「求人を出しても男性からの応募ばかり」「女性を採用したいが、更衣室もトイレも男性向けのままで受け入れる自信がない」。建設業の女性採用に踏み出せない会社は少なくありません。慢性的な人手不足のなかで、これまで採用ターゲットから外れがちだった女性は、担い手不足を補う大きな可能性を持つ層です。この記事では、建設業の女性採用を増やすために、就業者数の実態から応募を集める募集の工夫、働き続けられる職場環境づくり、活用できる助成金までを、中小建設会社の実務目線で整理します。
建設業で働く女性はどのくらいいるのか — データで見る実態
まず現状を数字で押さえます。国土交通省の資料によると、建設業の就業者に占める女性の割合は約13.6%です。ただし内訳を見ると、施工管理などの技術者では5.7%、現場で作業にあたる技能者では3.7%にとどまります。事務職を含めた全体では一定数がいる一方で、現場の中核を担う職種ではまだ少ないのが実態です。
変化の兆しもあります。国土交通省の実態調査によると、2024年度の採用実績に占める女性割合は技術者で20%、技能者で6%となっています。既存の就業者比率より新規採用の女性比率が高く、女性の入職が少しずつ進んでいることがうかがえます。
背景には国を挙げた後押しがあります。国土交通省と建設業界の関係団体は、女性の入職促進と就労継続に向けた計画を継続的に策定してきました。令和6年度には新たな実行計画がまとめられ、誰もが働きやすく働きがいのある建設産業の実現を目指す方針が示されています。女性採用は個社の努力にとどまらず、業界全体の担い手確保策として位置づけられています。
「けんせつ小町」という追い風
建設業で活躍する女性の愛称として、日本建設業連合会は「けんせつ小町」を定めています。現場見学会や動画発信を通じて、建設業で働く女性のロールモデルを社会に広げる取り組みが各地で続いています。求職者が「建設業で働く女性」の姿をイメージしやすくなったことは、個々の会社が採用活動を進めるうえでも追い風になります。
建設業に女性が少ない・定着しない理由
採用を増やす前に、なぜ女性が少ないのかを理解しておくと打ち手を外しません。理由は大きく3つに整理できます。
1つ目は、そもそも応募が来ない構造です。建設業は「男性の仕事」というイメージが根強く、求人票や採用サイトが男性を前提とした表現・写真になっていると、女性求職者は自分が働く姿を想像できません。募集の入口で女性が候補から自ら外れてしまうのです。
2つ目は、受け入れる現場環境の未整備です。女性専用のトイレや更衣室がない、作業服やヘルメットが男性サイズしかないといった物理的な壁は、応募をためらわせる直接の要因になります。国土交通省も、快適に利用できるトイレの事例集を整備するなど、現場環境の改善を重点施策に位置づけています。
3つ目は、定着の難しさです。長時間労働や休日の少なさ、結婚・出産・育児といったライフイベントと両立しにくい働き方は、せっかく採用した女性の早期離職につながります。採用して終わりではなく、働き続けられる仕組みまで用意して初めて、女性採用は成果になります。
女性を採用するメリット
女性採用は「人手不足だから仕方なく」ではなく、会社の力を高める投資として捉えると取り組みが前向きになります。
採用母集団が広がるのが最も直接的な効果です。人口の半分を占める女性を採用対象に加えれば、これまで競合他社と奪い合っていた男性人材だけに頼らずに済みます。担い手不足が深刻な地方や専門工事の会社ほど、母集団拡大の効果は大きくなります。
多様な視点が現場や顧客対応に生きる場面も増えています。住宅やリフォームのように発注者に女性が多い分野では、女性の技術者・営業が顧客の要望をくみ取りやすく、受注につながることがあります。施工管理や積算、CADオペレーターなど、体力より段取りや正確さが重視される職種では、女性が中心的な戦力になっている会社も珍しくありません。
女性が働きやすい会社は、結果として男性にとっても働きやすい会社になります。トイレや休憩環境の整備、長時間労働の是正、両立支援の仕組みは、性別を問わず定着率を押し上げます。女性採用への取り組みは、採用ブランディングとして企業イメージの向上にもつながります。
女性が活躍している職種
「建設業=力仕事」というイメージから、女性を採用しても任せる仕事がないと考えてしまう会社があります。実際には、体力よりも段取りや正確さ、コミュニケーションが問われる職種が多く、女性が中心的な戦力になっている現場は増えています。採用を考えるときは、自社のどの職種で女性に活躍してもらうかを具体的にイメージしておくと、募集の打ち出し方が定まります。
