この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携し、補助金・助成金の制度選定の整理や専門家連携も手がける。

建設業の採用に補助金・助成金を使えることを知らないまま、求人広告や人材紹介に毎年100万円単位を投じている会社は少なくありません。建設業の採用には、国(厚生労働省)が用意した助成金が複数あり、若手や女性の試行採用、正社員化、人材育成、雇用環境の整備まで、採用と定着の各段階で活用できる可能性があります。この記事では、建設業の採用に使える補助金・助成金を「採用・定着・育成」のフェーズ別に整理し、それぞれの対象と申請の入口、そして気になりやすい「求人広告費は対象になるのか」までをまとめます。

採用や雇用に関わる助成金は雇用関係助成金(厚生労働省)が中心で、設備投資やデジタル化の補助金(中小企業庁など)とは申請窓口や考え方が異なります。金額や要件は年度ごとに見直されるため、本記事は2026年度(令和8年度)時点の制度の枠組みを整理する位置づけです。具体的な助成額・上限・申請期間は、記事内でリンクする各制度の解説ページと、厚生労働省の公式リーフレットで必ず確認してください。

まず押さえる:求人広告費は補助の対象になるのか

採用目的で検索する方がまず気になるのが「求人広告費や人材紹介料そのものが返ってくるのか」という点です。結論として、雇用関係助成金は基本的に、求人広告費や人材紹介料を直接補填するものではありません。多くの制度は、対象となる労働者を一定期間雇用したことや、雇用環境・人材育成の取り組みを行ったことに対して支給される仕組みです。

つまり「広告費の領収書を出せば戻る」のではなく、「採る・育てる・働き続けてもらうための取り組み」に対して国が費用の一部を補助するという考え方です。この前提を踏まえると、どの制度を使えるかが整理しやすくなります。

本記事の制度名・枠組みは2026年度(令和8年度)時点のものです。助成額・上限・対象要件・申請期間は年度や地域で変わり、ここでは具体的な金額を断定しません。最新の金額と要件は、各制度の解説ページと厚生労働省・都道府県労働局の公式リーフレットで必ず確認してください。

なぜ建設業の採用に助成金を検討するのか

建設業の採用にかかる負担は、求人広告や人材紹介の費用だけではありません。入社後の教育や、早期に辞められた場合の採り直しまで含めると、一人を戦力化するまでのコストはさらに膨らみます。求人媒体への出稿を増やすほど、採れなかったときや早期離職のときの損失も大きくなるという構造があります。詳しくは建設業の採用コストを削減する方法で触れています。

助成金は融資と違って返済不要で、要件を満たして所定の手続きを踏めば受給できる場合があります。試行雇用や正社員化、研修、雇用環境の整備といった取り組みの費用負担を軽くできるため、自己負担だけで人材投資を進めるより着手しやすくなります。人手不足の打ち手全体は建設業の人手不足を解消する対策にまとめていますが、その中でも助成金は比較的取り組みやすい施策です。

採用・定着・育成のフェーズ別 助成金マップ

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建設業向けの助成金は数が多く、名称だけでは自社のどの場面で使えるのか分かりにくいものです。ここでは採用活動の流れに沿って、採用段階・定着段階・育成段階の3つに分けて整理します。自社が今どの段階でつまずいているのかを起点に読むと、検討すべき制度を絞り込みやすくなります。

採用段階で使える助成金

未経験者や応募が集まりにくい層を採りたい段階では、採用のリスクを下げる助成金が中心になります。

  • トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース) — 35歳未満の若年者や女性を試行雇用する建設業向けのコースです。一般トライアルコースなどの支給を受ける建設事業主への上乗せとして支給される仕組みで、単体で完結する制度ではありません。対象者は主に建設工事現場での作業や施工管理に従事することが想定されています。要件と申請手順は建設業のトライアル雇用助成金で解説しています。
  • 特定求職者雇用開発助成金 — 高年齢者や就職が困難な求職者を、ハローワーク等の紹介で継続して雇用する場合に、賃金相当額の一部が一定期間助成される制度です。未経験からの中高年採用など、応募の間口を広げて人材を確保したいときの選択肢になります。対象者の要件は年度途中で見直されることがあるため、最新の条件を公式で確認してください。

