この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

公共施設、オフィス、共同住宅、商業施設で木造化の相談が増えています。CLT 木造建築 建設業というテーマは、環境配慮の話に見えて、実際には工期短縮、軽量化、差別化、入札提案に関わる経営テーマです。RC造やS造だけを前提にしてきた建設会社でも、CLTの基本を押さえておく価値が高くなっています。

CLTとは何か

CLTはCross Laminated Timberの略で、日本語では直交集成板と呼ばれます。ひき板を繊維方向が直交するように積層接着した大判の木質パネルで、壁、床、屋根などの構造部材として使えます。繊維方向を交互に重ねるため、寸法安定性と面としての強度を確保しやすい点が特徴です。

一般的な在来木造は柱・梁で構造を組みます。CLTは大判パネルで面を構成するため、壁式構造のように使える場面があります。RC造の壁や床を木質パネルに置き換えるイメージに近く、工場で加工した部材を現場で組み立てるプレファブ性も強い工法です。

RC造との違い

RC造は、型枠、鉄筋、コンクリート打設、養生という現場作業が中心です。重量が大きく、基礎や杭への負担も増えます。一方、CLTは工場でパネルを加工し、現場ではクレーンで建て込む流れが中心になります。軽量で、湿式工程が少なく、現場作業を短縮しやすい。

ただし、CLTはRC造の単純な代替ではありません。遮音、耐火、接合部、防水、設備貫通、搬入計画など、木造ならではの設計・施工上の検討が必要です。得意な建物用途と不得意な条件を見極めることが、参入時の最初のポイントになります。

CLT木造建築のメリット

軽量で基礎負担を抑えやすい

CLTはRCに比べて軽量です。建物重量が下がれば、基礎・杭の負担を抑えられる可能性があります。地盤条件が厳しい敷地、既存建物の増築、狭小地での施工では、軽量化が計画上のメリットになることがあります。

施工速度を上げやすい

CLTパネルは工場でプレカットし、現場では建て込みと接合を行います。型枠や養生の工程が減るため、工程計画によってはRC造より短工期を狙えます。現場の技能者不足が続くなかで、工場加工比率を高める工法は、建設業の働き方改革とも相性があります。

環境性能を訴求できる

木材は成長過程でCO2を吸収し、建築物として使われる間は炭素を固定します。建築物の木造化・木質化は、脱炭素や地域材活用の文脈で評価されやすく、発注者のESGやGX方針にも合います。建設業の脱炭素を進める会社にとって、CLTは提案メニューの一つになります。

意匠性と差別化

木の質感を活かした空間は、公共施設、教育施設、宿泊施設、オフィスで評価されやすい要素です。構造材をそのまま現しにできる設計では、内装仕上げの一部を兼ねることもあります。地域の木材を使う提案は、自治体案件や地域密着型プロジェクトで差別化しやすくなります。

CLTのメリットは「木だから安い」ではありません。軽量化、短工期、環境価値、意匠性をどの案件で評価してもらえるかを見極めることが大切です。

コストの現状とRC造との比較

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CLTは、案件条件によってコスト評価が大きく変わります。パネル材料費だけを見るとRC造より高く見える場合がありますが、基礎、工期、仮設、現場労務、内装仕上げ、CO2評価まで含めると判断が変わることがあります。

比較項目CLT木造RC造
構造重量軽い重い
現場工程工場加工・現場建て込み中心型枠・配筋・打設・養生が中心
工期短縮余地がある養生期間の影響を受ける
材料費案件規模・調達で変動比較的見積りしやすい
耐火設計被覆・燃えしろ設計等を検討実績が多い
遮音床構成・仕上げの工夫が必要重量で有利な場合が多い
環境訴求炭素固定・木材利用を訴求しやすい低炭素材料等の工夫が必要

コスト低減の鍵は、標準化と早期設計です。設計終盤にRC造からCLTへ変更すると、構造、設備、防火、納まりをやり直すためコストが上がります。企画段階からCLTを前提にスパン、階高、設備ルート、搬入計画を組むと、工期短縮や部材ロス削減の効果が出やすくなります。