施工管理は、工程や品質、安全、原価を管理する仕事で、現場全体を段取りする調整力が問われます。近年は施工管理アプリの普及で図面や写真、報告をデジタルで扱う場面が増え、女性の技術者が担うケースが広がっています。CADオペレーターや設計補助は、正確さと集中力が生きる職種で、在宅や時短と組み合わせやすい点も女性に向いています。積算は図面から材料費や工事費を算出する仕事で、丁寧さが成果に直結します。
現場事務や工事事務は、書類作成や労務、発注管理などを担い、資格取得を通じて施工管理へキャリアを広げる入口にもなります。営業や広報の分野でも、住宅・リフォームのように発注者に女性が多い領域で、顧客の要望をくみ取る力が受注につながります。重機オペレーターのように、これまで男性中心だった職種でも女性が活躍する例が出てきています。募集の際は、こうした職種を「未経験可」「事務から施工管理へのキャリアパスあり」と具体的に示すと、女性求職者が自分の働く姿を描きやすくなります。
応募が集まる募集・採用の実務
ここからが実践です。女性採用は「募集の入口」を変えるだけでも応募状況が変わります。中小建設会社がすぐ着手できる打ち手を挙げます。
求人票と採用サイトを見直す
求人票や採用サイトを、女性が自分の働く姿を想像できる内容に更新します。現場で働く女性社員の写真やインタビューを載せる、募集職種に「未経験可」「事務・施工管理・CADなど」の選択肢を具体的に示す、産休・育休の取得実績や短時間勤務の制度を明記する、といった工夫です。抽象的な「女性活躍中」の一言より、実際の働き方が伝わる情報のほうが応募の後押しになります。採用サイトの整え方は建設業の採用サイトの作り方でも解説しています。
応募のハードルを下げる接点を用意する
いきなり応募ではなく、現場見学会や職場体験、カジュアル面談といった「まず知る」接点を用意すると、女性求職者の不安が下がります。仕事内容や職場の雰囲気を見てもらったうえで応募につなげる流れは、ミスマッチによる早期離職の防止にも役立ちます。
求人媒体だけに頼らない
求人媒体への出稿はコストがかさむわりに、女性求職者に届くとは限りません。自社の採用サイトやSNSでの発信、社員紹介(リファラル)、地域の職業訓練校や高校との関係づくりなど、複数の経路を組み合わせると採用単価を抑えながら母集団を広げられます。採用コストの下げ方は建設業の採用コストを半分にする方法にまとめています。
女性が働き続けられる職場環境づくり
採用した女性に定着してもらうには、現場と制度の両面の整備が欠かせません。国土交通省が重点施策に挙げる項目とも重なります。
現場環境の整備
女性専用のトイレ・更衣室・休憩スペースの確保は、女性が安心して働くための土台です。常設が難しい現場ではレンタルの快適トイレを活用する方法もあります。女性用サイズの作業服・保護具をそろえることも、細かいようで応募・定着の分かれ目になります。
両立支援と柔軟な働き方
結婚・出産・育児といったライフイベントと仕事を両立できる制度は、女性の離職を防ぐ決め手です。産休・育休の取得しやすい雰囲気づくり、復職後の短時間勤務、現場の状況に応じた柔軟な勤務時間の設定などが挙げられます。国土交通省も、出産・育児と仕事の両立を支援するパンフレットや柔軟な働き方の導入事例集を整備しています。
評価とキャリアパスの明確化
「頑張っても評価されない」「先のキャリアが見えない」という不満は、性別を問わず離職の原因になります。資格取得の支援、評価基準の明確化、ロールモデルとなる先輩社員の存在は、女性が長く働くうえでの安心につながります。定着の仕組みづくりは建設業の社員定着率を上げる評価制度の作り方で詳しく扱っています。
活用できる助成金・公的支援
女性採用と職場環境づくりには、費用負担を抑える公的支援を組み合わせられます。制度は年度で内容が変わるため、申請前に最新の要領を確認してください。
両立支援等助成金は、育児休業の取得や職場復帰、業務代替の体制整備などに取り組む中小企業を支援する厚生労働省の制度です。女性の育児との両立を後押しする際に活用できます。詳細は両立支援等助成金の建設業での活用ガイドにまとめています。
くるみん認定は、子育てサポートに積極的な企業を厚生労働大臣が認定する制度で、採用ブランディングにも生きます。このほか、若年者や女性の入職・定着を支援する人材確保等支援助成金も、取り組み内容によって対象になります。採用・人材育成に使える助成金は建設業で使える補助金・助成金一覧で横断的に確認できます。
