この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

人手不足が深刻化する建設業で、「設備投資で省力化したいが、資金が足りない」という声は少なくありません。国土交通省の調査によると、建設業の就業者数は1997年のピーク時685万人から2024年には479万人へと約30%減少しており、人の代わりに機械やシステムで生産性を上げる取り組みが急務になっている。中小企業省力化投資補助金は、こうした省力化投資の費用を最大1億円まで補助する制度です。2026年度は制度改定によりカタログ注文型の使い勝手が向上し、建設業向けの登録製品も拡充されている。この記事では、建設会社の経営者・管理部門の担当者が「自社でどう使えるか」を判断できるよう、制度の全体像から申請実務まで掘り下げる。

中小企業省力化投資補助金とは何か

中小企業省力化投資補助金は、中小企業庁が所管する補助金制度で、人手不足に悩む中小企業が省力化につながる設備やシステムを導入する際の費用を補助する。2024年度に創設され、2026年度も継続が決まっている。

制度の根幹にあるのは「人手不足の解消」と「賃上げの促進」の2つです。単に設備を入れるだけでなく、導入によって浮いた人件費やリソースを従業員の給与アップに振り向けることを申請要件として求めている点が、ものづくり補助金やデジタル化・AI導入補助金との大きな違いになる。

建設業は常時使用する従業員が500人以下、かつ資本金10億円未満の法人(または個人事業主)であれば中小企業に該当し、本制度の対象になります。一人親方や小規模の専門工事業者も、従業員数の要件を満たせば申請できる。

カタログ注文型と一般型 --- 2つの申請枠の違い

省力化投資補助金には「カタログ注文型」と「一般型」の2つの申請枠があります。建設業でどちらを選ぶかは、導入する設備の種類と投資額で決まります。

比較項目カタログ注文型一般型
対象製品カタログ掲載の汎用製品オーダーメイド設備・大型投資
補助上限額従業員数に応じ最大300万円(賃上げ特例で最大500万円)従業員数に応じ最大8,000万円(賃上げ特例で最大1億円)
補助率1/2以下1/2〜2/3
申請の手軽さ販売事業者と共同申請、事業計画はA4約1ページ詳細な事業計画書が必要、認定支援機関の確認書も必要
公募スケジュール通年受付(2027年3月頃まで延長)年数回の公募(第6回は2026年4〜5月)
建設業での活用例IoTセンサー、遠隔監視カメラ、勤怠管理端末ICT建機一式、マシンコントロール付きショベル

カタログ注文型は「手軽に少額の省力化機器を入れたい」場面に向いている。一方、ICTバックホーやマシンコントロール付きショベルのように1台で数千万円規模の投資になる建設機械は一般型の領域です。

カタログ注文型の2026年3月改定ポイント

2026年3月19日付で、カタログ注文型に大きな制度改定が入った。建設業の経営者が押さえるべき変更点は3つあります。

1つ目は、収益納付ルールの撤廃です。これまでは補助金で導入した製品によって利益が出た場合、利益の一部を国に返還する義務があった。この要件がなくなったことで、投資回収の計算がシンプルになった。

2つ目は、公募期間の延長です。当初は2026年9月末で終了予定だったが、2027年3月頃まで延長されている。「今期中に申請が間に合わない」と見送っていた事業者にもチャンスが広がった。

3つ目は、補助上限額の引き上げです。従業員5名以下の事業者は従来比で最大2.5倍、6〜20名の事業者は1.5倍に上限が拡大された。小規模な専門工事業者にとって、この改定のインパクトは大きい。

一般型の第6回公募スケジュール

一般型は2026年3月13日に第6回公募要領が公開されている。スケジュールを整理します。

時期内容
2026年3月13日第6回公募要領の公開
2026年4月中旬申請受付開始
2026年5月中旬申請締切
2026年7月頃(予定)採択結果公表

一般型はGビズIDプライムアカウントによる電子申請が必須になります。アカウント取得に2〜3週間かかるため、申請を検討する場合は早めに取得手続きを進めたい。

建設業で対象になる省力化製品と設備

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省力化投資補助金で建設業が導入できる製品・設備は、カタログ注文型と一般型で異なる。

カタログ注文型の登録製品(建設業向け)

