この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150プロジェクト以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

経営事項審査(経審)のY評点が伸びありません。工事進行基準の処理を毎期Excelで手計算している。完成工事原価報告書の作成に毎回丸一日かかる。中小建設会社の経理担当者にとって、こうした悩みは珍しくありません。一般的なクラウド会計ソフトでは、建設業法に基づく特殊な帳票を出力できないため、公共工事を受注する建設会社には建設業特化の財務会計ソフトが不可欠です。

この記事では、経審対応・工事進行基準・建設業財務諸表の出力に焦点を当てて、建設業向け財務会計ソフト7製品を比較します。一般的な会計ソフトとの違いを知りたい方は「建設業向け会計ソフト比較」もあわせてご覧ください。

建設業の財務諸表は一般企業と何が違うのか

建設業の財務諸表は、一般企業の財務諸表とは勘定科目の名称や構造が異なります。建設業法施行規則に基づく独自の様式が定められており、経審を受審する建設業者はこの様式に従った財務諸表を提出しなければなりません。

一般企業の勘定科目と建設業の勘定科目の対応関係を整理します。

一般企業の勘定科目建設業の勘定科目内容
売上高完成工事高完成・引渡し済みの工事による収益
売上原価完成工事原価完成工事に直接かかった費用
売掛金完成工事未収入金工事が完成したが未回収の代金
仕掛品未成工事支出金未完成工事に投じた費用(資産計上)
前受金未成工事受入金未完成工事の前受代金(負債計上)
売上総利益完成工事総利益完成工事高から完成工事原価を差し引いた利益

完成工事原価報告書とは

建設業の損益計算書に添付が義務づけられている書類が「完成工事原価報告書」です。完成工事原価を以下の4区分に分解して記載します。

  • 材料費 — 工事に直接使用した資材の購入費用
  • 労務費 — 工事に直接従事した作業員の賃金
  • 外注費 — 下請業者への発注費用
  • 経費 — 上記3つに含まれない直接経費(現場の動力費、機械損料など)

一般の会計ソフトには、この4区分に原価を自動分類して報告書を出力する機能がありません。手作業でExcelに集計し直す運用をしている建設会社も少なくありませんが、工事件数が増えると転記ミスや集計漏れのリスクが高まります。建設業特化の財務会計ソフトであれば、仕訳入力の段階で原価区分を指定でき、完成工事原価報告書をボタン一つで出力できます。

建設業財務諸表が求められる場面

建設業財務諸表の提出が必要になるのは、主に以下の場面です。

  • 経営事項審査(経審)の受審時 — Y評点の算出に建設業財務諸表の数値が使われる
  • 建設業許可の更新時 — 毎事業年度終了後4か月以内に決算変更届として提出
  • 入札参加資格審査 — 自治体によっては建設業財務諸表の提出を求められる
  • 金融機関への融資申請 — 建設業向け融資では建設業財務諸表を求められるケースがある

建設業許可を持つ会社は、経審を受けるかどうかにかかわらず、毎年の決算変更届で建設業財務諸表を提出する必要があります。「建設業許可の取得・維持ガイド」で手続きの詳細を解説しています。

経審Y評点と財務会計の関係

経営事項審査(経審)の総合評定値P点は、完成工事高(X1)、技術力(Z)、社会性等(W)などの複数の評点から算出されます。このうち経営状況評点Yは、企業の財務内容を8つの指標で評価するもので、P点全体の20%を占めます。

Y評点を構成する8指標

Y評点は4つのカテゴリ・8つの財務指標から計算されます。

カテゴリ指標計算式の概要
負債抵抗力X1: 純支払利息比率(支払利息 - 受取利息配当金)/ 売上高
負債抵抗力X2: 負債回転期間(流動負債 + 固定負債)/ 売上高 × 12
収益性・効率性X3: 総資本売上総利益率売上総利益 / 総資本 × 100
収益性・効率性X4: 売上高経常利益率経常利益 / 売上高 × 100
財務健全性X5: 自己資本対固定資産比率自己資本 / 固定資産 × 100
財務健全性X6: 自己資本比率自己資本 / 総資本 × 100
絶対的力量X7: 営業キャッシュフロー経常利益 + 減価償却 - 法人税等 ± 運転資本増減
絶対的力量X8: 利益剰余金利益剰余金の額

