この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

2025年6月の熱中症対策義務化を受けて、建設現場にウェアラブルデバイスを導入する動きが加速している。アンドパッドの実態調査では、ITツールへの関心度が63.2%に達し、「注意喚起」「健康チェック」機能への期待が高い。

一方で、「種類が多すぎてどれを選べばいいかわからない」という声も現場からは多く聞こえる。ヘルメット装着型、リストバンド型、AIカメラ型と装着方式も異なれば、検知する指標も製品ごとに違う。価格帯も月額2,000円台から数万円まで幅があり、買い切り型と月額課金型で費用構造自体が異なる。

この記事では建設現場向けの主要8製品を装着タイプ別に分類し、機能・価格・導入実績を比較した。自社の現場規模や予算に合った1台を見つけてほしい。

なお、建設業における熱中症は7月〜8月に集中するイメージがあるが、実際には6月や9月にも発生件数は少なくない。梅雨明け直後は体が暑さに慣れておらず、WBGT値がそこまで高くなくても重症化するリスクがある。ウェアラブルデバイスの導入は「真夏だけの対策」ではなく、5月下旬〜9月末までの長期運用を前提に計画するのが望ましい。

ウェアラブル熱中症対策デバイスの3つのタイプ

建設現場向けのウェアラブルデバイスは、大きく3つの装着タイプに分けられる。

タイプ装着方法検知指標メリットデメリット
ヘルメット装着型ヘルメット内側に取り付け温湿度、頭部温度追加の装着負担がないヘルメットを外すと計測できない
リストバンド型手首に装着脈拍、皮膚温、深部体温推定バイタル情報が取れる汗や衝撃で外れることがある
AIカメラ型現場に設置(非接触)顔色、表情、行動パターン装着不要で全員を監視設置場所が固定される

どのタイプが最適かは、現場の特性によって変わる。高所作業が多い現場ではヘルメット型が実用的だし、作業員の分散が大きい現場ではリストバンド型のGPS連携が活きる。複数の工区に分かれて作業する大規模現場なら、定点のAIカメラと個人携帯型デバイスの併用も現実的な選択肢になる。

実際の導入実績を見ると、リストバンド型が建設業界でもっとも普及している。環境温度だけでなく、作業員個人のバイタルデータを取得できるため、同じ気温・湿度であっても体調や暑さへの耐性が異なる作業員ごとにリスクを判別できるのが採用の決め手になるケースが多い。国土交通省が推進するi-Constructionの文脈でも、作業員の安全管理にIoTデバイスを活用する取り組みは「安全性の向上」カテゴリで評価対象とされており、導入のハードルは年々下がっている。

建設現場向け熱中症対策ウェアラブル8選

サービス名料金主な機能補助金対応
カナリアPlus 要問い合わせ
  • リストバンド型
  • 熱ごもりセンサー搭載
  • 音・光・振動で警告
  • IP67防塵防水
  • 充電不要(電池式)
  • 累計100万台導入実績
対応
みまもりがじゅ丸 月額20,000円〜(税込)
  • リストバンド型
  • 脈拍から熱ストレス算出
  • GPS位置管理
  • 管理画面で一元監視
  • 個人差を1ヶ月で自動補正
対応
hamon band S 要問い合わせ
  • リストバンド型
  • 深部体温推定(特許技術)
  • 脈波のみで計測
  • 3色LED+振動アラート
  • クラウド不要でも動作
未対応
Me-mamo 要問い合わせ
  • ヘルメット装着型
  • カラダ暑さ指標で4段階警告
  • Bluetooth通信で仲間同士の見守り
  • NETIS登録済み
対応
Work Mate 要問い合わせ
  • スマートウォッチ型
  • AI疲労解析
  • 転倒検知・SOS発信
  • NETIS登録済み
  • 注意力低下状態を検知
対応
カオカラ 要問い合わせ
  • AIカメラ型(非接触)
  • 顔解析AIで熱中症リスク4段階表示
  • 装着不要
  • NETIS取得
対応
みまもりふくろう 月額2,000円/台〜
  • リストバンド型
  • 脈拍+位置情報
  • 閾値カスタマイズ可能
  • SOMPOグループ提供
未対応
作業者安全モニタリング 要問い合わせ
  • ヘルメット装着型
  • 生体+行動データ統合
  • NETIS登録済み
  • 村田製作所のセンサー技術
対応

補助金対応の「対応」は、高度安全機械等導入支援補助金やIT導入補助金の対象となる可能性がある製品を示しています。実際の採択は申請内容により異なるため、補助金の詳細は各補助金の公式サイトで確認してください。

タイプ別の詳細解説

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リストバンド型 — バイタル監視の本命

リストバンド型は、脈拍・皮膚温・発汗量といったバイタル情報を直接計測できる点が最大の強みだ。環境温度だけでなく「作業員の体が実際にどれだけ熱を溜めているか」を把握できるため、個人差を反映した精度の高いアラートが出せる。

