この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。中小建設会社の採用・DX支援に従事。

「中途の職人は採れないから、若手を一から育てたい」「工業高校に求人を出しているが応募が来ない」。建設業の高卒採用は、若手の担い手を確保する有力な入口でありながら、独自のルールと時期の制約があり、進め方を誤ると一年を棒に振ります。この記事では、建設業の高卒採用を成功させるために、三者間ルールや一人一社制といった基本の仕組みから、6月の求人申込に始まる年間スケジュール、応募が集まる求人票・採用サイトの作り方、工業高校との関係づくり、採用後の定着策までを、中小建設会社の採用担当者・経営者の目線で整理します。

建設業の高卒採用がいま重要な理由

建設業は担い手の高齢化が他産業より進み、若年層の入職が長年の課題です。国土交通省も建設業就業者の高齢化と若手不足を繰り返し指摘しており、55歳以上の割合が高く、29歳以下が少ない年齢構成が続いています。この構造を放置すれば、技術の継承が止まり、数年後に現場が回らなくなります。

中途採用で経験者を確保しようとしても、職人の獲得競争は激しく、採用単価も高止まりします。そこで見直したいのが高卒採用です。高校新卒は、社会人としての基礎を自社の文化に合わせて育てられ、資格取得やキャリアの土台を長期で築ける層です。工業高校の建設科・土木科のように、建設業を志して学んできた生徒とつながれる点も、他産業にはない建設業の強みです。

一方で注意すべきは、採用して終わりにしない設計です。厚生労働省の調査では、新規高卒就職者全体の3年以内離職率は38.4%(令和3年3月卒)で、建設業はこれを上回る約4割の水準にあります。採ることと同じ重さで、辞めさせない仕組みを用意して初めて、高卒採用は担い手確保につながります。

高卒採用の基本ルールを理解する

高卒採用が中途採用や大卒採用と大きく違うのは、学校・行政・企業の三者で申し合わせた統一ルールのもとで進む点です。ここを知らずに自己流で動くと、ルール違反として学校からの信頼を失い、次年度以降の応募が途絶えます。まず押さえるべき仕組みを整理します。

三者間ルールとハローワーク経由の求人

高校生の就職は、行政(都道府県労働局・ハローワーク)、学校、経済団体が申し合わせた「三者間ルール」に沿って行われます。企業が高校生を採用するには、まずハローワークに高卒用の求人を申し込み、内容の確認を受けてから学校に求人票を提出する流れが基本です。中途採用のように求人サイトへ自由に掲載して直接応募を受ける形とは異なります。

生徒とのやり取りも、原則として学校を通します。内定後に生徒本人へ直接連絡を取ることは避け、学校経由で対応するのがルールです。採用担当者が良かれと思って直接連絡すると、学校との関係を損なうため注意が必要です。

一人一社制

多くの都道府県では、応募が始まる時期に、生徒が一度に応募できる企業を1社に限る「一人一社制」が申し合わせで運用されています。生徒は学校の推薦を受けて1社ずつ受験し、不採用なら次の企業へ進みます。応募が1社に絞られる期間や、複数応募が認められる時期・社数は都道府県によって異なるため、自社の地域のルールを地元のハローワークや高校の進路指導担当に必ず確認してください。

一人一社制のもとでは、生徒に「最初の1社」として選んでもらえるかが勝負になります。求人票と学校への働きかけで、いかに自社を志望先の上位に位置づけてもらうかが、高卒採用の成否を分けます。

高卒採用の年間スケジュール

採用・定着の課題を相談しませんか

求人の設計から定着の施策まで、建設業の採用を無料でご相談いただけます。

採用の課題を相談する

高卒採用は、動く時期が制度で決まっています。準備が遅れると、その年の採用に間に合いません。中小建設会社の採用担当者が押さえるべき年間の流れを、時期順に整理します。日付は例年の全国的な日程で、年度や地域により変わるため、最新の期日は厚生労働省・各都道府県労働局の案内で確認してください。

