この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

現場の写真はLINEで送り、日程の確認は電話、図面のやり取りはFAX――建設会社の情報共有は、いまだにこうしたアナログ手段に頼っているケースが珍しくありません。総務省の「通信利用動向調査」(令和6年)によると、企業のクラウドサービス利用率は77.7%に達していますが、建設業に限ると中小企業のICT導入率は他業種より10〜15ポイント低い水準にとどまっています。2024年4月の時間外労働上限規制の適用もあり、限られた労働時間のなかで現場と事務所の連携を効率化する手段として、グループウェアへの関心が高まっています。

この記事では、建設業の現場で実際に使いやすいグループウェア7製品を、料金・機能・モバイル対応の3軸で比較します。LINE WORKSへの具体的な移行手順や、導入で失敗しやすいパターンとその対策も取り上げています。

建設業でグループウェアが求められる背景

オフィスワーカーが中心の業種であれば、Microsoft TeamsやGoogle Workspaceで十分に情報共有が成り立ちます。一方、建設業には他業種にはない固有の事情があり、ツール選びの基準が大きく異なります。

建設業の特徴グループウェアに求められる要件
現場作業が中心でPCを開けないスマホだけで操作が完結すること
50代以上の職人が多い画面がシンプルで直感的に使えること
複数の現場が同時進行する現場ごとにスペースやチャンネルを分けられること
元請け・下請けの連携が必要社外ユーザーの招待機能があること
図面・写真などファイル共有が多い大容量ファイルの送受信に対応していること
災害リスクが高い安否確認・緊急連絡機能があること

国土交通省が2024年4月に策定した「i-Construction 2.0」では、2040年度までに建設現場の省人化率3割・生産性1.5倍を目標に掲げています。グループウェアの導入はICT活用の第一歩であり、図面共有やスケジュール管理のデジタル化から始めることで、その先の施工管理アプリやBIMへの展開もスムーズになります。

LINEで業務連絡をしていませんか?

建設業ではLINEで業務連絡をしている会社が少なくありません。手軽ですが、私用と業務の混在で重要な連絡を見落とすリスク、退職者のアカウント管理ができない問題、機密図面の流出リスクなど、セキュリティ面の課題は深刻です。グループウェアに移行すれば、業務連絡を公私分離しつつ管理者側でアカウントやデータを一元管理できます。

建設業向けグループウェア7選 — 比較一覧

日本のグループウェア市場は年間約5%のペースで成長しており、そのうちSaaS型が90%以上を占めています。市場シェアはMicrosoft 365が約25%でトップ、サイボウズ Officeが約15%、Google Workspaceが約9%と続きます。建設業では、スマホ操作のしやすさと導入コストの低さから、LINE WORKSやサイボウズ Officeの採用が目立ちます。

サービス名料金主な機能補助金対応
サイボウズ Office 月額600円/人〜
  • スケジュール
  • 掲示板
  • ファイル管理
  • ワークフロー
  • カスタムアプリ
対応
kintone 月額1,000円/人〜(ライトコース、税抜、最低10ユーザー)
  • 業務アプリ作成
  • ワークフロー
  • コミュニケーション
  • 外部連携
対応
Google Workspace 月額800円/人〜(Business Starter、年契約、税抜)
  • Gmail
  • カレンダー
  • Google Drive
  • Meet
  • Chat
対応
Microsoft 365 月額899円/人〜(Business Basic、税抜、年契約)
  • Outlook
  • Teams
  • SharePoint
  • OneDrive
  • Office
対応
LINE WORKS 無料〜月額450円/人
  • チャット
  • 掲示板
  • カレンダー
  • Drive
  • タスク
対応
desknet's NEO 月額400円/人〜
  • スケジュール
  • ワークフロー
  • 設備予約
  • 文書管理
  • 安否確認
対応
Garoon 月額900円/人〜(クラウド版、〜1,000ユーザー、税抜)
  • スケジュール
  • 掲示板
  • ワークフロー
  • スペース
  • 多言語対応
対応

料金はいずれも2026年3月時点の公式サイト掲載情報。最新の料金体系は各公式サイトでご確認ください。

各製品の詳細レビュー

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サイボウズ Office — 中小企業で80,000社の導入実績