Y評点の計算式は、A = -0.4650×X1 - 0.0508×X2 + 0.0264×X3 + 0.0277×X4 + 0.0011×X5 + 0.0089×X6 + 0.0818×X7 + 0.0172×X8 + 0.1906 で求めたAを用いて、Y = 167.3×A + 583(小数点以下四捨五入)で算出されます。

財務会計ソフトがY評点に影響するポイント

Y評点を直接「上げる」のは財務改善施策そのものですが、財務会計ソフトが果たす役割は2つあります。

1つ目は、正確な財務データの出力です。建設業財務諸表の勘定科目の分類を誤ると、Y評点の算出結果が本来の実力より低くなることがあります。たとえば「完成工事未収入金」に計上すべき債権を「売掛金」に計上したまま一般財務諸表から変換すると、経審の分析機関で修正を求められるケースがあります。建設業特化ソフトなら、仕訳の段階で建設業の勘定科目が適用されるため、こうした分類ミスを防げます。

2つ目は、経審シミュレーション機能です。建設大臣NXやガリバーなどの製品には、決算前に仮のデータを入力してY評点の変動をシミュレーションする機能が搭載されています。「借入金を期末までに返済するとX2がどれだけ改善するか」「減価償却をフル計上した場合のX7への影響」といった試算を事前に行うことで、期末の財務調整を戦略的に進められます。

経審のスコアアップ戦略について詳しくは「経審(経営事項審査)のスコアアップ戦略」で解説しています。

工事進行基準の仕組みと計算例

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工事進行基準は、工事の進捗度に応じて売上を段階的に計上する会計基準です。工期が長い大型工事の場合、完成するまで売上を計上しない「完成工事基準」では期間損益が大きく偏るため、進行基準を適用するケースが増えています。

新収益認識基準との関係

2021年4月に適用が開始された「収益認識に関する会計基準」(新収益認識基準)により、従来の工事進行基準・工事完成基準という名称は正式には廃止されました。新基準では「一定の期間にわたり充足される履行義務」に該当する場合、進捗度に応じた収益計上が求められます。

建設工事の多くは「一定の期間にわたり充足される履行義務」に該当するため、実務上は従来の工事進行基準と同様の処理を行うことになります。ただし、新基準では進捗度を合理的に見積もれない場合の処理として「原価回収基準」が新たに導入された点が異なります。

原価比例法による計算例

工事進捗度の算定方法として最も一般的なのが「原価比例法」です。実際の計算例を見てみましょう。

条件:

  • 工事契約金額: 1億円
  • 見積工事原価総額: 8,000万円
  • 工期: 2025年4月〜2027年3月(2年間)
2025年度2026年度合計
当期発生原価3,200万円4,800万円8,000万円
累計発生原価3,200万円8,000万円
工事進捗度40%(3,200万/8,000万)100%
当期計上売上4,000万円(1億×40%)6,000万円(1億-4,000万)1億円
当期計上原価3,200万円4,800万円8,000万円
当期利益800万円1,200万円2,000万円

完成工事基準を採用した場合、2025年度は売上・利益ともにゼロとなり、2026年度に1億円の売上と2,000万円の利益が一括計上されます。工事進行基準であれば、2年間にわたって利益が按分計上されるため、金融機関の融資審査や経審のY評点にもプラスに働きやすくなります。

見積原価が変動した場合の処理

建設工事では、資材価格の高騰や設計変更によって見積原価が変動するケースが日常的に発生します。見積原価が当初8,000万円から9,000万円に増加した場合、2年目の進捗度計算は修正後の総額をベースに再計算されます。

この再計算処理を手作業で行うと、進捗度の修正漏れや端数処理のミスが起こりやすくなります。建設業特化の財務会計ソフトであれば、見積原価の変更を入力するだけで進捗度と計上額が自動で再計算されます。勘定奉行クラウド建設業編やPCA建設業会計DXでは、工事登録画面で見積原価を変更すると、進行基準の売上額が自動修正される仕組みになっています。

