この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金・助成金の活用支援も手がける。

「うちの現場で育休なんて取れるわけがない」—2024年問題への対応に追われる建設会社の経営者から、今もこういう声をよく聞く。しかし現実は静かに変わりつつあります。

厚生労働省の令和5年度雇用均等基本調査によると、男性の育児休業取得率は全産業で30.1%まで上昇した。建設業全体でみれば全産業平均を大きく下回るが、若手社員の採用面接で「育休は取れますか」と聞かれる頻度は明らかに増えている。2024年4月に適用された時間外労働の上限規制と相まって、働き方の整備を後回しにできない状況が続いている。

こうした文脈で活用価値が高いのが「両立支援等助成金」です。厚生労働省が運営する制度で、育児・介護・不妊治療と仕事を両立できる職場環境を整備した事業主に対して、最大で数十万円から百数十万円の助成金が支給される。中小建設会社が就業規則を整備して育休を制度化するだけでも、複数コースを組み合わせれば100万円を超える受給が現実的なラインに入ってくる。

この記事では、6つのコースの要件・支給額・申請手順を建設業の実情に即して整理します。代替要員の確保が難しい現場環境での活用方法、よくある申請ミスの回避策まで含めてまとめた。

出典: 令和5年度雇用均等基本調査 — 厚生労働省

両立支援等助成金とは—建設業で使う前提を確認する

両立支援等助成金は、育児・介護・不妊治療と仕事の両立を支援する職場環境を整備した中小企業の事業主を対象に、厚生労働省が支給する雇用関係助成金です。雇用保険の積立金を財源としているため、雇用保険の適用事業主であれば業種を問わず申請できる。

2026年度(令和8年度)からは、一部コースの対象が「中小企業」から「常時雇用労働者300人以下の全事業主」に拡大された。建設業の場合、資本金3億円以下または常時雇用する労働者数300人以下の会社が対象になる。現場の職人を多く抱える中堅規模の建設会社まで含まれるため、活用できる会社の範囲は広い。

コース数は6つ。すべてを申請する必要はなく、自社の状況に応じて活用するコースを選択できる。

コース名対象上限支給額
出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)男性の育児休業取得第1種20万円+第2種60万円
育児休業等支援コース育休取得・職場復帰合計60万円(30万円×2回)
育休中等業務代替支援コース代替体制の整備最大140万円
柔軟な働き方選択制度等支援コーステレワーク等の制度導入最大25万円
介護離職防止支援コース介護休業・復帰・代替最大40万円+加算
不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース不妊治療・月経・更年期対応各30万円

建設業が特に活用しやすいのは上位3コースです。現場の実態から考えると、「男性育休の取得を後押ししたい」「育休中に業務が回るよう手当を支給したい」「育休後に復職できる環境をつくりたい」という3つのニーズに直接対応している。以降では各コースを詳しく解説します。

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)—男性育休の第一歩を助成

制度のねらいと建設業の現状

このコースは、男性労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を取得した場合に、事業主に助成金を支給する制度です。男性育休の普及が進んでいない職場に対して、最初の取得のきっかけをつくる目的で設計されている。

建設業の男性育休取得率は全産業平均を大幅に下回る。東京商工リサーチの2023年3月期上場企業調査では、建設業の男性育休取得率は47.5%と記録されているが、これは上場企業に限った数字です。中小規模の建設会社に絞れば実態はさらに低く、現場の職長や施工管理職が育休を取った事例を一度も見たことがないという経営者も少なくありません。

2024年の時間外労働上限規制の適用で「残業を減らす」方向に舵を切りつつある今、育休の整備は採用力強化の観点でも意味を持っています。働き方改革推進支援助成金と合わせて職場環境を整備する動きも広がっている。求職者側、とりわけ20代後半から30代前半の層が就職先を選ぶ際、「育休を取れるかどうか」は評価の基準の一つになっている。