カナリアPlusは累計100万台の導入実績があり、建設業での知名度が高い。充電が不要な電池式で、「充電を忘れて使えない」というトラブルが起きにくい点は現場運用において大きなメリットだ。毎朝の朝礼で配布し、作業終了後に回収するだけで運用が完結する。一方、みまもりがじゅ丸は1ヶ月の学習期間で個人のバイタル傾向を自動補正する仕組みを持っており、「暑さに強い人・弱い人」を区別したアラート設定が可能だ。

hamon band Sはミツフジの特許技術による深部体温推定が特徴で、脈波情報だけから体内温度の上昇を推定する。深部体温は環境温度や皮膚温よりも熱中症リスクとの相関が高いとされており、医学的根拠に基づいた判定が期待できる。クラウド接続なしでも単体でLEDアラートが機能するため、通信環境が安定しない山間部やトンネル内の現場にも向いている。

みまもりふくろうは月額2,000円/台からと、今回比較した中で最も低コスト。まず少人数で試験導入したい会社に適している。SOMPOグループが提供しているため、労災保険や安全衛生コンサルティングとセットで提案を受けられるケースもある。

リストバンド型を選ぶ際に見落としがちなのが、作業手袋との相性だ。建設現場では革手袋や防振手袋を常時着用することが多く、デバイスが手袋の下に収まるサイズかどうかを事前に確認しておきたい。カナリアPlusは腕時計のように手首の外側に装着する設計で、手袋と干渉しにくい。みまもりがじゅ丸やhamon band Sも同様の設計だが、腕まわりのサイズが合わないと計測精度が落ちることがあるため、トライアル期間に複数の作業員で装着感を検証するのが望ましい。

ヘルメット装着型 — 追加負担ゼロの手軽さ

ヘルメット装着型は、建設作業員が必ず着用するヘルメットの内側にセンサーを取り付けるため、「新しいものを身につける抵抗感」がほとんどない。現場に定着させやすいのが大きなメリットだ。

Me-mamoはBluetooth通信で近くの仲間のデバイスと連携し、「隣の作業員の異常を自分のデバイスが知らせてくれる」相互見守り機能を持つ。1人で作業する場面でも、近くにいる別の作業員が異変に気づける。建設現場では足場の上や別フロアで単独作業になる場面が日常的にあるため、この相互見守りの仕組みは実務上の安心感が大きい。NETIS登録済みであることも公共工事を受注する会社にはプラス材料になる。

村田製作所の作業者安全モニタリングは、生体データと行動データ(姿勢・動作パターン)を統合して分析する点が特徴。熱中症だけでなく、転倒や意識喪失の兆候も検知対象に含まれる。センサー精度に定評がある村田製作所の技術基盤を活かしており、ヘルメットの重量増加も数十グラム程度に抑えられている。

ヘルメット装着型の注意点として、休憩中にヘルメットを外す時間帯は計測が途切れる。夏場の建設現場では10時、12時、15時の休憩に加えて、WBGT値が高い日は1時間ごとに追加休憩を取ることもある。休憩のたびにデータが途切れても管理画面上で異常を見逃さない仕組みになっているか、導入前にメーカーに確認しておくとよい。

AIカメラ型 — 全員を非接触で見守る

カオカラはポーラ化成工業が開発した顔解析AIで、カメラに映った作業員の顔色や表情から熱中症リスクを4段階で判定する。作業員にデバイスを配布する必要がなく、「着けてくれない問題」を根本的に解決できる。

ただし設置型のため、広い敷地を移動しながら作業する建設現場ではカメラの死角が生まれる。朝礼場所や休憩所にカメラを設置し、定点チェックとして活用するのが現実的な運用方法だろう。たとえば朝礼時に全員の顔色を一括チェックし、前日の疲労が残っている作業員を早期に把握するといった使い方が考えられる。

AIカメラ型の導入を検討する際にもう一つ押さえておきたいのが、作業員のプライバシーへの配慮だ。顔画像の取得・解析は個人情報保護法上の配慮が必要で、作業員への事前説明と同意取得が求められる。カオカラは顔画像そのものを保存せず、解析結果のみを記録する仕様を採用しているが、導入時には安全衛生委員会で運用ルールを策定し、作業員に書面で周知しておくのが望ましい。