量産化による低減傾向

国内ではCLTの製造体制や設計・施工実績が増えています。普及初期に比べると、標準ディテール、接合金物、耐火仕様、設計ノウハウが整いつつあります。ただし地域によって供給体制に差があり、輸送距離や加工工場の空き状況でコストが変わります。見積り時には、材料価格だけでなく、加工、運搬、建て方、接合金物、耐火被覆、設計協力費まで含めて比較してください。

活用事例が増えている建物用途

CLTは、戸建住宅だけでなく中大規模建築での活用が進んでいます。特に、公共施設、学校、庁舎、福祉施設、オフィス、商業施設、宿泊施設では、木質空間と環境性能を評価しやすい傾向があります。

中層オフィスでは、木質化による企業イメージ向上や、働く環境の快適性が重視されます。公共施設では、地域材利用、脱炭素、防災拠点としての整備など、政策目的と組み合わせやすい。商業施設や宿泊施設では、内装材としての木の質感が集客面の価値になります。

建設会社にとって重要なのは、施工実績を小さく作ることです。最初から大規模な純木造に挑むのではなく、階段室、床版、屋根、増築部、内装木質化など、部分採用から経験を積む方法もあります。

建設業のGX戦略との関連

建設業のGXは、現場の燃料削減だけではありません。建てる建物そのものの環境性能、使用する材料、施工時のCO2、建物のライフサイクル全体が問われます。CLTは、木材利用による炭素固定、鉄やコンクリート使用量の抑制、プレファブ化による現場効率化という点で、GX提案に組み込みやすい技術です。

カーボンニュートラル対応を発注者へ提案する際、ZEB、太陽光、省エネ設備、低炭素コンクリートと並んで、木造化・木質化を選択肢に入れられると提案の幅が広がります。公共工事や民間開発でも、環境配慮を明確に打ち出す案件では、CLTの理解が営業上の差になります。

CO2固定効果の説明には根拠が必要

CLTを提案するとき、「木だから環境に良い」とだけ言うのは弱い説明です。木材使用量、炭素固定量、代替材料との比較、森林認証、地域材の調達ルートを示すと、発注者に伝わりやすくなります。数値を出す場合は、林野庁や業界団体が公表する算定方法を確認してください。

活用できる補助金・支援制度

中大規模木造やCLT活用には、国土交通省、林野庁、自治体の支援制度が使える場合があります。年度ごとに事業名、対象建物、補助率、上限額が変わるため、具体的な申請時には最新の公募要領を確認してください。

代表的には、木造建築物の普及、木材利用促進、サステナブル建築物等の先導事業、地域材活用、公共建築物の木造化支援などの制度があります。民間建築では、建物用途、延べ床面積、構造、木材使用量、普及性、先導性が審査のポイントになります。

ものづくり補助金は、CLTそのものの建築費補助ではありませんが、プレカット加工、施工効率化、BIM連携、木質部材加工設備など、生産性向上につながる設備投資で検討余地があります。制度の対象経費に合うかは、申請年度の要領と専門家確認が必要です。

補助金を前提にCLT案件を組む場合、交付決定前の契約・発注が対象外になることがあります。発注スケジュールと補助金スケジュールを早めに照合してください。

中小建設会社の参入ポイント

中小建設会社がCLTに参入する場合、いきなり設計から施工まで全てを自社で抱える必要はありません。構造設計者、CLTメーカー、プレカット工場、接合金物メーカー、耐火仕様に詳しい設計者とチームを組むことが現実的です。

最初のステップは、地域でCLTや中大規模木造の実績がある設計事務所・メーカーを把握することです。次に、見学会やセミナーで施工手順、搬入計画、建て方、安全管理を学びます。小規模な倉庫、事務所、公共施設の一部木質化など、リスクを限定した案件で経験を積みます。

施工面では、接合部の精度、雨養生、搬入順序、クレーン計画、傷防止、現し仕上げの品質管理が重要です。RC造の感覚で「現場で調整すればよい」と考えると、加工済みパネルの精度を活かせません。BIMや3Dモデルを使って事前に干渉を確認する体制も有効です。