支給額

第1種(男性育休取得時の助成)と第2種(育休取得率の向上に対する助成)の2段階で構成される。

第1種—男性労働者が子の出生後8週間以内に育児休業を開始した場合に支給。

  • 1人目: 20万円(大企業は10万円)
  • 2・3人目: 各10万円(大企業は5万円)

第2種—前事業年度と比較して男性育休取得率が30ポイント以上上昇し、50%以上になった場合に支給(1事業主につき1回限り)。

  • 取得率50%以上70%未満: 60万円
  • 取得率70%以上: 加算あり(要確認)
第2種の要件緩和(2025年度から)

2025年度から、第2種の申請に第1種の受給が必須でなくなった。以前は第1種の支給決定を受けた事業主のみが申請できたが、改正後は第1種受給歴がなくても、取得率の条件を満たせば単独で申請できる。

主な受給要件

  • 育児・介護休業法に基づく育児休業制度を就業規則等に規定し、労働者に周知していること
  • 育休取得者の業務を代替する体制(業務の見直し・効率化に関する規定)を整備していること
  • 対象の男性労働者が、子の出生後8週間以内に育児休業を開始していること

就業規則の整備は申請の大前提です。育児・介護休業法の規定どおりに就業規則に育休制度を明記し、労働者に周知する書面が用意できているかを最初に確認します。

建設業で見落とされやすいのが「業務代替体制の整備」の要件です。誰かが育休に入ったとき、残りのメンバーで業務をどう分担するかを、就業規則等に規定として定めておく必要があります。現場に職人が複数いる場合はチームで対応できるが、施工管理者が1人しかいない現場では事前の体制設計が不可欠になる。

申請のタイミング

育児休業終了日の翌日から2ヶ月以内に、管轄の都道府県労働局(雇用環境・均等部門)に支給申請書を提出する。電子申請にも対応している。

育児休業等支援コース—育休の取得・復帰を一貫して支援

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制度の概要

このコースは、育休取得前から復帰後まで一貫した支援プロセスを実施した事業主に対して助成する制度です。「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って育休の取得と職場復帰を支援することが求められる。

育休中も仕事の連絡が止まらない、復帰後も以前のポジションに戻れない—こうした状況が継続すると、育休を取得した社員が自分の将来に不安を抱え、最終的に離職につながるケースがあります。このコースは、育休前後のサポートを体系化することで、そうした離職を防ぐ設計になっている。

支給額

  • 育休取得時(育休開始から3ヶ月経過後に申請): 1人30万円
  • 職場復帰時(育休終了後の職場復帰から6ヶ月経過後に申請): 1人30万円
  • 合計: 1人あたり最大60万円

1事業主あたり2人まで受給できる(年度ごと)。

主な受給要件

  • 育児・介護休業法に基づく育児休業制度を就業規則に規定していること
  • 育休取得前に「育休復帰支援プラン」を作成し、プランに沿って支援を実施すること
  • 対象労働者が連続3ヶ月以上の育児休業を取得していること
  • 育休終了後、原職または原職相当職に復帰させること

育休復帰支援プランは、厚生労働省が様式を提供している。業務の引き継ぎ計画、育休中の情報提供の頻度、復帰時の業務調整方針などを記載する書面です。プランを作成して対象労働者と合意しておくことが要件として求められる。

建設業での実務ポイント

施工管理職や現場監督が育休に入る場合、担当する現場の引き継ぎが最大の課題になる。育休復帰支援プランの「業務の引き継ぎ計画」の欄には、具体的に誰がどの業務を引き受けるかを記載することが求められる。

引き継ぎ先がいない状態で育休に入ると、本人が現場のことを気にして実質的に育休にならないというケースも起きる。こうした状態では助成金の要件(連続3ヶ月以上の育休取得)を満たせない可能性が出てくるため、事前の引き継ぎ設計が重要になる。

