この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

事業再構築補助金とは

事業再構築補助金は、新分野展開や業態転換を行う中小企業を支援する大型補助金です。2024年度公募(第12回)までの累計採択件数は約7万件に達しており、中小企業の事業転換を後押しする国の重要施策として位置づけられています。建設業からの隣接事業への進出にも広く活用されており、DXを絡めた新事業の場合は、IT導入補助金との使い分けも検討しましょう。

2026年度からは「中小企業新事業進出補助金」に名称が変更され、制度設計も一部見直しが行われています。ただし、新分野展開や事業転換を支援するという基本的な趣旨は引き継がれています。

項目内容
補助率1/2〜3/4(枠・企業規模による)
補助額100万〜1.5億円(枠による)
対象中小企業・中堅企業
要件売上減少要件 + 事業計画の策定 + 認定経営革新等支援機関の確認
過去の採択率第1回〜12回の平均で約40〜50%(公募回により変動)
売上減少要件に注意

事業再構築補助金には「コロナ前と比べて売上が一定割合減少していること」等の要件がありました。2026年度の中小企業新事業進出補助金では要件が見直されている可能性があるため、最新の公募要領を必ず確認してください。

2026年度の制度概要と変更点

2026年度から「中小企業新事業進出補助金」に名称が変更された背景には、従来の事業再構築補助金が「コロナ禍からの回復」を主な目的としていたのに対し、2026年度以降は中小企業の持続的な成長・事業転換支援を目的として再設計されたという経緯があります。

主な変更点(旧制度との比較)

項目旧:事業再構築補助金新:中小企業新事業進出補助金
名称事業再構築補助金中小企業新事業進出補助金
売上減少要件コロナ前比で売上減少が必要要件が見直し(詳細は公募要領で確認)
事業の方向性業態転換・事業再構築新分野展開・新事業創出
補助上限・補助率枠により変動枠により変動(最新公募要領で確認)

売上減少要件の変更は特に注意が必要です。旧制度ではコロナ禍による売上減少を申請要件としていたため、業績が回復した会社は申請できない時期がありました。新制度では要件が見直されている可能性があり、業績が安定している建設会社でも申請できるケースが増える可能性があります。

最新の公募要領を必ず確認し、不明点は認定支援機関または事業再構築補助金事務局(公式サイトの問い合わせ窓口)に確認してください。

なぜ建設業に新事業進出が必要なのか

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建設業は景気変動や公共投資の増減に売上が左右されやすい産業です。国土交通省の「建設業の現状」によると、建設投資額はピーク時(1992年度の約84兆円)から大幅に減少した後、近年は70兆円前後まで回復しています。しかし、この回復は大規模再開発やインフラ更新需要が中心であり、中小建設会社の受注環境は地域や業態によって温度差があります。

一方で、建設業が持つ技術力・人材・設備・顧客基盤は、隣接事業に進出する際の大きなアドバンテージになります。新築工事で培った施工技術をリノベーションに応用する、電気工事の技能を太陽光発電の施工に活かすといった展開は、ゼロから新事業を立ち上げるよりもはるかにリスクが低く、成功確率も高いといえます。

建設業で事業再構築補助金が使える5つの新事業パターン

パターン1: リノベーション事業への進出

新築工事の受注が減少 → 既存建物のリノベーション事業に進出。住宅リノベーション市場は矢野経済研究所の調査によると年間約7兆円規模で推移しており、中古住宅の流通促進策を背景に今後も成長が見込まれます。

項目内容
補助対象経費ショールーム設置費、設計ソフト、VR内見システム、広告宣伝費
補助額目安500万〜3,000万円
成功のポイント新築とは異なる「提案型」の営業体制を構築すること
収益モデル1件あたりの単価は新築より低いが、受注頻度が高い。年間10〜20件の安定受注を目指す

リノベーション事業は、既存顧客(過去に施工した住宅のオーナー)へのアプローチから始めるとスムーズです。築20年以上の物件を施工した顧客リストがあれば、DMやメールでリノベーションの提案を行い、新規営業コストを抑えた立ち上げが可能になります。

