この記事の監修 山本 貴大 / ケンテク編集長

150社以上のマーケティング/コンサルティング支援実績。認定支援機関と連携した補助金計画書の作成支援も手がける。

「同業者が廃業した」「取引先が突然倒れた」。こうした話を身近に聞く頻度が確実に増えている。帝国データバンクの調査によると、2025年の建設業倒産件数は2,021件に達した。前年比6.9%増、4年連続の増加で、過去10年間で最多の水準だ。2,000件を超えるのは2013年の2,347件以来、実に12年ぶりになる。

注目すべきは、倒産した企業の57.7%が負債5,000万円未満の小規模事業者だという点だ。業歴30年以上の企業も30.5%を占めており、「長年やってきたから大丈夫」とは言い切れない。

この記事では、建設業の倒産を引き起こしている3つの構造的な原因を整理し、中小建設会社が今すぐ着手できる具体的な対策を解説する。

建設業の倒産を加速させる3大原因

原因1: 人手不足 — 受注できても回せない

2025年の建設業における人手不足倒産は113件にのぼり、前年の99件を上回った。国土交通省の統計では建設業就業者は約482万人(2023年時点)で、ピーク時の1997年(685万人)から約3割減少している。

人手不足が倒産に直結するメカニズムはシンプルだ。案件を受注しても施工体制を組めなければ工期遅延が起き、遅延違約金が発生する。職人の取り合いで外注費が膨らめば、受注しても赤字になる。やがて「仕事はあるのに儲からない」状態に陥り、資金ショートに至る。

実際、帝国データバンクの分析では「受注残を抱えたまま倒産」するケースが目立つ。手持ち工事があっても人員が確保できず、外注先にも断られ、工期に間に合わなくなる。元請けとの信頼関係が崩れれば次の受注にも響く。こうした悪循環は売上規模の小さい事業者ほど深刻で、1件の工期遅延が会社全体の資金繰りを圧迫する。

2024年問題による残業時間の上限規制も、限られた人員での生産性確保をいっそう困難にしている。

原因2: 物価高 — 利益が資材に吸い取られる

2025年に物価高を原因とする建設業の倒産は240件に達した。鉄鋼、木材、建設機械の価格高騰が続くなか、契約時の見積額と実際の施工コストの乖離が拡大している。

とりわけ中小の下請け企業は価格転嫁が難しい。元請けとの力関係で「値上げをお願いできない」ケースが多く、利益率が圧迫されたまま施工を続けることになる。国土交通省が2024年に実施した調査では、下請企業の約4割が「資材費の上昇分を十分に転嫁できていない」と回答している。

たとえば鉄筋コンクリート造の場合、2020年と比較して鉄筋は約1.5倍、型枠用合板は約1.3倍に価格が上昇している。契約時に見積もった資材費と、実際に調達する時点での価格差が数百万円に達することも珍しくない。この「見積りと実コストの乖離」を吸収できない中小企業が、工事を完成させるほど赤字が膨らむという構造に陥っている。改正建設業法では原価割れ受注の禁止が盛り込まれたが、法改正の効果が浸透するには時間がかかる。

原因3: 経営者の高齢化と後継者不在

2025年、経営者の病気・死亡による倒産は78件で2000年以降最多を記録した。建設業の経営者は平均年齢が高く、体力的な問題で事業を続けられなくなるケースが増えている。

後継者が見つからないまま経営者が倒れると、技術も顧客も一度に失われる。従業員の雇用も守れなくなり、地域の建設インフラに穴が開く。「後継者問題は将来の話」ではなく、いつ起きてもおかしくない経営リスクだ。

帝国データバンクの調査によると、建設業の後継者不在率は約65%にのぼる。特に従業員10人未満の事業者では、社長自身が現場の技術者を兼ねているケースが多い。この場合、社長が入院しただけで工事がストップし、売上がゼロになる。事業承継の準備には最低でも3〜5年かかるとされており、経営者が60歳を超えたら、遅くとも具体的な計画づくりを始める必要がある。