育休中等業務代替支援コース—代替体制を整えながら受給できる

建設業の現場で最も活用しやすいコース

このコースは2024年1月に新設された制度で、育休取得者の業務を代替する社員に手当を支給した場合、またはその業務を担う代替要員を新規雇用した場合に助成される。「育休を取らせたいが、現場が回らなくなる」という建設業の経営者の悩みに最も直結するコースです。

支援の方法は3タイプあります。

タイプ1: 手当支給型(育児休業)

育休取得者の業務を代わりに担う社員に「業務代替手当」を支給した場合、手当相当額の4分の3(上限月10万円)が助成される。これに加えて業務体制整備経費として6〜20万円が支給される。

育休期間が12ヶ月の場合、単純計算で月10万円×12ヶ月+体制整備費用で最大140万円前後の受給が可能になる。

タイプ2: 手当支給型(育児短時間勤務)

育児のための短時間勤務制度を利用する社員の業務を代替する場合も対象になる。手当相当額の4分の3(上限月3万円)が支給される。子が3歳になるまでの期間が対象です。

タイプ3: 代替雇用型(育児休業)

育休取得者の代わりに新たに社員を採用した場合に支給される。育休期間の長さに応じて段階的に支給額が変わる。

  • 7日以上1ヶ月未満: 9万円
  • 1ヶ月以上2ヶ月未満: 18万円
  • 2ヶ月以上3ヶ月未満: 27万円
  • 3ヶ月以上6ヶ月未満: 40.5万円
  • 6ヶ月以上1年未満: 54万円
  • 1年以上: 67.5万円(2026年度から81万円に拡充予定)
2026年度の拡充について

令和8年度(2026年4月以降)から、代替雇用型の1年以上に対する支給額が67.5万円から81万円に引き上げられる見込みです。プラチナくるみん認定を受けた事業主はさらに加算が受けられる。

主な受給要件

  • 対象事業主: 常時雇用労働者300人以下の事業主(2026年度から業種・規模要件が拡大)
  • 業務代替手当の制度を就業規則等に規定していること
  • 代替業務の見直し・効率化を実施していること(業務の棚卸しと分担の明文化)
  • 育休取得者の復職が前提となっていること

建設業特有の活用パターン

現場作業員が育休に入る場合と施工管理職が育休に入る場合では、代替体制の組み方が異なります。

現場作業員が1〜3ヶ月の育休を取得する場合は、同じ現場の別の職人に業務を割り振り、その分の業務代替手当を支給するのが現実的です。タイプ1(手当支給型)であれば、新たな採用なしに手当の支給だけで要件を満たせるため、現場の人員配置を大きく変えずに活用できる。

施工管理職が長期間(6ヶ月〜1年)の育休を取得する場合は、代替の施工管理者を採用するタイプ3(代替雇用型)が向いている。有期雇用での採用でも対象になるため、育休期間限定の採用でも助成が受けられる。

介護離職防止支援コース—建設業の高齢化が背景にある制度

介護と建設業の関係性

建設業就業者の年齢構成をみると、2024年時点で55歳以上が全体の約37%を占める。職人の高齢化が進む中で、自身の親の介護問題を抱える現役世代の建設労働者が増えている。

介護を理由に離職した場合、その人材を再確保するコストは採用費・教育費を含めると数百万円に上ることもあります。ベテラン技能者を介護離職で失うことの損失は、単純な人数の減少以上のダメージになる。

支給額

  • 介護休業取得・職場復帰支援: 40万円(1事業主5人まで)
  • 介護両立支援制度の利用: 20〜25万円
  • 業務代替手当への助成(育休中等業務代替支援コースに準じた仕組み): 5〜20万円

2026年度からは、有給介護休暇制度を導入した場合の支給が新設される予定だ(30万円、年10日以上の付与で50万円)。

主な受給要件

  • 育児・介護休業法に基づく介護休業制度を就業規則に規定していること
  • 「介護支援プラン」を策定し、プランに基づいて介護休業の取得・職場復帰を支援すること
  • 対象労働者が介護休業を取得し、職場に復帰すること