定着段階で使える助成金

採った人材に長く働いてもらうための、雇用環境や待遇の改善、制度整備を支える助成金です。建設業の離職対策と相性のよい制度がそろっています。

  • 人材確保等支援助成金(建設分野) — 建設業向けに複数のコースが用意されています。若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コースは、若手・女性の入職と定着に向けた取り組みを支援します。作業員宿舎等設置助成コースには、石川県の工事現場向けの作業員宿舎等経費助成や、女性専用作業員施設の設置経費助成が含まれます。詳細は人材確保等支援助成金(建設分野)の活用ガイドを参照してください。
  • 建設キャリアアップシステム等活用促進コース(雇用管理改善促進事業) — CCUSの活用や登録基幹技能者などの処遇改善に取り組む建設事業主を支援する、建設業に固有のコースです。技能者の評価と賃金を結びつける取り組みは、定着と採用力の両方につながる可能性があります。
  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備系) — 賃金や評価、諸手当、職場環境などの整備に取り組む事業主を支援するコースがあります。採用後に「働き続けたい」と思える土台をつくる取り組みは、離職対策として定着に直結します。対象となる取り組みや要件は公式リーフレットで確認してください。
  • キャリアアップ助成金(正社員化コース) — 有期雇用などで採用した人材を正社員に転換する取り組みを支援する制度です。支給額は対象者の区分によって異なり、要件を満たす対象者の正社員化で手厚くなる仕組みです。雇用している非正規雇用労働者が対象になるため、活用条件をキャリアアップ助成金 建設業の活用ガイドで確認してください。
  • 両立支援等助成金 — 育児休業や介護休業の取得・職場復帰の支援に取り組む事業主向けで、複数のコースが用意されています。女性や子育て世代の定着に役立ちます。各コースの要件は両立支援等助成金を建設業で活用する方法を参照してください。
  • 65歳超雇用推進助成金 — 定年の引上げや継続雇用制度の導入など、高年齢者が長く働ける制度の整備に取り組む場合の助成金です。採用そのものより、経験豊富なベテランの戦力化と定着に関わる制度として位置づけられます。3コースの内容は65歳超雇用推進助成金を建設業で活用する方法で確認してください。

育成段階で使える助成金

採用した人材のスキルアップや、現場のデジタル化に対応できる人材の育成を支える助成金です。建設業向けに、技能実習からデジタル人材の育成までをカバーするコースが用意されている点が特徴です。

  • 人材開発支援助成金 — 従業員に有給で訓練を実施した際、訓練費用と訓練期間中の賃金の一部が助成される制度です。建設労働者技能実習コースや建設労働者認定訓練コースに加え、BIMやドローンといったデジタル技術の研修に使えるコースもあります。試算例や落とし穴は人材開発支援助成金 建設業の活用ガイドで扱っています。

制度の早見表

検討の出発点として、採用・定着・育成のどの段階に効くか、求人広告費の補填ではない点をあわせて整理します。具体的な金額・上限・申請期間は、各制度ページと厚生労働省の公式リーフレットで確認してください。

制度・コース主に効く段階主な対象事前手続き
トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)採用35歳未満・女性の試行雇用(一般トライアルへの上乗せ)ハローワークの求人・紹介
特定求職者雇用開発助成金採用高年齢者・就職困難者の雇入れハローワーク等の紹介
人材確保等支援助成金(建設分野・職場づくり/施設整備)定着若年・女性の職場づくり、作業員宿舎・女性施設等計画の認定・届出
人材確保等支援助成金(雇用管理制度・雇用環境整備系)定着賃金・評価・職場環境などの整備計画の認定・届出
建設キャリアアップシステム等活用促進コース(雇用管理改善促進事業)定着CCUS活用・技能者処遇改善取り組み前の計画
キャリアアップ助成金(正社員化コース)定着非正規から正社員への転換キャリアアップ計画の届出
両立支援等助成金定着育児・介護休業の取得支援就業規則整備等
65歳超雇用推進助成金定着定年引上げ・継続雇用制度の整備制度導入
人材開発支援助成金育成技能実習・認定訓練・デジタル研修訓練計画の届出

採用フェーズに沿った助成金の組み合わせ例

助成金は単独で使うより、採用から定着・育成までの流れに沿って組み合わせると効果が高まります。自社の状況に近いパターンを参考に、検討する制度の当たりをつけてください。

未経験の若手をはじめて採用する場合

ハローワーク経由で若手を試行雇用し、トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)の対象としつつ、定着が見込めた段階でキャリアアップ助成金の正社員化コースを使って正社員に転換する流れが考えられます。入社後の技能習得には、人材開発支援助成金の建設労働者技能実習コースを重ねて活用できる場合があります。試行から正社員化、育成までを制度でつなぐと、採用のリスクと費用を段階的に抑えられます。

女性や子育て世代の採用・定着を進めたい場合

女性の採用では、人材確保等支援助成金の建設分野コースで職場づくりや施設整備の取り組みを支援しつつ、両立支援等助成金で育児休業の取得や職場復帰を後押しする組み合わせが考えられます。建設業の女性比率は依然として低く、働きやすい環境づくりそのものが採用力の底上げにつながります。トイレや更衣室といった現場環境の整備は、求人票でアピールできる差別化材料にもなります。

ベテランの再雇用と若手育成を両立したい場合

65歳超雇用推進助成金で高年齢者が長く働ける制度を整え、その人材を指導役に据えて若手を育てる体制をつくると、技能継承と定着を同時に進められます。育成にかかる研修費の一部は人材開発支援助成金で賄える場合があり、ベテランの知見を組織に残しながら次世代を育てる負担を軽くできます。

