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用語集

クラウド

くらうど

この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

建設業のクラウド利用率68.9% ── もはや「導入するか」ではなく「何を使うか」の時代

総務省の調査によると、2023年度時点でクラウドサービスを利用している建設業の企業の割合は68.9%に達しています。施工管理アプリ、クラウド会計、電子契約 ── 建設業のバックオフィスから現場まで、クラウドなしでは業務が回らない時代に入りました。

クラウド(クラウドコンピューティング)とは、サーバーやソフトウェア、データベースなどのITリソースを、自社で保有・管理するのではなく、インターネット経由でサービスとして利用する仕組みです。GoogleドライブやDropboxといったファイル保存サービスがクラウドの身近な例です。建設業においても、施工管理アプリクラウド会計電子契約サービスなど、多くの業務ツールがクラウド上で提供されるようになりました。

自社サーバー管理からの解放 ── 中小建設会社にとっての恩恵

建設会社のITインフラは、かつて社内にサーバーを設置するオンプレミス方式が主流でした。しかし、サーバーの購入費用、設置場所の確保、保守管理、バージョンアップへの対応など、維持管理にかかるコストと手間は中小企業にとって大きな負担でした。

クラウドに移行することで、これらの負担から解放されます。サーバーの管理はサービス提供会社が担当し、利用者は月額料金を支払うだけで最新の環境を使い続けられます。

建設業は現場が分散しているうえに日々変動するという特性があります。事務所のパソコンでしかアクセスできないシステムでは、現場からの情報共有に時間がかかり、判断が遅れる原因になっていました。クラウド環境であれば、スマートフォンやタブレットから現場と事務所がリアルタイムに情報を共有でき、業務のスピードと正確性が向上します。

SaaS・IaaS・PaaS ── クラウドサービスの3つの形態

クラウドサービスは提供される内容によって、大きく3つの形態に分けられます。

SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェアをクラウド上で提供する形態です。施工管理アプリやクラウド会計ソフトがこれにあたり、建設業で最もなじみのあるクラウドサービスです。

IaaS(Infrastructure as a Service)は、サーバーやストレージといったインフラを提供する形態です。自社で開発したシステムをクラウド上で稼働させたい場合に利用します。

PaaS(Platform as a Service)は、アプリケーションの開発・実行環境を提供する形態です。自社独自のシステムを開発する際の基盤として利用されます。

建設業においては、SaaS型のクラウドサービスの利用が圧倒的に多く、主な活用場面を整理します。

活用場面クラウドサービスの例
施工写真の管理・共有施工管理アプリ(写真台帳の自動作成)
図面の共有・閲覧クラウドストレージ、図面管理ツール
勤怠管理クラウド勤怠管理システム
会計・経理クラウド会計ソフト(インボイス対応)
電子契約電子署名・契約管理サービス

建設業における具体的な活用事例

事例1:施工写真管理のクラウド化

従来、施工写真の管理は現場担当者がデジタルカメラで撮影し、帰社後にパソコンへ取り込んでフォルダ整理するという流れが一般的でした。この作業は現場代理人にとって毎日の負担となっており、月換算で20〜30時間を費やす例もありました。

クラウド型施工管理アプリを導入した建設会社では、スマートフォンで撮影した写真が自動的に分類・整理され、写真台帳の作成も自動化されました。写真管理にかかる時間が月間20時間から5時間に削減されたという事例が複数の会社から報告されています。

事例2:複数現場の図面管理クラウド化

複数の現場を抱える中堅建設会社で、図面管理をクラウド化した事例があります。従来は現場ごとに紙図面や個人パソコンのフォルダで管理していたため、最新版の図面がどれかわからなくなるトラブルが頻発していました。

クラウドの図面管理ツールを導入することで、全現場の図面が一元管理されるようになり、「古い図面で施工してしまった」というヒューマンエラーがゼロになりました。元請からの設計変更への対応時間も半減したと評価されています。

事例3:クラウド会計による月次決算の早期化

クラウド会計ソフトを導入した建設会社では、インボイス対応と月次決算の効率化を同時に実現しました。従来は前月の決算が出るまでに20日程度かかっていたものが、クラウド化後は10日以内に完了するようになりました。