サイボウズが提供するクラウド型グループウェアで、中小企業を中心に80,000社以上の導入実績を持つ国内トップクラスの製品です。月額600円/人からスタートでき、スケジュール・掲示板・ファイル管理・ワークフロー・カスタムアプリといった基本機能がすべてパッケージに含まれています。

建設業での活用例として多いのは、現場ごとに掲示板を作成して連絡事項を共有するパターンです。朝礼の内容、安全注意事項、天候による工程変更などを掲示板に投稿しておけば、現場に来られなかったメンバーも後から確認できます。ワークフロー機能で社内稟議や購買申請を電子化している会社も多く、事務所に戻らなくてもスマホから承認処理が行えます。

モバイルアプリの完成度が高い点も評価できます。通知設定を現場ごとに変えられるため、関係のない現場の通知で画面が埋まるという問題を防げます。ITに詳しい専任担当者がいない10〜50名規模の建設会社で、最初に検討する候補として適しています。

一方、カスタマイズの自由度はkintoneほど高くありません。日報や工事台帳を独自フォーマットで管理したいなら、kintoneとの併用も選択肢に入ります。

kintone — 業務アプリをノーコードで構築できるプラットフォーム

サイボウズが提供するノーコード・ローコードのビジネスアプリ作成基盤で、37,000社以上が導入しています。一般的なグループウェアとは性格が異なり、日報管理、工事台帳、安全書類の管理、協力会社の評価管理など、自社の業務フローに合わせたアプリをプログラミング不要で構築できるのが最大の特徴です。

建設業向けには「建設業パック」というテンプレート集が用意されており、現場日報・実行予算管理・安全パトロール記録などのアプリを初期設定なしで使い始められます。ある中堅建設会社の事例では、kintoneで実行予算管理を一元化した結果、年間約1億円の利益改善につながったとの報告もあります。

月額1,000円/人〜(ライトコース、最低10ユーザー)と他製品より料金はやや高めですが、Excelで属人的に管理していた業務をクラウド化できる点を考えると、投資対効果は高いと言えます。ただし、アプリの設計には「どの業務をどう整理するか」という要件定義が必要で、サイボウズのパートナー企業やコンサルタントの支援を受けながら進めるほうがスムーズです。

「既製品のソフトでは自社の業務フローに合わない」と感じている建設会社、あるいはExcelファイルが社内に散在して情報が属人化している会社に向いています。

Google Workspace — 個人利用からの延長で導入しやすい

Gmail、Googleカレンダー、Google Drive、Google Meet、Google Chatなどのサービスを統合したクラウド型グループウェアです。月額680円/人(Business Starter)から利用でき、プライベートでGoogleサービスを使い慣れている人が多いため、学習コストが低いのが利点です。

建設業での典型的な使い方は、Google Driveに図面や施工写真を保存して現場・事務所間で共有するパターンです。複数人での同時編集に対応しているため、工程表をGoogleスプレッドシートで管理し、現場からリアルタイムで更新するという運用も可能です。Googleカレンダーの共有機能で現場の作業予定を全社で可視化している会社もあります。

ストレージ容量はBusiness Starterプランで1ユーザーあたり30GBが付与されます。図面や高解像度の施工写真を大量に扱う場合は、Business Standard(月額1,360円/人・2TBストレージ)へのアップグレードを検討する必要があります。

注意点としては、オフラインでの利用に制限がある点です。電波状況が悪い現場では、事前にファイルをオフライン利用可に設定しておく運用が求められます。

Microsoft 365 — Office連携と大規模組織に強い

Word・Excel・PowerPointといったOfficeアプリと、Teams(チャット・ビデオ会議)、SharePoint(ファイル共有)、OneDrive(クラウドストレージ)を統合したプラットフォームです。月額899円/人〜(Microsoft 365 Business Basic、年契約、税抜)で利用できます。

見積書や報告書をExcelで作成している建設会社は多いため、既存の業務フローを大きく変えずにクラウド化できる点が最大のメリットです。Teamsのチャット・通話機能で現場と事務所をリアルタイムに接続し、SharePointに図面を保存して共有するという運用が一般的です。

