この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

2025年12月12日に完全施行された改正建設業法。「結局うちの会社は何をすればいいのか」と感じている中小建設会社の経営者に向けて、わかりやすく解説します。

今回の改正は、令和6年6月14日に公布された「建設業法及び公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部を改正する法律」(令和6年法律第49号)に基づくもの。2024年9月、12月、2025年12月の3段階で施行され、労務費の適正化から契約ルール、ICT活用まで幅広い分野に影響が及びます。

この記事では改正建設業法の3本柱を整理したうえで、中小建設会社が取り組むべき実務対応を5つのステップで解説します。

改正建設業法とは — 2025年12月完全施行の全体像

なぜ今、建設業法が改正されたのか

建設業界は「担い手不足」「高齢化」「賃金水準の低さ」という三重の構造課題を抱えています。国土交通省「建設業の現状」によれば、建設業就業者の約35%が55歳以上で、29歳以下は約12%にとどまります。この年齢構成が示すのは、今後10年で大量の熟練技術者が退職し、それを補う若手が圧倒的に足りないという現実です。

賃金面でも建設業は全産業平均を下回る状況が長く続いてきました。厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(令和5年)によると、建設業の生産労働者の年間賃金総額は製造業の同職種と比較して低い傾向にあります。賃金が低ければ若手は集まらず、人手不足はさらに深刻化する。この悪循環を制度面から断ち切ろうというのが、今回の法改正の根本的な動機です。

もう一つの背景が、2022年以降の資材価格高騰。鉄鋼・木材・セメントなどの主要建設資材が軒並み値上がりし、下請け事業者の利益を圧迫しました。元請けとの価格交渉が十分に機能せず、労務費を削って帳尻を合わせる――そんな構造的な問題が浮き彫りになったのです。

今回の改正は、2014年の品確法改正(第一次担い手3法)、2019年の建設業法改正(第二次担い手3法)に続く「第三次担い手3法」と位置づけられています。

第一次では「ダンピング対策と担い手確保の基本理念」を定め、第二次では「建設業許可基準の見直しや社会保険加入の徹底」を進めました。今回の第三次は、これらの基盤の上に「賃金水準の底上げ」「資材高騰への対応メカニズム」「ICT活用による生産性向上」という具体的な実効措置を加えるもの。理念から制度へ、制度から運用へと段階的に踏み込んできた流れの集大成です。

改正の3本柱

改正内容は大きく3つの柱に分けられます。

テーマ狙い
柱①労働者の処遇改善標準労務費の導入、ダンピング受注の防止
柱②資材高騰への対応おそれ情報の通知、スライド条項の実効化
柱③働き方改革・生産性向上工期ダンピング禁止、ICT活用による技術者配置の合理化

3段階の施行スケジュール

改正は一度にすべてが施行されるわけではなく、内容に応じて3段階で進みます。

施行日主な改正内容
2024年9月1日中央建設業審議会による「労務費の基準」作成・勧告制度の創設。建設業者の処遇確保状況を国が調査・公表する権限の新設
2024年12月13日建設業者に対する処遇確保の努力義務化。資材高騰対策(おそれ情報通知・変更協議制度)。ICT活用による監理技術者等の専任義務の合理化
2025年12月12日著しく低い労務費での見積り依頼・提出の禁止。受注者による原価割れ契約の禁止。受注者による著しく短い工期での契約締結の禁止。見積書記載事項の明確化。発注者への勧告・公表権限の新設(完全施行)
すでに施行済みの規定がある

2024年9月・12月施行の項目はすでに運用が始まっています。「2025年12月まで猶予がある」という認識は誤りです。自社の見積書・契約書が新ルールに対応しているか、早急に確認してください。

柱① 労働者の処遇改善 — 標準労務費と原価割れ禁止

改正の1本目の柱は、建設業で働く労働者の賃金水準を適正化するための制度整備です。「賃金を上げなければ人が来ない」という業界の声を受けて、法律で賃金の下支えを図る仕組みが導入されました。