BIMを使える会社は、CLTとの相性が良くなります。パネル割り、開口、設備貫通、金物位置をモデルで確認できれば、工場加工と現場施工のズレを減らせます。

施工計画で注意するポイント

CLTは工場加工の精度が高い一方で、現場での修正余地が限られます。施工計画では、搬入、仮置き、建て方、雨養生、接合、仕上げ保護を早い段階で決めてください。RC造のように現場で型枠を調整する感覚とは違います。

搬入計画では、パネル寸法、重量、搬入車両、現場前面道路、クレーン能力を確認します。大判パネルは一度に多く運べる反面、現場の仮置きスペースが不足すると建て方が止まります。搬入順序と建て方順序をそろえ、必要な部材が必要なタイミングで来るように調整します。

雨養生も重要です。CLTは構造材であり、現し仕上げとして使う場合もあります。施工中の雨濡れ、泥はね、傷、金物周りの水分管理を怠ると、仕上げ品質や工程に影響します。シート養生、仮屋根、床面排水、開口部の一時塞ぎを計画に入れておく必要があります。

接合部は、CLT施工の品質を左右します。金物位置、ボルト締付け、めり込み、隙間、建入れ精度を確認し、写真記録を残します。施工者だけで判断しにくい部分は、構造設計者やメーカーと検査ポイントを事前に共有してください。

設備工事との調整も早めに行います。配管やダクトの貫通位置を現場で簡単に増やすことはできません。BIMや施工図で貫通、スリーブ、開口、金物の干渉を確認し、加工前に決め切ることが大切です。CLT案件では、設計、製作、施工の情報共有が遅れるほどコストが増えます。

見積りでは、CLTパネル本体だけでなく、設計協力、構造計算、接合金物、加工図、運搬、クレーン、建て方、雨養生、耐火被覆、遮音対策、現し面の補修まで入れます。木材費だけをRC造のコンクリート・鉄筋費と比べると判断を誤ります。基礎軽量化、工期短縮、内装仕上げの削減、環境価値を含めて総額で比較してください。

発注者への説明では、維持管理も忘れないでください。木材の現し部分は、傷、汚れ、日射、湿気への配慮が必要です。引き渡し後の清掃、点検、補修方法をあらかじめ説明しておくと、木造建築への不安を減らせます。CLTは環境性だけでなく、運用段階まで含めて提案することで、発注者に選ばれやすくなります。

社内では、初回案件の記録を残します。搬入で困った点、建て方にかかった人工、金物施工の注意点、雨養生の改善点、協力会社の評価をまとめておけば、次の見積り精度が上がります。CLTは経験の蓄積が競争力になります。

営業面では、CLTを単独で売り込むより、ZEB、省エネ改修、地域材活用、防災拠点整備、短工期化と組み合わせて提案すると通りやすくなります。発注者が求めているのは新しい材料そのものではなく、環境価値、工期、利用者満足、地域への説明力です。CLTをその目的にどう効かせるかを示してください。

社内勉強会で事例を共有するだけでも提案力は上がります。

小さく試し、次の案件へ学びを残してください。

よくある質問

CLT木造建築の耐火性能は大丈夫ですか?
建物用途、階数、規模に応じて、燃えしろ設計、耐火被覆、認定仕様などを組み合わせて設計します。CLTだから耐火性能が低いと単純に判断するものではありませんが、RC造とは検討方法が異なるため、耐火設計に詳しい設計者と早期に協議する必要があります。
CLTはRC造より工期を短縮できますか?
工場加工したパネルを現場で建て込むため、型枠・打設・養生の工程を減らせる場合があります。ただし、設計段階からCLTを前提に計画し、搬入・クレーン・接合・雨養生を整えた場合に効果が出ます。設計終盤での変更では工期短縮効果が小さくなることがあります。
中小建設会社でもCLT施工に参入できますか?
参入できます。最初はCLTメーカー、構造設計者、プレカット工場、接合金物メーカーと連携し、部分採用や小規模案件から経験を積むのが現実的です。接合部精度、雨養生、搬入順序、現し仕上げの品質管理を学ぶことが重要です。

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