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SaaS

さーす

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

月額数千円で始められる業務システム ── 中小建設会社のIT投資が変わった

かつて数百万円の初期投資が必要だった業務システムが、月額数千円から利用できるようになった。この変化をもたらしたのがSaaS(Software as a Service)です。

SaaSとは、ソフトウェアをパソコンにインストールして使うのではなく、インターネットを通じてサービスとして利用する仕組みです。「サース」または「サーズ」と読みます。利用者はWebブラウザやアプリからアクセスするだけで、ソフトウェアの機能を使うことができます。

身近な例でいえば、GmailやGoogleスプレッドシートもSaaSの一種です。建設業の分野では、施工管理アプリ勤怠管理システムクラウド会計ソフトなど、さまざまな業務にSaaS型のサービスが普及しています。

買い切りソフトからサブスク型へ ── SaaSが建設業DXを加速する理由

従来のソフトウェアは、CD-ROMやダウンロードでパソコンにインストールし、買い切りのライセンスを購入するのが一般的でした。サーバーの設置やメンテナンス、バージョンアップにかかるコストと手間が大きく、中小企業にとってはIT投資のハードルが高い状態が続いていました。

SaaSでは、これらの運用負担をサービス提供会社が一括して担います。利用者は月額または年額のサブスクリプション料金を支払うだけで、常に最新バージョンのソフトウェアを利用できます。初期費用を抑えて導入できる点が、中小建設会社のDX推進にとって大きなメリットです。

また、インターネット環境さえあれば現場でもオフィスでも同じデータにアクセスできるため、建設業のように複数の現場を抱える業態との相性が良い点も見逃せません。

SaaSの仕組みとクラウドの関係

SaaSの仕組みを支えているのがクラウドコンピューティングです。ソフトウェアの本体やデータはサービス提供会社のサーバー上で稼働しており、利用者はインターネット経由でアクセスします。

料金体系は月額制や年額制が主流で、利用するユーザー数や機能の範囲に応じて料金が変わるプランが一般的です。無料プランやトライアル期間を設けているサービスも多く、本格導入前に自社の業務に合うかどうかを試すことができます。

データはクラウド上に保存されるため、パソコンが故障してもデータが失われるリスクは低くなります。ただし、サービス提供会社のセキュリティ体制やデータのバックアップ方針は、事前に確認しておくことが重要です。

建設業で活用されている代表的なSaaSには、次のような分野のものがあります。

分野主な用途
施工管理写真管理、工程管理、図面共有、検査記録
勤怠管理出退勤の打刻、労働時間の集計、36協定の管理
会計・経理仕訳入力、請求書発行、インボイス対応
安全管理KY活動記録、安全書類作成、災害報告
原価管理工事別の原価集計、実行予算管理

建設業でのSaaS活用事例(Before/After)

施工管理SaaSの導入事例として、従業員30名規模の建設会社が写真管理を紙台帳からSaaSに切り替えたケースがあります。Before の状態では、現場写真をデジカメで撮影してSDカードでPCに取り込み、フォルダ整理して紙台帳に貼り付ける作業に1現場あたり月20〜30時間を費やしていました。施工管理SaaSに切り替えた後は、スマートフォンで撮影した写真が自動的に分類・保存され、台帳作成も含めて月5〜8時間に削減。写真の検索時間も大幅に短縮され、竣工書類の作成スピードが上がったと報告されています。

勤怠管理SaaSの事例では、多現場を抱える中堅建設会社が紙のタイムカードからGPS打刻対応のクラウド勤怠システムに移行したことで、現場ごとの労働時間集計にかかっていた月4〜6時間の事務作業がほぼゼロになった例があります。2024年4月の時間外労働上限規制適用に向け、リアルタイムで残業時間を把握できる体制の整備が急務だった背景がありました。

クラウド会計との連携では、工事原価の実績を施工管理SaaSから会計ソフトに自動連携するフローを構築した企業で、月次決算の締め作業が3日から1日に短縮されたという事例も出ています。