標準労務費の勧告制度とは

2024年9月1日から、中央建設業審議会が「労務費の基準」(標準労務費)を作成し、建設業者に対して勧告できる仕組みが導入されました。これにより、工事の種類ごとに「適正な労務費の目安」が明示されます。

これまで労務費の金額は市場競争のなかで決まり、実態としてはダンピングの温床となるケースがありました。「他社より安くしなければ仕事が取れない」というプレッシャーが労務費の切り下げにつながり、結果として現場労働者の賃金が抑えられるという構造です。

標準労務費が勧告されることで、元請け・下請け間の交渉に客観的な基準が生まれます。下請け事業者が「この金額では標準労務費を確保できません」と根拠を持って交渉できるようになる点が、従来との大きな違いです。

なお、この「労務費の基準」は公共工事設計労務単価とは別の指標です。公共工事設計労務単価は公共工事の予定価格算出に使われるものですが、標準労務費は民間工事を含むすべての建設工事を対象とした基準となります。

著しく低い労務費での見積り依頼・提出の禁止

2025年12月12日施行の規定では、以下の2つの行為が禁止されます。

  • 注文者(発注者・元請け)が、標準労務費の基準を著しく下回る労務費を前提とした見積り依頼を行うこと
  • 受注者(下請け)が、そうした著しく低い労務費を前提とした見積りを提出すること

従来は発注者側の「不当に低い請負代金の禁止」のみが規定されていましたが、改正後は受注者側にも規律が及ぶ双方向の規制に変わりました。発注者が「安くしてくれ」と要求するだけでなく、受注者が「安くしますから仕事をください」と自ら値下げする行為も規制対象になります。

この「双方向」の規制は、従来の建設業法にはなかった発想です。業界全体の賃金底上げを目指すうえで、受注者側の自発的なダンピングも問題視したという点が注目に値します。

受注者による原価割れ契約の禁止

受注者自らが、正当な理由なく必要な原価を下回る金額で請負契約を締結することも禁止されます。いわゆる「仕事を取るためのダンピング受注」に歯止めをかける規定です。

「正当な理由」としては、例えば災害復旧等の緊急性がある場合や、技術開発の実証目的で行う場合などが想定されています。通常の商業的な競争の範囲で行うダンピング(「他社より安くして受注する」だけの動機)は正当な理由には該当しません。

この規定によって、「安く受けて、下請けにしわ寄せする」「労務費を削って帳尻を合わせる」という業界の悪循環を断ち切ることが意図されています。

勧告・公表の対象金額

国土交通大臣等による勧告・公表の対象となるのは、施工に通常必要と認められる費用が500万円以上(建築一式工事の場合は1,500万円以上)の請負契約です。この金額基準は建設業法施行令(令和7年改正政令)で定められています。

柱② 資材高騰への対応 — おそれ情報と変更協議

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2本目の柱は、資材価格の変動リスクを元請け・下請け間で適切に分担する仕組みの整備です。2024年12月13日からすでに施行されています。

背景にあるのは、契約締結後に資材価格が上がっても、下請けが価格改定を言い出せない(あるいは言い出しても応じてもらえない)という業界の実態。改正法は、この交渉の不均衡を是正するための具体的な仕組みを用意しました。

リスク情報(おそれ情報)の通知義務

受注者は、契約後に資材価格が高騰する「おそれ」がある場合、客観的な根拠を添えて注文者にその情報を通知できるようになりました。国土交通省はこれを「おそれ情報」と呼んでいます。

通知の要件は「客観的な事実に基づくこと」。例えば以下のようなデータを根拠として提示することが想定されています。

  • 鋼材・木材などの市場価格推移データ
  • 業界団体が発行する価格動向レポート
  • 為替レートの変動に基づく輸入資材の価格見通し
  • 国土交通省が公表する「主要建設資材需給・価格動向調査」の結果