パターン2: 不動産管理事業への参入

建設→管理への垂直統合。建てた物件の管理まで手がける。

項目内容
補助対象経費管理システム導入費、事務所増設費、人材採用費(一部)
補助額目安300万〜1,500万円
成功のポイント既存顧客(建てた物件のオーナー)への提案からスタート
収益モデル管理手数料は賃料の3〜5%が相場。ストック型ビジネスで安定収益

不動産管理業は、建設業のように大きな案件を一括で受注するモデルではなく、管理物件数が増えるほど毎月の収益が積み上がるストック型ビジネスです。建設会社がこの分野に進出する最大のメリットは、修繕・改修工事を自社で受注できる点にあります。管理をしながら建物の状態を把握し、適切なタイミングで修繕提案を行えるため、本業の建設事業にも好循環が生まれます。

パターン3: 太陽光・再エネ施工事業

建設技術を活かして太陽光パネルの施工事業に参入。人手不足を補うための新たな収益源としても注目されています。

経済産業省の「エネルギー基本計画」では、2030年度に再生可能エネルギーの電源構成比率を36〜38%に引き上げる目標が掲げられています。この目標達成には太陽光発電の大幅な導入拡大が不可欠であり、施工事業者への需要は中長期的に増加する見通しです。

項目内容
補助対象経費施工機器、研修費、営業活動費
補助額目安500万〜5,000万円
成功のポイント電気工事士の確保。住宅向け+産業用の両方を狙う
想定売上住宅用1件50〜100万円、産業用1件500万〜3,000万円

パターン4: 建設コンサルティング事業

建設の実務経験を活かして、他社のDX導入支援やコンサルティング事業を立ち上げ。

項目内容
補助対象経費コンサルティングツール、セミナー開催費、Web制作費
補助額目安100万〜500万円
成功のポイント自社のDX成功体験を「商品化」する
収益モデルコンサルフィー月額10〜30万円、セミナー参加費1〜3万円/人

自社でDXツールを導入し、残業時間の削減や原価管理の改善に成功した経験は、同規模の建設会社にとって非常に価値のある情報です。「自分たちも同じことがしたい」と考える中小建設会社は多く、実体験に基づくアドバイスは机上のコンサルティングよりも説得力があります。

パターン5: 建設テック事業

自社で使っていた業務改善ツール・ノウハウをSaaS化して販売。

項目内容
補助対象経費システム開発費、サーバー費、営業活動費
補助額目安1,000万〜5,000万円
成功のポイント自社の現場で実証済みの仕組みを他社に展開
収益モデルSaaS月額1〜5万円/社。100社獲得で月商100〜500万円

申請の流れ

1

認定経営革新等支援機関を見つける

税理士、中小企業診断士、金融機関等の認定支援機関と事業計画を策定。当補助金は支援機関の確認書が必須。

2

事業計画書の策定(最重要)

売上減少の原因分析、新事業の市場調査、収益計画、実施体制を15ページ程度にまとめる。計画の質が採択の鍵。

3

電子申請(jGrants)

GビズIDプライムが必要。電子申請システムjGrantsから申請。GビズIDの取得には2〜3週間かかるため早めに申請する。

4

審査(2〜3ヶ月)

外部有識者による審査。書面審査+場合により口頭審査。

5

採択→交付申請→事業実施→実績報告

採択後に交付申請。事業実施期間内に設備投資等を完了し、実績報告を提出。

申請スケジュールの目安

作業項目必要期間
GビズIDプライムの取得2〜3週間
認定支援機関の選定・面談2〜4週間
市場調査・事業計画の骨子作成2〜4週間
事業計画書の作成・推敲4〜8週間
電子申請の準備・提出1〜2週間