カタログには、建設現場の省力化に直結する製品カテゴリが複数登録されている。

  • IoTセンサー・遠隔監視システム --- 現場の温度・振動・傾斜をリアルタイムで計測し、巡回回数を減らす
  • 勤怠管理・入退場管理端末 --- CCUS(建設キャリアアップシステム)と連携した自動打刻で、事務員の手入力作業を削減
  • 自動搬送ロボット --- 資材運搬の人手を削減する建設現場作業ロボット(鉄筋組立作業ロボットなど)
  • 遠隔操作・監視カメラシステム --- 複数現場の一括監視で、管理者の移動時間を短縮

カタログ製品は随時追加されている。自社に合う製品があるかは、公式サイトの製品カタログ検索画面で最新情報を確認してほしい。

一般型の対象設備(建設業向け)

一般型は、カタログに掲載されていないオーダーメイドの設備投資や、大型の建設機械導入が対象になる。建設業で採択実績の多い設備カテゴリを整理した。

設備カテゴリ具体例投資規模の目安
ICT建機マシンコントロール付きバックホー、3Dマシンガイダンス搭載ショベル1,500万〜5,000万円
チルトローテータ既存ショベルに後付けするアタッチメント500万〜1,500万円
3D測量機器ドローン測量一式、地上型3Dスキャナー300万〜1,000万円
現場管理システムBIM/CIM対応ソフト+端末一式200万〜800万円
自動化設備シンダーコンクリート解体機、自動配筋検査システム500万〜3,000万円

ICT建機の導入は採択率が高い傾向にある。「少人数でも施工品質を維持し、工期を短縮する」というストーリーが省力化の趣旨と合致しやすいためです。

補助額と補助率 --- 従業員規模別の早見表

カタログ注文型(2026年3月改定後)

従業員数補助上限額賃上げ特例適用時
5人以下200万円500万円
6〜20人250万円500万円
21〜50人300万円500万円
51〜100人300万円500万円
101人以上300万円500万円

※補助率は1/2以下。100万円の製品を導入する場合、自己負担は50万円以上。

一般型

従業員数補助上限額大幅賃上げ特例適用時
5人以下1,000万円1,500万円
6〜20人2,000万円3,000万円
21〜50人3,000万円5,000万円
51〜100人5,000万円7,000万円
101人以上8,000万円1億円

※補助率は1/2〜2/3(小規模事業者は2/3、その他は1/2)。

建設業の中小企業は従業員20人以下が多くあります。カタログ注文型であれば賃上げ特例を活用して最大500万円、一般型であれば最大3,000万円の補助が受けられる計算です。建設業で使える補助金の全体像も合わせて確認しておくと、自社に合った制度を見つけやすくなる。

申請に必要な3つの基本要件

省力化投資補助金の申請には、型を問わず満たすべき3つの基本要件があります。

生産性向上の目標

導入する設備やシステムによって、労働生産性(付加価値額/従業員数)を年率3%以上向上させる計画が必要です。建設業の場合、「工事1件あたりの所要工数の削減」や「管理業務の工数削減」で定量化するケースが多くあります。

賃上げ要件(必須化)

2026年度の一般型では、1人あたり給与支給総額の年平均成長率3.5%以上の増加が基本要件として必須化された。これは加点項目ではなく、未達の場合は補助金の一部または全額を返還する義務が生じる。

建設業では技能者の賃金水準が他業種に比べて低い傾向にあるが、国土交通省が推進する「建設キャリアアップシステム(CCUS)」の能力評価と連動させた昇給制度を整備している企業は、この要件を満たしやすい。CCUSの仕組みについては用語解説も参照してほしい。

事業場内最低賃金の引き上げ

申請時点で、事業所が所在する都道府県の最低賃金+30円以上の水準を満たしている必要があります。大幅賃上げ特例を利用する場合は+50円以上が求められる。

採択率のデータから見る建設業の傾向

一般型の採択結果は公開されており、建設業の動向を数値で追うことができる。

公募回全体採択率建設業の採択割合
第1回55.2%11.3%
第2回60.1%12.4%
第3回66.8%(採択1,854件/申請2,275件)15.5%
第4回集計中集計中

建設業の採択割合は回を追うごとに上昇している。第3回では全採択件数の15.5%を建設業が占めた。この背景には、ICT建機やスマート施工関連の投資が「省力化」の文脈と合致しやすいこと、そして建設業の人手不足が社会課題として認知されていることがあります。