「感覚的に高くなりそうだ」という主観ではなく、数値に基づく根拠を示す必要がある点がポイントです。逆に言えば、根拠さえあれば契約後であっても価格改定の交渉テーブルに着ける制度が法律で保障されたことになります。

請負代金の変更方法を契約書に明記

改正前は、請負代金の変更方法が契約書に記載されていないケースが多く、資材価格が上がっても「どう交渉すればいいかわからない」「そもそも変更の手続きが決まっていない」という事業者の声がありました。

改正後は、請負代金の変更方法が契約書の法定記載事項に追加されました。つまり、契約時点で「資材価格が変動した場合にどのように代金を見直すか」を書面で合意しておく必要があります。

具体的には、以下のような内容を契約書に盛り込むことが求められます。

  • 価格変動の参照指標(建設物価調査のどの品目を使うか等)
  • 変動幅のしきい値(何%以上変動したら協議を開始するか)
  • 協議開始から合意までのプロセスと期限
  • 合意に至らない場合の対応(第三者調停等)

資材高騰時の変更協議ルール

実際に資材価格が高騰した場合、受注者は注文者に対して請負代金の変更協議を申し出ることができます。注文者はこの協議に誠実に応じる努力義務(一定の場合は義務)を負います。

この規定は、いわゆる「スライド条項」の実効性を高めるもの。従来のスライド条項は「規定はあるが使えない」状態が長く続いていました。条項はあっても発注者が協議に応じなかったり、「契約時の金額でやってくれ」と一方的に拒否されたりするケースが少なくなかったのです。法律でバックアップされたことで下請け事業者の交渉力が向上することが期待されています。

建設業の働き方改革と合わせて、労働環境の改善を進める制度的な枠組みが強化された形です。

柱③ 働き方改革と生産性向上 — 工期ダンピング禁止とICT活用

3本目の柱は、長時間労働の是正と現場の生産性向上を両立させるための規定です。2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制(いわゆる「2024年問題」)を踏まえ、制度面からその実効性を担保する狙いがあります。

著しく短い工期による契約締結の禁止

2025年12月12日施行の規定で、受注者が著しく短い工期で契約を締結することが禁止されます。

従来は注文者(発注者)に対する「著しく短い工期の禁止」のみが規定されていましたが、改正により受注者側にも規律が拡大しました。「無理な工期を承知で受注し、現場に長時間労働を強いる」という構造を法的に排除する狙いです。

「著しく短い工期」の具体的な判断基準は、施工内容・規模・時期(梅雨・冬季等)・地域特性を総合的に考慮して判断されます。国土交通省は「工期に関する基準」を策定しており、これが実務上の目安となります。

2024年4月から建設業にも適用された時間外労働の上限規制との関係でいえば、残業規制を守りながら無理な工期の工事を完成させることは現実的に不可能です。工期ダンピング禁止と残業規制は表裏一体の関係にあり、双方を遵守するためには工期設定そのものを見直す必要があります。

ICT活用による技術者配置の合理化

2024年12月13日から施行された規定では、ICT(情報通信技術)を活用することを条件に、監理技術者や主任技術者の「専任」義務が緩和されます。

従来の制度では、請負代金が一定額以上の工事には監理技術者等を「専任」で配置する義務がありました。「専任」とは、その現場にのみ従事することを意味し、1人の技術者は1つの現場しか担当できません。技術者の絶対数が限られる中小建設会社にとって、この専任義務は受注件数の上限を事実上決定づけるボトルネックでした。

改正後は、以下の要件を満たすことで技術者が複数の現場を兼務できるようになります。

  • 遠隔臨場(ウェアラブルカメラ等による映像のリアルタイム共有)の環境が整備されていること
  • 現場の施工状況を常時確認できる通信機器が設置されていること
  • 技術者を補佐する者(施工管理の補助を行う者)が配置されていること
  • 国土交通省が定めるガイドラインの要件を満たしていること