合計で3〜5ヶ月の準備期間を見込んでおく必要があります。公募開始後に慌てて準備するのではなく、事前にGビズIDと支援機関の選定は済ませておくのが鉄則です。

採択率を上げるポイント

1. 「なぜ新事業に進出するのか」のストーリーを作る

審査員が最も重視するのは「事業の妥当性」。建設業の経営資源(技術・人材・設備・顧客基盤)を活かした新事業であること、市場ニーズがあることを論理的に示す。

事業計画書の冒頭で「自社の強み」と「市場の機会」を結びつけるストーリーを描いてください。審査員は1日に何十件もの計画書を読みます。冒頭の1〜2ページで「なるほど」と思わせられるかどうかが、採択率に大きく影響します。

2. 数字で語る

良い例悪い例
「リノベーション市場は年間約7兆円、前年比3%成長」「リノベーション市場は拡大傾向」
「3年後に売上8,000万円、営業利益率8%を目標」「収益の改善を目指す」
「既存顧客120社にアンケートし、62%が利用意向あり」「ニーズがあると思われる」
「競合A社の施工単価は坪○万円。自社は○万円で差別化」「価格競争力がある」

3. 収益計画の実現性を示す

審査員は「この計画は本当に実現できるか」を見ています。根拠のない楽観的な売上予測は逆効果です。以下の点を押さえてください。

  • 類似事業の市場データを引用して売上予測を裏付ける
  • 初年度は保守的な見積もりにし、2年目以降で成長を描く
  • 売上だけでなく、コスト構造(原材料費、人件費、外注費)も詳細に記載する
  • 「最悪のケース」でも赤字にならないことを示す

4. 専門家に事業計画の策定を依頼する

事業再構築補助金の事業計画書は、一般的な補助金よりも求められる質が高い。中小企業診断士や補助金申請の専門家に策定を依頼することで、採択率が大幅に上がります。

認定支援機関の費用目安

事業計画策定の支援費用: 着手金10〜30万円 + 成功報酬(補助額の5〜10%)が相場。補助額が1,000万円の場合、成功報酬は50〜100万円。コストはかかりますが、採択率が大幅に上がるため投資回収は十分可能。

5. 過去の不採択理由から学ぶ

事業再構築補助金の審査では、不採択の場合に「審査の観点別の得点」が返却されます。不採択だった場合はこの情報を分析し、弱かった観点を改善して再申請することで採択率を高められます。

過去の公募で不採択になりやすかったポイントを整理します。

審査の観点不採択になりやすいケース
補助事業の具体性実施スケジュールや体制が曖昧
市場調査の妥当性市場規模の根拠がない、競合分析がない
収益計画の実現性売上予測が楽観的すぎる
既存事業との関連性新事業と本業のシナジーが見えない
政策点(加点項目)賃上げ計画や地域経済への波及効果の記載がない

採択後の注意点

採択されても安心はできません。交付申請、事業実施、実績報告のプロセスで注意すべき点があります。

段階注意点
交付申請見積書は原則2社以上から取得。単独見積は認められにくい
事業実施事業実施期間内に発注・納品・支払いを完了する必要がある。期限超過は補助対象外
経費の管理補助対象経費は証憑(請求書、領収書、銀行振込明細)をすべて保管
実績報告写真・帳簿・会計データを整理して提出。不備があると補助金が減額される
事業化状況報告採択後5年間、毎年事業の進捗状況を報告する義務がある

建設業の採択事例 — 実際にどんな新事業が認められているか

過去の採択事例をもとに、建設業が補助金を活用して進出した新事業の実例を紹介します(公表資料をもとに構成した事例です)。

事例1: 新築工務店 → リノベーション専門店への転換(神奈川県・従業員12名)

新築住宅の受注が減少する中、中古住宅のリノベーション専門店に転換した事例です。補助金活用でショールームを開設し、3DパースシステムとVR内見ツールを導入。従来の「職人が工事するだけ」から「顧客と一緒に設計を楽しめる空間」へのシフトを図りました。

補助額は約2,200万円で、初年度のリノベーション受注件数は前年比で約3倍に増加。ショールーム集客から成約率が高い「対面提案型」の営業に転換したことが、業績拡大の決め手になりました。