Teamsには会議の文字起こしや要約機能(Copilot連携)も搭載されており、現場と事務所間のオンライン打ち合わせの議事録を自動生成できます。100名以上の中堅建設会社や、ゼネコンとの取引が多い会社にとっては、取引先と同じプラットフォームを使えるメリットもあります。

一方で、機能が非常に豊富なぶん、ITリテラシーにばらつきがある建設現場では「どこに何があるかわからない」という声が出がちです。導入時には、現場で使う機能をTeamsとOneDriveに絞り、段階的に活用範囲を広げるアプローチが効果的です。

LINE WORKS — LINEの操作感で導入ハードルが最も低い

LINEと同じUIで使えるビジネスチャットツールです。導入社数は46万社を超え、有料ビジネスチャット市場で7年連続シェアNo.1を獲得しています。有料版導入企業の業種TOP3は卸売業・製造業・建設業で、現場で働くノンデスクワーカーに強いのが特徴です。

無料プラン(フリー)でもチャット・掲示板・カレンダー・タスク・アンケートが利用でき、有料プラン(スタンダード:月額450円/人)でDrive・メール・管理者機能などが追加されます。無料プランから始めて、有用性を確認してから有料プランに切り替えるステップが踏めるのは建設会社にとって大きな利点です。

建設業で特に評価されているのは、LINEユーザーとの外部トーク連携機能です。協力会社の職人がLINE WORKSを導入していなくても、LINEアプリから直接やり取りできるため、元請け・下請け間の連携がスムーズになります。写真や動画の送受信も直感的で、現場からの報告をチャットベースで行う運用に適しています。

管理者画面からは退職者のアカウント停止やデータの一括エクスポートが可能で、LINEでの業務連絡で課題だったセキュリティ面のリスクを解消できます。

desknet’s NEO — 安否確認と27機能のオールインワン

株式会社ネオジャパンが提供するグループウェアで、480万ユーザー以上の導入実績があります。27の標準機能(スケジュール・ワークフロー・設備予約・文書管理・ウェブメールなど)を月額400円/人から利用でき、コストパフォーマンスに優れています。

建設業にとって見逃せないのは、安否確認機能が標準搭載されている点です。地震や台風の発生時に従業員へ自動で安否確認メッセージを送信し、回答をリアルタイムで集計できます。屋外作業が中心の建設業では、災害時の迅速な安否把握が人命に直結するため、この機能の価値は高いと言えます。

設備予約機能を応用して、社用車や重機の利用予約を管理している建設会社もあります。クラウド版のほかにオンプレミス版(自社サーバー設置型)も提供されているため、機密性の高い図面データを社外サーバーに保管したくないという要件にも対応できます。

Garoon — 数百名規模の中堅建設会社に適した設計

サイボウズが提供する大規模組織向けのグループウェアです。月額845円/人からで、サイボウズ Officeと比べると組織管理の機能が格段に充実しています。

スペース機能で部門・プロジェクト・現場ごとの情報共有スペースを柔軟に設計でき、スケジュールの閲覧権限を部署やプロジェクト単位で細かく設定可能です。複数の支店を持つ中堅建設会社や、部門間の情報共有を整備したい会社に向いています。

kintoneとの連携が容易な点もGaroonの強みです。Garoonでスケジュール・掲示板を管理しつつ、kintoneで工事台帳や日報を管理するという組み合わせは、中堅建設会社のDX推進の定番パターンになりつつあります。

数十名規模であればサイボウズ Officeで十分ですが、100名を超えてくると組織階層やアクセス権限の管理が複雑になるため、Garoonの導入を検討するタイミングです。

建設現場の特有シーン別活用ガイド

グループウェアを導入しても「現場で使われない」という失敗は、活用シーンをイメージできていないまま導入してしまうことが主な原因です。建設業の実務に即した使い方を場面ごとに整理しておくと、現場への説明がしやすくなります。

現場写真の共有と施工記録

スマートフォンで撮影した施工写真をグループチャットやDriveに即時アップロードし、事務所のスタッフがリアルタイムで確認する運用が最も広く普及しています。LINE WORKSとGoogle Workspaceはどちらも10MB以上の画像ファイル送信に対応しており、高解像度の写真でもストレスなく共有できます。