建設業向け財務会計ソフト7選 — 比較一覧

サービス名料金主な機能補助金対応
建設大臣NX 要問合せ(買切り型)
  • 建設業財務諸表
  • 完成工事原価報告書
  • 工事台帳
  • 経審対応
  • 経審シミュレーション
対応
勘定奉行クラウド 建設業編 要問合せ
  • 建設業会計
  • 工事進行基準
  • 経審対応
  • 債権債務管理
  • クラウド型
対応
PCA建設業会計DX 要問合せ
  • 建設業財務諸表
  • 完成工事原価報告書
  • JV会計
  • 予算管理
  • クラウド/オンプレ対応
対応
MJSLINK DX 建設大将 要問合せ
  • 建設業会計
  • 原価管理
  • 経審対応
  • 電子帳簿保存
  • 会計事務所連携
対応
DAIC2クラウド 要問合せ
  • 建設業特化クラウド
  • 工事台帳
  • 原価管理
  • 経審対応
  • TKC会計事務所連携
対応
ガリバー 財務会計 要問合せ
  • 建設業ERP
  • 財務会計
  • 原価管理
  • 経審対応
  • JV会計
対応
SMILE V 建設業 財務 要問合せ
  • 建設業ERP
  • 財務会計
  • 原価連携
  • 経審対応
  • 資金繰り管理
対応

※最新の料金・登録状況は各公式サイトでご確認ください

各製品の詳細レビュー

建設大臣NX — 建設業財務会計の定番

応研株式会社が長年にわたり開発・提供している建設業特化の財務会計ソフトです。建設業法様式の財務諸表を標準出力でき、建設業の勘定科目があらかじめ設定された状態で導入できるため、初期設定の手間が少ないのが特徴です。

買切り型のライセンス体系を採用しており、月額費用は発生しません(年間保守費用は別途必要)。5年以上使い続ける場合は、クラウド型の月額課金よりもトータルコストが安くなるケースが多くなります。

経審シミュレーション機能が充実している点も見逃せません。決算前の段階で仮データを入力し、Y評点の変動を予測できます。公共工事の入札を重視する建設会社にとって、期末の財務調整を計画的に行うための実用的な機能です。

操作画面はデスクトップアプリケーション型で、Excelに近い操作感のため、従来型のソフトに慣れた経理担当者であれば学習コストが低いでしょう。一方で、外出先からブラウザでアクセスしたいというニーズには対応していないため、リモートワークを重視する場合はクラウド型の製品を検討した方がよいかもしれません。

導入実績は建設業界で豊富で、税理士や会計事務所でも広く使われています。顧問税理士が建設大臣NXに対応している場合は、月次データの連携がスムーズに進みます。

向いている会社: 公共工事の比率が高い中規模建設会社(20〜100名)。オンプレミス型を好み、長期利用を前提とする場合にコスト面で有利。

勘定奉行クラウド 建設業編 — クラウド型で法改正対応もタイムリー

オービックビジネスコンサルタント(OBC)が提供する勘定奉行シリーズの建設業向けエディションです。クラウド型のため、ブラウザからどこでもアクセスでき、法改正への対応も自動アップデートでタイムリーに反映されます。

工事進行基準(新収益認識基準の「一定期間にわたり充足される履行義務」)への対応が標準搭載されており、完成振替で工事完成基準・工事進行基準の両方に対応した仕訳を一括作成できます。大型工事を手がける建設会社にとって、期末の進行基準処理にかかる工数を大幅に削減可能です。

工事別の債権債務管理機能も充実しています。工事ごとに「いつ・いくら入金されるか」「いつ・いくら支払うか」を管理できるため、資金繰り計画の精度が上がります。建設業では工事の入金サイクルが長いため、債権債務管理は資金ショートを防ぐうえで重要な機能です。

