この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「脱炭素?うちみたいな中小の建設会社には関係ないでしょう」 — そう思っている経営者は少なくありません。しかし、建設業における脱炭素の波は確実に中小企業にも押し寄せています。元請けのゼネコンがサプライチェーン全体のCO2排出量を管理し始め、下請けにも排出データの提出を求めるケースが増えています。公共工事の入札では、脱炭素への取り組みが加点項目になる自治体も出てきました。

日本建設業連合会は「施工段階のCO2排出量を2030年度に2013年度比40%削減」という目標を掲げています。この数字を達成するには、元請けだけでなくサプライチェーン全体の協力が不可欠。中小建設会社も「いつか」ではなく「今」動き始める必要があります。

この記事では、建設業の脱炭素に中小企業がどう取り組むべきか、具体的なステップと使える補助金を解説します。

なぜ中小建設会社に脱炭素が求められるのか

元請けからの要請

大手ゼネコンはScope 3(サプライチェーン全体の排出量)の算定を進めています。自社の排出だけでなく、下請け企業が現場で使う重機の燃料、運搬車両のCO2排出量まで把握しようという動きです。将来的には協力業者の選定基準にCO2排出データの提出が含まれる可能性があり、対応できない企業は仕事を失うリスクがあります。

公共工事の入札加点

国土交通省は2023年度から直轄工事の一部で「CO2排出量削減に関する技術提案」を評価項目に追加しています。自治体レベルでも同様の動きが広がっており、経営事項審査(経審)のW点(社会性等)で環境関連の加点を取れる企業が入札で有利になる構造が生まれつつあります。

2025年省エネ基準適合義務化

2025年4月から全ての新築建築物に省エネ基準への適合が義務化されました。住宅を含む全建築物が対象で、断熱性能や一次エネルギー消費量の基準を満たす必要があります。これは建てる側の建設会社にも省エネ施工の知識と対応力を求めるもので、カーボンニュートラルへの対応は経営課題として避けて通れなくなっています。

建設業のCO2排出 — 何がどれだけ出ているのか

施工段階の排出量

日本建設業連合会の調査によると、建設業の施工段階におけるCO2排出量は2022年度で297.1万t-CO2でした。前年度比16.3%の減少で、削減は進んでいるものの、まだ目標には届いていません。

排出源の内訳は、建設機械の燃料(軽油が中心)が最大で、次いで現場での発電機使用、資材の運搬・搬入時の輸送となります。つまり「重機を動かす」「電気を使う」「モノを運ぶ」という建設業の基本動作そのものがCO2を出している構造です。

中小建設会社の排出の特徴

中小建設会社の場合、自社の排出量の大半は以下の3つに集中しています。

  • 重機・作業車両の燃料(軽油・ガソリン)
  • 事務所・詰所のエネルギー(電気・灯油)
  • 資材運搬時の車両燃料

逆に言えば、この3つを削減すれば中小企業でも「測れる成果」が出せるということです。大手のように大規模な設備投資は不要で、まず身近な排出源から手をつけるのが現実的です。

Scope 1(自社の直接排出)とScope 2(電力使用による間接排出)の合計が中小建設会社の管理対象。Scope 3(サプライチェーン全体)はまず元請けが算定し、将来的に下請けにもデータ提出が求められる流れです。

中小建設会社の脱炭素 3ステップ

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脱炭素は「知る → 測る → 減らす」の3ステップで進めます。いきなり設備投資をする必要はありません。

ステップ1: 知る — 自社の排出源を把握する

最初にやるべきことは、自社のCO2排出がどこから出ているかを大まかに把握することです。燃料の購入量(軽油○○リットル/月)、電気の使用量(事務所の電力○○kWh/月)、車両の走行距離を洗い出します。

専門的な算定ツールがなくても、まずは請求書や領収書ベースで燃料・電力の使用量を集計するだけで十分です。この段階では精度より「全体感をつかむ」ことが目的です。

ステップ2: 測る — CO2排出量を数値化する

使用量が把握できたら、CO2排出量に換算します。環境省が公表している「排出係数」を使えば、燃料の使用量からCO2排出量を計算できます。

  • 軽油1リットル → 約2.58kg-CO2
  • ガソリン1リットル → 約2.32kg-CO2
  • 電力1kWh → 約0.43kg-CO2(電力会社によって異なる)