公的な情報・ツールも活用できます。国土交通省と建設業界による建設産業女性定着支援ネットワークや、女性の入職・定着を支援するWEBサイトでは、他社の取り組み事例や広報素材が公開されています。自社だけでゼロから考えず、こうした一次情報を土台にすると効率的です。
中小建設会社が女性採用を始める手順
最後に、何から着手すればよいかを段階で整理します。
まず着手すべきは現状把握です。自社の女性比率、離職の状況、トイレ・更衣室などの現場環境を棚卸しし、応募が来ない原因なのか、定着しない原因なのかを見極めます。次に、募集の入口である求人票・採用サイトを女性が応募したくなる内容に更新します。ここは費用をかけずに始められ、効果も出やすい領域です。並行して、女性用トイレ・更衣室や作業服など、受け入れに必要な現場環境を整えます。そのうえで、両立支援や評価制度といった定着の仕組みを、助成金も使いながら段階的に整備していきます。
一度にすべてを完璧にする必要はありません。応募の入口を変えて母集団を広げ、受け入れた女性が働き続けられる環境を少しずつ整える。この順で回すことが、女性採用を担い手確保につなげる近道です。
女性採用を成果につなげるために
女性採用は、募集要項の見直しから採用サイトの整備、現場環境の改善、助成金の活用まで、複数の打ち手を組み合わせて初めて成果になります。とはいえ、日々の現場を回しながらこれらを自社だけで進めるのは簡単ではありません。
ケンテクを運営するローカルマーケティングパートナーズは、採用サイトの制作や求人の運用、採用ブランディングを、提案だけで終わらせず実行まで伴走するBPO型で支援しています。女性採用を含めた採用の設計から実行まで手が回らない場合は、建設業の採用支援サービスをご覧ください。自社の状況に合わせて、必要な部分だけを任せることもできます。まずは現状の課題を無料相談でお聞かせください。
よくある質問
- 建設業で女性を採用したいが、現場に女性用トイレや更衣室がありません。まず何から始めるべきですか。
- 現状の棚卸しから始めます。常設が難しい現場ではレンタルの快適トイレを活用する方法もあります。並行して求人票や採用サイトを女性が応募しやすい内容に更新すると、費用をかけずに応募の入口を広げられます。環境整備と募集改善は同時並行で進めるのが現実的です。
- 建設業の女性就業者の割合はどのくらいですか。
- 国土交通省の資料によると、建設業の就業者に占める女性の割合は全体で13.6%です。技術者では5.7%、技能者では3.7%にとどまりますが、国土交通省の実態調査では2024年度の採用実績に占める女性割合は技術者20%・技能者6%となっており、新規採用を中心に入職が進んでいます。
- 女性採用や職場環境づくりに使える助成金はありますか。
- 育児との両立を支援する両立支援等助成金や、若年者・女性の入職定着を支援する人材確保等支援助成金などが、取り組み内容によって対象になります。子育てサポートに積極的な企業を認定するくるみん認定は採用ブランディングにも生きます。制度は年度で変わるため、申請前に最新の要領を確認してください。
- 女性を採用しても定着しません。何が原因ですか。
- 長時間労働や休日の少なさ、ライフイベントと両立しにくい働き方が主な原因です。産休・育休の取得しやすさ、復職後の短時間勤務、柔軟な勤務時間、資格取得支援や評価基準の明確化といった定着の仕組みを整えることで、早期離職を防げます。
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出典(2026-07-03 確認):
- 国土交通省「建設産業における女性の定着促進に向けた取組」(女性就業者に占める割合 全体13.6%・技術者5.7%・技能者3.7%): https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001499408.pdf
- 国土交通省「令和6年度 建設産業における女性活躍推進に関する実態調査」(2024年度採用実績 技術者20%・技能者6%): https://www.mlit.go.jp/tochi_fudousan_kensetsugyo/const/content/001843500.pdf
- 日本建設業連合会「けんせつ小町とは」: https://www.nikkenren.com/komachi/overview.html