他の奉行シリーズ(給与奉行・固定資産奉行など)との連携も容易で、バックオフィス全体をOBC製品で統一する選択肢もあります。ただし、製品を追加するたびに月額費用が積み上がるため、導入範囲を決めてからコスト試算を行ってください。

向いている会社: 工事進行基準の適用が必要な中規模建設会社。クラウド型を希望し、法改正への自動対応を重視する場合。

PCA建設業会計DX — JV会計と予算管理に強み

ピー・シー・エー株式会社(PCA)が提供する建設業向け財務会計ソフトです。JV(共同企業体)会計への対応が他製品と比較して充実しており、共同施工方式・分担施工方式の両方に対応しています。

JV工事では、幹事会社と構成会社で会計処理が異なり、出資比率に応じた按分計算が発生します。手作業での按分計算は間違いが起こりやすい領域ですが、PCA建設業会計DXではJV工事の登録時に出資比率を設定すれば、仕訳の按分が自動で行われます。

工事予算管理機能も搭載されており、実行予算に対する消化率をリアルタイムで確認できます。予算超過が見込まれる工事にアラートを出す機能があるため、赤字工事の早期発見と対策に役立ちます。

クラウド型(PCAクラウド)とオンプレミス型の両方を選択でき、導入環境に応じた柔軟な構成が可能です。PCAクラウドであればサブスクリプション型で初期費用を抑えられるため、中小建設会社でも導入しやすいでしょう。

向いている会社: JV工事の比率が高い建設会社。工事予算管理を厳格に行い、赤字工事の発生を抑えたい場合。

会計事務所向けシステムで高いシェアを持つミロク情報サービス(MJS)が提供する建設業向けソフトです。会計事務所との月次データ共有がスムーズに行える点が最大の特徴です。

顧問税理士がMJS系のシステムを使っている場合、月次の記帳チェックや決算業務のデータ連携がほぼ自動化されます。建設業に詳しい税理士を抱えるMJSパートナー会計事務所のネットワークは全国に広がっており、「建設業の税務に強い税理士を探している」という建設会社にとっては、ソフト選定と税理士選定を同時に解決できる選択肢です。

電子帳簿保存法への対応も標準搭載されており、証憑のスキャン保存や検索要件への対応も追加コストなしで利用できます。建設業の現場ではFAXや紙の請求書がまだ残っているケースがあり、スキャナ保存機能の使いやすさは実務上重要なポイントです。

向いている会社: 税理士事務所がMJS系のシステムを使っている場合。月次決算のスピードを重視し、税理士との連携を強化したい場合。

DAIC2クラウド — TKCの建設業特化クラウドシステム

TKCが提供する建設業に特化したクラウド型の会計システムです。TKCは全国約1万1,000の会計事務所とネットワークを形成しており、その基盤の上で建設業の財務会計を支援します。

現場別工事台帳の作成機能があり、工事ごとの実行予算と実績原価を対比しながら管理できます。工事の進捗に合わせてリアルタイムで業績を把握できるため、「月次の帳簿を締めてから初めて工事の損益がわかる」という状況を解消できます。

TKC会計事務所との連携が前提のシステム設計になっているため、TKC以外の会計事務所と利用する場合は導入が難しい点に注意が必要です。逆に、顧問税理士がTKC会員であれば、月次巡回監査と組み合わせた財務管理体制を構築できます。

向いている会社: 顧問税理士がTKC会員の建設会社。月次巡回監査を受けており、リアルタイムの業績把握を重視する場合。

ガリバー 財務会計 — 建設業ERPの財務モジュール

建設業向けERPシステム「ガリバー」シリーズの財務会計モジュールです。原価管理・工事台帳・勤怠・給与とシームレスに連携するため、データの二重入力が不要になります。

JV会計にも対応しており、幹事会社・構成会社それぞれの会計処理を出資比率に応じて自動配賦できます。経審対応の帳票出力や経審シミュレーション機能も搭載しています。

年商10億円以上の中堅建設会社がメインターゲットで、バックオフィスの全工程をERP化したい企業に適したシステムです。導入にはベンダーによる要件定義とカスタマイズが必要になるケースが多く、導入費用は数百万円〜、導入期間は3〜6か月程度を見込む必要があります。