この規制緩和は中小建設会社にとって大きなメリットです。例えば、従来は3現場を同時に動かすために3人の監理技術者が必要だったケースで、ICT活用により2人で対応できる可能性が生まれます。技術者の人数をそのままに受注能力を高められるため、売上拡大にも直結します。

施工体制台帳の提出義務の緩和

公共工事の元請け事業者に課されていた施工体制台帳の発注者への提出義務も合理化されました。ICTを活用した情報共有が行われている場合、書面での提出に代えて電子的な方法での対応が認められるようになっています。

施工体制台帳は下請け構造の透明化を目的とした書類ですが、紙ベースでの作成・提出は現場の事務負担となっていました。電子化が認められたことで、施工管理アプリやクラウドサービスを活用した効率的な運用が可能になります。

効率的な現場管理の努力義務

改正法では、建設業者に対して「効率的な施工の確保」に努めるよう求める規定も新設されました。国土交通省がICT活用に関する指針を作成し、建設業者はこの指針に沿った現場管理を行う努力義務を負います。

この努力義務は罰則を伴うものではありませんが、国が「建設業のDX推進」を法律で後押しするという強いメッセージを含んでいます。

違反した場合はどうなる? 罰則と監督処分

勧告・公表の対象と金額基準

改正建設業法に違反した場合、国土交通大臣または都道府県知事から「勧告」が行われ、従わない場合は事業者名が「公表」されます。

勧告・公表の対象となるのは、施工に通常必要と認められる費用が500万円以上(建築一式工事は1,500万円以上)の請負契約。この金額基準は建設業法施行令で定められています。

対象となる行為を整理すると、以下の4つに分類されます。

違反行為対象者施行日
標準労務費の基準を著しく下回る見積りの依頼・提出注文者・受注者の双方2025年12月12日
正当な理由のない原価割れ契約の締結受注者2025年12月12日
著しく短い工期での契約締結受注者2025年12月12日
資材高騰時の変更協議に誠実に応じないこと注文者2024年12月13日

勧告から公表までのプロセス

違反が疑われる場合、まず国土交通大臣等から「報告徴収・立入検査」が行われます。調査の結果、違反が認定されると「勧告」が発出されます。勧告に従わない場合は事業者名が公表され、さらに悪質な場合は営業停止処分等の監督処分に至る可能性があります。

勧告・公表の情報は国土交通省のウェブサイトで公開されるため、取引先や金融機関の目に触れることになります。「法律違反ではないが、勧告を受けた」というだけでも、信用面のダメージは小さくありません。

想定される違反ケース — 中小建設会社が陥りやすいパターン

改正法施行後に問題となりやすいケースを具体的に整理します。

ケース1: 元請けから「以前と同じ金額で」と見積り依頼を受け、標準労務費の基準を大幅に下回る金額で見積りを提出してしまう。従来はこれが「受注するための営業努力」とされてきましたが、改正後は見積り依頼側・提出側の双方が違反となります。

ケース2: 競合他社に勝つために、労務費を極端に削った金額で入札し、落札後に下請けに「この金額でやってくれ」と依頼する。受注者の原価割れ契約禁止に該当するだけでなく、下請けへの見積り依頼自体も違反になる可能性があります。

ケース3: 発注者から「来月末までに完成させてほしい」と無理な工期を提示され、「やります」と受注する。発注者側の工期ダンピングだけでなく、受注者側も「著しく短い工期での契約締結」として違反対象になります。

ケース4: 資材価格が上昇し下請けから変更協議を申し入れられたにもかかわらず、「契約金額は変えられない」と一方的に拒否する。変更協議への対応義務に違反するケースです。

いずれも中小建設会社が日常的に直面するシーンです。「今までと同じやり方」が法律違反になりうる点を認識することが第一歩です。

建設業許可・経審への影響

改正法の違反が直接的に建設業許可の取消しに至るわけではありませんが、以下のような間接的な影響が懸念されます。

  • 経営事項審査(経審)のW評点(社会性)で減点される可能性
  • 公共工事の入札参加資格審査での評価低下
  • 元請けからの下請け選定における不利(コンプライアンスチェック)
  • 金融機関の融資審査における信用評価の低下