事例2: 電気工事会社 → 太陽光施工・蓄電池販売事業(愛知県・従業員8名)

電気工事の技術を活かして、住宅向け太陽光パネルと蓄電池システムの施工・販売事業に参入した事例です。補助対象経費として、施工用リフト機材・研修費・リード獲得のためのデジタル広告費が認められました。

事業開始1年目から地域のFP(ファイナンシャルプランナー)と提携し、住宅購入者へのクロスセル経路を確立。補助事業期間中に22件の施工実績を積み、事業化報告を完了しています。

事例3: 解体業者 → 産業廃棄物リサイクル事業(大阪府・従業員25名)

解体工事で発生する廃棄物を自社でリサイクル処理する事業に進出した事例です。廃棄物処理法の許可取得と選別機・破砕機の設備投資に補助金を活用。補助額は約4,800万円で、製造業への補助金転用として認められました。

廃棄物処理費用の削減(自社処理によりコスト30%削減)と、再生資材の販売収益の両面で収益モデルを確立。補助終了後も事業が自立して継続できる計画として評価されました。

申請前の事前準備チェックリスト

事業計画書の作成に入る前に、以下の準備が整っているか確認してください。

基本的な要件確認

  • GビズIDプライムを取得している(または申請中)
  • 認定経営革新等支援機関と面談した
  • 直近1〜3期分の決算書を用意している
  • 自社の強みと新事業の関連性を1ページで説明できる

事業計画書の骨子作成

  • 進出する新事業の市場規模データを調査した
  • 競合他社の価格・サービス内容を3社以上調査した
  • 3年後の売上・利益目標を数字で設定した
  • 補助対象経費の見積もり(2社以上)を取得した
  • 収支計画(P/L)を5年分シミュレーションした

加点項目の確認

  • 賃上げ計画(従業員の給与引き上げ)を検討した
  • グリーン・デジタルなど政策テーマとの整合を確認した
  • 地域経済への波及効果(雇用創出など)を盛り込んだ

加点項目は採択の合否ギリギリの場合に差がつきます。特に賃上げ計画は書類上の約束になるため、実現可能な水準を検討したうえで盛り込むことが重要です。

他の補助金との使い分け

建設業の新事業進出に活用できる補助金は、本補助金だけではありません。投資規模・新事業の性質に応じて適切な制度を選ぶことが重要です。

補助金補助上限補助率向いている新事業
中小企業新事業進出補助金(本補助金)1.5億円1/2〜3/4本業と異なる新分野への大規模投資
ものづくり補助金1,250万円1/2〜2/3製造設備・システムへの投資。本業強化にも使える
IT導入補助金450万円1/2〜3/4DXツール・ソフトウェア導入。手続きが比較的簡単
小規模事業者持続化補助金200万円2/3小規模な販路開拓・新商品開発
事業承継・引継ぎ補助金600万円2/3M&Aに伴う新事業展開

本補助金は補助上限が最も大きく、対象経費も広い一方で、事業計画書の質への要求水準が高く、申請から採択まで時間がかかります。小規模な新事業(投資額500万円以下)であれば、ものづくり補助金や持続化補助金のほうが申請の手間が少なく、採択率も安定しています。

投資規模と新事業の性質を考慮して、どの補助金が最適かを認定支援機関と相談することを推奨します。場合によっては複数の補助金を組み合わせる(例: 設備投資にものづくり補助金、DXツール導入にIT導入補助金)ことも可能です。