業歴30年以上の企業が倒産全体の30.5%を占めている。「老舗だから安泰」ではなく、長い業歴がかえって経営者の高齢化リスクを示している場合がある。

「うちは大丈夫か」セルフチェック10項目

以下のチェック項目に3つ以上該当する場合、早急に対策を講じる必要がある。

#チェック項目リスク区分
1直近1年で受注を断った理由が「人が足りない」だった人手不足
2職人の平均年齢が50歳を超えている人手不足
3新卒・未経験者の採用に2年以上成功していない人手不足
4資材価格の上昇分を元請け・発注者に転嫁できていない物価高
5粗利率が3年前と比べて3ポイント以上低下した物価高
6月次の資金繰り表を作成していない財務
7ゼロゼロ融資の返済が始まっている(または始まる)財務
8経営者が60歳以上で、後継者が決まっていない後継者
9社長が現場に出ないと工事が回らない属人化
10直近1年で取引先の倒産・廃業があった連鎖リスク

対策1: 財務体質の強化 — 「死なない体」をつくる

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倒産の直接原因は「資金ショート」だ。売上や利益率の改善は時間がかかるが、資金繰りの管理は今日から改善できる。

月次資金繰り表の作成を習慣にする

手形払いや出来高払いが多い建設業では、売上と入金のタイミングがずれる。3ヶ月先までの入出金を見える化することで、「いつ資金が足りなくなるか」を事前に察知できる。

ExcelやGoogleスプレッドシートでの管理でも十分だが、財務会計ソフトを導入すれば銀行口座の残高と連動した自動更新も可能だ。資金繰り表を毎月更新している企業と、そうでない企業では、金融機関からの信用にも差がつく。融資の相談に行く際、3ヶ月先までの入出金予定が整理されていれば、銀行側の審査対応もスムーズになる。

公的融資・保証の活用

民間金融機関からの借入れが難しい場合でも、日本政策金融公庫の「セーフティネット貸付」や信用保証協会の「経営安定関連保証」が利用できる。セーフティネット貸付は業況が悪化している中小企業が対象で、運転資金・設備資金として最大4,800万円(国民生活事業)まで借入可能だ。

倒産防止共済(経営セーフティ共済)への加入も、取引先の倒産による連鎖倒産を防ぐ手段として有効だ。掛金月額は5,000円〜20万円で、取引先が倒産した場合に掛金総額の10倍(最大8,000万円)まで無担保・無保証で貸付を受けられる。掛金は全額が損金(経費)に算入できるため、節税効果も大きい。建設業のように連鎖倒産リスクが高い業種では、優先的に検討すべき制度だ。

経審(経営事項審査)の点数改善

公共工事を受注するための経営事項審査では、財務指標(Y評点)が点数に直結する。自己資本比率の向上、売上債権回転期間の短縮といった財務改善は、公共工事の受注機会拡大にもつながる。経審スコアアップの具体策を別記事で詳しく解説している。

対策2: 人材確保と生産性向上 — DXで「少人数でも回せる体制」を作る

人手不足そのものを短期間で解消するのは難しい。現実的なアプローチは、「今いる人員で最大限の成果を出す仕組み」を整えることだ。

施工管理のデジタル化

紙の日報、FAXでのやり取り、現場と事務所の往復。これらの非効率を施工管理アプリで解消すれば、管理業務にかかる時間を大幅に削減できる。

国土交通省の調査では、ICTツール導入企業は非導入企業に比べて施工管理の工数を平均20〜30%削減できているとされる。浮いた時間を現場作業に充てることで、人員増なしで施工能力を高められる。

具体的には、写真整理や日報作成にかかっていた事務作業が1日あたり1〜2時間短縮されるケースが多い。10人の現場であれば、月間で200〜400時間分の労働時間が浮く計算になる。導入コストも月額数千円〜数万円のクラウドサービスが主流で、IT導入補助金を使えば実質負担をさらに抑えられる。

採用力の強化

若手人材の確保には、求人方法の見直しが不可欠だ。ハローワーク一本の会社と、建設業向け求人サイトやSNS広告を併用する会社では、応募数に大きな差が出る。求人票の書き方ひとつとっても、「日給○○円、経験者優遇」だけでは若手には響かない。年間休日数、資格取得支援の有無、先輩社員のキャリアパス事例など、「この会社で働くとどうなれるか」を具体的に示すことが応募につながる。