ERP型は初期投資が大きい反面、導入後は部門間のデータ連携が自動化されるため、経理担当者の工数削減効果は高くなります。国土交通省の「建設業活動実態調査」によると、年間完成工事高5億円以上の建設会社のERP導入率は約15%程度であり、今後の伸びしろが大きい領域です。

向いている会社: 年商10億円以上で、会計・原価・勤怠・給与を一体管理したい中堅建設会社。IT担当者がいる、またはベンダーの導入支援を受けられる体制がある場合。

SMILE V 建設業 財務 — 大塚商会のサポート体制が強み

大塚商会が提供する建設業向けERPの財務会計モジュールです。資金繰り管理機能が充実しており、工事別のキャッシュフロー予測を立てられる点が特徴です。

建設業は工事代金の回収サイトが長い業種です。着工から入金までに数か月かかることも珍しくなく、資金繰りの見える化は経営の安定に直結します。SMILE Vでは、工事ごとの入金予定と支払予定を一覧管理でき、月次の資金過不足を事前に把握できます。

大塚商会の導入支援サービスが受けられるのも大きなメリットです。全国に営業拠点があるため、IT担当者がいない建設会社でも対面でのサポートを受けながら導入を進められます。原価管理モジュールとの連携で、工事別の損益をリアルタイムに確認することも可能です。

向いている会社: 資金繰り管理を強化したい中堅建設会社。IT担当者がおらず、ベンダーの手厚いサポートを必要とする場合。

工事原価管理と財務会計の連携ポイント

建設業の財務会計で最も重要な実務課題が「工事原価管理システムとの連携」です。工事ごとの原価を工事台帳で管理しつつ、その集計結果を財務会計に自動連携できるかどうかが、月次締め作業の工数を左右します。

データ連携の3パターン

連携パターン仕組み月次作業の工数リスク
ERP型(一体管理)原価管理と財務会計が同一DB最小(二重入力なし)初期費用が高い
CSV連携型原価管理→CSVエクスポート→会計取り込み中程度(週1〜2回の連携作業)集計タイミングのズレ
手動入力型Excelで集計→会計に転記最大(毎月5〜15時間)転記ミスリスク大

中小建設会社の経理担当者へのヒアリングでは、工事台帳からの手動転記に月あたり8〜12時間かかっているケースが多く見られます。財務会計ソフトを選ぶ際は、現在使っている原価管理ソフト(または将来導入予定のシステム)との連携方式を最初に確認することが重要です。

各製品の連携対応状況

製品原価管理連携連携方式主な連携先
建設大臣NXあり同社製品間連動 / CSV建設大臣(原価管理)
勘定奉行クラウド 建設業編ありAPI / CSV工事奉行クラウド
PCA建設業会計DXあり同社製品間連動 / CSVPCA建設業原価管理
MJSLINK DX 建設大将ありAPI / CSVMJSLINK DX 建設工事原価
DAIC2クラウドあり(TKC体制内)リアルタイム連携TKC工事管理システム
ガリバー 財務会計あり(ERP一体型)同一DB(二重入力なし)ガリバーシリーズ全体
SMILE V 建設業 財務あり同社製品間連動 / CSVSMILE V 建設業 工事

ERP型のガリバーやSMILE Vは、財務会計と原価管理が同一データベース上で動作するため、工事台帳への入力が即座に財務会計に反映されます。CSV連携型では連携のタイミングや担当者の対応次第でデータのズレが生じることがあるため、月次締めのスケジュールと連携タイミングを明確に決めておく必要があります。

電子帳簿保存法・インボイス制度の対応状況

2024年1月から電子帳簿保存法の電子取引データ保存が完全義務化されました。同年10月からは適格請求書等保存方式(インボイス制度)が本格運用されており、建設業の財務会計ソフトにはこれら2つの法制度への対応が求められています。

