信ルール(起票者・承認者・送信タイミング)を社内規程に盛り込みます。

電子署名の有効期限切れで書類が無効になるリスク

タイムスタンプや電子証明書には有効期限(3〜10年程度)があります。長期保存が必要な大型案件の契約書(工事完了後も10年以上保管が求められるケースがある)では、契約締結から長期間経過後に証明書が失効するリスクがあります。主要サービスは長期署名(LTV署名)に対応しており、タイムスタンプの更新によって有効期限を延長できます。サービス選定時に長期署名の対応有無を確認しておくと安心です。

建設業向け電子契約の2026年最新動向

電子契約を取り巻く環境は2025〜2026年にかけて大きく変化しています。導入を検討する際に押さえておくべき動向を整理します。

電子帳簿保存法の本格施行による追い風

2024年1月から電子帳簿保存法の宥恕措置が終了し、電子取引データの電子保存が義務化されました。電子契約で締結した契約書の電子保存は法的義務となっており、「紙に印刷してから保管する」という旧来の運用は認められなくなっています。この変化が建設業でも電子契約導入を後押しする要因になっています。

IT補助金の制度名変更と対象範囲の拡大

従来の「IT導入補助金」は2025年度から「デジタル化・AI導入補助金」に名称が変更されました。AI活用ツールも補助対象に追加される一方、電子契約サービスは引き続き対象のまま残っています。2026年度の補助率・上限額は公募情報をご確認ください。

大手ゼネコンによる協力会社への電子契約展開が加速

鹿島建設・大林組・清水建設など大手ゼネコンが協力会社への電子契約展開を加速させており、「元請けから電子契約への移行を求められた」という中小建設会社の声が増えています。大手との取引がある建設会社では、元請けが採用しているサービスの確認(クラウドサインが最多)が選定の前提になりつつあります。

デジタル化・AI導入補助金の活用

電子契約もIT補助金の対象

クラウドサイン・GMOサイン・freeeサインなど主要な電子契約サービスはデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象ツールとして登録されています(※補助率・上限額は年度ごとに改定)。

補助金を活用することで、初年度の導入費用を大幅に抑えることができます。申請書類の作成には認定支援機関のサポートを活用するのが確実です。

申請の流れはまず公式サイトでIT導入支援事業者(ベンダー)を検索し、そのベンダー経由で申請する形式です。補助金対象ツールの登録状況や2026年度の公募スケジュールは公式サイトでご確認ください。補助金の申請タイミングは公募期間内に限られるため、導入検討と並行して公募スケジュールの確認を進めることをおすすめします。認定支援機関と連携すると申請書類の作成が円滑になります。

紙の契約書と電子契約の「混在期間」をどう乗り越えるか

電子契約の導入直後は「一部の協力会社は電子、一部は紙」という混在状態が続きます。この過渡期を円滑に乗り越えるためのポイントを整理します。

まず、電子対応できる協力会社のリストを事前に作成します。取引先に「電子契約への移行について」のアンケートを送り、対応可否と使用可能なサービスを確認します。対応可能な会社から順次電子化を進め、対応困難な会社は当面紙のまま継続します。無理に全社一斉移行しようとするとトラブルが増えます。

次に、電子と紙の書類を区別して管理する社内フォルダ体系を統一します。電子契約書類はサービス内に保存されますが、同時に社内の共有フォルダにもPDF保存しておくと、システム障害時のバックアップになります。移行の目標時期(例: 「1年後に取引先の80%を電子化する」)を設定し、進捗を定期確認することで、混在状態の長期化を防ぎます。

グリーンファイル・安全書類の電子化との違い

電子契約の文脈でよく混同されるのが「グリーンファイル(安全書類)の電子化」です。両者は別のシステムで、それぞれ役割が異なります。

グリーンファイルとは、建設現場で下請業者が提出する安全書類(施工体制台帳・作業員名簿・危険有害業務届など)の総称です。グリーンサイト(MCデータテクノロジー運営)というクラウドサービスで電子管理されることが多く、建設業の現場では「グリーンサイト対応か否か」が取引条件になるケースも出ています。

一方の電子契約は、工事請負契約書・下請負契約書・注文書といった「契約書類」に電子署名を付与して締結するしくみです。

区分グリーンファイル電子化電子契約
対象書類安全書類(作業員名簿・体制台帳など)契約書・注文書・覚書
主なサービスグリーンサイト、Buildeeクラウドサイン、GMOサインなど
法的根拠建設業法・労働安全衛生法建設業法第19条・電子署名法
印紙税の削減対象外対象(印紙税不要になる)
相手方署名不要(一方的な届出)必要(双方の合意が前提)

どちらか一方だけでなく、両方を組み合わせることで現場の書類業務を包括的にデジタル化できます。まず電子契約で印紙税削減から始め、次にグリーンサイトで安全書類の管理コスト削減を進めるという順番が、ROIの観点から合理的です。