建設業での活用のポイント

職人が「親の介護があるので会社を辞めたい」と申し出たとき、対応できる仕組みがないまま慰留しても実効性に乏しい。介護支援プランを事前に策定しておくことで、「介護が始まったら休業できる」「復帰後も仕事を続けられる」という安心感を職場全体に提供できる。

実務上の注意点として、介護休業の申出から取得まで、就業規則の手続きどおりに進める必要があります。手続きを省いて「なんとなく休ませた」ではなく、申請書の提出・受理・休業開始・復帰の各段階を書面で管理することが助成金受給の前提になる。

柔軟な働き方選択制度等支援コース—建設業との相性を確認する

制度の概要

フレックスタイム制、テレワーク、短時間勤務制度など、育児中の社員が柔軟に働ける仕組みを2つ以上導入した事業主に助成するコースです。

  • 対象制度2つ導入: 20万円
  • 対象制度3つ以上導入: 25万円

2025年10月から、3歳〜小学校就学前の子を育てる社員向けの柔軟な働き方の制度化が企業に義務付けられる。義務化に合わせて制度を整備しながら助成金を受け取ることができる。

建設業での現実的な活用

テレワークは現場作業員には適用が難しいが、施工管理職や内勤スタッフ(積算・経理・事務)には導入可能なケースがあります。BIM/CIMの普及で図面確認や工程管理の一部をリモートで実施できる環境が整ってきており、事務所勤務と現場業務を組み合わせる施工管理者であれば週1〜2日のリモートワークは十分に現実的です。

フレックスタイム制は、子の送り迎えに合わせて出勤時間を調整したいという要望への対応として、事務・設計部門で導入しやすい。現場部門への一律適用は工程管理の観点から難しいが、職種別に適用範囲を設定することは可能です。

不妊治療及び女性の健康課題対応両立支援コース—女性採用を強化する企業向け

制度の概要

2025年度から新設・拡充されたコースで、不妊治療・月経症状・更年期症状と仕事の両立を支援する制度を整備した事業主に助成する。各課題への対応で30万円(1事業主1回限り)が支給される。

  • 不妊治療対応: 治療スケジュールに合わせた休暇制度等を5日(回)以上利用させた場合
  • 月経症状対応: 月経痛等での休暇を5日(回)以上取得させた場合
  • 更年期症状対応: 対応制度を5日(回)以上利用させた場合

建設業での女性採用との連動

国土交通省の調査によると、建設業の技能者における女性割合は約6%にとどまっている。女性が少ないからこそ、女性が働きやすい環境の整備は差別化の強みになりやすい。不妊治療支援や女性健康課題への対応制度を整備することで、「女性が長く働ける建設会社」という採用上のポジションを取りにいける。

出典: 令和6年度建設産業における女性定着促進に関する実態等調査 — 国土交通省、令和6年

コースを組み合わせて受給額を最大化する

両立支援等助成金の複数コースは、条件が重複しない範囲で組み合わせて申請できる。建設業の中小企業が取りやすい組み合わせの例を挙げる。

組み合わせ例1: 男性育休を初めて整備する会社

  1. 出生時両立支援コース(第1種): 20万円(1人目)
  2. 育児休業等支援コース(取得時+復帰時): 最大60万円
  3. 育休中等業務代替支援コース(手当支給型): 最大140万円

合計: 最大220万円

就業規則に育休制度を明記した上で、育休を取得した男性社員に対して育休復帰支援プランを作成・実施し、残りの社員に業務代替手当を支給する — この流れで複数コースに申請できる。

組み合わせ例2: 介護リスクに備えたい会社

  1. 介護離職防止支援コース: 最大40万円
  2. 育休中等業務代替支援コース(育休版との並行申請): 最大140万円

ベテラン社員の介護離職防止と、育休中の業務代替整備を同時に進める場合に有効です。

不正受給リスクへの注意

虚偽の申請が発覚した場合、5年間の助成金受給停止、全額返還、企業名の公表という措置がとられる。書類の記載内容は事実に基づき正確に作成する必要があります。不明な点は申請前に管轄の都道府県労働局か社会保険労務士に確認することを強くすすめる。