電子帳簿保存法の対応チェックポイント

建設業ならではの電子帳簿保存対応の難しさは、「紙で受け取る書類が多い」点にあります。下請業者への外注費の請求書、材料費の仕入れ請求書などが今もFAXや郵送で届くケースがあり、これらのスキャナ保存への対応が課題となっています。

対応要件内容各製品の対応状況
電子取引データ保存メール等で受け取った請求書を電子データで保存本記事の7製品すべて対応済み
スキャナ保存紙で受け取った書類をスキャンして電子保存MJSLINK DX・勘定奉行が充実
検索要件への対応「日付・金額・取引先」で検索できる体制7製品すべて対応(設定方法は製品差あり)
タイムスタンプスキャン後のタイムスタンプ付与各製品の設定で対応可

特にスキャナ保存機能の充実度は製品によって差があります。紙の請求書が多い建設会社では、スキャナとの連携設定のしやすさ、スキャン後の書類仕分けの自動化機能を重視して選ぶとよいでしょう。

インボイス制度対応の実務ポイント

2023年10月以降、適格請求書発行事業者でない協力会社(一人親方・個人事業主など)からの請求書は、仕入税額控除を満額受けられなくなりました。建設業では外注費比率が高いため、この影響は軽視できません。

財務会計ソフトに求められる対応としては、以下の3点があります。

  • 適格請求書発行事業者番号の登録管理(取引先マスタでの管理)
  • 免税事業者からの請求書の税額計算(2023〜2026年は経過措置として80%控除可)
  • 経過措置期間終了後(2029年10月以降)の50%控除処理

本記事で紹介した7製品はいずれも2023年10月時点でインボイス制度に対応したアップデートを提供しています。クラウド型は自動アップデートで法改正に対応するため、オンプレミス型に比べて対応の遅れが生じにくい点はメリットです。

税理士・会計事務所との連携実績

建設業の財務会計ソフト選びで見落とされやすいポイントが「顧問税理士との連携」です。財務会計ソフトを変更する際、顧問税理士が使い慣れていないソフトを選ぶと、月次の記帳チェックや決算業務の効率が下がる場合があります。

税理士事務所との連携対応数

製品連携会計事務所数主な連携ネットワーク連携方式
MJSLINK DX 建設大将約12,000事務所(MJSパートナー)MJSパートナー会計事務所データ直接連携 / クラウド共有
DAIC2クラウド約11,000事務所(TKC会員)TKC全国会リアルタイムクラウド連携
勘定奉行クラウド 建設業編約10,000事務所(OBCパートナー)OBCパートナー会計事務所API連携 / CSV
建設大臣NX全国対応(応研サポート)税理士事務所全般CSV / データファイル
PCA建設業会計DX約8,000事務所(PCAパートナー)PCAパートナー会計事務所API / CSV
ガリバー 財務会計全国対応(個別対応)建設業特化の会計事務所CSV / 個別設定
SMILE V 建設業 財務全国対応(大塚商会経由)大塚商会サポートネットワークCSV / API

MJSとTKCの2社は全国に1万事務所以上の連携ネットワークを持っており、顧問税理士がいずれかのシステムを使っている場合、月次データの連携をほぼ自動化できます。「顧問税理士が対応できるソフトか」は、導入前の確認必須事項と考えておくべきです。

税理士連携で変わる月次決算のスピード

顧問税理士とのデータ連携が整備された環境では、月次の記帳チェックから試算表の確認まで、通常2〜3日かかっていた作業が翌日対応できるようになるケースがあります。建設会社側が毎月5〜8営業日以内に月次帳簿を締められる体制が、連携の前提条件となります。

規模別の導入判断フローチャート

自社に合った製品を選ぶために、企業規模・業務要件ごとの判断基準を整理します。

判断基準条件おすすめ製品
従業員数5名以下で公共工事なし建設業財務諸表の提出は決算変更届のみ一般会計ソフト(freee/マネーフォワード等)+ 税理士が建設業財務諸表に変換
従業員数5〜20名で公共工事あり経審Y評点の正確な算出が必要建設大臣NX / PCA建設業会計DX / DAIC2クラウド
従業員数20〜50名で工事進行基準の適用あり進行基準の自動計算と債権債務管理が必要勘定奉行クラウド建設業編 / PCA建設業会計DX
JV工事の比率が高いJV会計の自動按分が必要PCA建設業会計DX / ガリバー
従業員数50名以上会計・原価・勤怠・給与の一体管理ガリバー / SMILE V
顧問税理士がMJS系を使用データ連携の効率を優先MJSLINK DX 建設大将
顧問税理士がTKC会員TKCの月次巡回監査体制を活用DAIC2クラウド
小規模事業者の現実的な選択肢