時期やること
1〜3月採用計画の策定(何人を、どの職種で、いつまでに)
4〜5月求人票・採用パンフレット・採用サイトの準備、対象校の選定
6月1日〜ハローワークへの高卒求人の申込受付開始
7月1日〜学校への求人票公開・学校訪問、応募前職場見学の受け入れ開始
9月5日〜学校から企業への応募(推薦)開始
9月16日〜選考・採用内定開始
10月以降二次募集(充足しなかった場合)

要点は、実際の応募が始まる9月より、はるか前に勝負が決まっていることです。6月1日にハローワークへ求人を申し込み、7月1日の公開と同時に学校訪問や職場見学の受け入れを始める会社と、夏休み明けにあわてて動く会社では、生徒と学校からの見え方がまったく違います。特に7月から夏休みにかけての職場見学は、生徒が「最初の1社」を決める重要な接点になるため、受け入れ体制を整えておきます。

採用計画は1〜3月に固めておくのが理想です。中長期の受注計画に照らして、どの職種の若手が何人必要かを言語化し、それに合わせて求人票の職種名や採用人数を設計します。ここが曖昧なままだと、求人票が総花的になり、生徒に刺さりません。

応募が集まる求人票の作り方(建設業版)

高卒採用では、求人票が最も重要な入口です。生徒は求人票と学校の先生の助言をもとに応募先を絞るため、求人票の書き方ひとつで応募数が変わります。建設業でありがちな失敗を避けながら、応募したくなる求人票にするポイントを挙げます。

給与・休日・残業を具体的な数字で正直に書く

高校生とその保護者、進路指導の先生が最も見るのは、給与・休日・残業といった労働条件です。「当社規定による」ではなく、初任給の金額、年間休日数、平均的な残業時間を具体的に記載します。数字を濁すほど不安を与え、正直に書くほど信頼されます。週休二日の推進や残業削減に取り組んでいるなら、その事実を明記します。

「3K」イメージを払拭する情報を入れる

建設業には、きつい・汚い・危険という古いイメージが残っています。安全対策の具体、社会保険の完備、資格取得の支援制度、若手の育成体制、建設キャリアアップシステム(CCUS)への登録などを書き添えると、イメージを事実で塗り替えられます。処遇の見える化は、生徒だけでなく保護者の安心にもつながります。

仕事内容とキャリアパスを高校生の言葉で書く

専門用語を並べた仕事内容は、高校生には伝わりません。「どんな建物・構造物をつくる仕事か」「入社後に何を学び、どんな資格を取り、数年後にどうなれるか」を、高校生が理解できる言葉で描きます。未経験からのスタートを前提に、育成の道筋を示すことが、応募のハードルを下げます。給与の相場観は建設業の平均年収データも参考になります。

採用パンフレット・採用サイト・情報発信

求人票だけでは伝えきれない自社の魅力は、採用パンフレットと採用サイト、SNSで補います。地域密着の中小建設会社は大手より知名度が低いため、学校の外でも見つけてもらう工夫が要ります。

採用パンフレットは、会社案内ではなく採用に特化したものを用意します。仕事内容、先輩社員のインタビュー、教育制度、福利厚生、1日の流れ、応募方法を、写真を多く使って伝えます。求人票と一緒に学校へ提出すれば、進路指導の場で生徒の目に触れます。

採用サイトは、高校生がスマートフォンで見る前提で設計します。文字が小さく読み込みが遅いサイトは、それだけで離脱されます。先輩社員の声や現場の様子、資格取得の実績、経営者のメッセージを、スマートフォンでストレスなく読める形にまとめます。作り方の要点は建設業の採用サイトの作り方で詳しく解説しています。

SNSや動画も、高校生世代に届く発信手段です。現場の様子や施工のビフォーアフター、若手職人の成長ストーリーを、スマートフォンで撮影した短い動画で発信するだけでも、認知と親近感が生まれます。凝った編集より、現場のリアルと続けることが効果を生みます。採用にSNSを活用する方法は建設業の採用にSNSを活用する方法にまとめました。保護者が子の就職先を一緒に検討することも多いため、家族の視点で安心できる情報を用意しておくと有利です。

工業高校・地元高校との関係づくり

高卒採用は、単年度の求人活動ではなく、学校との関係づくりの積み重ねです。ここは建設業が本来強みを発揮できる領域で、建設科・土木科のある工業高校や、地元の高校との継続的なつながりが、安定した応募につながります。

