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API

えーぴーあい

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

施工管理と会計ソフト、毎月30時間の手入力 ── それをゼロにする「連携の仕組み」

施工管理アプリに入力した工事データを、会計ソフトに手作業で転記する。勤怠管理システムの出退勤データを、給与計算ソフトに打ち直す。建設会社のバックオフィスで繰り返されるこうした二重入力は、API連携によって自動化できます。

API(Application Programming Interface)とは、あるソフトウェアの機能やデータを、別のソフトウェアから利用できるようにする仕組みです。わかりやすく例えるなら、APIはレストランの注文窓口のような存在です。厨房(ソフトウェアの内部処理)に直接入ることはできませんが、注文窓口(API)を通じて料理(データや処理結果)を受け取ることができます。

建設業のデジタル化が進む中で、複数のツールをAPI連携で繋ぎ合わせ、業務フローを自動化する取り組みが広がっています。個々のツールをバラバラに使うだけでなく、API連携によってシステム全体の生産性を高める視点が重要になっています。

事務処理工数30〜50%削減 ── API連携がDXの実効性を左右する理由

建設会社では、施工管理アプリ、会計ソフト、勤怠管理システム、原価管理システムなど、複数のソフトウェアを業務で利用しています。これらのシステムが個別に独立して動いていると、同じ情報を各システムに手入力する二重作業が発生し、転記ミスのリスクも高まります。

APIを通じてシステム間のデータ連携が実現すると、たとえば施工管理アプリで入力した工事の完了情報が会計ソフトに自動的に反映され、請求処理がスムーズに進むといった運用が可能になります。

建設業のDXを進めるうえでは、個々のツールの導入だけでなく、ツール間の連携によるデータの一気通貫管理が重要です。APIはその連携を実現するための基盤技術として、経営者にも理解しておいてほしいキーワードです。

経済産業省の調査によると、業務システムのAPI連携を活用している企業では、事務処理にかかる工数が平均30〜50%削減されたというデータもあります。建設業においても、入力の二重化解消と転記ミスゼロが直接的な効果として期待できます。

リクエストと応答 ── APIの動作原理と建設業での実用例

APIの動作を簡単に説明すると、あるシステム(リクエスト元)が別のシステム(提供元)に対してデータの取得や処理を要求し、その結果を受け取るという流れです。この要求と応答の手順があらかじめ定義されており、その定義どおりにやり取りすることでシステム間の連携が実現します。

建設業で実用的なAPI連携の例をいくつか挙げます。

施工管理アプリ会計ソフトを連携させると、工事の完了データや経費情報が自動的に会計ソフトに取り込まれ、仕訳の手入力が不要になります。勤怠管理システム給与計算ソフトを連携させれば、出退勤データから給与計算への一連の流れが自動化されます。

また、国税庁のインボイス制度に対応した適格請求書発行事業者の確認APIを利用すれば、取引先の登録番号の有効性を自動的にチェックすることも可能です。

最近のクラウドサービスでは「API連携」や「外部サービス連携」の対応状況がサービス選定の重要な基準になっています。SaaSを導入する際は、自社で使っている他のツールとAPI連携ができるかどうかを事前に確認することをおすすめします。

建設業における具体的なAPI連携事例

事例1:施工管理と会計の連携

工事件数が多い建設会社では、施工管理アプリで記録された工事の完了情報と材料費・外注費の実績データを、会計ソフトに手動で転記する作業が大きな事務負担になっています。API連携を活用することで、この転記作業を自動化できます。

ある年商5億円の建設会社では、施工管理アプリと会計ソフトをAPI連携させた結果、毎月の経費精算・仕訳入力にかかる時間が月30時間から8時間に削減されたという事例があります。年換算で約264時間の削減効果は、経理担当者1名分のパート人件費に相当します。

事例2:勤怠管理と給与計算の連携

建設現場では現場ごとに出退勤を管理する必要があり、作業員が複数の現場を掛け持ちするケースも多くあります。クラウド型の勤怠管理システムをAPIで給与計算ソフトと連携させると、打刻データが自動的に給与計算に反映され、手入力と照合作業が不要になります。

月末の給与計算にかかる担当者の工数が、API連携前の10時間から2時間に短縮されたという事例が報告されています。人件費コストの削減だけでなく、給与ミスによるトラブルリスクの低減にもつながります。