従業員5名以下の建設会社であれば、freeeやマネーフォワードなどの一般会計ソフトで日常の経理処理を行い、決算変更届の建設業財務諸表は税理士に変換を依頼する運用が現実的です。建設業特化ソフトの導入コストと運用工数を考えると、年間の工事件数が少ない小規模事業者にはオーバースペックになりかねません。一般会計ソフトの比較は「建設業向け会計ソフト比較」をご覧ください。

導入費用の相場と比較

建設業向け財務会計ソフトの費用は、提供形態によって大きく異なります。

提供形態初期費用の目安月額費用の目安5年間のトータルコスト目安
クラウド型(勘定奉行クラウド等)0〜30万円1万〜5万円60万〜330万円
オンプレミス型(建設大臣NX等)50〜150万円0円(保守費: 年5〜15万円)75〜225万円
ERP型(ガリバー/SMILE V等)200〜500万円0〜10万円200万〜1,100万円

クラウド型は初期費用が低い代わりに月額費用が積み上がります。5年以上の長期利用を前提とする場合、オンプレミス型の方がトータルコストでは有利になるケースもあります。一方、クラウド型は法改正対応の自動アップデートや、サーバー管理の不要さといったメリットがあるため、IT担当者が不在の建設会社ではクラウド型の方が運用負担は軽くなります。

ERP型は初期投資が大きいものの、会計・原価・勤怠・給与のデータ連携による工数削減効果を加味すると、年商10億円以上の企業では2〜3年で投資回収できる試算も珍しくありません。

デジタル化・AI導入補助金の活用

財務会計ソフトの導入は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の対象です。2026年度は通常枠・インボイス枠・セキュリティ対策推進枠など複数の枠が用意されており、対象ツールとして登録されたソフトウェアの導入費用の一部が補助されます。

補助率・補助額は年度や枠によって異なるため、最新情報はデジタル化・AI導入補助金 公式サイトで確認してください。

補助金を最大限に活用するコツ

財務会計ソフト単体で申請するよりも、原価管理ソフトや勤怠管理ソフトとセットで申請する方が補助額を大きくできるケースがあります。バックオフィス全体のデジタル化を計画的に進めると、1回の申請でまとまった補助を受けられる可能性が高まります。「建設業のIT導入補助金活用ガイド」で申請手順を詳しく解説しています。

導入前に確認すべきチェックポイント

財務会計ソフトの選定で見落としやすいポイントを整理します。

税理士・会計事務所との相性

建設業の財務会計ソフト選びで最も重要な判断基準の一つが、顧問税理士との相性です。税理士が使い慣れていないソフトに移行すると、月次チェックや決算業務の効率が落ちる可能性があります。

導入前に必ず顧問税理士に相談し、対応可能なソフトかどうかを確認してください。MJS系の税理士であればMJSLINK DX建設大将、TKC会員であればDAIC2クラウドなど、税理士事務所のシステムと連携できる製品を選ぶと月次業務のスピードが格段に上がります。

既存データの移行

既にExcelや別の会計ソフトで経理処理を行っている場合、過去の仕訳データや工事台帳の移行は最も手間がかかる作業です。移行のベストタイミングは会計年度の期首です。準備期間を含めると、移行の3〜6か月前から計画を始めるのが理想的です。

建設業特有の勘定科目(未成工事支出金、完成工事未収入金など)のマッピングには特に注意が必要です。一般会計ソフトの勘定科目から建設業の勘定科目への変換表を事前に作成し、漏れがないか税理士と一緒に確認してください。