たとえば、月に軽油を2,000リットル使っている現場なら、2,000 × 2.58 = 5,160kg-CO2(約5.2t-CO2)という計算になります。年間にすれば約62t-CO2。この数字が削減活動のベースラインになります。

クラウド型のCO2算定サービス(TansoMiruなど)を使えば、現場ごとの排出量を自動で算定・可視化できます。手計算では手間がかかるScope 1・Scope 2の算定を自動化でき、月次レポートの生成や前年同月比較なども簡単に行えます。導入コストは月額数千円〜数万円程度で、中小企業でも手が届く価格帯です。環境省のSHIFT事業では、こうしたDX型のCO2計測計画の策定に最大200万円の補助が出るため、実質的な負担はさらに抑えられます。

ステップ3: 減らす — 削減策を実行し効果を検証する

排出量のベースラインが決まったら、具体的な削減策に着手します。削減策は下のセクションで5つに整理しますが、大切なのは「やったらどれだけ減ったか」を数字で検証すること。月次で排出量を比較し、PDCAを回すことで継続的な削減が可能になります。

建設現場ですぐにできる5つの削減策

中小建設会社が初期投資を抑えつつ取り組める削減策を、実効性の高い順に整理します。

1. エコドライブの徹底

重機・ダンプ・社用車のアイドリングストップと急発進・急加速の抑制だけで、燃料消費を5〜15%削減できるとされています。ドライバーへの研修と、月次の燃費データ比較で定着を図ります。投資ゼロで始められる最も即効性���ある対策です。具体的には、朝礼時にエコドライブの目標値を共有し、月末に燃費データを集計して改善度合いを「見える化」するとよいでしょう。建設機械のアイドリングストップも徹底すれば、1台あたり1日数リットルの軽油削減が見込めます。

2. LED照明・エアコンへの切り替え

現場事務所や詰所の照明をLEDに切り替え、灯油ストーブをエアコン暖房に置き換えます。LED化だけで照明の電力消費を50〜70%削減でき、灯油ストーブからエアコンへの切り替えはCO2排出量を30〜40%削減する効果があります。

3. 建機のバッテリー式・ハイブリッド化

バックホウやミニショベルではバッテリー式(電動)の機種が増えています。購入には投資が必要ですが、レンタルで電動建機を利用する選択肢もあります。「カーボンオフセット付レンタル」を提供するレンタル会社もあり、レンタル代に排出量のオフセット費用が含まれる仕組みです。

大型重機の電動化はまだ発展途上ですが、ミニショベルやハンドブレーカーなど小型機では実用レベルに達しています。騒音が少ない点も住宅密集地での施工ではメリットになります。コマツの電動ミニショベル「PC30E-6」やキャタピラーの「Cat 301.9」など、主要メーカーも電動ラインナップを拡充しており、レンタル各社で取り扱いが増えています。

4. 太陽光パネルによる現場電源の確保

現場の仮設電源にポータブル太陽光パネルを併用することで、発電機の稼働時間を減らせます。現場照明や小型工具の充電に太陽光を充てるだけでも、発電機の軽油消費を削減できます。

5. 廃材の削減と分別の徹底

建設廃棄物の焼却処分はCO2排出の原因になります。プレカット材の活用で端材を減らし、分別を徹底してリサイクル率を上げることで、廃棄物由来のCO2を削減できます。ペーパーレス化と合わせて、現場から出る「ムダ」を減らす取り組みとして位置づけると、現場スタッフの理解も得やすくなります。

廃材の分別率を記録し、月次で改善度合いを共有すれば、現場の環境意識を高めるきっかけにもなります。建設リサイクル法の遵守と合わせて、廃棄物管理を「コスト削減+CO2削減」の両面で捉えることで、経営的なメリットも見えやすくなるでしょう。

入札で差がつく — 脱炭素が経営上の武器になる理由

総合評価方式での加点

公共工事の総合評価方式入札では、CO2排出削減の取り組みを「技術提案」として加点評価する自治体が増えています。「ISO14001の認証取得」「電動建機の使用実績」「現場のCO2排出量の算定・報告」などが評価項目になります。

脱炭素対応ができている企業は、同じ入札価格でも加点分だけ有利になるということです。入札参加資格の審査と合わせて、脱炭素への取り組みを「受注の武器」として活用できます。