写真に日付・場所・コメントを紐づけて管理したい場合は、kintoneで写真台帳アプリを作成する方法が効果的です。「撮影日 / 工区 / 工種 / 担当者」を属性として持つアプリを構築すれば、後から「○月○日の○工区の写真」を瞬時に検索できます。

安全朝礼のペーパーレス化

毎朝の安全朝礼で読み上げる「今日の作業内容」「危険予知(KY)活動の結果」「天候・作業中止の判断」などをグループウェアの掲示板やチャットに投稿し、作業員全員が確認できる体制を作っている建設会社が増えています。紙の回覧が不要になるため、署名を集めるための時間(1現場あたり5〜10分)が削減できます。

desknet’s NEOのウェブメールや掲示板機能、LINE WORKSのグループチャットを使えば、現場リーダーが朝礼前にスマートフォンから投稿し、全員がスマートフォンで確認するワークフローを作れます。

図面の最新版管理と配信

現場でよく起きるトラブルの一つが「古い図面で作業してしまった」です。設計変更があるたびにグループウェアのファイル管理機能に最新版をアップロードし、旧バージョンをフォルダから移動しておく運用ルールを設けることで、このリスクを大きく下げられます。

Microsoft 365のSharePointやGoogle DriveはPCでもスマートフォンでも同じファイルにアクセスできるため、事務所で更新した図面が現場のタブレットに即時反映されます。大容量のPDFやDWGファイルを頻繁に扱う現場では、ストレージ容量の大きいプランを選ぶことが重要です(Google Workspace Business Standardなら1ユーザー2TB)。

電波不安定な現場での対策

山間部や地下工事、高層ビルの鉄骨工事など、電波状況が不安定な現場はゼロではありません。主要なグループウェアのオフライン対応状況を整理しておきます。

製品オフライン閲覧自動同期(接続回復時)推奨の対策
Google Workspace(Drive)事前設定したファイルのみあり使用前に「オフラインで使用可能」に設定
Microsoft 365(OneDrive)事前同期したファイルのみありOneDriveのオフライン同期を有効化
LINE WORKS過去の受信メッセージは閲覧可あり重要ファイルは事前にDriveに保存
サイボウズ Office不可(要接続)電波が届く場所で更新確認を徹底
kintone不可(要接続)オフライン対応アプリとの併用を検討

オフライン環境が多い現場では、施工管理専用のアプリ(施工管理アプリ比較参照)との組み合わせも選択肢に入れるとよいでしょう。施工管理アプリの多くはオフライン対応が強化されています。

従業員規模別の選び方ガイド

グループウェアは「高機能であれば良い」というものではありません。自社の規模とITリテラシーに合ったツールを選ぶことが定着の鍵になります。

従業員規模おすすめ製品月額目安(10人利用時)選定理由
1〜10名LINE WORKS(フリー)0円まず無料で始められる。LINEの操作感で抵抗が少ない
10〜30名LINE WORKS(有料)/ サイボウズ Office4,500〜6,000円Drive機能やワークフローで業務を整理
30〜100名サイボウズ Office / desknet’s NEO4,000〜6,000円部門横断のスケジュール管理と稟議の電子化
100〜300名Garoon / Microsoft 3657,500〜8,450円組織管理・権限設定が充実
300名以上Microsoft 365 / Garoon + kintone一人あたり1,000円〜(kintone単体、ライトコース)全社基盤としてのスケーラビリティ

重視するポイント別に整理すると、以下のようになります。

重視するポイントおすすめ理由
コスト最優先LINE WORKS(無料)/ desknet’s NEO無料プランあり。有料でも月額400〜450円と手ごろ
操作のシンプルさLINE WORKS / サイボウズ OfficeLINEの操作感。シンプルなUI設計
業務アプリの柔軟性kintone日報・工事台帳を自社仕様でノーコード構築
Office連携Microsoft 365Excel・Word・PowerPointとの統合。Copilot連携
安否確認機能desknet’s NEO標準搭載。追加費用なしで災害対応
大規模組織Garoon / Microsoft 365複雑な組織階層と権限管理に対応

LINEからLINE WORKSへの移行手順

LINEで業務連絡をしている建設会社がLINE WORKSに移行するケースは年々増えています。移行の手順を5段階に分けて整理します。

移行前の準備(1〜2週間)