よくある質問

事業再構築補助金とは何ですか?
新分野展開や業態転換を行う中小企業を支援する大型補助金です。補助率1/2〜3/4、補助額100万〜最大1.5億円で、建設業から隣接事業への進出に活用できます。2026年度からは中小企業新事業進出補助金に名称変更されています。
建設業で事業再構築補助金はどのように使えますか?
リノベーション事業への進出、不動産管理事業への参入、太陽光・再エネ施工事業、建設コンサルティング事業、建設テック事業など、建設業の経営資源を活かした新事業に活用できます。
事業再構築補助金の申請に必要なものは何ですか?
認定経営革新等支援機関の確認書、事業計画書(15ページ程度)、GビズIDプライムが必要です。特に事業計画書の質が採択の鍵となります。GビズIDの取得に2〜3週間かかるため、早めの準備が必要です。
事業再構築補助金の採択率を上げるにはどうすればよいですか?
事業の妥当性を論理的に示すストーリーを作ること、市場規模や収益計画を具体的な数字で示すこと、中小企業診断士などの専門家に事業計画の策定を依頼することが重要です。過去の平均採択率は40〜50%程度です。
認定支援機関の費用はどれくらいですか?
着手金10〜30万円+成功報酬(補助額の5〜10%)が相場です。補助額が1,000万円の場合、成功報酬は50〜100万円程度です。採択率が大幅に上がるため投資回収は十分可能です。
事業再構築補助金の審査にはどれくらいかかりますか?
外部有識者による審査が行われ、申請から採択まで2〜3ヶ月程度かかります。書面審査に加えて口頭審査が行われる場合もあります。申請準備には3〜5ヶ月を見込んでおくのが安全です。
採択後に注意すべきことはありますか?
事業実施期間内に発注・納品・支払いを完了する必要があります。経費の証憑は全て保管し、実績報告を期限内に提出してください。採択後5年間は事業化状況の報告義務もあります。

申請書類の準備と提出の実務

事業計画書が完成したら、電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」から申請を行います。jGrantsへのログインにはGビズIDプライムが必要です。紙での申請は受け付けていないため、ITに不慣れな経営者は早めに準備を始めることを推奨します。

提出が必要な主な書類

書類取得先・注意事項
事業計画書自社作成(認定支援機関の確認印が必要)
認定支援機関確認書依頼した支援機関が作成
決算書(直近2期分)税務申告の際に税理士が作成したもの
売上減少を確認できる書類確定申告書または試算表
法人の場合: 登記簿謄本法務局で取得(3ヶ月以内のもの)
見積書(補助対象経費)2社以上から取得(50万円超の場合)

見積書の取得は見落としがちなポイントです。設備・システムの購入費用が補助対象になる場合、同種の設備について2社以上から見積もりを取る必要があります。特に単独メーカーしか扱っていない機械などは「相見積もり困難理由書」を作成して代替できる場合もありますが、事前に事務局に確認してください。

jGrantsへの入力作業の注意点

jGrantsの入力フォームは、事業計画書の内容を要約して転記する形式です。添付ファイルのサイズ上限(1ファイル10MB程度)があるため、事業計画書のPDFを圧縮しておく必要があります。

申請締め切り直前はシステムアクセスが集中し、サイトが重くなることがあります。締め切りの2〜3日前には申請を完了させるスケジュールで動くことを強く推奨します。

採択後の事業実施で押さえるべきポイント

採択通知を受け取った後も、補助金を確実に受け取るまでにはいくつかのステップが残っています。採択後の実務を整理します。

交付申請から実績報告までの流れ

採択通知の後に「交付申請」を行い、事務局から交付決定を受けてから初めて発注・契約が可能になります。交付決定前に発注した経費は補助対象外になるため、タイミングに注意が必要です。

事業実施期間は交付決定日から公募要領に定められた期限まで(一般的に1〜2年)です。この期間内に発注・納品・支払いを完了させ、実績報告書を提出します。

フェーズ所要期間の目安注意事項
採択通知〜交付決定1〜2ヶ月追加書類の提出を求められる場合あり
交付決定〜事業実施最長2年発注は交付決定後から可能
実績報告〜補助金振込2〜4ヶ月審査を経て補助金が振り込まれる

実績報告で不備が発見されると補助金が減額・不支給になるリスクがあります。証憑(請求書・領収書・振込明細)は事業実施中から丁寧に整理しておきましょう。

収益納付の仕組みを理解しておく

補助事業の実施後、事業が予想以上に好調だった場合「収益納付」が求められる場合があります。一定の収益を上げた場合、補助金の一部を返還する仕組みです。

事業が成功した際のペナルティではなく、制度設計上の仕組みとして理解しておくことが重要です。採択後5年間の事業化状況報告においても、事業の収益状況を報告する義務があります。