経営者が財務状況をリアルタイムで確認できるようになり、「月末になって初めて赤字と判明する」という状況がなくなったことを評価する声が多く聞かれます。

オンプレミスとクラウドの比較

クラウドに移行すべきかどうかを判断するために、オンプレミスとの比較を整理します。

比較項目オンプレミスクラウド
初期コスト高い(サーバー購入費等)低い(月額利用料から開始)
維持管理自社で対応必要ベンダーが担当
アクセス方法社内LAN経由が基本インターネット経由でどこからでも
カスタマイズ高い自由度制限あり
セキュリティ自社で担保(コストと技術が必要)ベンダーが高水準を維持
障害時対応自社対応ベンダーのサポートあり

中小建設会社にとっては、初期コストの低さと維持管理の簡便さがクラウドの大きなメリットです。一方、カスタマイズの自由度が必要な場合や、特殊なセキュリティ要件がある場合はオンプレミスが選ばれることもあります。

導入コスト・費用の目安

建設業で活用されるクラウドサービスの費用感を種類別に示します。

施工管理アプリはユーザー数や機能によって異なりますが、中小企業向けの標準的なプランで月額1万〜5万円程度が一般的です。クラウド会計ソフトは月額3,000円〜1万5,000円程度から導入可能です。電子契約サービスは月額3,000円〜1万円程度が相場です。

クラウドストレージ(Google Workspace、Microsoft 365等)は1ユーザーあたり月額1,000〜2,000円程度で利用できます。

IT導入補助金を活用すれば、対象のSaaSサービスについて導入費用の最大75%が補助されます。年間のクラウドサービス費用が50万円であっても、補助を受ければ実質負担は12.5万円から始められる計算です。

最新動向(2024〜2026年)

建設DXの加速とクラウド需要の増加

2024年の2024年問題対応、2023年のインボイス制度開始を受け、建設業のクラウド導入が急加速しています。特に電子契約・電子請求書・クラウド会計の組み合わせによるペーパーレス化が中小建設会社でも標準化しつつあります。

AI機能のクラウド統合

クラウドサービスへのAI機能統合が進み、Microsoft 365 CopilotやNotionAIなど、日常業務に溶け込む形でのAI活用が現実的になっています。建設業向けのSaaSでも、工事写真の自動分類やレポート自動生成機能が標準搭載されるようになっています。

セキュリティ強化の義務化

建設業向けクラウドサービスにおいても、二要素認証の標準化や、アクセスログの保存要件が強化されています。国土交通省の情報セキュリティガイドラインへの準拠が求められるシステムが増えており、利用者側の管理体制整備も重要になっています。

エッジコンピューティングとの連携

現場の通信環境が整わない場所でのクラウド活用に限界がある問題を解消するため、現場端末でデータを一時保存し、通信可能なタイミングでクラウドと同期するエッジコンピューティングの活用が広がっています。山岳部のトンネル工事や離島工事でも現場DXを実現する基盤として期待されています。

電子帳簿保存法・インボイス制度とクラウドの関係

2023年10月のインボイス制度開始と2024年1月の電子帳簿保存法本格施行は、建設会社のクラウド移行を加速させた2つの法制度です。

電子帳簿保存法は、電子取引(メールやFAXで受領した請求書・発注書等)のデータを電子的に保存することを義務化しました。従来のように「紙に印刷して保管すればOK」ではなくなったため、電子データの管理基盤としてクラウドサービスの導入が不可欠になっています。

インボイス制度では、適格請求書の発行・受領・保存に関する業務が増加しています。クラウド会計ソフトやクラウド型の請求書管理サービスを活用すれば、取引先の登録番号の自動照合、インボイス要件を満たした請求書の発行、電子帳簿保存法に準拠したデータ保存を一元的に管理できます。

この2つの制度は、建設会社のバックオフィスにおけるクラウド活用を「任意」から「事実上の必須」に変えたといえます。紙ベースの業務フローを維持しながらこれらの法対応を行うことは実務的に困難であり、クラウドへの移行が制度対応と業務効率化の両方を満たす現実的な解決策です。