経審の社会性等(W点)

経営事項審査のW点では、ISO14001やエコアクション21の認証が加点項目になっています。エコアクション21は中小企業向けの環境マネジメントシステムで、ISO14001より取得コストが低い点が特徴。認証取得に向けた取り組みそのものが、脱炭素のステップ1〜3(知る・測る・減らす)と重なるため、経審対策と脱炭素対策を同時に進められます。

元請けからの信頼

脱炭素に取り組んでいる下請け企業は、元請けのScope 3算定に協力できる存在として重宝されます。「排出量データを提出できる」「電動建機を保有している」といった要素は、協力業者としての選定で差別化要因になります。仕事の量ではなく仕事の質で選ばれる企業へ — 脱炭素はその道筋のひとつです。

採用面でのアピール

環境意識の高い若手人材にとって、脱炭素に取り組む企業は魅力的に映ります。建設業の採用サイトや求人票に「CO2排出削減に取り組んでいます」「電動建機を導入しています」と書けることは、人材確保の面でもプラスに働きます。若手の定着施策と合わせて、自社の「社会的意義」を発信する材料として活用できます。

活用できる補助金・支援制度

環境省 SHIFT事業

工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)は、中小企業のCO2削減計画の策定を支援する補助制度です。CO2排出量をクラウド上で見える化するDX型計画の策定には補助上限200万円(補助率3/4)が出ます。削減計画に基づく設備投資には補助率1/3〜1/2で支援があります。

省エネ補助金

省エネ補助金は、高効率空調や照明のLED化、ボイラーの更新といった省エネ設備の導入を支援します。事務所や詰所のエネルギー効率化に活用できます。

IT導入補助金

CO2排出量の算定・管理にクラウドサービスを導入する場合は、IT導入補助金も活用できます。TansoMiruなどのCO2管理サービスが補助対象になる可能性があります。

GX関連の税制優遇

カーボンニュートラル投資促進税制では、脱炭素化効果のある製品の生産設備や、生産工程等の脱炭素化に資する設備の導入に対して、特別償却(50%)または税額控除(5%〜10%)の優遇が受けられます。電動建機の購入がこの税制の対象になる場合があります。税理士や認定支援機関に相談のうえ、自社の設備投資計画に適用可能かどうかを確認してください。適用要件は設備の種類やCO2削減効果の大きさによって異なるため、事前の確認が不可欠です。

補助金の公募時期と要件は年度ごとに変わります。ケンテクの補助金一覧ページで最新の公募状況を確認してください。

よくある質問

中小建設会社でも脱炭素に取り組む必要がありますか?
はい。元請けのゼネコンがサプライチェーン全体のCO2排出量を管理し始めており、下請けにも排出データの提出を求めるケースが増えています。公共工事の入札では脱炭素への取り組みが加点項目になる自治体も出てきました。対応できない企業は将来的に受注機会を失うリスクがあります。
脱炭素の取り組みは何から始めればよいですか?
「知る → 測る → 減らす」の3ステップで進めます。まず自社の燃料・電力使用量を請求書ベースで集計し(知る)、環境省の排出係数でCO2排出量に換算し(測る)、具体的な削減策(エコドライブ、LED化等)を実行して効果を検証します(減らす)。いきなり設備投資をする必要はありません。
建設現場のCO2排出量はどうやって計算しますか?
環境省が公表している排出係数を使います。軽油1Lあたり約2.58kg-CO2、ガソリン1Lあたり約2.32kg-CO2、電力1kWhあたり約0.43kg-CO2で換算できます。クラウド型のCO2算定サービスを使えば、現場ごとの排出量を自動で算定・可視化することも可能です。
脱炭素に使える補助金はありますか?
環境省のSHIFT事業(CO2削減計画策定に補助上限200万円)、省エネ補助金(高効率設備の導入支援)、IT導入補助金(CO2管理ツールの導入)などが活用できます。また、カーボンニュートラル投資促進税制で電動建機等の設備投資に特別償却や税額控除を受けられる場合もあります。
脱炭素対応で入札に有利になりますか?
はい。国土交通省の直轄工事や一部の自治体では、CO2排出削減の取り組みが総合評価方式の加点項目になっています。また、経営事項審査のW点でISO14001やエコアクション21の認証が加点対象です。脱炭素対応は入札での競争力に直結する要素になりつつあります。

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