複数の制度を同じ年度に申請する場合は、それぞれの申請時期や予算の上限、併給の可否を事前に確認しておくと計画が立てやすくなります。自社単独で判断が難しいときは、採用計画と助成金の使い方をセットで相談できる専門家に早めに当たっておくと、申請の取りこぼしを防ぎやすくなります。

採用×DXで「採れない」と「足りない」を両面から解く

助成金で人を採り育てる一方、現場の業務量そのものを減らす視点も欠かせません。採用で人を増やすだけでなく、DXで一人あたりの負担を下げることで、限られた人員でも現場が回るようになります。これは採用支援の会社にもITツールの会社にもまたがる領域で、両面から考えられるのが建設DXメディアならではの視点です。

たとえば、人材開発支援助成金のデジタル研修系コースは、採用した若手をBIMやICT施工の担い手に育てる費用を抑えるのに使える場合があります。採用業務や日報・出面管理といった事務作業の効率化には、デジタル化・AI導入補助金のようなIT投資系の制度も選択肢になります。空いた時間で教育が手厚くなれば、早期離職が減って定着率の改善にもつながります。利用できる制度の全体像は建設業で使える補助金・助成金一覧にまとめているので、採用以外の設備投資やDXの補助金とあわせて検討してください。

なお、国の制度以外にも、賃上げに取り組む中小企業向けの業務改善助成金や、自治体独自の建設人材確保・移住就業の支援など、採用・定着に関わる制度があります。本社や現場のある自治体の制度もあわせて調べると、選択肢が広がります。

助成金は「採用にかかる費用の一部を戻す」仕組みで、応募を集める部分そのものは別に手を打つ必要があります。求人票の作り直しや採用サイトの整備まで手が回らない場合は、建設業の採用支援サービスもご覧ください。ケンテクを運営するローカルマーケティングパートナーズが、助成金の活用と並行して、採用の実行まで伴走する形で支援しています。

申請の基本的な流れと共通の注意点

雇用関係助成金には、制度をまたいで共通する前提があります。申請を検討する前に、次の点を確認しておくと手戻りを減らせます。

  • 雇用保険の適用事業主であり、多くの建設業向けコースでは「建設の事業」の雇用保険料率が適用されていること
  • 雇用管理責任者を選任し、就業規則などに整備されていること
  • 計画の届出や実施計画書の提出など、取り組みを始める前の事前手続きが必要な制度が多いこと
  • 支給申請には期限があり、予算の上限に達すると年度途中で受付を終了する制度もあること

助成金は「要件を満たしていると思っていたが実は外れていた」という見落としで不支給になる例が多く、受給を確約できる制度ではありません。要件の判断や書類作成に不安がある場合は、助成金に精通した社会保険労務士や認定支援機関に相談すると、不備を減らしやすくなります。制度の正確な要件・金額・申請期間は、厚生労働省や管轄の都道府県労働局の公式情報で必ず確認してください。

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ケンテクでは、中小建設会社向けに採用・人材確保と補助金活用のご相談を無料で承っています。採用とDXの両面から、御社に合った打ち手をご提案します。

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参考情報

よくある質問

建設業の採用に使える補助金・助成金にはどんなものがありますか?
採用段階ではトライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)や特定求職者雇用開発助成金、定着段階では人材確保等支援助成金(建設分野)やキャリアアップ助成金の正社員化コース・両立支援等助成金・建設キャリアアップシステム等活用促進コース、育成段階では人材開発支援助成金などがあります。いずれも厚生労働省の雇用関係助成金で、採用・定着・育成の各段階に対応しています。
求人広告費や人材紹介料は助成金で戻ってきますか?
雇用関係助成金は、基本的に求人広告費や人材紹介料そのものを直接補填する制度ではありません。対象となる労働者を一定期間雇用したことや、雇用環境の整備・人材育成の取り組みに対して支給されるのが一般的です。広告費を補填する制度を探すのではなく、採る・育てる・定着させる取り組みのどれに使えるかという視点で検討してください。
助成金は申請すれば必ず受け取れますか?
必ず受給できるわけではありません。雇用保険の適用事業主であること、雇用管理責任者を選任していること、取り組み前の計画届出など、制度ごとの要件をすべて満たし、期限内に所定の書類を提出する必要があります。予算の上限に達して年度途中で受付を終了する制度もあります。要件を一つでも外すと不支給になることがあるため、申請前に厚生労働省や都道府県労働局の最新情報で確認してください。
助成金の金額はどこで確認できますか?
助成額や上限、対象要件は年度や地域で見直されるため、本記事では具体的な金額を断定していません。各制度の解説ページと、厚生労働省「建設事業主等に対する助成金」のパンフレットや支給要領で、2026年度(令和8年度)の最新の金額・要件・申請期間を確認してください。判断に迷う場合は社会保険労務士や認定支援機関への相談も有効です。

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