採択されやすい申請のパターン

採択事例を分析すると、建設業で通りやすい申請には共通点があります。

  • 「何人分の作業を何台の機械で代替するか」が数値で示されている
  • 導入前後の工程フローを図や表で比較している
  • 施工品質の向上と省力化を両立するストーリーになっている
  • 既存の人員配置計画と連動した実現可能性がある

逆に、不採択になりやすいパターンとしては「省力化の効果が定性的な表現にとどまっている」「賃上げ計画に具体性がない」「導入後の運用体制が不明確」といったケースが挙がっている。

申請から補助金受取までの流れ

1

GビズIDプライムアカウントの取得

電子申請に必須。取得まで2〜3週間かかるため、申請検討段階で早めに手続きする。

2

導入設備の選定と見積取得

カタログ注文型はカタログ掲載製品から選定し販売事業者に連絡。一般型はメーカーや販売代理店から詳細見積を取得する。

3

事業計画書の作成

カタログ注文型は販売事業者と共同でA4約1ページの計画書を作成。一般型は認定支援機関の確認書付きで詳細な計画書を準備する。

4

電子申請システムから申請

GビズIDでログインし、必要書類をアップロードして申請を完了する。

5

審査・採択結果通知

カタログ注文型は約1〜2か月、一般型は約2〜3か月で結果が通知される。

6

交付決定後に設備を発注・導入

交付決定前の発注は補助対象外になる。決定通知を受けてから発注・契約を行う。

7

実績報告と補助金の受取

設備導入完了後、実績報告書を提出。確認審査を経て補助金が振り込まれる。

交付決定前に設備を発注してしまうと補助対象外になる点は、特に注意が必要です。「急いで建機を買いたいが、採択結果を待つ余裕がない」というケースでは、リース契約の活用や、発注時期を工事スケジュールと調整する工夫が求められる。

従業員規模別 --- 建設業での活用パターン

省力化投資補助金は従業員規模によって活用の仕方が変わる。ここでは、中小建設会社に多い3つの規模帯別におすすめの活用パターンを整理した。

1〜5人(一人親方・少人数の専門工事業者)

この規模帯では、カタログ注文型が現実的な選択肢になる。改定後の補助上限200万円(賃上げ特例で500万円)を活用し、IoTセンサーや遠隔監視カメラなど、現場の「見回り」を省力化する機器の導入が有効です。事業計画もA4約1ページで済むため、申請の負担が小さくなります。

6〜20人(地場の総合建設会社)

カタログ注文型と一般型の両方を検討できる規模帯です。一般型であれば補助上限は2,000万円(特例で3,000万円)。ICTバックホー1台の導入であれば十分にカバーできる。測量から施工まで一貫してICT化する計画を立てると、「省力化の波及効果」をアピールしやすくなる。

21〜50人(中規模の総合建設会社)

一般型で補助上限3,000万円(特例で5,000万円)の枠を活かし、ICT建機の複数台導入や、BIM/CIMシステムと連動した現場管理の省力化など、投資規模を大きくできる。認定支援機関と連携した事業計画の策定が採択率を左右するため、税理士やコンサルタントへの早期相談を推奨する。

省力化投資補助金とほかの補助金の使い分け

建設業が使える補助金は省力化投資補助金だけではありません。目的と投資内容に応じた使い分けが重要です。

補助金制度向いている投資補助上限
省力化投資補助金(カタログ注文型)IoT機器・省力化ツールの導入最大500万円
省力化投資補助金(一般型)ICT建機・大型自動化設備最大1億円
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)施工管理アプリ・会計ソフト等のITツール最大450万円
ものづくり補助金生産プロセスの革新的改善最大1億円
中小企業新事業進出補助金(旧事業再構築補助金)新分野への進出最大7,000万円

ソフトウェアやクラウドサービスの導入ならデジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)、ハードウェアの省力化投資なら省力化投資補助金という切り分けが基本になる。DX補助金の活用事例も参照すると、自社の投資計画に近い事例が見つかるはずです。

なお、同一の設備投資に対して複数の国庫補助金を重複して受けることはできません。ただし、異なる設備にそれぞれ別の補助金を申請することは可能です。たとえば、施工管理アプリの導入にデジタル化・AI導入補助金を使い、ICTバックホーの導入に省力化投資補助金(一般型)を使うといった組み合わせが考えられる。