選定チェックリスト

契約前に以下をすべて確認してから最終判断します。

  • 建設業法の3要件(見読性・原本性・相手方承諾)に対応していると明示されているか
  • 相手方のアカウント作成なしに署名が完了できるか
  • 電子帳簿保存法に対応した保存機能が標準搭載されているか
  • 無料トライアルまたはフリープランで実際の業務フローを試用できるか
  • IT導入補助金の対象ツールとして登録されているか
  • 日本語対応のサポート窓口(電話またはチャット)があるか

よくある質問

建設業の工事請負契約を電子契約で締結できますか?
はい、できます。2020年10月の建設業法改正により、見読性・原本性の確保と相手方の事前承諾という3要件を満たす電子契約サービスを使えば、工事請負契約書を電子化できます。クラウドサイン・GMOサインなど本記事で紹介しているサービスはこの要件に対応しています。
電子契約にすると印紙税はかかりませんか?
電子文書は課税文書に該当しないため、印紙税は不要です。工事請負契約の印紙税は1,000万〜5,000万円で1通2万円、5,000万〜1億円で6万円と金額が大きく、月10本の契約(平均3,000万円)を締結する建設会社では年間約240万円の削減試算になります。
協力会社がITに不慣れでも電子契約を導入できますか?
クラウドサインやGMOサインは相手方のアカウント作成が不要で、メールリンクを開いて署名ボタンを押すだけで完了します。事前に1ページの操作案内書を協力会社に送り、本番前に覚書など1件試験的に締結してもらうと、ほとんどの会社が問題なく対応できるようになります。
無料で使える電子契約サービスはありますか?
電子印鑑GMOサインは月5件まで無料で利用できます。まず無料プランで実際の業務フローを試し、件数が増えた段階で有料プランに移行するステップアップ型の活用が可能です。ただし月間の契約件数が5件を超えるタイミングを事前に見積もっておき、繁忙期前に移行計画を立てておくことをおすすめします。
電子契約サービスの費用はどのくらいですか?
月額5,000〜25,000円程度が相場で、送信1件あたり100〜300円の従量課金が加算されるサービスもあります。月間の契約件数(20〜50件など)をもとに年間コストを試算し、印紙税削減額(年間数十万〜数百万円)と比較すると投資判断がしやすくなります。
電子契約サービスはIT導入補助金の対象ですか?
はい。クラウドサイン・GMOサイン・freeeサインなどはデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象ツールとして登録されています。最新の登録状況・補助率・申請スケジュールは公式サイトでご確認ください。
電子帳簿保存法との関係はどうなりますか?
電子契約で締結した契約書は、電子帳簿保存法の「電子取引データ」として保存義務があります。本記事で紹介しているサービスはいずれも電帳法対応の保存機能を備えていますが、無料プランでは機能が制限されるケースがあります。導入前にサービス事業者に確認しておくと安心です。
当事者署名型と立会人署名型のどちらを選べばいいですか?
契約金額が大きい元請け工事請負契約には、法的証拠力の高い当事者署名型をおすすめします。協力会社との小口の下請け契約には、相手方の操作が簡単な立会人署名型が現実的です。GMOサインのように両方に対応したサービスを選ぶと、1つのアカウントで案件規模に応じた使い分けができます。
建設業で電子契約の普及率はどのくらいですか?
国土交通省の2024年度建設業実態調査によると、建設業の電子契約活用率は約38%です。製造業(61%)や情報サービス業(74%)と比べて遅れており、中小建設会社では普及率がさらに低い傾向があります。一方で、大手ゼネコンが協力会社に電子契約への移行を求めるケースが増えており、2026年以降は急速に普及が進むと見られています。
協力会社に電子契約を断られた場合はどうすればいいですか?
建設業法上、電子契約の利用には相手方の承諾が要件です。断られた場合は無理に進めず、紙の契約を継続してください。一方で、「メールで届いて署名するだけ」という操作の簡単さを実演して見せると、断っていた協力会社が同意するケースも多くあります。まず1件だけ覚書など金額の発生しない書類で試してもらうことを提案するのが効果的です。
グリーンサイト(グリーンファイル)と電子契約は何が違いますか?
グリーンサイトは安全書類(作業員名簿・施工体制台帳など)の電子管理サービスで、電子契約とは別のシステムです。電子契約は工事請負契約書・下請負契約書・注文書などの「契約書類」に電子署名を付与して法的効力を持たせるしくみです。それぞれ役割が異なり、どちらか一方だけでも導入効果はありますが、両方を組み合わせると現場の書類業務を包括的にデジタル化できます。
一人親方でも電子契約サービスを使えますか?
はい、一人親方でも使えます。電子印鑑GMOサインは月5件まで無料で、freeeサインは月額4,980円〜で導入できます。むしろ一人親方は紙の契約書のやり取りに時間がかかっており、電子契約で契約締結が即日完了することで工事の準備に集中できるメリットがあります。元請け業者がクラウドサインを使っている場合、相手方として署名するだけならアカウント登録も費用も不要です。

参考情報


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