管理者アカウントを作成し、LINE WORKSの管理画面から会社情報を登録します。組織図に合わせて部署(現場単位がおすすめ)を設定し、メンバーのアカウントを一括登録しておきます。フリープランなら費用はかかりません。

現場リーダーへの先行導入(1週間)

全社一斉導入ではなく、協力的な現場リーダー2〜3名に先行で使ってもらいます。この段階で「写真の送り方」「グループの作り方」「通知の設定」など、現場でよく使う操作を洗い出し、簡単なマニュアル(スクリーンショット付きのA4用紙1〜2枚)を作成します。

全社への展開(2〜4週間)

現場単位でグループを作成し、全従業員にアプリをインストールしてもらいます。LINEとUIが同じため、多くの場合「説明会なしでも使える」という反応が得られますが、50代以上の職人にはスマホの画面を見せながら一緒に操作するサポートが効果的です。

LINEとの並行運用期間(2〜4週間)

いきなりLINEを禁止すると反発が生まれます。移行期間中は「業務連絡はLINE WORKSで。プライベートの連絡はLINEで」という切り分けを明示し、2〜4週間の並行期間を設けます。この期間中に、LINE WORKSでの連絡に対して迅速に応答することで「こっちのほうが仕事の話が見やすい」という体感を作ります。

LINE業務利用の終了

並行運用期間が終わったら、業務連絡用のLINEグループを閉鎖します。LINE WORKSにはLINEユーザーとの外部トーク連携機能があるため、協力会社がLINEしか使っていない場合でもやり取りを継続できます。

移行のコツ — 完璧を求めない

LINE WORKSの全機能を最初から使おうとする必要はありません。チャットとファイル共有だけでスタートし、慣れてきたらカレンダーやタスク管理に範囲を広げるのが現実的です。「現場で使えるかどうか」が判断基準であり、機能の多さではありません。

導入でよくある失敗パターンと対策

グループウェアの導入は「ツールの選定」よりも「現場への定着」のほうが難しいのが実態です。建設業で多い失敗パターンを3つ挙げます。

失敗1:機能が多すぎて使われない

高機能な製品を選んだものの、現場の職人が「どこを押せばいいかわからない」と敬遠し、結局電話とFAXに戻ってしまうケースです。Microsoft 365やGoogle Workspaceに多い失敗パターンで、特にTeamsの多機能さは建設現場の実態に合わないことがあります。

対策としては、現場で使う機能を「チャット」と「ファイル共有」の2つに絞ることです。管理者がアプリの設定で不要な機能を非表示にしたり、「このボタンだけ使えばOK」というシンプルなガイドを配布したりすることで、利用のハードルを下げられます。

失敗2:経営層だけで決めて現場が反発

事務所の管理者が機能とコストだけで製品を選び、現場の職人に事後通達する形で導入すると、高い確率で定着に失敗します。「また余計な仕事が増える」「今のやり方で回っている」という反発が起き、形だけアカウントを作ったものの誰も使わないという状態に陥ります。

対策は、選定段階から現場リーダーを巻き込むことです。候補製品を2〜3つに絞った段階で、現場リーダーに無料トライアルを使ってもらい、「現場目線で使いやすいかどうか」のフィードバックを反映させます。「自分たちが選んだツール」という当事者意識が定着を後押しします。

失敗3:導入後のフォローがない

初期設定とアカウント配布だけで終わり、使い方のサポートが不十分なまま放置するケースです。導入から1ヶ月以内に利用が定着しなかった場合、そのまま使われなくなる可能性が高まります。

対策は、導入後2〜4週間を「集中サポート期間」と位置づけ、質問対応やフォローを意識的に行うことです。朝礼や安全ミーティングの場で「昨日の投稿見ましたか?」と声をかけるだけでも効果があります。社内にITに詳しい人がいなければ、サイボウズやLINE WORKSの導入支援パートナーの活用も検討してください。