公共工事を受注する事業者にとっては、コンプライアンス上のリスクが格段に大きくなります。民間工事のみの事業者であっても、ゼネコンや大手元請けのサプライチェーン管理が厳格化する流れの中で、法令遵守は取引継続の前提条件となりつつあります。

中小建設会社がやるべき実務対応5ステップ

法改正の内容を理解したうえで、中小建設会社が具体的に取り組むべき対応策を5つのステップで整理します。一度にすべてを完璧にする必要はありません。優先度の高い順に取り組んでください。

ステップ1: 見積書・契約書のフォーマット見直し

最優先で取り組むべきは、見積書と契約書の見直しです。

見積書について、改正法では労務費・材料費・経費の内訳を明記した見積書の作成が求められます。現在使っている見積書テンプレートに「労務費」の独立した内訳欄があるかどうかを確認してください。多くの中小建設会社では、材料費と労務費を「工事費一式」としてまとめている場合がありますが、改正後はこの運用を改める必要があります。

契約書については、以下の項目が法定記載事項として追加されています。

  • 請負代金の変更方法(資材高騰時の対応ルール)
  • 見積書に記載すべき事項(労務費等の内訳)

既存の契約書テンプレートにこれらの条項が含まれていない場合は、弁護士や行政書士に相談のうえ追記してください。電子契約ツールを導入すれば、テンプレートの統一管理と全社一斉の更新が容易になります。

ステップ2: 労務費・賃金体系の点検

中央建設業審議会が勧告する標準労務費と、自社が実際に支払っている労務費を比較する作業が必要です。著しく下回っている場合は、賃金体系の見直しが求められます。

具体的なチェックポイントは以下の3点です。

  • 自社の技能者に支払っている賃金が標準労務費の水準を満たしているか
  • 下請けに提示している労務費単価が標準労務費を下回っていないか
  • 元請けから提示された見積り条件が標準労務費を著しく下回っていないか

CCUS(建設キャリアアップシステム)に登録している事業者であれば、技能者のレベル別能力評価と連動した賃金設定の参考基準として活用できます。CCUSのレベル判定と標準労務費の両方を参照しながら、自社の賃金テーブルを整理することをお勧めします。

ステップ3: 工期設定ルールの整備

営業段階で「短い工期」を売りにして受注するスタイルは、法改正後はコンプライアンスリスクになります。社内で工期設定の基準を整備し、営業担当・現場監督の間で共有しておくことが不可欠です。

国土交通省が策定している「工期に関する基準」を参照し、以下のようなルールを社内で定めておくと対応がスムーズです。

  • 工事種別・規模ごとの標準工期テーブル
  • 雨天・冬季を考慮した日数補正の計算方法
  • 「著しく短い工期」に該当しないことを確認するチェックリスト
  • 営業段階での工期提示に対する上長承認プロセス

過去の実績データを蓄積・分析する仕組みを持っておくと、根拠のある工期設定が可能になります。「前回の同種工事は○日で完了した」という実績を示せれば、発注者との工期交渉でも説得力が増します。

ステップ4: ICTツール導入で技術者配置を合理化

技術者の専任義務緩和を活かすには、遠隔臨場やリアルタイム映像共有のICT環境が前提です。以下のツールカテゴリから自社に合うものを選定してください。

  • 施工管理アプリ(写真・図面・工程の一元管理)
  • クラウドカメラ・ウェアラブルカメラ(現場映像のリアルタイム共有)
  • Web会議ツール(遠隔からの技術指導・検査対応)
  • 施工体制台帳の電子化ツール