原価管理ソフトとの連携

財務会計ソフトと原価管理ソフトが別製品の場合、データ連携の方法を確認しておく必要があります。APIやCSVエクスポートで連携できるか、手動転記が必要になるかによって、月次の締め作業の工数が大きく変わります。

ERP型であれば財務会計と原価管理がワンパッケージのため連携の心配は不要ですが、個別ソフトの組み合わせで運用する場合は、導入前に連携テストを実施することをおすすめします。原価管理ソフトの選び方は「建設業向け原価管理ソフト比較」で解説しています。

電子帳簿保存法への対応

2024年1月から電子帳簿保存法の電子取引データ保存が義務化されています。メールで受け取った請求書PDFは電子データのまま保存する必要があり、本記事で紹介した7製品はいずれも対応済みです。

建設業では現場の職人がFAXや紙で請求書を送ってくるケースがまだ残っています。紙で受け取った書類をスキャンして電子保存する「スキャナ保存」機能が充実しているかどうかも、建設業ならではの確認ポイントです。

参考情報

よくある質問

建設業の財務会計ソフトと一般の会計ソフトは何が違いますか?
建設業向け財務会計ソフトは、建設業法様式の財務諸表出力、完成工事原価報告書の自動作成、経営事項審査(経審)対応、工事進行基準の自動計算機能を搭載しています。一般の会計ソフト(freee・マネーフォワード等)にはこれらの機能がなく、建設業特有の勘定科目(完成工事高・未成工事支出金等)にも対応していません。
小規模の建設会社でも建設業向け財務会計ソフトが必要ですか?
従業員5名以下で公共工事を受注しない場合は、一般のクラウド会計ソフトで日常経理を行い、決算変更届の建設業財務諸表は税理士に変換を依頼する運用でも対応可能です。ただし、公共工事を受注する場合は経審対応が必須のため、建設業特化ソフトの導入を検討してください。
経営事項審査(経審)のY評点と財務会計ソフトの関係は?
Y評点は財務諸表の8指標から算出されます。建設業特化の財務会計ソフトを使えば、建設業の勘定科目が正しく分類されるため、勘定科目の分類ミスによるY評点の低下を防げます。建設大臣NXやガリバーには経審シミュレーション機能もあり、期末の財務調整を計画的に進められます。
工事進行基準に対応した財務会計ソフトはどれですか?
本記事で紹介した7製品のうち、勘定奉行クラウド建設業編とPCA建設業会計DXは工事進行基準(新収益認識基準)への対応が充実しています。見積原価の変更時に進捗度と計上額を自動再計算する機能を備えており、期末の処理工数を削減できます。
クラウド型とオンプレミス型のどちらが良いですか?
法改正への自動対応やリモートアクセスを重視するならクラウド型(勘定奉行クラウド等)、長期利用でのコスト削減やカスタマイズ性を重視するならオンプレミス型(建設大臣NX等)が適しています。5年以上の利用を前提とする場合、オンプレミス型の方がトータルコストでは有利になるケースもあります。
財務会計ソフトの導入費用はどのくらいですか?
クラウド型で月額1万〜5万円程度(初期費用0〜30万円)、オンプレミス型(買切り)で50〜150万円程度(月額費用なし、保守費年5〜15万円)、ERP型で200〜500万円以上が目安です。デジタル化・AI導入補助金を活用すれば導入費用の一部が補助されます。
JV(共同企業体)の会計処理に対応したソフトはありますか?
PCA建設業会計DXとガリバーがJV会計に充実した対応をしています。共同施工方式・分担施工方式の両方に対応し、出資比率に応じた按分計算を自動で行えます。JV工事の比率が高い建設会社ではこの2製品が有力候補です。
既存の会計ソフトから建設業特化ソフトへの移行で注意すべきことは?
移行は会計年度の期首に合わせるのが理想で、3〜6か月前から準備を始めてください。建設業特有の勘定科目(未成工事支出金、完成工事未収入金等)のマッピングに注意が必要です。顧問税理士に事前相談し、新ソフトに対応可能か確認することも重要です。

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