類似概念との違い

SaaSと混同されやすい概念として「パッケージソフト」と「スクラッチ開発」があります。

パッケージソフトはCD-ROMやダウンロードでPCにインストールして使う買い切り型のソフトウェアです。一度購入すれば追加費用が発生しない反面、バージョンアップへの対応や、複数PC・複数拠点での利用には追加ライセンス費用がかかります。SaaSはサービス提供会社がバージョンアップを随時行い、常に最新状態で使えるため、保守コストが低く抑えられます。

スクラッチ開発とは自社の要件に合わせてゼロからシステムを設計・開発する方式です。自由度は高い半面、開発費用は数百万〜数千万円規模になることが多く、中小建設会社では現実的な選択肢とはなりにくいです。

SaaSに近い概念として「ASP(Application Service Provider)」がありますが、現在は「クラウドサービス」「SaaS」という表現に統一されつつあり、実態上は同じものを指すことがほとんどです。

導入コスト・費用の目安

建設業向けSaaSの価格帯は機能と規模によって大きく異なります。

施工管理SaaSは月額5,000円〜3万円程度のプランが多く、ユーザー数に応じて段階的な料金設定になっているサービスが一般的です。現場写真管理・工程表・安全書類がセットになった多機能型サービスは、10ユーザーで月額3万〜5万円程度が目安です。

勤怠管理SaaSは従業員1人あたり月額200〜500円程度のサービスが主流で、50名規模の会社でも月額1〜2万円程度で運用できます。

クラウド会計・原価管理SaaSは、機能によって大きく幅があり、月額3,000円程度の基本プランから、原価管理・工事台帳機能を含む建設業特化型は月額3〜10万円程度になります。

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠では、SaaSの複数年分のサブスクリプション費用も補助対象になっており、最大で2年分のクラウド利用料を補助してもらえます。

最新動向(2024〜2026年)

2024年以降、建設業向けSaaSの統合化・連携強化が加速しています。施工管理・原価管理・安全書類・勤怠管理をシングルプラットフォームで提供するオールインワン型サービスが増加しており、複数SaaSを使い分ける「ツール乱立」の課題に対応する動きが出ています。

API連携の整備も進んでおり、異なるSaaS間でデータを自動連携する仕組みが標準的になってきています。施工管理SaaSと会計ソフトのAPI連携、勤怠SaaSと給与計算ソフトの自動同期などは、建設業向けにも対応したサービスが揃ってきました。

AI機能の組み込みも加速しており、写真自動仕分け・工程遅延予測・異常検知といった機能がSaaSに実装されるケースが増えています。2025年以降は「AIを内蔵したSaaS」が業界標準となる方向性が見えています。

SaaS選定時に確認すべき7つのチェックポイント

建設業向けSaaSを導入する際、「使いやすそう」という印象だけで選んでしまうと、後から運用に支障をきたすケースがあります。選定段階で確認しておくべきポイントを整理します。

1つ目はオフライン対応です。建設現場は通信環境が不安定な場所も多いため、電波が届かない環境でもデータの入力・閲覧ができるオフラインモードの有無は重要な選定基準です。

2つ目はデータのエクスポート機能です。将来的にサービスを乗り換える可能性を考慮し、蓄積したデータをCSV等の汎用形式で書き出せるかどうかを確認します。

3つ目はAPI連携の対応状況です。施工管理SaaSと会計ソフト、勤怠管理SaaSと給与計算ソフトなど、他のツールとのデータ連携ができるかどうかが業務効率を左右します。

4つ目はセキュリティ認証の取得状況です。ISO 27001やSOC 2などの第三者認証を取得しているサービスは、情報管理体制が一定水準にあることの証明になります。

5つ目はサポート体制です。導入初期のトレーニング支援や、操作に困ったときの問い合わせ対応の品質は、現場への定着を左右する要素です。電話サポートの有無は中小企業にとって特に重要です。