外国人材の受入れも選択肢のひとつだ。特定技能制度を活用すれば、即戦力となる外国人技能者を合法的に雇用できる。受入れ手続きや在留管理には手間がかかるが、制度を正しく活用している企業は増えている。

若手の定着率を上げる

採用しても辞められては意味がない。建設業の3年以内離職率は約45%と、全産業平均(約30%)を大きく上回っている。若手の定着施策として、段階的な技能習得プログラム、資格取得支援、定期的な面談制度の整備が効果的だ。「見て覚えろ」ではなく、入社半年・1年・2年の節目で習得すべき技術を明示し、達成に応じて処遇を上げる仕組みが離職防止に直結する。

対策3: 補助金・助成金の戦略的な活用

設備投資やDX導入にかかる費用の一部は、国や自治体の補助金でカバーできる。

補助金名用途補助率上限額
IT導入補助金クラウドサービス、施工管理アプリ1/2〜3/4450万円
ものづくり補助金設備投資、生産性向上1/2〜2/31,250万円
業務改善助成金賃上げに伴う設備投資3/4〜9/10600万円
事業承継・M&A補助金事業承継に伴う経費2/3600万円
キャリアアップ助成金非正規→正規転換定額80万円/人

出典: 各補助金の公式サイトより。金額・補助率は年度・コースにより異なるため、最新情報は公式サイトで確認してください。

補助金は「お金がもらえる」だけでなく、申請プロセスを通じて自社の課題を棚卸しできる効果もある。事業計画書を作成する過程で、自社の強み・弱み、投資の優先順位が明確になる。認定支援機関(税理士・中小企業診断士等)の力を借りれば、申請書類の作成と同時に経営の健康診断を受けるような形になる。補助金の一覧と選び方を参考に、自社に合った制度を探してほしい。

対策4: 事業承継の早期着手

経営者が元気なうちに後継者を決め、段階的に権限を移行するのが理想だ。「まだ早い」と先延ばしにするほど選択肢が狭まる。事業承継は単に代表者を交代すれば済む話ではなく、建設業許可の要件である「経営業務の管理責任者」と「専任技術者」の確保、取引先との関係維持、金融機関との信用引き継ぎなど、準備すべき項目が多い。計画なしに進めると許可の空白期間が生まれ、その間は工事の受注ができなくなるリスクがある。

後継者候補がいない場合は、M&Aによる第三者承継も現実的な手段だ。事業承継・M&A補助金を活用すれば、仲介手数料や統合にかかる経費の2/3(上限600万円)が補助される。

地域の建設会社同士の合併・統合も増えている。単独では人材確保が難しくても、2〜3社が統合すれば施工体制と営業基盤の両方を強化できる。とび・土工の会社と内装仕上げの会社が統合して多能工体制を構築した事例や、商圏が重ならない隣接エリアの同業者が合併して公共工事の入札ランクを上げた事例もある。「ライバルだから組めない」ではなく、「地域を守るために組む」という発想の転換が求められている。

よくある質問

2025年の建設業の倒産件数は?
帝国データバンクの調査によると、2025年の建設業倒産件数は2,021件で前年比6.9%増。4年連続の増加で過去10年間最多、2,000件超えは2013年以来12年ぶりです。倒産企業の57.7%が負債5,000万円未満の小規模事業者です。
建設業の倒産の主な原因は何ですか?
主な原因は3つあります。(1)人手不足(113件):職人不足で受注しても施工体制を組めない、(2)物価高(240件):資材価格高騰を価格転嫁できない、(3)経営者の高齢化・病気(78件、過去最多):後継者不在のまま経営者が倒れるケースが増加しています。
中小建設会社がすぐにできる倒産対策は?
最も即効性があるのは月次資金繰り表の作成です。3ヶ月先の入出金を見える化することで資金ショートを事前に察知できます。並行して、施工管理のデジタル化(管理工数20〜30%削減)、補助金の活用(IT導入補助金やものづくり補助金)、採用方法の見直しに着手することを推奨します。
後継者がいない場合はどうすればよいですか?
M&Aによる第三者承継が現実的な選択肢です。事業承継・M&A補助金を活用すれば仲介手数料等の2/3(上限600万円)が補助されます。地域の建設会社同士の合併・統合で施工体制と営業基盤を強化するケースも増えています。

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