導入成功事例 — 建設業3社のケース

事例1:従業員15名の土木会社がLINE WORKSで連絡ミスを半減

東北地方の土木工事会社(従業員15名・年商3億円)は、3つの現場を同時進行するなかで電話連絡の行き違いが頻発していました。LINE WORKSのフリープランを導入し、現場ごとのグループチャットで連絡を一元化した結果、電話での確認作業が1日あたり平均40分から15分に短縮。導入コストはゼロ、現場の職人も「LINEと同じだから迷わなかった」と好評でした。

事例2:従業員80名の総合建設会社がサイボウズ Officeで稟議を電子化

関東の総合建設会社(従業員80名・年商20億円)は、購買稟議と出張申請に紙の伝票を使っていたため、承認に2〜3日かかる状態でした。サイボウズ Officeのワークフロー機能で稟議を電子化したところ、承認のリードタイムが平均0.5日に短縮。スマホから承認できるため、社長が現場にいても申請が滞らなくなりました。月額費用は約48,000円(80名×600円)で、紙の印刷・保管コストの削減分でほぼ相殺できています。

事例3:従業員200名の中堅建設会社がGaroon + kintoneで全社DXを推進

中部地方の中堅建設会社(従業員200名・年商50億円)は、部門ごとに異なるツールを使っており、情報がサイロ化していました。Garoonを全社のスケジュール・掲示板基盤として導入し、kintoneで工事台帳・日報・安全書類のアプリを構築。部門をまたいだ情報共有が可能になり、月次の経営会議に必要なデータの集計時間が3日から半日に短縮されました。

導入コスト計算シミュレーション — 年間費用の実額比較

グループウェアの費用は「月額○円/人」という表示だけでは比較しにくいため、従業員規模別に年間の実際のコストを計算してみます。

20名規模の建設会社の場合(年間費用)

製品月額単価/人月額合計(20名)年間費用無料試用
LINE WORKS(フリー)0円0円0円
LINE WORKS(スタンダード)450円9,000円108,000円30日間
desknet’s NEO400円〜8,000円〜96,000円〜60日間
サイボウズ Office600円12,000円144,000円30日間
Google Workspace(Business Starter、年契約)800円16,000円192,000円14日間
Microsoft 365(Business Basic、年契約)899円17,980円215,760円30日間
kintone(ライトコース、最低10ユーザー)1,000円20,000円240,000円30日間
Garoon(クラウド版、〜1,000ユーザー)900円18,000円216,000円30日間

50名規模の建設会社の場合(年間費用)

製品月額合計(50名)年間費用5年間の総コスト
LINE WORKS(スタンダード)22,500円270,000円135万円
desknet’s NEO20,000円〜240,000円〜120万円〜
サイボウズ Office30,000円360,000円180万円
Google Workspace(Business Starter、年契約)40,000円480,000円240万円
Microsoft 365(Business Basic、年契約)44,950円539,400円269.7万円
Garoon(クラウド版)45,000円540,000円270万円

上記はいずれも税抜き・公式サイト掲載の定価ベースです。社数ライセンスや年間一括払いの場合は割引が適用されるケースがあります。また、初期設定費用(サーバー構築、アカウント登録代行等)は含まれていません。

20名規模での補助金活用後の実質負担(kintoneの場合)

補助率3/4の枠を活用した場合の試算例です。

  • kintone月額費用: 1,000円/人 × 20名 = 20,000円/月(ライトコース、最低10ユーザー)
  • 年間費用: 240,000円
  • 補助額(3/4補助): 180,000円
  • 実質負担(1年目): 60,000円(月あたり5,000円)

同規模でExcelの業務を置き換えた場合、集計・転記にかかる工数(1人あたり月3〜5時間と仮定)の削減効果として年間約50〜80万円相当の工数削減が見込めます。1年目から投資対効果がプラスになる計算です。

デジタル化・AI導入補助金の活用

グループウェアの導入費用は、国の補助金を活用することで大幅に抑えられます。2026年度から名称が変更された「デジタル化・AI導入補助金」(旧IT導入補助金)は、クラウド型グループウェアも補助対象です。

項目内容
補助対象IT導入支援事業者が提供する登録済みITツール
補助率1/2〜3/4(申請枠による)
補助額数万円〜450万円(申請枠による)
対象企業中小企業・小規模事業者