導入前に確認すべき5つのチェックポイント

製品選びで失敗しないために、以下の5項目を事前に整理しておきたい。

  1. 現場の人数規模 — 10人以下ならリストバンド型の個人配布、50人以上ならAIカメラ型の定点監視も併用を検討
  2. 通信環境 — Wi-Fiやモバイル通信が届かない現場ならオフライン動作可能な製品を選ぶ
  3. NETIS登録の有無 — 公共工事で加点対象になる場合がある。Me-mamo、Work Mate、カオカラ、村田製作所製品はNETIS登録済み
  4. 管理画面の使い勝手 — 職長がスマートフォン1台で全員を確認できるか。アラートの通知方法(プッシュ通知・メール等)
  5. ランニングコスト — 月額課金か買い切りか。電池交換の頻度や消耗品のコストも含めて試算する

実際の導入事例を見ると、まず1現場・10台程度で3ヶ月間のトライアルを実施し、現場の反応とデータの有用性を確認してから全社展開するパターンが多い。トライアル期間中は、作業員からの「着け心地が悪い」「アラートが多すぎて作業に集中できない」といったフィードバックを収集し、アラートの閾値やデバイスの装着位置を調整する。この初期調整を省略すると、「誤報が多くて誰も気にしなくなった」「結局アラートを切って使っている」という形骸化に直結する。

職長や安全管理者が管理画面を使いこなせるかどうかも重要な判断基準になる。高機能な管理ダッシュボードがあっても、現場で使うのはスマートフォンの小さな画面であることがほとんどだ。デモ画面を実際にスマートフォンで操作してみて、アラート発生時に誰のどこで何が起きたかを10秒以内に把握できるかを確認したい。操作に不慣れな職長でも直感的に使えるUIかどうかが、定着率を大きく左右する。

補助金を活用して導入コストを抑える

ウェアラブルデバイスの導入費用は、高度安全機械等導入支援補助金で最大1/2(年間上限500万円)の補助を受けられる可能性がある。建設業労働災害防止協会(建災防)が運営するこの制度は、安全装置の導入に幅広く対応している。

IT導入補助金も、クラウド連携型のウェアラブルサービスであれば対象になるケースがある。複数の補助金を組み合わせることで、実質的な初期投資を大幅に圧縮できる。

「補助金申請が面倒」という場合は、メーカーや販売代理店が申請支援を行っていることも多い。問い合わせ時に「補助金を使いたい」と伝えれば、対応可能な補助金と申請スケジュールを教えてもらえるはずだ。

補助金申請のスケジュール感としては、高度安全機械等導入支援補助金は例年4月〜6月に公募が開始される。夏本番の7月〜8月にデバイスを使い始めるには、遅くとも3月〜4月には機種選定と見積もり取得を完了させておく必要がある。公募開始後に慌てて製品を探し始めると、見積もり取得や社内稟議で時間を取られ、申請期限に間に合わないケースが少なくない。

また、NETIS登録済みの製品を選ぶと公共工事での加点につながる可能性がある。国土交通省の工事成績評定では、新技術活用の項目で加点が得られるため、公共工事の受注割合が高い会社にとっては安全対策と受注力強化の一石二鳥になる。

建設業全体で働き方改革と安全管理の強化が求められるなか、安全管理アプリとウェアラブルデバイスの組み合わせは、現場のDXを一段階引き上げる有力な選択肢になっている。厚生労働省の統計によると、建設業の熱中症による死傷者数は全産業の中でも常に上位に位置しており、2024年の建設業における熱中症死亡者数は11人と深刻な水準が続いている。ウェアラブルデバイスによるリアルタイム監視は、従来の「声かけ」や「巡回」だけでは防ぎきれなかった重症事案を減らすための実効性ある手段だ。元請やゼネコンが協力会社に対してウェアラブルデバイスの導入を推奨・指示するケースも増えており、安全管理体制の強化は受注競争力にも直結する時代になっている。

よくある質問

建設現場向けのウェアラブル熱中症対策デバイスの価格帯は?
月額2,000円/台(みまもりふくろう)から月額20,000円〜(みまもりがじゅ丸)まで幅があります。買い切り型の製品は要問い合わせが多いですが、カナリアPlusは電池式で充電不要のため、ランニングコストは電池代のみです。
NETIS登録済みのウェアラブルデバイスはどれですか?
Me-mamo(スターライト工業)、Work Mate(ユビテック)、カオカラ(ポーラ化成工業)、村田製作所の作業者安全モニタリングがNETIS登録済みです。公共工事で活用評価を受けると工事成績評定の加点対象になる場合があります。
通信環境が悪い現場でも使えるデバイスはありますか?
hamon band S(ミツフジ)はクラウド接続なしでも単体でLEDアラートが機能します。カナリアPlusも本体のアラート(音・光・振動)はオフラインで動作します。ただし管理画面での一元監視にはモバイル通信が必要です。
ウェアラブルデバイスの導入に使える補助金はありますか?
高度安全機械等導入支援補助金(建災防)で導入費用の1/2(年間上限500万円)の補助を受けられる可能性があります。クラウド連携型のサービスであればIT導入補助金も対象になるケースがあります。

参考情報