事例3:CCUSと入退場管理の連携

CCUSのカードリーダーと現場の入退場管理システムをAPI連携させることで、技能者の入退場記録が自動的にCCUSの就業履歴として登録されます。二重入力が解消され、CCUS対応にかかる事務工数を大幅に削減できます。元請会社から義務付けられるCCUS活用への対応コストを下げる観点からも、このAPI連携の活用は実用的です。

APIの種類:建設業で知っておくべき区別

APIにはいくつかの種類がありますが、建設業の実務で意識すべき区別を簡単に説明します。

REST APIは現在最も普及しているAPIの形式で、主要なクラウドサービスの多くがREST APIを採用しています。Webhook(ウェブフック)は、あるイベントが発生したときに自動的に別のシステムに通知を送る仕組みで、「工事完了時に会計ソフトに通知する」といった自動化に活用されます。

ノーコード・ローコードのAPI連携ツール(ZapierやMakeなど)を使えば、プログラミングなしでシステム間の連携を設定できます。こうしたツールの月額費用は数千円から2万円程度であり、小規模な自動化であれば手軽に実現できます。

導入コスト・費用の目安

API連携の費用は、連携の方法によって大きく異なります。

クラウドサービスが提供する標準連携機能を使う場合は、多くのケースで追加費用が発生しません。サービスのプランによっては連携機能の利用に上位プランへの変更が必要なケースがあり、月額数千円〜1万円程度の差額が生じることがあります。

ノーコードの連携ツールを使う場合は月額数千円〜2万円程度が目安です。自社の業務に合わせたカスタム連携をシステム開発会社に依頼する場合は、開発費として50〜300万円程度の費用が発生します。

どの方法を選ぶかは、連携の複雑さと自社の IT 体制によって判断する必要があります。まずは標準連携機能で対応できないかを確認し、対応できない場合にノーコードツールや開発を検討するという順序が現実的です。

最新動向(2024〜2026年)

建設業DX加速とAPI活用の広がり

2024年の建設業2024年問題(時間外労働上限規制の適用)を受け、バックオフィス業務の効率化が急務となり、API連携による自動化への関心が高まっています。勤怠管理と給与計算の連携、施工管理と会計の連携など、中小建設会社でも実用的な連携事例が増えています。

インボイス制度対応のAPI活用

2023年10月から開始されたインボイス(適格請求書)制度への対応として、取引先の登録番号を国税庁のデータベースと突合するAPI連携が広く普及しました。会計ソフトやクラウド請求書サービスがこの機能を標準搭載するようになり、手動確認の手間がなくなりました。

AI機能のAPI提供

ChatGPTに代表されるAI機能がAPIとして提供されるようになり、業務システムへの組み込みが進んでいます。建設業向けシステムでも、見積もり作成支援や仕様書の自動要約などにAI APIを活用する事例が出始めています。

Webhook活用による業務自動化

リアルタイムなシステム間連携を実現するWebhookの活用が広まっています。「現場から写真が届いたら自動で施主にメール通知」「工事完了データが登録されたら請求書を自動生成」といった業務フローの自動化が、ノーコードツールを使って比較的低コストで実現できるようになっています。

ノーコードで実現するAPI連携 ── Zapier・Makeの活用法

API連携と聞くとプログラミングが必要なイメージがありますが、ノーコード(プログラミング不要)の連携ツールを使えば、技術的な専門知識がなくてもシステム間の自動連携を構築できます。

Zapier(ザピエル)は世界で最も広く使われているノーコード連携ツールです。「トリガー(きっかけ)」と「アクション(実行内容)」を組み合わせて自動化のフローを作成します。たとえば「施工管理アプリに新しい写真がアップされたら、Googleスプレッドシートに記録を追加する」「新規の工事データが登録されたら、チャットツールに通知を送る」といった連携を、画面上の操作だけで設定できます。月額2,000〜7,000円程度から利用可能です。

Make(メイク、旧Integromat)はZapierと同様のノーコード連携ツールで、より複雑な分岐処理やデータ変換に強みがあります。月額1,200円程度から利用でき、コストパフォーマンスの高さが中小企業に支持されています。