クラウド移行の具体的な進め方 ── 3つのフェーズ

クラウド移行は、優先度の高い業務から段階的に進めるのが現実的です。

第1フェーズは、最も効果が出やすい施工写真管理のクラウド化です。施工管理アプリを導入し、スマートフォンでの撮影・自動分類・写真台帳の生成を一体化します。現場代理人の日常業務に直結するため、効果が実感しやすく、社内での「クラウド成功体験」の起点になります。

第2フェーズは、会計・経理のクラウド化です。クラウド会計ソフトの導入と、電子契約サービスの併用により、インボイス制度と電子帳簿保存法への対応を同時に進めます。月次決算の早期化と、経営者のリアルタイム財務把握が実現できるフェーズです。

第3フェーズは、勤怠管理・給与計算・安全書類のクラウド化です。第1・第2フェーズで蓄積したクラウド活用のノウハウを活かし、より広範な業務に展開します。各SaaS間のAPI連携を設定することで、データの二重入力を解消し、バックオフィス全体の効率化を実現します。

「クラウドはセキュリティが不安」は本当か

クラウドとサーバーレスの違い

「クラウド」と「サーバーレス」は混同されることがありますが、概念が異なります。クラウドはサーバーをインターネット経由で利用する仕組み全般を指し、サーバーレスはクラウドの中でもサーバーの管理をほぼ意識しなくてよい実行環境の形態を指します。一般的なビジネスユーザーは「クラウドサービス(SaaS)」を使っており、サーバーレスはエンジニアが意識する概念です。

クラウドのセキュリティに関する誤解

「クラウドはセキュリティが不安」という認識を持つ経営者が今でも少なくありません。しかし、主要なクラウドサービスは第三者認証(ISO 27001等)を取得しており、一般的な中小企業が自社でサーバーを管理するよりも高水準のセキュリティ対策が施されています。問題が起きやすいのは、クラウドサービス自体よりも、パスワードの使い回しやアクセス権限の管理不足など、利用者側の運用です。

解約時のデータ移行

クラウドサービスを長期間利用した後に解約・乗り換えをする場合、データの移行が課題になることがあります。契約前に「データをCSVやXML形式でエクスポートできるか」「データの保有期間はいつまでか」を確認しておくことが重要です。

月額数千円からのDX ── クラウドが中小建設会社にもたらした変化

クラウドサービスの普及は、中小建設会社のIT活用を飛躍的に後押ししています。かつては数百万円規模の投資が必要だった業務システムが、月額数千円から利用可能になったことで、建設業のDXを推進する環境が整い、会社の規模に関係なく最新のITツールを使える環境が整いました。

セキュリティ面を心配する声もありますが、主要なクラウドサービスは高度な暗号化やアクセス制御を備えており、自社でサーバーを管理するよりも安全な環境を実現できるケースが少なくありません。ただし、アカウントのパスワード管理やアクセス権限の設定は利用者側の責任であり、社内のセキュリティルールを整備しておくことが大切です。

導入時には、既存のデータの移行方法、サービス解約時のデータ取り出し、通信障害時の業務継続方法なども事前に確認しておくとよいでしょう。

参考情報

よくある質問

クラウドのデータが消えることはありますか?
主要なクラウドサービスは複数のデータセンターにデータを分散保存しており、一拠点に障害が発生してもデータが失われない仕組みを構築しています。自社のパソコンやUSBメモリに保存するよりもデータ消失のリスクは低いのが一般的です。ただし、誤操作による削除に備えてバックアップのポリシーを確認しておくことをおすすめします。
オンプレミスからクラウドに移行するのは大変ですか?
移行の難易度はシステムの規模や複雑さによって異なります。クラウド会計やメールなどは比較的スムーズに移行できますが、独自開発のシステムの場合はデータ移行の設計が必要です。多くのクラウドサービスが移行支援のサポートを提供しているので、導入前にベンダーに相談するのが確実です。
建設業でクラウドを導入する際に最初に取り組むべきことは?
最も効果が出やすいのは施工写真管理のクラウド化です。現場での撮影から写真台帳作成までの一連の作業が自動化され、現場代理人の負担が大きく軽減されます。次に電子契約・クラウド会計と順番に導入を広げていくことが現実的なアプローチです。

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