申請の全体フロー

1

活用するコースを決定し、要件を確認する

自社の状況(育休取得実績・介護制度の有無・女性社員数)を棚卸しし、申請するコースを絞り込む。各コースの最新の支給要領は厚生労働省ウェブサイトまたは管轄の都道府県労働局から入手する。

2

就業規則・社内制度を整備する

育児休業制度・介護休業制度・業務代替手当制度を就業規則に明記する。既存の就業規則に条文を追加するだけでも要件を満たせることが多くあります。整備後は必ず全労働者へ周知する(全社員に書面配布または掲示)。

3

対象労働者が制度を利用する

育休・介護休業の取得申請を書面で受理し、休業開始・終了のプロセスを記録として残す。口頭での合意だけでは申請書類として不十分になるため、必ず書面管理を行う。

4

支援プランを作成・実施する

育休復帰支援プラン(育児休業等支援コース・出生時両立支援コース)または介護支援プラン(介護離職防止支援コース)を対象者と合意の上で作成する。プランの実施状況も記録に残す。

5

支給申請書類を準備する

申請書類は厚生労働省の最新様式を使用する。添付書類は就業規則(当該箇所の抜粋)・周知の証明・対象者の休業証明・給与台帳・プランの写しなど。コースごとに必要書類が異なるため、支給申請の手引きで事前に確認します。

6

申請期限内に都道府県労働局へ提出する

郵送または電子申請(jGrantsまたは雇用関係助成金ポータル)で提出する。申請期限は各コースのトリガーイベント(育休開始・育休終了・職場復帰)から一定期間内に設定されており、期限超過は不支給の原因になる。

7

審査・支給

審査は概ね2〜3ヶ月程度かかる。書類に不備がある場合は補正を求められる。支給決定後は指定口座に振り込まれる。

申請でよくある失敗とその回避策

建設業の経営者や担当者が両立支援等助成金の申請で失敗するパターンは、おおむね5つに集約できる。

  • 申請期限を過ぎてしまう — 各コースには厳格な申請期限があります。育休開始日から3ヶ月が経過した翌日から2ヶ月以内(育休取得時)、育休終了日の翌日から6ヶ月経過後の2ヶ月以内(復帰時)など、コースごとに期限のカウント起点が異なります。カレンダーに申請期限を事前に記入しておく習慣が不可欠です。
  • 就業規則の整備が後回しになる — 育休を取得させた後で就業規則を整備しようとしても、申請要件を満たせないケースが多い。「制度を就業規則に定めてから取得させる」という順序を守る。
  • 書類の周知証明が用意できない — 就業規則を整備しても、全労働者への周知を証明できる書類がないと申請が認められません。書面の配布記録や掲示写真を残しておく。
  • プランなしで育休を開始させる — 育休復帰支援プランや介護支援プランは、育休・休業の開始前に作成することが要件です。育休が始まった後から遡って作成しても認められません。
  • 代替手当の規定が就業規則に入っていない — 育休中等業務代替支援コースの手当支給型では、業務代替手当の制度が就業規則等に規定されていることが要件になる。「実態として手当を出した」だけでは足りありません。

社会保険労務士への依頼で失敗を防ぐ

両立支援等助成金の申請は、書類の量とコースごとの要件の細かさから、初めて申請する事業主が独力で進めると見落としが生じやすい。申請を社会保険労務士(社労士)に依頼することで、書類準備の負担を軽減し、不支給リスクを下げられる。

社労士への報酬は受給額の10〜20%程度が相場だが、申請ミスによる不支給リスクを回避できることと、経営者や担当者の工数を削減できることを考えると、費用対効果は高い。特に複数コースを組み合わせて申請する場合は、専門家の関与を強くすすめる。