サイボウズ Office、kintone、LINE WORKS、desknet’s NEOなど、主要なグループウェアはいずれもIT導入支援事業者を通じて補助金申請が可能です。申請の手続きは支援事業者が代行してくれるケースが多いため、まずは導入を検討している製品のベンダーに補助金対応の可否を確認してください。

2026年度の公募スケジュールは公式サイトで随時更新されています。補助金の詳しい活用方法は「建設業のIT導入補助金活用ガイド」で解説しています。

補助金で導入コストを半額以下にできる場合も

補助率3/4の枠を活用すれば、例えばkintone(ライトコース月額1,000円/人×30名=年間36万円)の1年分の利用料のうち27万円程度が補助される計算です。初年度の実質負担は9万円程度にまで下がります。補助金の活用で「コストがネックで導入できない」という課題は解消しやすくなっています。

グループウェア導入後の活用ステップ

グループウェアの導入は、建設業DXの入り口です。情報共有の基盤が整ったら、業務のデジタル化を段階的に広げていくのが効果的です。

ステップ取り組み活用ツール
1(導入期)チャット・スケジュール共有LINE WORKS / サイボウズ Office
2(定着期)ファイル共有・ワークフロー電子化Google Drive / サイボウズ ワークフロー
3(拡張期)日報・工事台帳のデジタル化kintone / 施工管理アプリ
4(高度化)施工写真管理・原価管理の一元化施工管理アプリ / 原価管理ソフト

グループウェアで「デジタルで情報をやり取りする習慣」が定着すれば、施工管理アプリ勤怠管理アプリへの展開もスムーズに進みます。建設業DXの全体像については「建設業のDX、何から始める?」で詳しく解説しています。

参考情報

よくある質問

建設業でグループウェアを使うメリットは何ですか?
現場と事務所の情報共有がリアルタイムになり、電話やFAXでの連絡ミスが減少します。スケジュール共有、ファイル管理、ワークフロー(稟議の電子化)に加え、安否確認や工程管理の効率化にも直結します。
LINEからグループウェアに移行すべきですか?
業務連絡にLINEを使っている場合、退職者のアカウント管理やデータの一元管理が困難で、セキュリティ上のリスクがあります。LINE WORKSならLINEと同じ操作感で使えるため移行のハードルが低く、管理者側でアカウントやデータを一元管理できます。
グループウェアの費用はどのくらいですか?
月額400〜1,800円/人が相場です。LINE WORKSには無料プランもあります。10名の建設会社なら月額0〜18,000円、30名で12,000〜54,000円程度です。デジタル化・AI導入補助金を活用すれば、コストの1/2〜3/4が補助される場合もあります。
ITに不慣れな職人でもグループウェアを使えますか?
LINE WORKSはLINEと同じ操作感のため、スマホを日常的に使っている方なら問題ありません。サイボウズ Officeも画面がシンプルで50代以上の職人にも使いやすい設計です。導入時は使う機能を2〜3つに絞り、段階的に範囲を広げるのが効果的です。
kintoneとサイボウズ Officeはどう使い分けますか?
サイボウズ Officeはスケジュール・掲示板などの定型的なグループウェア機能がパッケージ化されており、すぐに使い始められます。kintoneは業務アプリを自分で構築できるプラットフォームで、日報や工事台帳を自社仕様で管理したい場合に適しています。両方を併用する会社も少なくありません。
グループウェアはデジタル化・AI導入補助金の対象ですか?
はい。クラウド型グループウェアは補助金の対象です。IT導入支援事業者を通じて申請すれば、導入費用の1/2〜3/4が補助される場合があります。最新の登録状況・補助率は公式サイトでご確認ください。
社外の協力会社ともグループウェアで情報共有できますか?
LINE WORKS・サイボウズ Office・kintoneなど多くのグループウェアがゲスト招待機能に対応しています。LINE WORKSはLINEユーザーとの外部トーク連携にも対応しており、協力会社がLINE WORKSを導入していなくてもLINEアプリからやり取りが可能です。
グループウェアの導入にどのくらいの期間がかかりますか?
LINE WORKSやサイボウズ Officeなどクラウド型の製品であれば、アカウント作成から利用開始まで即日〜数日で可能です。全社への定着までを含めると1〜2ヶ月が目安です。先行導入・並行運用・完全移行の3段階で進めるのがスムーズです。

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