建設業が新事業で失敗しやすいパターン

多くの採択事例がある一方で、補助金を受け取っても新事業が軌道に乗らないケースも存在します。建設業特有の失敗パターンを事前に把握しておくことで、リスクを下げることができます。

営業体制を変えないまま新事業に参入する

建設業は「待ちの営業」が基本です。工務店や施工業者は元請けからの発注を待つスタイルに慣れているため、リノベーション専門店や不動産管理など「自分で顧客を獲得する」事業モデルに移行した際に、営業活動が不十分になるケースがあります。

新事業では「誰が、どうやって顧客を獲得するか」の体制設計が事業計画書の段階から必要です。自社に営業担当者がいない場合は、補助金で営業担当を採用するか、外部の営業代行を活用する計画を盛り込む必要があります。

本業が忙しくなると新事業に手が回らなくなる

建設業の繁忙期(年度末・秋)は、本業の工事が集中します。補助事業期間中に本業が忙しくなると、新事業の立ち上げ作業が後回しになり、事業実施期間内に補助対象経費を消化できないリスクがあります。

対策として、新事業担当を専任で配置するか、少なくとも「本業が忙しい時期でも月○時間は新事業に充てる」というルールを社内で決めておくことが重要です。

競合リサーチが不十分なまま参入する

リノベーションや太陽光施工は、全国的に競合が増加しています。「自社がその地域でどう差別化するか」を具体的に設計しないまま参入すると、価格競争に巻き込まれて利益率が確保できない事態に陥ることがあります。

事業計画書の段階で競合分析を丁寧に行い、「なぜ自社が選ばれるか」を具体的に言語化できるまで詰めておくことが、新事業の成否を左右します。

参考情報


建設業が新事業進出を検討するタイミング

新事業への進出は、「今の本業が苦しいから逃げる」ではなく、「今のうちに手を打っておく」という視点で取り組むことが重要です。補助金を活用した新事業進出が最も成功しやすいのは、本業が一定の安定を保ちながら、新事業に投じる経営資源(時間・人材・資金)を確保できているタイミングです。

新事業進出の適切なタイミングを見極める3つの指標

受注が安定しており手元資金に余裕があることが、新事業に集中できる前提条件です。資金繰りが苦しい時期に新事業を始めようとすると、補助金の立替資金が用意できず、事業実施が滞るリスクがあります。

技術者や人材の一部を新事業に振り向けられる余力があることも重要です。建設業の人材は現場技能の担い手でもあり、新事業のために現場を回す人員を削ると、本業の品質が低下するリスクがあります。

そして、経営者本人が新事業の内容と市場について十分に学び、「これなら勝ち目がある」と確信できている状態が必要です。補助金のために事業計画書を書くのではなく、本当にやりたい事業の費用を補助金で賄う、という順序で考えることが成功への近道です。

公募スケジュールの確認方法

2026年度の中小企業新事業進出補助金の公募スケジュールは、経済産業省および事業再構築補助金公式サイトで発表されます。公募は年に複数回行われる見込みですが、回ごとに申請要件や補助上限が変更されることがあります。

最新のスケジュールは必ず公式サイトで確認してください。公募開始から締め切りまでは2〜4週間程度しかないことが多いため、「次の公募が始まってから準備する」では間に合わないケースがあります。平常時から認定支援機関と関係を構築し、公募開始と同時に申請できる準備状態を整えておくことが重要です。

認定支援機関の選定にあたっては、建設業の支援実績があるかどうかを必ず確認してください。建設業の許可要件・工事契約の特殊性・経営指標の読み方などを理解している支援機関でないと、建設業の強みを活かした事業計画書が書けません。中小企業診断士協会や商工会議所の窓口で、建設業の支援実績のある専門家を紹介してもらうことを推奨します。

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