建設業に詳しい社労士を選ぶ際は、建設業の助成金申請の実績があるかどうかを確認することが重要です。業種ごとの実務慣行(雇用管理責任者の選任、建設業雇用保険料率の適用など)を把握している社労士であれば、業種特有の要件への対応も含めてアドバイスしてもらえる。

他の助成金・補助金との組み合わせ

両立支援等助成金は、他の雇用関係助成金と組み合わせて申請できる場合があります。

キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)と組み合わせると、育休復帰後の待遇改善にかかるコストを補助できる。育休から復帰した社員の雇用形態の整備や処遇改善を同時に進めることで、複数の助成金の対象になり得る。

人材確保等支援助成金(若手人材確保コース)は、建設業の若手採用と定着を支援する制度で、育休整備と組み合わせると採用力強化の相乗効果が期待できる。人材確保等支援助成金(建設キャリアアップシステム等活用促進コース)も、技能者のキャリアアップと賃金改善を後押しする。

建設業で使える補助金・助成金の一覧ページで、両立支援等助成金以外の活用できる制度も合わせて確認することをすすめる。若手採用に課題がある場合はトライアル雇用助成金の活用も検討してほしい。

よくある質問

よくある質問

建設業は両立支援等助成金の対象になりますか?
なります。雇用保険の適用事業主であれば業種を問わず対象です。建設業の場合、常時雇用する労働者数300人以下または資本金3億円以下の会社が中小企業の定義に該当し、多くのコースで対象になります。2026年度からは一部コースで300人以下の全事業主(中小以外も含む)に対象が拡大されています。
現場作業員が育休を取れるのですか?正社員でなくても対象になりますか?
雇用保険に加入している労働者であれば、正社員に限らず育児休業を取得できます(育児・介護休業法)。パートタイム労働者や期間契約社員も、一定の要件を満たせば育休の対象です。現場作業員が育休を取得した場合でも、就業規則に育休制度が規定されていれば、両立支援等助成金の受給要件を満たす基盤になります。
育休中等業務代替支援コースは、代替要員なしでも申請できますか?
手当支給型(タイプ1・2)であれば、新たな採用なしに申請できます。既存の社員が業務を代替し、その社員に業務代替手当を支給した場合に助成の対象になります。代替雇用型(タイプ3)は新規採用が前提なので、採用なしでの申請はできません。
複数のコースを同時に申請できますか?
同一の対象労働者について複数のコースを重複して申請することには制限がある場合があります。ただし、異なるコースの対象となる制度(例:出生時両立支援コースと育休中等業務代替支援コース)は、条件が重複しない範囲で同時に申請できます。具体的な組み合わせ可否については、申請前に都道府県労働局か社会保険労務士に確認することをすすめます。
就業規則がない(または育休の規定がない)場合、まず何をすればよいですか?
まず育児・介護休業規程を整備するか、既存の就業規則に育休・介護休業の条項を追加します。厚生労働省は就業規則の標準例を公開しており、無料で参考にできます。整備後は全労働者への周知が必要で、書面配布や掲示の記録を残すことが申請の際に証明として求められます。就業規則の整備に不安がある場合は社会保険労務士への相談が最短経路です。
外国人技能実習生が育休を取る場合、助成金の対象になりますか?
外国人技能実習生は雇用保険の適用外となる場合が多く、育児休業の対象にならないケースがほとんどです。特定技能1号・2号の在留資格を持つ外国人労働者については、雇用保険の適用要件を満たせば育休取得が可能で、助成金の対象になり得ます。個別の在留資格・雇用形態に応じて判断が異なるため、管轄のハローワークまたは社会保険労務士に確認することをすすめます。
申請から支給まで、どのくらい時間がかかりますか?
申請から支給決定まで、概ね2〜3ヶ月程度かかります。書類に不備がある場合は補正対応が求められ、審査期間が延びることがあります。資金繰りの計画に組み込む場合は、支給まで一定のリードタイムがあることを前提にしてください。

参考情報


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