6つ目はモバイル対応です。建設現場ではスマートフォンやタブレットからの操作が中心になるため、モバイルアプリの使い勝手は必ず確認しておきたいポイントです。

7つ目は契約条件です。最低契約期間、解約時のデータ保持期間、料金改定の条件などを事前に把握しておくことで、想定外のコスト負担を回避できます。

SaaSの導入を後押しする補助金制度

IT導入補助金のデジタル化基盤導入枠では、クラウドサービスの利用料(最大2年分)が補助対象になります。施工管理SaaS、勤怠管理SaaS、クラウド会計ソフトなど、建設業で活用される多くのSaaSが「IT導入支援事業者」を通じて補助対象に登録されています。

補助率は最大75%(補助額の上限あり)で、年間60万円のSaaS利用料であれば実質15万円で利用できる計算です。ただし、補助金の申請にはIT導入支援事業者として登録された販売会社を通じて導入する必要があるため、自社で直接契約するのではなく、認定事業者経由での手続きが必要です。

ものづくり補助金(デジタル枠)も、SaaSの導入費用に加えてハードウェア(タブレット端末等)の購入費用をカバーできる場合があります。複数の補助金を比較検討し、自社の導入計画に最も合った制度を選ぶことが、費用対効果を最大化するポイントです。

SaaS導入前に確認すべきリスクと落とし穴

SaaSを複数導入する際の「データの分断」は要注意です。施工管理・勤怠・会計のSaaSをそれぞれ別々に入れ、連携がないまま運用すると、同じデータを複数箇所に二重入力する状況が生まれます。導入前に「どのSaaSとどのSaaSがデータ連携できるか」を確認することが重要です。

また、SaaSのデータはサービス提供会社のサーバーに保管されるため、サービス終了時のデータ移行に注意が必要です。契約解除時にデータをCSV等でエクスポートできるかどうかを利用規約で確認しておくことをすすめます。

「SaaSを導入すれば業務が改善する」という過大な期待も禁物です。ツールはあくまで手段であり、業務フローの整理や運用ルールの策定なしに導入しても、使われないまま放置されるリスクがあります。導入前に「どの業務課題をどう解決したいか」を明確にすることが成功の条件です。

SaaS導入で失敗しないための3つの確認事項

SaaSの普及は、中小建設会社のIT投資のあり方を大きく変えました。以前は数百万円かかっていた業務システムの導入が、月額数千円から始められるようになっています。

一方で注意すべき点もあります。SaaSは継続利用が前提のサービスであり、月額料金が積み重なると年間コストが想定以上になることがあります。また、サービスが終了した場合にデータをどう移行するか、他のシステムとのデータ連携(API連携)が可能かどうかも、導入前に確認しておきたいポイントです。

自社の業務課題を明確にしたうえで、必要な機能を備えたサービスを選定することが、SaaS活用の成否を左右します。無料トライアルを活用し、現場の担当者にも触ってもらいながら導入を判断するのが堅実なアプローチです。

参考情報

よくある質問

SaaSはインターネットがないと使えませんか?
基本的にはインターネット接続が必要ですが、多くの施工管理SaaSにはオフライン対応機能が搭載されています。電波の届きにくい現場でもデータの入力・閲覧ができ、通信復旧時に自動同期される仕組みを備えたサービスが増えています。
SaaSのデータセキュリティは大丈夫ですか?
主要なSaaSサービスは、データの暗号化やアクセス制御、定期的なバックアップなど、高水準のセキュリティ対策を講じています。自社でサーバーを管理するよりも安全性が高いケースも多く、ISO 27001やSOC 2といったセキュリティ認証の有無を選定基準にすることをおすすめします。
SaaSの導入にIT導入補助金は使えますか?
はい。IT導入補助金の対象としてSaaS型のクラウドサービスが含まれており、最大2年分のクラウド利用料が補助対象になる枠もあります。ただし、IT導入支援事業者として登録された販売会社を通じて導入する必要があるため、事前に対象製品・事業者を確認してください。

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