DX投資の予算立ての記事で、ツール別のコスト試算と費用対効果を解説しています。初期費用を抑えたい場合は、デジタル化・AI導入補助金の活用も選択肢に入ります。補助率は年度によって変わりますが、導入費用の1/2〜2/3が補助されるケースもあります。

ICTツールの導入は、技術者配置の合理化だけでなく、工期管理の精度向上や書類作成の効率化にもつながります。法改正対応を「コスト」ではなく「生産性向上の投資」として捉えることが大切です。

ステップ5: 社内研修と周知

法改正の内容を経営者だけが把握していても、現場で運用されなければ意味がありません。営業・積算・現場監督・事務担当など、契約や見積りに関わるすべての部門に改正内容を周知する必要があります。

特に注意すべきは営業部門です。受注競争の現場では「工期を短くする」「金額を下げる」という従来型の営業手法が無意識に使われがちですが、これが法律違反につながりかねません。「何をしてはいけないのか」を具体的なケーススタディとともに共有してください。

社内研修で押さえるべきポイントを整理すると、以下の4つに集約されます。

  • 見積り段階: 標準労務費の基準を下回る金額を提示してはいけない(依頼側も提出側も)
  • 契約段階: 原価割れ契約と著しく短い工期での契約が禁止される
  • 施工中: 資材高騰時の変更協議に誠実に対応する義務がある
  • 全般: 違反した場合は勧告・公表の対象になり、経審や入札参加資格に影響しうる

国土交通省が公開しているリーフレットやQ&A資料は、社内研修の教材として活用できます。特に「建設業法等改正のポイント」(国土交通省不動産・建設経済局)は、図解入りで改正内容をコンパクトにまとめており、研修資料のベースとして使いやすい構成です。各地の建設業協会や行政書士会が開催する説明会・セミナーへの参加も有効です。

研修は一度で終わりにせず、四半期ごとに見積り・契約のチェックを行い、改正法に沿った運用が定着しているかを確認するサイクルが理想です。

改正対応は経営戦略でもある

法改正への対応を「コンプライアンスのためにやらされること」と考えるのではなく、経営体質の強化として前向きに取り組むことをお勧めします。適正な労務費の確保は人材確保につながり、ICTの導入は生産性向上と受注能力の拡大につながります。

よくある質問

改正建設業法はいつから施行されますか?
2024年9月1日、12月13日、2025年12月12日の3段階で施行されます。2025年12月12日が完全施行日で、原価割れ契約禁止や工期ダンピング禁止などの規定が適用開始となります。すでに施行済みの規定もあるため、早急な対応が必要です。
一人親方やフリーランスの建設技能者も改正の対象になりますか?
改正建設業法は建設業の許可を受けた事業者に適用されます。一人親方であっても建設業許可を持っている場合は対象です。許可を持たない小規模事業者は直接の規制対象外ですが、元請け・下請けの契約関係を通じて間接的に影響を受けます。標準労務費の基準は業界全体に波及するため、許可の有無にかかわらず注視が必要です。
標準労務費の具体的な金額はどこで確認できますか?
中央建設業審議会が工事の種類ごとに「労務費の基準」を作成・勧告します。国土交通省の建設産業・不動産業のページで公開されるため、定期的に確認してください。公共工事設計労務単価とは異なる指標で、民間工事を含むすべての建設工事が対象です。
ICT活用で監理技術者の配置要件はどのように変わりますか?
遠隔臨場やリアルタイムの映像共有システムなどのICTを活用し、国土交通省が定める要件を満たすことで、監理技術者や主任技術者の専任義務が緩和されます。1人の技術者が複数現場を兼務できるようになるため、技術者不足への対策として有効です。ただし、技術者を補佐する者の配置など付帯条件があります。
改正対応のためのICTツール導入に使える補助金はありますか?
デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)が活用できます。施工管理アプリや電子契約ツール、クラウドカメラなどが対象になり得ます。補助率や申請要件は年度ごとに変わるため、最新情報を中小企業庁・経済産業省の公式サイトで確認してください。

参考情報

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