申請書の書き方 --- 建設業で加点を取るポイント

現状の課題を数値で示す

申請書の冒頭では、自社が抱える人手不足や生産性の課題を数値で表現する。「高齢化が進んでいる」では弱い。「従業員12名のうち55歳以上が7名(58%)。今後5年で4名が定年退職を迎え、現行の施工体制が維持できない」のように、具体的な人数と割合を記載する。

国土交通省の「建設業の働き方改革」資料によると、建設業就業者の約35.9%が55歳以上(2024年時点)です。自社の数値と業界平均を対比すると、課題の深刻さが伝わりやすい。

省力化の効果を工数で示す

「ICT建機を導入して効率化する」だけでは審査員に響きません。導入前後の工程比較を表形式で作成し、「丁張り作業3人×2日 → MC建機で1人×0.5日に短縮」のように、具体的な工数削減を示す。

賃上げ計画を経営数字と連動させる

賃上げ要件の3.5%増は、建設業では技能者の日当ベースで考えるとわかりやすい。日当2万円の技能者であれば、年間で約17万円(2万円×245日×3.5%)の昇給計画になる。省力化による収益改善と賃上げ原資の捻出を、数値の流れで説明できるとよい。

2026年度の制度改定ポイント — 建設業への影響

2026年3月19日付けで省力化投資補助金のカタログ注文型に制度改定が実施されました。建設業関係者に影響する主な変更点を整理します。

登録カタログ製品の拡充が行われ、建設現場での使用頻度が高い作業補助ロボット・遠隔監視システム・AIカメラが新規登録されました。これまで「使える製品が少ない」とされていた建設業でも、活用できる製品の選択肢が広がっています。

また、小規模事業者向けの申請手続きが簡略化されました。従業員20名以下の建設会社は、事業計画書の記載項目が削減されており、認定支援機関のサポートなしでも申請が完結しやすい仕組みになっています。補助率の変更はありませんが、補助上限の計算方法が一部見直されたため、2025年以前の情報を参照している場合は必ず最新の公募要領を確認してください。

よくある誤解と注意点

「カタログに建設機械がないから使えない」は誤解

カタログ注文型に大型建設機械は登録されていないが、IoT機器・監視カメラ・勤怠管理端末といった周辺機器は登録されている。一般型と組み合わせれば、建設業でも幅広い省力化投資に活用できる。

交付決定前の発注は全額自己負担

補助金の申請が採択されても、正式な交付決定通知を受け取る前に設備を発注すると、その費用は補助対象外になる。建設機械は納期が長いことも多いため、発注のタイミングは慎重に計画する必要があります。

賃上げ目標未達は返還リスクあり

一般型の賃上げ要件(年平均成長率3.5%以上)は「努力目標」ではなく「必須要件」です。達成率に応じて補助金の一部または全額の返還義務が生じる。事業計画の段階で、賃上げの原資と実現可能性を十分に検討しておくべきだろう。

リースでも申請できるのか

一般型ではリース契約も補助対象になる場合があります。ただし、リース会社が申請者となり、リース料の低減を通じて中小企業に補助の効果を還元する仕組みになる。自社で直接申請するよりも手続きが複雑になるため、リース会社への早期相談が欠かせません。

よくある質問

よくある質問

省力化投資補助金はIT導入補助金と何が違いますか?
IT導入補助金はITツール・ソフトウェアの導入に特化した補助金で、補助上限は最大450万円です。省力化投資補助金は物理的な設備・機器(建設機械・IoT機器・ロボット等)の導入を対象とし、補助上限は最大1億円(一般型)と規模が大きい点が異なります。建設DXで両方を使い分けると、より幅広い投資に補助を活用できます。
建設業でカタログ注文型に使える製品はありますか?
カタログには建設現場向けのIoT機器(入退場管理・安全管理センサー・監視カメラ)、勤怠管理端末、省力化機器などが登録されています。大型建設機械はカタログには登録されていませんが、一般型であれば対象になります。最新の登録製品は公式サイトのカタログで確認できます。
申請に認定支援機関のサポートは必須ですか?
一般型では事業計画書の作成が必要で、認定支援機関(税理士・中小企業診断士等)の確認を受けることで加点になる場合があります。カタログ注文型は比較的手続きが簡便で、認定支援機関なしでも申請可能です。ただし一般型では計画書の完成度が採択に影響するため、初めて申請する場合は専門家への相談を推奨します。

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