これらのツールが対応しているサービスは数千種類に及び、建設業で使われる主要なクラウドサービス(Google Workspace、Microsoft 365、freee、マネーフォワード、Chatwork、Slack等)のほとんどが接続対象です。

導入の手順としては、自動化したい業務フロー(例:勤怠データの集計→給与計算ソフトへの転記)を洗い出し、Zapier/Makeで対応可能かを無料プランで検証する方法が堅実です。

インボイス制度とAPI ── 登録番号の自動照合

2023年10月のインボイス制度開始以降、取引先の「適格請求書発行事業者」の登録番号を確認する業務が発生しています。国税庁はこの確認作業を効率化するために「適格請求書発行事業者公表サイトWeb-API」を公開しており、会計ソフトやクラウド請求書サービスがこのAPIを活用しています。

建設業では協力会社(下請)の数が多いため、個々の取引先の登録番号を手動で確認する作業は大きな事務負担になります。クラウド会計ソフトの多くは、国税庁のAPIと連携して登録番号の自動照合・有効性チェックを行う機能を標準搭載しています。

この仕組みはユーザーが意識しなくても裏側でAPIが動いている典型的な事例であり、「自社ではAPIを使っていない」と思っている建設会社でも、クラウドサービスを通じてすでにAPIの恩恵を受けている可能性が高いです。

「大規模なシステム開発が必要」は誤解 ── API連携の現実

APIとシステム開発の違い

「API連携」という言葉を聞くと「大規模なシステム開発が必要」と思う経営者が多いですが、実際には管理画面の設定だけで連携できるケースが大半です。主要なクラウドサービスは標準連携機能として対応しており、エンジニアを雇う必要はありません。

「API連携には専門知識が必要」という固定観念が、本来できるはずの自動化への取り組みを遅らせているケースが少なくありません。

APIキーの管理

API連携を設定する際に発行される「APIキー」は、システムへのアクセスに必要な認証情報です。APIキーが漏洩すると不正アクセスや情報流出のリスクがあります。担当者個人の管理に任せるのではなく、会社のルールとして安全な保管方法と権限管理を定めておくことが重要です。

サービス廃止時のリスク

クラウドサービスが終了したり仕様変更されたりすると、API連携が突然使えなくなるリスクがあります。重要な業務フローをAPI連携に依存させる場合は、代替手段の確保と定期的な連携状況の確認が必要です。

「他のシステムと繋がるか」── ツール選定で見落としがちな視点

API連携と聞くと技術的で難しい印象を受けるかもしれませんが、実際の運用では利用者がAPIを直接操作する場面はほとんどありません。多くのクラウドサービスは管理画面上の設定だけで他のサービスとの連携を有効にできる仕組みを備えています。

中小建設会社にとって重要なのは、新しいツールを導入する際に「他のシステムと連携できるか」という視点を持つことです。連携機能のないツールを導入してしまうと、結局は手作業でのデータ転記が残り、DXの効果が半減してしまいます。

ツールの選定時にはAPI連携の対応状況を確認し、将来的にシステム間のデータ連携を拡大できる余地を残しておくことが、長期的なDX戦略のうえで重要になります。

既存のシステムへの不満を感じているなら、API連携によって現状のまま改善できる部分がないかを確認することが、大規模なシステム刷新の前に検討すべき選択肢です。

参考情報

よくある質問

API連携には専門知識が必要ですか?
多くのクラウドサービスでは、管理画面からの設定だけで連携できる「標準連携」機能が用意されています。独自のカスタム連携を構築する場合はプログラミング知識が必要ですが、一般的な連携であれば専門知識がなくても設定可能です。不明な場合はサービス提供会社のサポートに問い合わせてみてください。
APIで連携するとセキュリティは大丈夫ですか?
主要なクラウドサービスのAPI連携は、通信の暗号化やアクセストークンによる認証など、セキュリティ対策が施されています。ただし、APIキー(接続に必要な認証情報)の管理は利用者側の責任となるため、社内で適切に管理するルールを設けておくことが大切です。
建設業でAPI連携を活用している具体的なシステムを教えてください
施工管理アプリと会計ソフトの連携、勤怠管理システムと給与計算ソフトの連携、CCUSカードリーダーと入退場管理の連携などが実際に普及しています。各サービスの公式ページで「連携対応サービス一覧」を確認すると、自社に合った組み合わせを検討しやすくなります。

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