まず、自社の地域で建設・土木系の学科がある高校、通いやすい範囲の高校を洗い出し、優先的に求人票とパンフレットを届けます。7月以降の職場見学では、実際の現場や作業を見てもらい、仕事のやりがいと安全への配慮を体感してもらいます。進路指導の先生と顔の見える関係を築いておくと、生徒に自社を薦めてもらいやすくなります。

工業高校の実習への協力や、建設業協会・地元の合同企業説明会への参加も、接点を増やす有効な手段です。こうした関係は一年では築けません。応募がゼロの年でも学校訪問を続け、数年かけて「地元で若手を大切に育てる会社」という評価を積み上げることが、結果として毎年の採用を安定させます。

採用した高卒人材を定着させる

高卒採用は、内定がゴールではありません。前述のとおり建設業の高卒者は3年以内離職率が約4割と高く、入社後の育成と定着まで設計して初めて投資が回収できます。

入社直後は、社会人経験のない若手が孤立しないよう、指導役をつけるメンター制やバディ制が有効です。「見て覚えろ」に頼らず、何を・いつまでに身につけるかを明確にした育成計画を用意します。資格取得の支援や、数年後のキャリアの見通しを示すことも、若手が働き続ける理由になります。早期離職を防ぐ具体策は建設業の若手が辞めない会社の共通点建設業の若手育成の仕組みで扱っています。頑張りが報われる評価の仕組みづくりは建設業の評価制度の作り方も参考にしてください。

高卒採用を成功させるために

建設業の高卒採用は、制度の理解、年間スケジュールの管理、求人票と採用サイトの作り込み、学校との関係づくり、入社後の定着までを一連で回して初めて成果になります。やることは多く、6月の求人申込に間に合わせるには春からの準備が要ります。日々の現場を回しながら、これらを採用担当者だけで進めるのは負担が大きいのが実情です。

ケンテクを運営するローカルマーケティングパートナーズは、採用サイトの制作や求人票・採用パンフレットの設計、SNS・動画での情報発信、採用スケジュールの管理を、提案だけで終わらせず実行まで伴走するBPO型で支援しています。高卒採用の立ち上げや、応募が集まらない求人の立て直しに手が回らない場合は、建設業の採用支援サービスをご覧ください。自社の状況に合わせて、必要な部分だけを任せることもできます。まずは現状の課題を無料相談でお聞かせください。

よくある質問

建設業の高卒採用は、いつから何を準備すればよいですか。
採用計画は1〜3月に固め、4〜5月に求人票・採用パンフレット・採用サイトを準備します。6月1日からハローワークへ高卒求人を申し込み、7月1日の求人公開と同時に学校訪問や職場見学の受け入れを始めます。応募は9月5日から、選考・内定は9月16日からが例年の日程です。実際の応募より前の夏の職場見学で勝負が決まるため、春からの準備が重要です。
一人一社制とは何ですか。建設業でも関係ありますか。
多くの都道府県で、応募開始の時期に生徒が一度に応募できる企業を1社に限る申し合わせが運用されており、これを一人一社制と呼びます。業種を問わず高卒採用に共通するルールです。期間や社数、複数応募が認められる時期は都道府県で異なるため、地元のハローワークや高校の進路指導担当に確認してください。生徒に最初の1社として選ばれることが成否を分けます。
高卒で採用してもすぐ辞めてしまいます。どうすればよいですか。
建設業の高卒就職者は3年以内離職率が約4割と高く、入社後の育成と定着の設計が欠かせません。指導役をつけるメンター制、何をいつまでに身につけるかを明確にした育成計画、資格取得支援、数年後のキャリアの見通しの提示が有効です。頑張りが報われる評価の仕組みづくりも、若手が働き続ける理由になります。
求人サイトに載せれば高校生を採用できますか。
高校生の採用は、求人サイトへの掲載や直接応募ではなく、ハローワークに高卒求人を申し込み、学校に求人票を提出する三者間ルールに沿って進めます。生徒とのやり取りも原則として学校を通します。中途採用とは仕組みが異なるため、ハローワーク経由の手続きと学校との関係づくりが基本になります。

あわせて読みたい:

出典(2026-07-03 確認):